鳥に走れムチャ番長アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 10/16〜10/18

●本文

「あの、このとりあえず全部詰め込みましたみたいなタイトルは一体‥‥?」
「ああ、見たとおりなだけだけどね」
 TOMITVの自称スポーツイベント便乗チーム。その中核はこの先輩と後輩だけのわずかに二人だが、いろんな意味で鳥人を目指す『鳥に』なれシリーズや、競馬場疾走企画の『走れ』シリーズ、打たれすぎ養成番組の『ムチャ』キングシリーズ、KKコンビの番長をリスペクトする『番長』シリーズといった、数々の番組を担当していた。
 しかし、これまで若干のコラボはあったものの、ここまで露骨に交じり合うことはなかった。これは一体、何を意味するのか? 普通に考えれば、燃え尽きる前のロウソクのようにしか思えないのだが‥‥。
「そう、見たとおり最終回なわけだな! しかも、一気に全部!」
「えーっ!? 一体、何があったというんですか? 死ぬ前の身辺整理ですか!? 死なないでください、先輩ッ!!」
「死なねーよ! 単に編成上の問題で、一旦終わらせろってさ」
「ムム‥‥なんか陰謀のにおいが!」
「俺たちがそんな大層なモンか? ま、鳥のように舞い、馬車馬のように走り、打たれすぎのようにムチャし‥‥そして、番長のようにしぶとい、と行くか!」
「はいッ!!」
 こうして、いきなり4番組合同最終回がスタートするのであった。

ルール
・全員が番長とかに扮したりしなかったりして、鳥みたいに飛んでみたり、馬みたいに走ってみたりします。何をするのか分からない? そのヘンがムチャなわけですよ、多分。
・一応収録場所は競馬場と野球場を行き来的なコトを考えてますが、別にドコでやっても構いません。
・無冠の帝王ならば、記録よりも記憶に。賞金や賞品はありませんが、最終回にふさわしいムチャをした人には、なにか称号(職業)が贈られることでしょう。
・番長がこれ以上傷だらけになってもいけないので、死んだりケガしたりしないようにムチャしましょう。

事前に用意される小道具、大道具
・大概のものは用意されます。持ち込みも可です。

注意点
・ムチャ=なんでもあり、番長=なんでもあり、馬や鳥=もはや人間ではないではありますが、それでもスタッフがルールブックです。

過去の放送(各最新分のみ)
・鳥になれ3 12月27日 07:00〜
・走れ、人間ども13 07月11日 07:00〜
・ムチャキング15 07月26日 07:00〜
・番長の○度目のリハビリ 09月15日 08:30〜

●今回の参加者

 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa1032 羽曳野ハツ子(26歳・♀・パンダ)
 fa2029 ウィン・フレシェット(11歳・♂・一角獣)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa5412 姫川ミュウ(16歳・♀・猫)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

