芸人プロレスごっこ狂4アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/17〜09/19
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●本文
プロレスごっこ──それだけなら素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。
基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小モノを使ったボケをベースとする、一人芝居に一発芸、リアクション芸にヨゴレと、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
そんな建前はさておき、プロレスどころか本来の意味でのプロレスごっこからも遠くなっているが、それはそれなのである。だって、みんな狂ってるんだから。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ狂選手権のスタッフが集められていた。いつもとは明らかに違った空気のスタッフ。その前に、こちらは自然体のプロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「ふう、まさか軽い気持ちではじめた特別ルールが‥‥」
「それはもういいですって‥‥ぐはっ!」
決まり文句で入ってきたえらい人に、遮りながらスタッフの一人が駆け寄る。無論、そんなコトをすれば鉄パイプで制裁であるが、今回ばかりはそれでも構わないという意気込みである。
「えらい人の見せ場をなんだと思っている! 正座して聞くくらいの心意気はないのか?」
一喝するえらい人だったが、それでもスタッフはしつこく食い下がる。
「ホントにそれどころじゃないんですってば! たったの4回目にして、芸人プロレスごっこ狂決定戦なんですよね? 今回は」
「ん? そうだが、それが何か?」
フツーに答えるえらい人に、ついに本題を切り出すことにしたスタッフ。
「打ち切りで最終回って噂なんですけど‥‥ぐぼはっ!」
だが、待っていたのはやはり鉄パイプでのお仕置きであった。
「んなワケないだろ! えらい人は永久に不滅だろ? だったら、プロレスごっこも不滅じゃねーか!」
「‥‥ですよね!」
「ああ、次回は特別企画のグランドチャンピオン大会をやるつもりだしな! というわけで、おまえらの勝手な心配ゴトもなくなったところで、まとめてかかってこいや〜!」
打ち切りの心配こそなくなったものの、結局はえらい人に撃退されるだけのスタッフたち。
このように第三期恒例の儀式を経て、プロレスごっこ狂決定戦がいよいよはじまるのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・無観客のスタジオにリングを設置し、そこで収録を行います。
・試合にあたり、特にテーマはありません。試合形式とかにもこだわることなく、優勝目指して突き進めばOKです。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・今回、ランキングによるプロレスごっこ狂決が決定します。
・今回の1位が自動的にプロレスごっこ狂になるわけですが、その上でさらに決着しないとか、全員が優勝してしまうとか‥‥何が起こっても怒らない人募集です。
ない人募集なのです。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我をするようでは、プロレスごっこ狂にはなれません。
過去の放送のスケジュール(第三期分のみ)
・第1回 09月08日 07:30〜
・第2回 09月11日 07:30〜
・第3回 09月14日 07:00〜
●リプレイ本文
「最終回緊急取材!! えらい人は何をもってムチャ玉キングをすえたのか!? というわけで、僕は今えらい人の控え室の前まで来ています‥‥コンコン、失礼しまーす」
ドギャーン! ヨシュア・ルーン(fa3577)がドアを開けると、よく分からないSEを背負ったえらい人が、不自然な関節の角度で足を組んでイスに座っていた。
「では、早速質問をしたいと思います‥‥あなたにとって、プロレスごっことは何ですか?」
「ああん? 聞きたかったら、かかってこんかい!」
ヨシュアの質問を受けて、えらい人がいきなり仁王立ちになる。スタッフへの儀式がごとく、かかってこいと構えるのみである。
「あ、あの‥‥渡した台本どおりに‥‥ぐぼはっ!」
なんとか言い返すヨシュアであったが、さっくり鉄パイプでの制裁を受ける。
「えらい人を思い通りに動かせると思ったら大間違いだッ!」
「うぎゃーす!」
老若男女一切手抜きなしのえらい人、お子ちゃまだろうと容赦はしない。
『ムチャキングと二代目プロレスごっこ王ことプロレスごっこ玉の二冠、ムチャ玉キングの羽曳野ハツ子(fa1032)選手! 初代プロレスごっこ王の半分の二を譲り渡し、プロレスごっこ十になってしまったマリアーノ・ファリアス(fa2539)選手! 野に咲く可憐な花も今や神、プロレスごっこ神こと阿野次のもじ(fa3092)選手! 勝手に名乗っただけだけど、暫定統一プロレスごっこ王こと伊藤達朗(fa5367)選手!』
