ダジャレ彼岸リフォームアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 10/18〜10/20

●本文

登場人物
・ディレクターに昇進して2年近く経つ男(以下、ディレクター)
・そのディレクターの上司(以下、上司A)
・上司Aのさらに上司(以下、上司B)
・ダジャレに命を賭けるムダにアツい上司(以下、ムダにアツい上司)
・その部下(以下、部下)

 TOMITVのこのディレクターは、最近(でもなくなったが)マイホームを建てたばかりだった。しかし、上司Aの提案によってメチャクチャなリフォームをされてしまう。それが、すべての発端であった。
 その後、上司Aの屋敷にメチャクチャなリフォームをしたり、上司Bの愛車を改造してみたり、ディレクター宅でフットサルをしてみたり、上司Aの屋敷で三角ベースをしてみたり、再びディレクター宅にメチャクチャなリフォームをしてみたり、そのディレクター宅を海に沈めて人工漁礁としてみたり、新たなディレクター宅で全裸だるまさんがころんだをしてみたり、PSF連動でラグビーをしてみたり、上司Aの屋敷に雪を撒いて遊んだり、またまたディレクター宅で長距離走をしてみたり、ディレクター宅をヤンキー高校に見立てて入学式をしてみたり、ディレクター宅で番長シリーズの番宣も兼ねてヤンキー高校のHRをしてみたり。
 そんなわけで、すでに13回も無意味なだけの破壊工作をしてきているのであった。

 そして、ついに最後の聖戦がはじまる──

「うわっ! 何やってるんですか!?」
 ディレクターがふと顔を上げると、そこには満面の笑みを浮かべた上司Aの顔が至近距離で待ち構えていた。
「んー? そりゃ、決まってるじゃないか‥‥リフォームのお時間だよ!」
「あー、あとちょっとでこのままフェードアウトできると思ってたのに‥‥やるんですか?」
 ガックリ肩を落とすディレクター。なぜかは知らないが、10月20日を乗り切ればもう大丈夫という確信を持っていたようだ。
「そりゃ、やるさ! おまえのためを思ってこそのリフォームだからな!」
 そこへ上司Bもやって来ると、さらに勝手なコトを言う。これには、ディレクターも怒り再燃である。
「リフォーム‥‥って、ただの破壊工作じゃないですかっ!?」
「番組上はそうなのかもしれないが‥‥また壊すには、そのためにまず建て直さないといけないからなぁ。番組と番組の間に、ちゃんと建て直してやってるじゃないか!」
「壊すために建ててるんじゃないですよ! 我が一家が住むために建ててるんですってば! 大体、完全な建て直しはリフォームとは‥‥ブツブツ」」
 体育座りで膝をかかえながら、完全にうつろな目になるディレクター。そこへ、ダジャレに命を賭けろシリーズのムダにアツい上司が、部下を引き連れてやってくる。
「‥‥そうだ、そこの処理フォーム式はそうしろ。ムム、やっぱ処理方式にリフォームをねじ込むのはムリフォームがあるな!」
 ムダにアツい上司としては、通りすがりを装って何気ない会話にリフォームを折り込んだつもりだったが、やはりムリがあった。というか、ディレクターの怒りに油を注いだだけであった。
「てめえ、ふざけんなよ!」
 ディレクターよりもムダにアツい上司の方が役職は上であるが、キレてしまえばもはや関係ない。
「貴様、下克上とはナニゴトじゃあ!」
「ぐはっ! 勘弁してください‥‥」
 そう言いながらも、ディレクターではなく部下をボコボコにするムダにアツい上司。ディレクターの方が心配になってしまい、怒りも忘れて割って入る。
「黙れ! どうせ勝っても負けても、これで終わりなんじゃあ!」
「いや、勝ち負けなんてないですから‥‥」
 ムダにアツいだけあって、もうどうにもならない。ディレクターはさっくりあきらめることにした。別番組だけあって、非情なまでにドライである。
「まあ、このリフォームを最後にもう建て直さないで済むと思うと‥‥部下くんも犬死にではないということですかねー?」
 もはや、自分の心配しかしなくなるディレクター。とはいえ、上司AとBが黙っているわけもない。
「そうだな。もう建て直さないで済むと思うと、気がラクだわ」
「ちょ、リフォームだけして終わりって、これからどこに住めば‥‥」
 ディレクターが慌てるが、すでに『リフォーム=壊される』という思考になってしまっていることに気づけない。ま、今回もリフォームという名の下に壊されるのであるが。
「ああ、彼岸までチームに連絡しておいたから、心置きなくちゃんと墓の下で眠れ。ちゃんと次の彼岸には墓参りに行ってやるぞ」
「来年じゃないですか! って、問題はそこじゃなくて‥‥」
 ようやく暑さ寒さも彼岸までシリーズの名前が出てきたところで、さっそく3番組合同の最終回がスタートするのであった。