『最終回らしく、一騎当千のキワモノがそろっちゃいました鳥に走れムチャ番長。本人含め誰も言ってないけど清純派のボクは、おとなしく進行と実況の音声でガマンだね☆』
 姫川ミュウ(fa5412)の音声ではじまった画面には、大手町の新聞社前という『正月のスポーツ番組じゃないよね?』という場所が映し出される。ただし、集っているのがヨゴレどもなので、日付を確認するまでもなくそうでないと分かってしまうのだが。
『どのようなデッドヒートが繰り広げられるのでしょうか? そこで! 視聴者のみなさまの一部分もヒートしてもらっちゃいます!』
 なにが『そこで』なのか分からないが、一人一ネタこなすごとに姫川も一枚ずつ服を脱いでいくという。音声のみなので見えないのが残念ではあるが、画面に映っているヨゴレどもと方向性が違うだけのヨゴレな気はしないでもない。
 そんな姫川の進行の中、画面上にはなぜかカッパが見切れている。必死に隠れようとするカッパに、むしろ寄っていこうとするカメラマンの鶸檜皮(fa2614)。
 無論、ホンモノのカッパが映るわけがないので着ぐるみであるまでは判明したが、さらになぜか漆黒の棺桶が運ばれてきたことにより、鶸のカメラはそちらを向いた。チェダー千田(fa0427)、一安心である。
 え? さりげなくカッパの正体がバレている? チェダーにそんな気遣いは無用。ちゃんとモザイクボードで顔を隠しているから、問題はない。あるけど、ない。
『えっと、白マジックで何か書いてあるね‥‥私は番長。羽ばたいて乱闘で暴れ、放り出される‥‥? 一体、何の‥‥うわっ!』
 ドス! ドス! ドーン! 危険物は密閉とばかりにこれでもかと釘で打ちつけられていた棺桶の蓋が、幾度かの衝撃の後に吹き飛んだ。中から、やはりキケンな野に咲く可憐な花、阿野次のもじ(fa3092)が飛び出してくる。
「完璧な仕事だ、ムチャ王妃‥‥」
 ボソリと呟く阿野次。ホントは蓋をかぶせていただけだったのだが、ムチャ王妃である草壁蛍(fa3072)が手ぬるいと、五寸釘を打ちまくってあげたのである。おかげで阿野次は若干拳を痛がっていたが、そこはハードパンチャーゆえの宿命なのであきらめてもらうしかない。
 それに、阿野次はすぐにも大仕事が待っているのである。つまり、選手宣誓だ。
「選手宣誓! 私はTOMIが好きだ。私はムチャが好きだ。私はスポーツ便乗企画が大好き‥‥ぐぼはっ!」
 宣誓をはじめたかと思ったら、いきなり突き飛ばされていた。羽曳野ハツ子(fa1032)が飛んできたからである。
「一体誰の許しを得て、最終回などとのたまうの?」
「そんなコト、言ってないのだよ!」
「最終回を甘んじて受け入れていれば、同じことでしょーが!」
 まったく会話が噛み合わないまま、拳と拳の応酬になる。まさに漢と漢の戦いであった‥‥女の子だけど。
「‥‥行数を重ねた演説原稿がどさくさで吹き飛ばされるのを観るのは、とてもとても悲しいものだ‥‥ん?」
「はーい、ちょっと待ってねー」
 阿野次が嘆きながらも羽曳野と戦いつづけているところへ、草壁が割って入ってくる。無論、本気で止めるようなヤボなマネはしない。手ぬるいとばかりに、鉄粉テープ付きの金色ボクシンググローブを装着させに来ただけの話である。
「まだ手ぬるい気もするけど‥‥ファイッ!」
「水とムチャがなければ1週間と生きられない私に対し、まだ生きろと言うのね‥‥わかったわ。うぉーっ!」
 問答無用で再開させる草壁に、問答無用で感動する羽曳野。ならば、阿野次も殴り系アイドルとして問答無用で応えないわけにはいかない。
「どっちもがんばれー♪」
 それを、武越ゆか(fa3306)がポンポンを持って応援していた。今でこそプロレスごっこ二を名乗ってはいるが、元々は応援特化型バラドルというチアガールである。目の前に応援できるものがあるならば、応援せずにはいられないのである。
「‥‥はっ! ダメよ、駅伝にはポンポンはダメ。大根じゃなきゃ!」
 ようやくスタート地点が大手町の意味を思い出す武越。肝心のスタートが切られていなかったが、小さなコトは気にしない。だから、大根の応援が許されるのが一校だけというコトも気にしない。
「鳥頭を超え! 馬並みよりも早く! ムチャな肉体を持ち! 揺れる頭脳は番長! まさに究極の生命体、完全生物ッ!」
 そこへ、タイミング良くか運悪くか、ウィン・フレシェット(fa2029)が登場する。無論、ウィンの生まれついた星は後者に決まっている。
