芸人プロレスごっこ狂3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/14〜09/16

●本文

 プロレスごっこ──それだけなら素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。
 基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
 そんな建前はさておき、プロレスどころか本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。だって、みんな狂ってるんだから。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ狂選手権のスタッフが集められていた。その一同の前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「ふう、まさか軽い気持ちではじめた特別ルールが‥‥」
「‥‥いえ、まだ初回を含めた2つの収録がはじまってもいませんが‥‥ぐぼはっ!」
 前回とまったく同様に遠い目をするえらい人に、やはりいらぬ親切心で口を挟むスタッフ。無論、結末も同様で鉄パイプでおしおきである。
「えー、先生残念です。前回あれだけ口をすっぱくして言ったのに‥‥ホントに覚えてないのかな?」
「えーと、放送日を考えてやった体で‥‥うわー、まさかあんなことになるなんて、思いもしませんでしたよ!」
 とってつけたように、急に態度の変わるスタッフたち。だが、そのことがえらい人の逆鱗に触れた。
「あんなこと? どんなんだっけか? おい、ちょっと具体的に言ってみろ!」
「え‥‥ええ!?」
 こうなっては、適当に合わせるつもりしかなかったスタッフは口ごもるしかない。
「言えないんだったら、身体で示せや! よーし、今回もかかってこいや〜!」
 結局えらい人に飛びかかっては、撃退されていくいつものスタッフたち。
 こうして、よく分からない恒例の儀式を経て、第三期芸人プロレスごっこ王選手権、すなわち芸人プロレスごっこ狂選手権の3回目がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・無観客のスタジオにリングを設置し、そこで収録を行います。
・試合にあたり、特にテーマはありません。試合形式とかにもこだわることなく、何かおもしろいコトをやったりやらなかったりすればOKです。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによる3代目プロレスごっこ王は、突然次回に決まるかもしれません。恋と同じで、こればっかりはしょうがないですよね。
・ポイントを地道に貯めてもあまり意味はありません。最終的には一発逆転のバラエティのノリになるので、そういうのに怒らない人募集なのです。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我には一切関知しません。

特別ルール:
・プロレスごっこ王、プロレスごっこ玉、ムチャキング等、王者が2名以上集まった場合、その回のランキング戦は中断となりいきなり王座統一戦となります。なお、王者については自称、他称、公称は問いません。
・統一とは言ってますが、全員が王座獲得のチャンスを得ます。そういうものです。
・ナニをもって王座統一、あるいは獲得となるかは、えらい人の気分次第としか言いようがありません。