一方、スタジオではサトル・エンフィールド(fa2824)の実況で何の問題もなく番組がはじまっていた。
『さあ、4.5階級統一戦となり、プロレスごっこ狂ラストも盛り上がってまいりました! しかーし、今回は終わりではなく、次への種火にすぎません! 聞こえます、聞こえます、無人の観客席からのスタンディングオベーションが。そして、愚弟の断末魔の叫びが!』
前者は確実に空耳だろうが、後者は聞こえていたのであろう。おかげで、サトルのニヤリと歪められた唇が、どうしても元に戻らないでいた。
「玉いじりはもうヤメなのじゃ。せっかくのおもしろい名前なのじゃから、リベンジはなしで玉キングのまま放置プレイじゃのッ! もう護る玉もないコトじゃし、素直にプロレスごっこ狂を狙ってみるのじゃ!」
プロレスごっこ玉からグラビア芸人になったDarkUnicorn(fa3622)が、高らかに宣言する。だが、玉の呪いを受けた羽曳野はそうはいかない。
「ムチャをしっかり蒸してから、殻から身を出し荒くほぐし‥‥ネギと一緒に鍋でさっと炒めて、あとは卵を流し込んでよく混ぜる‥‥はいよっ! ムチャ玉一丁‥‥なわけあるかーっ!」
運び込ませたキッチンセットの前で創作料理『ムチャ玉』を作ってみせようかという羽曳野だったが、ガマンならずに結局ちゃぶ台返しである。
羽曳野がリング下をキッと睨みつけると、DarkUnicornと視線が交錯する。
「プロレス狂とは、プロレスをやって狂うのではなく、プロレスをやっている者を見て狂う者のことを指すのじゃ。つまり、プロレスごっこ狂というのは、今まで一度も欠かすことなくこの番組を見ていた者で、その結果狂ってしまった者。つまり、それはえらい人であるという公式が導き出されるのじゃ! よって、えらい人を倒し、その後を乗っ取った者こそが真のプロレスごっこ狂に相応しいのじゃ!」
だが、DarkUnicornは羽曳野の視線に気づくことなく、走り去っていってしまう。
代わりに、亡者のような目をしたマリアーノがフラフラと入ってくる。
「高く跳ぶためにハ、一旦姿勢を低くせねばならないモノ。プロレスごっこ十への降格は、今回一気に頂点へ手を伸ばすための布石! すべて計算通リ!」
そこまでは元気よく言ってみせるマリアーノだったが、途端にトーンが落ちる。
「それはそうト、王といえばキングであり、キングといえば十三のはずなのダケド‥‥十と二に別れちゃったヨ? どう考えても、一足りないヨ? チーズ‥‥じゃない、余った一はどこへ消えた?」
どう探せば見つかるものかのかさっぱり分からないが、その『一』を求めてリング上を彷徨うマリアーノ。
その様子に、羽曳野が何かに気づきはじめる。そして、それを後押しするかのように阿野次が現れる。
「探そうぜ! ごっこボール! んー、龍玉も二〜七はそろったんだけど、くしくもあと『一』を残すのみだね。『球』を二つに割ると『王』と『求』となる‥‥すなわち、王を求めるとなるのだ、ふはははは!」
高笑いを上げると、マリアーノ同様にリング上で星一つの龍玉を探しはじめる阿野次。玉と球の違いはさておき、こちらの方がしっかりと物として存在するので探しやすいことは確かだろうが、だからといってリングに転がっていることはない。
そんな間にも羽曳野が答えに近づきかけるが、さらに伊藤までもがリングに上がってくる。こちらは、なぜか全身白塗りという異様ないでたちで。まあ、プロレスごっこでは保護色くらいのものだが。
「暫定統一王座なんぞ、しょせん暫定。暫定なくらいなら、いっそ王を越えるしかないんや。すなわち、皇や! 玉が王を求めるなら、皇は白い王やな!」
さすがに素っ裸にボディペインティングでは放送できないので、ちゃんと白いタイツを着用した上で、出ている部分を白く塗っている。
とはいえ、伊藤に探し物は特にないので、リング上でひたすらカメラに映ろうとしているだけではあるが、それでも羽曳野が答えにたどり着くのはもはや時間の問題であった。
「だけどもだけど、せっかく入ってきたのに頭から洗い流す〜」
だが、突如現れた百鬼レイ(fa4361)が羽曳野の頭をシェイクしてしまい、閃こうとしていた何かを振り落としてしまう。
「だって、みなさんプロレスごっこ狂決定戦いう名に相応しい方々じゃないですか? さしあたり自分はムチャ玉キングさまに比べたら羽虫程度の存在です。でもそんなの関係ねぇ‥‥ので、きっちり蹴落としていきますよ!」
羽曳野が目を回してダウンする中、百鬼が高々と手を上げていた。だが、映像は無情にもえらい人の控え室に切り替えられる。
「えらい人の番組は最高です。ますますガンバッテください‥‥こちらは中2男子から。打たれはじめたらやめられない。サインください‥‥こちらは小5男子から」
えらい人がDarkUnicornをイスとして腰をかけ、ヨシュアの読むえらい人を讃える手紙を聞いていた。無論、手紙は捏造である。
しかし、このちょっとの間にDarkUnicornの身に何があったのか? それは分からないが、DarkUnicornのプロレスごっこ狂への道は無残にも断たれてしまったようだ。