「ふー、大根が用意してあってよかったわ‥‥って、ニンジンじゃない!」
 ニンジンを持って戻ってきた武越の目に、ボクサーブリーフ一丁というウィンの姿が飛び込んでくる。腐女子の武越にとって、パンツ一丁の儚げな美少年は大好物であった。無論、腐女子なのでそのまま食したりはしないが。
「ははーん、そういうことだったのね?」
「え? 何が?」
 武越の野獣の瞳に怯えつつ、ついつい聞き返してしまうウィン。ここはスルーしないと身をキケンにさらしてしまうトコである。
「そうよね。ま、初心者にはこれくらいのサイズの方が‥‥って、初心者じゃないッ!?」
 いつの間にか、武越の目の前にはカッパがいた。つまり、あらゆるプレイに熟練したチェダーである。
『わしも若いころには、ワインの瓶を‥‥』
 耐え切れずに、姫川までついつい出てきてしまう。あまりに一連の流れでネタがつづいていたので、結局脱ぐタイミングを逸してしまっていた。なので、辛抱たまらず飛び出てきたところで、服装に問題はない。
「女子のを見て何が楽しいのよ! そんなのフツーじゃない!」
『それもそうだね!』
 だが、怒り心頭の武越。そして、納得してしまう姫川。それ以前にどう考えてもフツーの行為ではなかったが、武越姫川界隈ではフツーのようなので、スルーしておくに限る。
「とにかく! ワインボトルも電マも邪道よ。このネイチャーゆかが、ニンジンのおいしい味わい方を教えてあげるわ!」
『そうだね。フツーだからこそのよさもあるよね? 王道は王道だからこそ王道なんだよね? というわけで、王道のウィンくんを連れてきたよ!』
「え? え?」
 一瞬はチェダーのおかげで助かったウィンだったが、あっさり姫川に連れ戻されてしまっていた。肝心のチェダーもエロガッパからただのカッパに戻って、またいずこかへと去っていってしまっている。
「ダメだ‥‥もう黙ってらんねぇ‥‥」
 ウィンのバックバージンがドキドキするほどのピンチの中、黙ってカメラマンに徹していた鶸が動いた。
「姫川のだったら黙って撮っている気だったが‥‥ウィンのなんか撮りたくもねぇ! よって、ただ今をもってTOMITVを見て育ったすべてのヨゴレに向けて宣言する! モザイク、ムチャ、番長、どのような名であろうとも、すべてのヨゴレに対してヨゴレによる介入を行使する、と!」
 鷹の着ぐるみを装着‥‥という名の獣化をする鶸。さらに、用意していたコンドルに吊るされた体で飛ぶ。
「目標、ムチャさん‥‥コンドルがケツにめり込んどる!」
 せっかくいなくなってくれたチェダーを捕捉すると、突進しようとする鶸。だが、それが果たされることはなかった。
「違うでしょ! コンドル浣腸で鳥姦なんて見たくないわよ!」
 そう、武越の投げたニンジンにより、あっさりと迎撃されてしまったのだ。
「う、うぅ‥‥」
 鶸が気づくと、姫川に馬乗りされていた。見れば、すでにウィンも武越に馬乗りされている。
「フッ‥‥地べたを這いずり回る、こんな人生もいいのかもしんねえな‥‥イタッ!」
 女子に乗られて悟ったようなコトを言ってると、スッと鼻面にニンジンが差し出される。さらに、ピシっと鞭で叩かれる始末である。
「さあ、大根求めて練馬へGO! え? 桜島まで? どんだけ貪欲なのよ!」
「えー、そんなコト言ってないよ。っつーか、本気で挿れる気ー‥‥いたっ!」
 口答えするウィンも叩かれ、よく分からない駅伝のスタートである。つなぐべきたすきなどないが。
 一方、羽曳野と阿野次もよく分からないバトルを繰り広げたままだった。
「くっ‥‥こんなコトをしている場合じゃないのよ。早くムチャキング第5894回『ムチャさん幽体離脱で成層圏突破』の撮影に取りかからないと‥‥はっ! ここははっちーリフトで持ち上げて、そのまま成層圏まで行けっていうコト!?」
 羽曳野にもムチャさんと呼ばれてに、一瞬チェダーカッパがビクっとしたようにも見えたが、遠ざかっていってしまう。代わりに近づいてきたのは、百鬼レイ(fa4361)だった。
「成層圏突破と聞いて、飛んできましたよ? いやー、ちょうど我らが希望の星『ムチャ星』になるためにどうしたらいいのか、悩んでいたところだったんですよねー。そうですよねー、やはり宇宙に飛び出すしかないですよねー‥‥ぐはっ!」
「ええい、ならばお星さまになるがいい!」