●今回の参加者

 fa1032 羽曳野ハツ子(26歳・♀・パンダ)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

「背景
 初秋の候、残暑の中にも秋分をひかえて虫の声美しい季節となりました。
 プロレスごっこ狂もセミファイナルとなり、それはすなわち夏の終わり、セミの一生の終わりに秋を感じる闘いというべき風雅と野趣あふれる開催となっております。
 ムチャキング玉、プロレスごっこ王のみな様におかれましては、お誘いあわせの上、セミファイナルことセミの末期をテーマに王者決定戴きますよう、よろしくお願いいたします。
 刑具」
 なぜか武越ゆか(fa3306)の手紙の朗読からはじまる本日のプロレスごっこ。
『内容はこの際置いておくとしまして、事前に見せてもらった手書き原稿の誤字が著しかったんですけど、ヨミが同じなら気づかれない寸法だネ☆』
 鋭くえぐるサトル・エンフィールド(fa2824)の実況が入る。今日はあくまでも天使モードの実況のつもりだが、それでも若干黒くなるのはサトルだからしょうがない。
「サトルくん、そんな言わなきゃ分からないようなコトを気にするよりも、ホントに気になる部分をこそ気にするべきだよう!」
 解説のヨシュア・ルーン(fa3577)が、なんとか愚兄を軌道修正させようとする。
 それすなわち、セミの格好をした羽曳野ハツ子(fa1032)が、ムチャキングとプロレスごっこ玉の二冠王はダテではないと、電柱のセットにしがみついているコトである。
「ぐほっ!」
『これはセミファイナルかぶりということでしょうか? かぶり芸はアマチュア芸人の専売特許と思っていましたが、キング玉ともなるとその域に達してしまうものなのでしょうか?』
 差し出た愚弟を拳で黙らせるも、その際の呻き声が若干音声に乗ってしまったが、気にせず軽快に実況をつづけていく。
『いえいえ、苦痛が快楽な愚弟ですから、それを与えてあげるのが本当のやさしさってものなんですよ? それよりも、羽曳野選手の試合は‥‥』
 いや、一応は気にしていた。ヨシュアをではなく、自分の見られ方をであるが。
「大体にして統一統一と、なんでも一つにまとめようという世の風潮そのものが間違っているのよ。実況芸人と解説芸人は各一人ずつもいらないから、実況解説芸人一人を用意せよと言われたらどうするの?」
 そんな実況解説を気にすることなく、自分の試合を繰り広げる羽曳野。セミなのは格好だけで、普通に人語で演説してしまっている。
 混沌とした状況にこそレフェリーを! と自らレフェリーを志願したの長瀬匠(fa5416)も、いきなり混沌の方向が予想外で対処のしようがなく、本当は撒くために用意しておいた酒をあおって、現実逃避してしまっている。
「うぃ〜! 飲んでなきゃ、やってられませんよ!」
 酒の力を借りて、自ら打たれすぎの状況を作り上げようとする長瀬。しかし、これではパンチドランカーではなく、ただのドランカーである。
 だがそれよりも困っているのは、思いっ切り羽曳野にガン見されている放送席の方である。
「ゲホゲホ‥‥サトルくん、なんかこっちに振られてるみたいだけど?」
『しっ! 目を合わせちゃいけません!』
「ぐぼはっ!」
 ボディブローで、強制的にヨシュアを下に向かせるサトル。だが、羽曳野はお構いなしで話をつづける。
「フュージョンして、サトルーンを作り上げるとでもいうの? あなたと合体したいの?」
「そうそう、合体したいよね。合体ってBLだよね?」
 抜群の腐女子嗅覚で武越が間に入ってくるが、サトルとヨシュアに振りはしても、自分に振られればスルーするのも羽曳野流。
「ムチャキングとプロレスごっこ玉が融合して、玉キングとかできてしまったら誰が責任を取るというのよ!」
 すでに融合してキング玉になってるじゃんとかいうツッコミは、この世界の特殊な時間の流れに逆らうコトになるので、してはいけない。
「それじゃ! それなのじゃ!」
 今度は、DarkUnicorn(fa3622)が飛び込んでくる。それまでああでもない、こうでもないとゴニョゴニョ言っていたDarkUnicornだが、憑き物がとれたかのような晴れやかな顔をしている
「キング玉からグラビア芸人をもってグを引き算しようとするのがいけない。玉の収まりが悪いなら、位置をずらせばよいのじゃ! つまり、ムチャ玉キング‥‥一番最後のグは読まない方向になるのじゃ。ピンポンがPingPong、ホンコンがHongKongのようなものなのじゃ!」
 こうして、羽曳野はあっという間にムチャ玉キングへと昇格(?)した。無論、誰も責任は取らない。
「はぁ〜。迷いが晴れた後の玉露が一番うまいのッ! いれたてにも優るのではなかろうか?」
 何もかもをやり遂げて燃え尽きてしまったせいか、縁側でお茶をすするお婆ちゃん状態である。
「あ、無事決着した模様です。もう直視しても大丈夫‥‥そうそう、この番組を見るときは、鏡で一端反射させてから見るのがコツです。普段は直視すると危険ですよ!」
 ヨシュアが実際にコツどおりの例を示していたが、単にサトルのレバーパンチが効いていて、うずくまった状態で見るためのコツに成り下がっている。
 だが、それでも羽曳野ゼミは鳴きつづける。いや、セミの一生は短いので、口で言っても分からなければ、身体で分からせるしかない。
「ならば、この私が身をもって示しましょう! こちらに用意したスイカとてんぷら‥‥これ腹の中で統一されたらどうなるか、喰うか喰われるかッ!?」
 食い合わせの悪いとされるスイカとてんぷらを大量に運び込ませる羽曳野。
 さらに、長瀬のためにビールとドリアンも運び込ませる。こちらは食い合わせが悪い以前にドリアンの臭いにノックアウト寸前であるが、すでにドランカーとなった長瀬は普通にツマミのように口に運ぶのみである。
 判断力の鈍ったレフェリーというのもどうかと思うが、プロレスごっこではむしろそれがいいくらいなのである。
「王座統一戦だけに、果物も王様ですか‥‥」
 いや、ちゃんと分かってはいるようである。ただ、嗅覚がすでにマヒしているだけのようだ。
「今回は三冠統一戦の予感‥‥って、終わっちゃってル? タイトルホルダーは3人、そして自分以外は全員女性だって、張り切っていたノニ!」
 遅れてやってきたマリアーノ・ファリアス(fa2539)が、すっかりしぼんでしまったDarkUnicornを見ながらボヤく。
「でもでモ! タイトルホルダーじゃなくても、今回の出場者の中にはもう一人おねーさんがいるヨネ! なので、タイトルホルダーにしちゃえばイインダヨ!」
 そう言うと、鋭く武越に接近するマリアーノ。なぜかむずかしい顔で原稿を読み返している武越に、声をかけた。

