番長の○度目のリハビリアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
09/15〜09/17
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「シーズンも終盤、Aクラスのチームが順調にマジックを点灯させていく中、熾烈な最下位争いを繰り広げるチーム、そして再手術してのリハビリ中と今年はまったく出番のないことが決まっている番長‥‥」
「そうですねぇ。もう片方のKも、正式表明こそしてないものの、事実上の引退状態ですし‥‥」
深いため息を吐く先輩と後輩。だが無論、それすらもバネに番組を作るのが彼らである。
「しかし、何度目のリハビリだろうね? 多すぎて、もう何度目か分からないよ‥‥」
「そうですね。避けないのが番長の美学とはいえ、多いですよね」
「まー、それを言ったらウチの番組だって、何度も何度もリスペクトしすぎて、もう何回目か分からなくなっちゃったくらいだけどな!」
「えーと‥‥なんだかんだで15回目ですよ」
「言っちゃダメだって。分からないって体なんだから‥‥」
そんなヌルい感じで、番長リスペクト企画の第15弾がスタートするのであった。
『もはや無事ならばそれでいい編』
ルール
・全員が番長とかに扮して、なんか無謀なコトとかをします。結果、芸能界を引退に追い込まれなければOKです。
・前回の水ごりとかのように、これといったテーマが決まっているわけではありません。何にも縛られない番長だけあって、何もかもが自由なのです。
・収録か生か、スタジオかロケか、そういったものも当然すべて自由です。
・自由と言ってるわりには、撮る内容はおもしろ番長映像と決まっています。一番お笑い的にイカレた番長が優勝となり、賞金10万円が授与されます。
・その他細かいルールは特にありません。が、番長でも法は守る必要がありますし、スタッフ番長がルールブックです。
過去の放送スケジュール(最近5回分)
・番長の自主トレ 2月08日 7:00〜
・番長のバレンタインデー 2月14日 8:00〜
・番長のリハビリ 4月15日 7:00〜
・昭和の番長列伝 4月29日 7:00〜
・番長の精密検査 7月08日 7:30〜
●リプレイ本文
「番長といえば漢! 番長といえば筋肉!」
黒のズボンに荒縄のベルト、腹にはサラシをきつく巻いて分厚すぎる胸板を際立たせ、学ランを羽織っている。そして、鉄下駄よりも実戦的な鉄板仕込みブーツ。まずは正統派ストロングスタイルの番長、かいる(fa0126)の登場からである。
「俺は筋肉番長! だから、俺が漢のリハビリというものを見せてやる!」
必要以上についた筋肉を極限までバンプアップさせているかいる。すでにウォームアップも十分か、冬場でもないのにホカホカと湯気まで立ち上っている始末。
「そうだ! 意図的に筋肉の破壊を起こし、それを修復せんとする瞬間にプロテインを摂取する! 最高のリハビリじゃないか!」
そこへ、ランドセルも背負って小学生番長となったビスタ・メーベルナッハ(fa0748)が入ってくる。
小学生というにはムリな外見のビスタだが、そんな小さなコトは気にしない。むしろ、気にすべきは小さなモノである。
「頭の中身まで筋肉番長なのかしら? 何も分かっていないのね‥‥」
「〜ッ! なんだと!?」
入ってくるなり、かいるを見てため息を吐くビスタ。思わずいきり立つかいるだったが、ビスタはやれやれと首を振るだけだった。
「教えてあげるわ。本当に筋肉が必要なのは‥‥ココよ!」
ズビシとかいるの股間を指差すビスタ。突然のことに、かいるはウマいコト返すことができない。
「いや、ここは筋肉で動かすというよりは血液を送り込むことで‥‥」
むしろかいるが赤面しながらしどろもどろに答えていると、パッパー‥‥突然クラクションが鳴らされる。
見れば、オープンカーのアメ車に乗ったミゲール・イグレシアス(fa2671)が入ってきたどこだった。
「まいど、ミゲールや‥‥いや、今のわいはちょいワル番長や!」
見事に刈り込まれた坊主頭に金剛石のピアス、ゴツいガタイをわずかに覆うアロハという格好は、ちょいワルどころでは済まず、ただのマル暴にしか見えない気もする。
しかし、ボンネットに設置された炎を上げる護摩壇に目を奪われ、ミゲール自身の格好にまで気が回らないのが実情である。ちょいワル番長というより、頭が激ワル番長という仕様の車である。
ミゲールのせいでちょっとした空白ができてしまったが、再びカメラがかいるとビスタの方を向く。すると、そこではビスタが顔から大量の白い液体を滴らせていた。
「むせ返るようなこの臭い‥‥たまんなぁいぃ‥‥」
恍惚の表情を浮かべるビスタの横で、かいるが必死に手と首を振って否定している。
そう、当然ながらビスタが自分でミルクをかぶっただけである。ただ、牛乳パックで買ったりするマネはせず、乳牛の絞りたて生というこだわりの一品であったので、生乳の臭いにむせ返りそうになっているだけである。
「‥‥茶ぁしばかへんか?」
