ムチャキング2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 03/30〜04/01

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の、自称スポーツイベント便乗チームに、一人の男が駆け込んできた。
「やりました! WBCで日本が優勝しましたよ!」
「今さら何を言ってんだ? 何日前の出来事だったと思ってんだよ!?」
「それは、どうしてもタイムラグが‥‥ごにょごにょ。それはさておき、火薬を使ってピストルと同じ原理で球を発射する時速300キロのピッチングマシン、この機会に使わない手はないと思うんですが」
「そうだな‥‥よし、今回は打ってもらおう!」
 こうして、WBC日本優勝便乗企画がスタートした。

 無謀王決定! ムチャキング2
『300キロの超スピードボールを打て! 打てたら10万円!』

 ムチャキング選出は、採点によってなされます。
・無謀点:いかにムチャなバッティングをするかで点が変わります。
・バッティング点:本塁打で満点、空振りでも若干の点は入ります。
・芸術点:リアクションのおもしろさによっても点が入ります。
 無謀点30点、他各10点の計50点満点で採点されます。

事前に用意される小道具
 バット以外の使用可です。大概のものは用意できます。持ち込みも可です。

注意点
・退場処分、流血、怪我、死亡したら0点になります。
・但し、流血はカメラに映らない範囲ならOK、怪我は覚られないようガマンすればOKです。
・打てたら10万円とありますが、正確には点数が一番高くてムチャキングに選出された人に10万円です。
・点数の入り方次第では、打てなかった人が打った人に勝つ場合もあります。
・敢闘賞や技能賞など、優勝以外で若干の賞金が出るかもしれません。

前回の放送スケジュール
・3月9日 23:00〜

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0402 横田新子(26歳・♀・狸)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa0892 河辺野・一(20歳・♂・猿)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2599 若宮久屋(35歳・♂・狸)
 fa2939 橘 来夢(11歳・♀・ハムスター)
 fa3162 たまた(21歳・♂・狸)