 阿野次のパンチが百鬼に炸裂する。そのままキラーンとお星さまに‥‥はなれず、ベシャとアスファルトを舐めることとなる百鬼。当然ながら、打ち上げ失敗である。
「星が‥‥星が見えます‥‥って、見えるってコトはまだ自分が星になれたわけじゃないですよね?」
 チカチカする視界を振りほどこうと必死に首を振るが、そこへやれやれという顔で長瀬匠(fa5416)がやって来る。
「分かってませんね。タイトルはなんでしたか? 『鳥に走れムチャ番長』ですよ。だから、鳥の格好をして棒高跳びを行い、着地するや競馬場を疾走し、例のピッチングマシンで千本ノックを受け、現在の番長並みの奮わない成績で打席を後にすれば‥‥星になれるのです」
「おー! なるほど‥‥ぐぼはっ!」
 思考力がなくなっていたので納得しかけた百鬼に、またも激しい衝撃が襲う。いや、百鬼だけではない。今度は長瀬にもだ。
「分かってないのは、あなたたちよ!」
 草壁の鉄拳制裁だった。
「何度も言うようだけど、手ぬるいのよ! 鳥だからって棒高飛び? 違うでしょ。ムチャキングのピッチングマシンのように、火薬の爆風で飛び上がって鳥のように飛ぶのが正しいんでしょ!」
「そ、そうでした‥‥」
「まったくそのとおりです‥‥勘違いしてました」
 打たれすぎとなった頭に、実にすんなりと染み込んできてしまう草壁の言葉。
「じゃ、まずはこのスポーツドリンクで水分をしっかり補給して、すぐに飛ばされなさい!」
「サー、イエッサー‥‥ぐぼはっ!」
「えらい人のことかーー!!」
 よく分からない理由で、いきなり羽曳野にも殴られる百鬼と長瀬。
「いや、えらい人のスタッフのことなんじゃ‥‥けど、とにかくスタッフも感謝の極みだろう」
 阿野次がめずらしく正論を言うが、最終的によく分からないことを言っている。
 そんな間にも、草壁が百鬼と長瀬を起こすべく、ドボドボとスポーツドリンクをかけている。無論、組長基準のスポーツドリンクであるコトは言うまでもない。つまり、引火可能性大のアルコール度数の高い酒である。
「大分あったまってきたようだな‥‥そろそろ、真打の出番のようだ‥‥」
 鳥になれというのでキッチリ大トリを飾るべく、今の今まで息を潜めていたチェダーがついに始動する。何度も見切れてはいたが、そのためだけにカッパになって隠れつづけていたのである。だが、ついに出番だ。
 ドカーン! だが、チェダーが走り込んだ先は、ちょうど百鬼と長瀬の爆破地点であった。まともにチェダーが映らないまま、一瞬でモザイク3体のできあがりである。
「ところで、本当に幽体離脱してるかどうかって、どうやって確認するのかしら?」
 羽曳野が呟いたところで、舞台は変わって鶴見中継所である。別に中継はせずに、武越騎乗のウィン号と姫川騎乗の鶸号が通過するだけではあるが‥‥武越はたすきリレーをしないと気が済まなかった。
「たすきがないわね。えーと、身につけてるものは‥‥パンツだけかぁ。じゃ、これで」
『そうそう。で、ボクサーブリーフの下はなんなのかな? あー、レザー装備ね!』
 姫川がウィンのパンツをずり下げて、平然と感想を述べる。
 ウィンはすでに涙目であるが、女性陣はまったく気にしない。あまりに残酷な光景に、同じ男性の鶸はカメラを向けることができないでいたが。
「レザーって言うのかな? スキン? あ、位置的に別のモノ想像しちゃうか」
『あー、なめしてないからスキン? じゃ、舐めそうか‥‥もとい、なめそうか!』
「待って! どうせなら、鶸さんにやらせてあげて。さあ、ファイト、だよ!」
 そんなことを思い出したかのように応援されてもと困る鶸というところで、再び大手町である。
「トリはトリでも、ヤキトリってオチね‥‥ガクッ」
 ちょうど力尽きるチェダーが映し出された。
「ボクも今ソコに行くよ! カムパネルラぁぁぁ‥‥ガクッ」
「奮わない成績以前に、出場してませんでしたね‥‥ガクッ」
 そして、百鬼と長瀬も続々と力尽きていった。
「うん。じゃあ、あなたたちは戦いに戻って!」
 それを見届けた草壁が満足気にうなずくと、平然と言い放った。おかしなテンションになっているので、羽曳野と阿野次はなおもバトル続行である。
「うおー、感動したッ! おまえら、全員ムチャキングだッ!」
 その様子を眺めていた先輩が、泣きながら叫ぶ。
「それはちょっと‥‥安売りのしすぎなのでは‥‥」
 後輩の言葉どおり、今回の出演者10名全員がムチャキングとなってなんのありがたみもなくなったところで、番組自体も終わっていくのであった。