誰しも関わり合いになりたくない状態のビスタに、頭もちょいワル番長なので気にせずに声をかけるミゲール。
「いいわよ。満足させてくれるのならね‥‥」
ミルク臭いまま、ミゲールのアメ車に乗り込むビスタ。
「ちょっと待ったぁ! ヒーロー番長、もとい番長型ヒーロー、ここに参上!」
だが、そこへ鷹飼源八朗(fa5082)がヒーローのごとく颯爽と現れてしまう。
鷹飼は青のユニフォームに、背番号はもちろん3。白の長ランを羽織って、ライオンのかぶりものをしている。そう、ヒーローは颯爽と現れたなら、正体がバレないまま颯爽と去らねばならないのだ。
「婦女子をたぶらかすこのちょい悪党め! この番長型ヒーローが許さないぞ、とぅ!」
ムダにひねりを加えた伸身一回転で、すたっと着地する鷹飼。おかげで、ビスタの寄せるヒーローへのアツい視線が‥‥いや、様子がおかしい。
「正義のヒーローってコトは、性技のヒーローってコトよね?」
そう、視線が鷹飼の股間に突き刺さっていたのだ。鷹飼が不測の事態に備えて装着したファウルカップを、勘違いしているようだ。
「えっ? いや、その‥‥出直してきまーす!」
むしろ悪の女幹部の色香に負けたかのように、逃げ出してしまう鷹飼。おかげで、ビスタの収まりがつかない。怒りの矛先は、傍らのミゲールに向かった。
「大体、ちょいワルって何よ! 突き抜けて極悪になりなさいよ‥‥性的な意味で!」
「いや、それはちょっと‥‥ぐはっ!」
口答えしようとするミゲールだったが、ビスタにはたかれてしまう。その衝撃で、ポチっと何やらボタンが押されてしまった。
「あっ、ああん! こっ、これよ! すご‥‥こんなのはじめて!」
ギシギシと上下に揺れる中、ビスタが歓喜の声を上げる。とはいっても、車がホッピングしているだけだったが。
ミゲールのアメ車、護摩壇を装備するというアホな改造もしているが、普通の改造もしてある。なので、ハイドロによるホッピングも可能なのだ。
「そんな腰の入っていない上下運動ではダメだ! 俺が見本を見せてやる」
そのまま流せばいいものを、Zebra(fa3503)が入ってきたことで、余計に話がややこしくなってしまう。この際、Zebraが白ウサギの着ぐるみを着ていることを見ないことにしても、だ。
「いいか、よく見てろ! こうだ、こう腰を入れて激しく上下させるんだ、杵を!」
ウサギだけに臼と杵を運び込ませると、餅をつきはじめるZebra。だが、着ぐるみが動きのジャマをして、言うほどパワフルではない。
「心配無用‥‥バニー番長にかかれば、この程度のハンデは‥‥」
おもむろに着ぐるみを脱ぎ捨てると、中から出てきたのはマッチョな兄貴の肉体と、それを包む白バニースーツであった。っつーか、男性陣は巨体のマッチョしかいないのか? という話だが、今はそれどころではない。
「フハハ‥‥餅がつぶれアンパンのようだ!」
奇声を上げながら、必死に餅をつく見本を見せるZebra。だが、ビスタは見ていなかった。いつの間にか、ビスタの隣にブラウネ・スターン(fa4611)が乗り込んでいたからだ。
「許せない。ゆっさゆっさ揺らしながらも、形を保っている若さが許せない!」
「あん!」
ビスタの胸を鷲づかみにしながら、睨みつけるブラウネ。ブラウネの顔をよく見れば、レモンパックをしていたようだが、ホッピングですべて落ちてしまっている。
そう、ブラウネは悲しき三十路番長である──もっとも、ホンモノの番長は不惑番長であるが──どう手入れをしたところで、十代の若さという激流の前にはすべてが飲み込まれてしまうのである。
「ああ、ホントに若さがうらやましい! かくなる上は十代の生皮を剥いで、若さを取り戻すわ! これもちょっとしたリハビリよね‥‥って、ちょっと!」
物騒なコトを言うブラウネだったが、ビスタが負けじと足を絡ませてきたことで事態は一変する。
「ほら? 若さを吸い取るんでしょ? 吸い取るっていったら、アソコからしかないわよねー?」
「くっ、これも十代ゆえの向こう見ずか‥‥ああっ!」
よく分からない方向に向かう女性陣の映像は暗転し、再び男臭くかいるに戻る。かいるのトコにはヒーロー番長の鷹飼が来ていた。逃げ出したゆえに、説教されている。
「しっかり食べないから、そんな小さい身体になってしまうんだぞ!」
「押忍! しっかり喰うであります!」
鷹飼も184cmの見事な肉体美であったが、197cmをモンスター級の筋肉で包むかいるの前では、どうしても小ぶりに見えてしまう。
「とはいえ、まだまだ二十歳だろ? 番長の身体が膨らんできたのも三十くらいから。そう、男の身体は三十からが勝負だ!」
ブラウネとビスタの争いとは真逆で、こちらは三十路のよさを力説するかいる。
「よし、リハビリ食だ。当然、プロテインのがば飲み! 筋肉にはたんぱく質だ!」
そこで、再び映像がビスタとブラウネに戻る。ようやくホッピングは止まっていたものの、かいるがたんぱく質と言ったのがいけなかったか、二人して黒い棒状のモノを口の中で前後させている。
ブチッ! 赤い液体が飛び散るッ! ただでさえ放送事故状態なのに、さらなる放送事故か!?