●リプレイ本文

『またまたこの日がやって参りました。ムチャキングの名を我が物にしようと、バットという刀を携えて、真剣勝負にやって来た7人の侍ジャイアンツ! 勝つのは人か!? マシンか!? 前回に引きつづき、河辺野一(fa0892)の実況でお送りします』
 河辺野の実況がグラウンドにも響く中、マウンド上に問題のピッチングマシンが設置されていく。
『なお、マスコットガールとして、泉彩佳(fa1890)さんにお越しいただきました』
「よろしくお願いします」
 放送席の河辺野の横で、ぬいぐるみを持った泉が一礼をする。
『ホームランが出た際には、彩佳さんにぬいぐるみの贈呈を行ってもらいます』
 そうは言っても、ホームランがそうポンポン出るとは考えにくい。そこで、泉はボールガールも務めている。まあ、単にマシンにボールを装填するだけだが。
 そんな中、早速発泡スチロール製のダミー人形が運び込まれる。轟音と共に、泉の装填した球が発射される。
『いったァァーッ! TOMITVの科学力は世界一ッイイイイ!! バットじゃなくて胴体がアンプルのように真っ二つだー!!』
 真っ二つどころか粉々になったダミー人形を、スタッフ一同で片づける。後は、生身の身体のこのような掃除をしないで済むことを祈るしかない。
『さあ、皆様お待たせしました。実に時速300キロ超を計測するピッチングマシンを相手に、命のやりとりがはじまります!』
 河辺野があおる中、ユニフォーム姿の横田新子(fa0402)がバッターボックスに向かっていく。
『最初のバッター、日本代表のユニフォームを着込んでの登場は、横田選手だあッ!』
 そこまで言ったところで、河辺野のもとに横田から何やらメモが回ってくる。
『‥‥えー、説明しよう! 300キロの剛速球を、フルスイングで打ち返すのはむずかしい。そこで、バントで的確にミートポイントに球を当て、スピードを利用したその反作用でホームランを狙うのだ! 名づけて、バントホムーラン‥‥ん? ホムーランって‥‥燃えろホムーランってコトでしょうか!?』
 誤字に意味不明のツッコミをする河辺野。それに応えるように、バントの構えを決める横田。
「剛速球、怖いですけど、女の意地見せてみます!」
 一応念のためにキャッチャーマスクをつけてはいるが、どこまで役に立つかは不明である。
『ピッチングマシン、大きく振りかぶって‥‥轟音一発、いったぁ!』
 ピッチングマシンは振りかぶることなく、ただ火薬を爆発させるのみ。発射された弾が、ありえない速度で横田のバットに直撃する。
『当たったぁ! あーっと、バックネットまで吹っ飛んでいったーッ!』
 飛んでいったのはボールではなく、横田の身体であった。一方のボールはといえば、バックネットの金網に突き刺さったまま、落ちてこない。
 すぐさま泉が駆け寄って、横田にマイクを向ける。
「危険だからよい子はマネしないでね‥‥ガクッ」
 カメラ目線でニコリとすると、そのまま崩れ落ちる横田。
『のっけから失神KO決着だぁ! 横田選手、今担架で運ばれていきます。残念ながら、横田選手は0点ということになります!』
 一番バッターから騒然とする中、2番のパイロ・シルヴァン(fa1772)がジュラルミンシールド片手に入ってくる。
『機動隊名物、ジュラルミンシールド! しかし、11歳とは思えないチョイスであります』
 轟音と共に、パイロの身体が吹き飛ぶ。ジュラルミンシールドはべっこりとへこんではいたものの、横田のように一撃必殺とならなかったのは、シールドの役目を果たしたからだろうか。
「ところで、何球勝負なの? 」
 第2回にして、当たり前の疑問が投げかけられる。
『あきらめたら、そこでゲームセットです』
「あきらめなかったら?」
『三振しない限り、永久につづきます』
 そうは言っても、その前に身体やら用具やらにガタが来るので、そこまで長くつづいたことはない。
 だが、パイロは粘った。ジュラルミンシールドはベコベコになり、マトモに打ち返すことも一度もできてはいないかったが。
 だがついに、ボールがジュラルミンシールドを突き破るときが来た。
『所詮は軽合金かッ! 堅い守りを突き破ったーッ!』
 突き抜けたボールをパイロはすんでのところでかわしていたが、何やら仕込んでおいたピンポン球を2つ、グラウンドに転がした。
「球が当たったら、玉落ちちゃったの」
 よく見れば、そのピンポン球は金色に塗られていた。
『‥‥無謀点5、バッティング点5、芸術点1‥‥サブい下ネタに、芸術点がまったく伸びない! パイロ選手、わずか11点に終わりました!』
『つづいては、橘来夢(fa2939)選手ですが‥‥何やら、大量のセットが運び込まれています!』
「『威力があり過ぎるなら、テキトーなものを貫通させて弱めればいい』って、銃口の前に手をかざした人が言ってたモンね」
 という理論に基づき、バッテリー間にベニヤと発泡スチロールで作った特製のボードを、約1メートルおきに延々と並べていく。
 さらには、柱やら雨樋やら、やたらと大掛かりなセットである。設営に時間がかかって、気づけばナイターである。
『お待たせしました、いよいよ橘選手の第一球目です!』
 果たして、ボールの勢いは殺され、雨樋を伝ってボールが運ばれてくる。そして待ち構えるは、ミート最重要視でラージサイズのテニスラケットを手にした橘である。
 スカッ!
『〜ッッ! 空振りッ! ここまでやっておきながら空振り〜ッ!!』
 スカッ! スカッッ!!
『なんということだー! 前代未聞の三振だぁッ!』
 だが、橘はこれで終わらない。
「ヘイ、ボブ!」
 アンパイアを呼びつける。
『ボブ? ボブとはありきたりな名前だが、やはりあのボブなのか!?』
 判定が覆り、2ストライク1ボールとなる。
『どう見てもフルスイングしているが、振っていないとの判定だぁ! ここで炸裂、ボブマジック!』
 スカッッ!!
 だが、またも空振り。さすがのボブも、もうかばい切れなかった。
「うりゅ〜、やっぱりライムが出るの、ムチャだったの〜」
『橘選手、泣きながらベンチに戻ります。無謀点1、バッティング点0、芸術点8‥‥まさかの1桁、9点で終わりました』
『さあ、つづいては若宮久屋(fa2599)選手の登場です。バッティングセンターにこもり、最高速で練習をつづけたとのことですが‥‥おそらく、何の役にも立たないでしょう!』