ドカッ! 一方、スタジオの空席となった解説席に悠然と腰を下ろしたのは、探すのにも飽きた阿野次だった。
「うーん‥‥ここの席、前から気になってたのよね」
『あ、どうぞ。永遠に空席の予定でしたから』
花瓶をどかしながら、平然と受け入れるサトル。ヨシュアのことは、もはやお星さまとも思っていないようだ。
「神か‥‥」
『どうかしました?』
「元々、野に咲く可憐な花は風に吹かれて人をさわやかにする、そんな一服な清涼剤な生き方ができればいいな☆ っていう思いで名乗っていたのだよ? 人に夢と書くから儚いのに、神に夢ってどうすればいいのかな?」
『狂ってしまえばいいんではないでしょうか?』
まさか、これでプロレスごっこ狂決定か!? と思いきや、阿野次は普通に野に咲く可憐な花に戻っただけであった。
そのため、リング上での戦いはまだまだつづいていく。
「ボクにとってのオッパッピーは、『オ』のれの『パ』ワーで『ビ』クトリィー! なのです。ピがビになってる? そんなものは、右から左へ受け‥‥ぐぼはっ!」
勝手なコトを言っていた百鬼の股間に、ようやく復帰した羽曳野の膝が突き刺さっていた。
「ビのてんてん2個がつぶれて、まるにくっついちゃうってわけね?」
「‥‥ワモセッ! ワモセッ! ハッハッ‥‥」
ワモセッとは、もう1回やってくれということである。新感覚に目覚めて羽曳野になついてしまった百鬼だが、それこそ平然と右から左へ受け流してやるのが、百鬼への礼節というもの。
むしろ、百鬼に洗い流されてしまった何かに、ついに気づいてしまったのである。
「はっ! 玉をつぶして丸くおさめる‥‥すべての元凶の龍玉「二」を叩き割れば、この玉キングとも‥‥!?」
おもむろに龍玉を取り出すと、叩き割ってしまう羽曳野。龍玉をムダに浪費するのが、決定戦の慣わしなのかの? と思いきや、実際に割ってはいない。
そんなに簡単に割れる硬さでもないので、あらかじめ2個用意しておいて割れたと言い張っているだけである。スーパーイリュージョンなだけなのだ。
だが、あまりにちゃんと割ったように見せかけてしまったので、羽曳野はもはやムチャ玉キングではなかった。玉を失ってしまったのだから、ムチャ玉なしキング、略して玉なしキングとなってしまったのである。
やはりプロレスごっこ狂が決まらないので、戦いはまだまだつづく。
と、そこへどう逃げ延びてきたのか、DarkUnicornが走りこんでくる。ヨシュアの姿はないので、無事だったのはDarkUnicornだけのようだ。
「えらい人を倒すのは、やはり至難の業なのじゃ! なれば、えらい人の象徴である『プロレスごっこのリング』に戦いを挑むのじゃ。プロレスごっこのリングを失えば、えらい人の権威も失墜なのじゃ!」
いつの間に用意していたのか、透明な浴槽がクレーンで吊るされていた。中には、大量のローションがこれでもかと注がれている。
「ああ、ローションのせいで手がすべったのじゃ!」
ローションは浴槽の中にしかないのに、レバーを持つ手をわざとらしく滑らせてしまうDarkUnicorn。おかげで、大量のローションがリング上にぶちまけられてしまう。
「白いボディペインティングが溶け出し、白濁液になってもうた! これはもう、完璧な白王、プロレスごっこ皇や! わいの前に皇はなし、わいの後にも皇はなし。わいが初代芸人プロレスごっっこ皇や!」
突然のことに、歓喜にむせぶ伊藤。まあ、誰も目指してはいないので、空前絶後なのは確かである。
「ハァハァ‥‥あった、あったヨ!」
さらに、マリアーノもローションの中から何かを見つけてしまっていた。
『ええっ!?』
あるハズのない『一』を見つけてしまったというのか?
「そうだヨ、Kなら数字じゃないジャン! 十三に一足りないとか心配する必要ないヨ!」
マリアーノがローションの中から取り出した一枚のカード。それは、トランプのキングであった。こうして、マリアーノはプロレスごっこ王からプロレスごっこ十となり、最終的にプロレスごっこKになっていた。
一方、DarkUnicornはリングに挑んだ勝負が決する前に、飛んできたえらい人によってまたどこかへ連れ去られてしまう。
こうして次々と自分が何者かに気づいていく中、自分探しが残っているのが百鬼だけになってしまった。残りものには福があるではないが、プロレスごっこ狂は百鬼で決定か?
と思いきや、百鬼は羽曳野の従順な犬となっていたので、それもなしである。阿野次の勝手エンディングテーマ『恋のシューティングEX』へと移っていってしまう。
こうして新たなプロレスごっこ○○は大量に製造されたものの、肝心のプロレスごっこ狂は誕生しないまま幕を閉じるのであった。
『しかし、だがしかしです。まだ終わりではありません! プロレスごっこは、最悪のケースを想定しても、えらい人は常にその少し斜め上を行きます‥‥が、それでもあえて予想するなら、最終戦はえらい人の後継者を巡ってのものではないでしょーか!? この予想がどうあれ、戦いは非情ではなく非常識につづいていきます。それでは、みなさんご一緒に! プロレスごっこ王! READY! GO!!』
そして、サトルのあおりと共に、最終戦の幕が上がろうとしていた。