プロレスごっこ王の王をヨとEに分けて、あげようと思うんだケド‥‥左側と右側、どっちが欲シイ?」
「‥‥え!? いらない、いらないよー!」
 突然のコトに、反射的に拒絶する武越。無論、熟考の上でもいらないと思うが。今彼女が欲しいものはただ一つなのだ。
「半分ももらえナイっテ? その奥ゆかしさに、ハァハァしちゃうョ! じゃあ、王を十と二に分けヨウ。10:2なら、気にならないでショ?」
 なおも畳みかけるマリアーノ。この後繰り広げられるめくるめく王座統一戦へ向けて、ゴリ押しである。
 が、ここで武越が反撃に転じた。
「そんなコトよりも、読み返しているウチに大変なことに気づいちゃったわ! セミのファイナルなんだから、脱皮してる人だけが対象なのよ!」
「えっ?」
 こちらもつい反射的に、股間を押さえて前かがみになるマリアーノ。だが、その想像は間違いではなかった。
「セミの脱皮した皮をお財布に入れると、統一王者になれるのよ! 王者決定戦の視聴者プレゼントは皮に決まりね☆ さあ、よこしなさい!」
「いやいや、ペリペリ剥けるものじゃないカラ! そういう風に皮残らないカラ! 残るのは、手術して切った場合だけダカラ!」
「ヤケに詳しいわね? さては‥‥?」
 辛抱たまらず、武越が実力行使に出る。そして、マリアーノのズボンのチャックが下ろされようかとしたとき、ブフーっとお茶を吹き出すDarkUnicorn。
「玉はすべて玉キングの手に渡ったかと思いきや、こんなところにも隠されておったとはのッ!」
 DarkUnicornは元プロレスごっこ玉だけあって、玉には敏感に反応する。
「ごっこ玉の証じゃ! ごっこ玉の証が二つも眼前にあるのじゃ! しかし、この三つ目の玉はどうかなー?」
 目の前の玉には目もくれず、逆にピンク色した楕円体を装着してみせようかとDarkUnicorn。だが、さすがに装着前に正気に返る。
「‥‥って、玉の力に頼ってばかりではいかんのじゃッ! あやうく暗黒玉に落ちてしまうところだったのじゃ!」
 落ち着きを取り戻したDarkUnicornの目に、今度はマリアーノに組みつく武越の姿が目に映る。
「ムム、チアガールの特権を活かし、玉さすり隊などと破廉恥な応援はさせぬのじゃ。これは、わしの玉なのじゃ!」
「いいえ、ゆかの皮です!」
 こうしてマリアーノはDarkUnicornと武越に揉みくちゃにされ、やはり恐怖するしかなかったという。
 おかげで、すでに王が十と二に分割され、マリアーノがプロレスごっこ十、武越がプロレスごっこ二になってしまっているコトに、気づけないでいた。
「なんか、大変なことになっているようだけど‥‥サトルくん?」
『ゆかさんが視聴者プレゼントを調達しようとしているなら、ボクからもヨシュアにプレゼントをあげよう。』
 そう言って、鉄パイプを取り出すサトル。といっても、えらい人の鉄パイプではない。そのへんのパイプイスを解体してパクっただけのものである。
『このLUCKと書かれたブローパイプをね。Pを足してPLUCKになるし、さらにLとCKを消してSSYを足せば‥‥』
「サトルくん、もはや原型を留めてないよ‥‥次回、プロレスごっこ最終回。プロレス狂が生まれるだけで済むのでしょうか? 3日後をお楽しみに!」
『おまえがシメるなっ!』
「ぐはっ!」
 結局、ヨシュアがそのブローパイプでの一撃をサトルからプレゼントされたところで、番組は幕を閉じるのであった。食い合わせ以前に量が多すぎてトイレに駆け込むハメになった羽曳野と長瀬を振り返らずに。
 なお、今回も王座統一戦なのでポイントが発生しないコトは言うまでもない。結局、誰一人ポイントを獲得しないまま決定戦に臨むコトも言うまでもない。