いや、それと同時に黄色い液体も飛び散っていた。そう、赤い液体はケチャップ、黄色い液体はマスタードである。ようするに、フランクフルトを噛み切っただけの話である。
「ホントにこれで若返るのかな‥‥?」
「戻るわよ! こうなるんでしょ?」
疑問を抱くブラウネに、自分の胸を触らせるビスタ。こうなると、三十路番長は何も言い返せない。
「このハリ‥‥許せないハズなのに、なんかイイかもと思う自分が‥‥」
「そうそう、それそれ!」
ブラウネの洗脳が進むのをいいことに、スキンシップをはかるビスタ。だが、その前では、相変わらずZebraが餅をついていた。餅肌を披露しながら。
いや、餅肌といっても黒くカビたカッチカチに干からびた餅状態ではあるが、そんなコトはどうでもいい。今やZebraはもはやバニーガールからはほど遠い、黒い紐状の何かで覆っているだけという大変キケンなブラックバニーへと変貌していたのだ。
「なんだ、きな粉が用意されてるじゃないか!」
そのZebraがつき終わった餅を持ってかいると鷹飼の間に割って入ると、プロテインの中にぶちまけてしまう。
「のわっ! 炭水化物を入れるとはナニゴトだっ!?」
鷹飼がキレかけるが、かいるが止めに入る。
「食事! 休養! 鍛錬! いいか、見てろよ!」
プロテインまみれになったZebraの餅を、次々と口に放り込むかいる。
「まさか‥‥アレをやるというのか!?」
「し、知っているのかZebraーッ!?」
「うむ、古代中国において‥‥あ‥‥」
驚愕する鷹飼にZebraが解説しようとしたところへ、解説するよりも早く現象が起こってしまっていた。
「ふんぬっ!」
ブチッ! 気合い一閃、かいるの血管が破れたわけではない。きつく巻かれたサラシがちぎれ飛んだのだ。
「‥‥ふっ、俺もまだまだだな。サラシが吹き飛ぶんじゃなく、むしろ腹そのものが張り裂けるようじゃなくちゃな‥‥」
ショックを受けて落ち込むかいるに、Zebraがやさしく声をかけた。
「さっき言っただろ? 食事、休養、鍛錬って。まだ食事が終わっただけだ。まだ休養と鍛錬が残っている。鍛錬が終わってから、考えよう」
「そうだ、ヒーローは決してあきらめない! ダメなら、何度でも食事、休養、鍛錬すればいいじゃないか!」
さらに、鷹飼までもがZebraに乗っかってかいるを励ます。これには、かいる大号泣で感動である。
「ありがとう‥‥ありがとう‥‥俺、やるよ! じゃあ、休養だな‥‥zzz」
言うやいなや、すぐに大の字に寝てしまうかいる。遅れて、Zebraと鷹飼も横になる。
「ほーら、満月が俺たちを祝福しているぜ‥‥」
「ホントだ‥‥」
バニー番長らしく、お月さまでシメるZebraであった。
が、番組自体がシメられたわけではない。まだ、ビスタとブラウネが残っているのだ。しかも、ミゲールもようやく目を覚ましていたのだ。
「いーちまーい、にーまい。ぐへへへへ‥‥」
なぜそうなっているのか途中が抜けているので分からないが、番町皿屋敷番長となったミゲールが皿の枚数を数えるでなく、ビスタとブラウネのミゲールの服を脱がしながら数えていた。
「ぐへへ‥‥あと二枚で全部‥‥うっ! あと二枚足りへんかった‥‥ガクッ」
「何がガクッよ! 足りさせればいいじゃない!」
途中で限界を迎えるミゲールだったが、ビスタはまったく満足しておらずになじる始末だ。
「しょせん、ちょいワル番長はちょいエロまでが限界ね!」
「三十路番長クラスになると、もっとしっとりねっちょりしてないと、物足りないのよ!」
ビスタとブラウネの二人がかりで、ボロカス言われるミゲール。
こうしてミゲールがリハビリが必要なくらい追い込まれたところで、番組は無事終了していくのであった。