「いや、言われずとも普通ならムリなのは分かってるけどね。それでもがんばっちゃうのがオジサン世代なのよね」
 河辺野の冷静な実況にもめげず、普通のバット一本だけ持っての登場は若宮である。発射するかしないかのタイミングでバットを振るべく、素振りを何度も繰り返す。
「ストライク! ストライーク! ツーナッシング」
 だがそれでも、アンパイアのボブが冷静にジャッジする中、あっという間に追い込まれてしまう若宮。
「やっぱムリだよ」
 思わず笑ってしまう若宮は、ベンチに下がると何やらバットケースを取り出してくる。
『これは極太、超極太バットだーッ!』
「こんなこともあろうかと、密かに作っておいたのだよ!」
 自慢げに極太バットを構える若宮。
「ストライク! バッターアウト!」
 だが、スイングがノロノロでついていかなかった。頭をかきながら、ボソリと呟く。
「よく考えたら、このバット実際に振るのはじめてだった‥‥」
『無謀点4、バッティング点2、ボケが効いて芸術点8‥‥14点でトップに立ちました、若宮選手!』
『さあ、打順に意味はないですが、最強の5番バッターの登場です。九条運(fa0378)選手、愛くるしい着ぐるみに入っての登場も、その手には釘バットだぁッ!』
 釘バットの釘は錆び、中には赤黒いものも付着しているが、気にしてはいけない。
 ネクストサークルから、ゆっくりとバッターボックスへと向かう九条。着ぐるみに入っていようとも、その中では早くも呼吸を整え、精神統一と大マジメである。
「いけーっ!」
『軌跡を描くその姿は、まるで流星!!‥‥っと、あぶなーいッ!』
 バットがすっぽ抜け、ピッチングマシンに向け一直線に飛んでいく。だが、わずかにそれて、むしろその横にいた装填係の泉に当たりそうになってしまい肝を冷やす九条。
 さすがに今度はグリップにもしっかり力を入れ、再び呼吸を整える。
「覇ーッ」
『釘の飛び散るその姿は、まるでビッグバン!!』
 ジャストミートしたハズの打球は、そのまま後方に飛んでいく。そう、バットが粉々に砕けてしまったのだ。飛び散る釘の、バットに埋まっていて錆びていない部分が、照明に反射して美しい。
『無謀点4、バッティング点6、そして花火のごとく飛び散る釘が、危険な美しさを出していたということで、芸術点が高い! 満点の10! 合計20点で、若宮選手を抜いてトップに立ちました』
『つづいては、夏姫・シュトラウス(fa0761)選手が、覆面女子レスラー、ホワイトタイガーとしての登場だあッ!』
 バックネットを見上げれば、純白のタキシード姿の虎のマスクマンが立っていた。
「私の勝ち戦に、バラの花を添えよう‥‥とう!」
 すっかりキャラに入り込んでいる夏姫が、バラの花束を抱えて飛び降りてくる。そして、バッターボックスに立つや、その中からバラの花びらを散らしながら日本刀を引き抜く。
『前回優勝者は木刀だったが、ホワイトタイガーは真剣だぁ!』
 だがそのツッコミも、WBC日本代表監督がかつてバッティングフォームの特訓を行った際に真剣を使用した伝説をリスペクトということで、すべてシャットアップである。
「月は出ているか‥‥?」
『えーと‥‥今日3月30日はほぼ新月で、出ていませんが』
 河辺野の解説にも夏姫は理由を一切説明せず、マスク越しにニヤリと笑っただけである。
「我に断てぬものなし!!」
 バラの花束を宙に投げ、切っ先を外野スタンドに向ける。そう、ホームラン予告である。
 果たして、300キロの剛速球が真っ二つである。さすがにその斬られたボールがスタンドインすることはなかったが。
『予告どおりにホームランとはいきませんでしたが、ボールを真っ二つにしたので評価は高い! 無謀点5、バッティング点と芸術点は共に満点で10! 合計25点で、単独トップに躍り出ましたッ!』
『そしてラストバッターは、前回に引きつづき登場のたまた(fa3162)選手です!』
「よく考えれば、300キロの球なんか、まともに打てるはずがないね。そこで考え方を変えたよ。球の方のスピードを下げてしまえばいいんだ!」
 たまたのその言葉を合図にするかのように、重機が運び込まれる。
『これは一体どういうことかッ!?』
「マウンドのマシンは動かせないから、バックネットを破壊して、そこにスペースを作るわけだね!」
『一体何億の金がかかっているのか、スタッフの首が心配でありますッ!』
 その実況を最後に画面が切り替わり、照明が落ち自然光が射し込んでいる画になる。そして、完全に撤去されたバックネットが‥‥。
『‥‥夜も明け、球場もすっかり変わり果てた姿になってしまいましたが‥‥たまた選手の一球目です!』
 本来のホームベース上でストライクになるように設定されているので、大きく後ろに下がったたまたのところにやって来るころには、ボールは地面を転がっている。それを、ゴルフのスイングのように打とうとするたまた。
 が、転がっているとはいえ、スピードが死んでいないので当てることすらままならない。最後にはバットを投げつけてボールに当てようとしてもはずれ、その転がったバットにようやくボールが当たる始末であった。
『‥‥大金がかかった割には散々な結果ですが、球場を破壊したムチャっプリが高く評価され無謀点20、バッティング点1、芸術点1の22点! 無謀点だけで点数を稼ぎましたが、惜しくも届きませんでした! さあ、ようやく表彰式です!』
『バントで吹き飛ばされた横田選手に、敢闘賞5万円が送られます。また、ムチャ違いで球場をメチャメチャにして大損害を叩き出したたまた選手に、技能賞5万円が泥棒に追銭の如く送られます!』
『そして、堂々の優勝は夏姫選手、賞金10万円が送られます』
「ありがとうございます」
 すっかり時間が経ってキャラの解除された夏姫が、おどおどした様子で賞金を受け取る。
『お別れの時間になってしまいましたが‥‥え? なになに‥‥えー、番組の最後ですが、視聴者のみなさんにうれしいお知らせです。今回番組で使われたピッチングマシンですが、熱烈なファンの声もあり、みなさんのご近所のバッティングセンターに近日登場予定とのことです。あ、言うまでもないですが、この放送日の明後日はエイプリルフールですからね』
 じゃあウソじゃないじゃんというツッコミを聞き流して、ウソのような存在のアンパイアのボブをアップにして、番組は終了した。