ルール
・ダジャレを言いながら、そのダジャレにあった家の部分を破壊していきます。
・収録場所はディレクター宅、およびその周辺です。
・別に『布団が吹っ飛んだ』だからといって、布団を吹き飛ばさずに引きちぎっても構いませんし、布団とは関係なく窓ガラスを割って回っても構いません。
・金もらったところで、今さら使うヒマないだろ? という政治的配慮により、賞金、賞品は一切なしです。

事前に用意される小道具、大道具
・大概のものは用意されます。持ち込みも可です。

注意点
・死んでも構いませんが、最終回がお蔵入りになってしまうのもアレなので、やはりホドホドにしておきましょう。

過去の放送(各最新分のみ)
・ダジャレに命を懸け軸 5月15日 08:00〜
・暑さ熱さも大暑まで 7月23日 07:00〜
・リフォームで番長 4月28日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0748 ビスタ・メーベルナッハ(15歳・♀・狐)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2529 常盤 躑躅(37歳・♂・パンダ)
 fa2850 琥竜(26歳・♂・トカゲ)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3739 レイリン・ホンフゥ(15歳・♀・猿)
 fa4878 ドワーフ太田(30歳・♂・犬)
 fa5394 高柳 徹平(20歳・♂・犬)
 fa5602 樋口 愛(26歳・♂・竜)

●リプレイ本文

「ふふ、やってるのぉ‥‥」
 上司Aが、眼下を見つめながら思わず笑ってしまう。ディレクター宅の見える高台に、七人の男たちが集結していたのだ。
「やってますね、ははは‥‥」
 そして、一番の当事者であるディレクターも乾いた笑いを上げながら、こうなったらトコトンやれとヤケになっている。
「は〜い、こちらは台所から中継していま〜す」
 その期待に応えるべく、まずは月見里神楽(fa2122)が何のリポーターかよく分からないけれど、台所へ突撃リポートしていた。
「おや、すでに先客がいますね〜。ちょっとお話をうかがってみましょ〜」
「彼岸といえばテンプル。打たれすぎ製造のテンプルじゃなくて、寺のほうな。テラは打たれすぎだけど。だから、テンプラ油対応のキッチンは‥‥のわっ!」
 棚の上に背伸びして何かを載せていた樋口愛(fa5602)が、突然肩を叩かれて飛び上がってしまう。
「脅かすなよ! せっかく載せたぼたもちが、七夕前に落ちてしまったらどうするんだ!? 七夕に棚ぼたと行かなくなっちゃうじゃないか!」
「えと‥‥来年まで待つ気なのかな?」
 月見里が当然の疑問を口にするが、樋口はすでに次のダジャレに移行していた。
「こうなったら‥‥落花生をラッカー塗装だ!」
「ゲホゲホ‥‥別に室内を汚しても構いませんけど、神楽たちの肺が汚れてしまうので、外でやってくださいよぉ〜」
 月見里が思わずむせる中、樋口はその中の一語にだけ反応してしまっていた。
「ヨゴレ‥‥る?」
「ドーン! フハハハハ‥‥俺の名はバイオレットバイオレンス! パンダ覆面だけをかぶった男だ!」
 ヨゴレきっかけのように、常盤躑躅(fa2529)が入ってくる。覆面以外ホントに何も身につけていないが、パンダ獣化しているので着ぐるみと言い張ればOKだ。
「えー! 覆面以外にもかぶっている‥‥ハッ! 彼岸、それは季節の皮り目。すなわち、皮の境目ということを身をもって教えてくれようと!?」
 樋口が勝手なコトを言い出すが、常盤も勝手にやりたい放題なので問題はない。
「おうおうおう、俺の鉄砲魚が鉄砲を撃つぞ!」
「ちゃんと鱗を落として、皮をはいで‥‥ハッ! 彼岸と此岸を分けるのが三途の川なら、カセイやシンセイの宇宙領域とカントン省の地球上を分けるのは臍下三寸の皮というわけか!」
 さっきから一体何を閃いているのだというカンジの樋口だが、月見里は下世話な男連中を一切無視し、台所ゆえにちゃんと料理を進めていた。
「秋の味覚、シメジメシを炊いちゃうよ♪ シメジご飯とか言っちゃダメだよ♪」
 月見里が炊飯ジャーのコンセントを差し込もうとすると、そこにはすでに先客の姿があった。
「コンセントを、壊せんと!」
 むき出しの銅線を手首に巻いたパイロ・シルヴァン(fa1772)である。そして、その銅線につながったプラグを、悠然とコンセントに差し込む。
「ビビビ‥‥ああ、こりがほぐれていくね‥‥ビビビ‥‥って、死んじゃうよ!」
 コンセントよりも先に自分が壊れてしまうというキケンにようやく気づき、慌てて引き抜こうとするパイロ、だが、痺れてしまって、身体が思うように動かない。
「ビビビ‥‥ああ‥‥ビビビ‥‥助けてーッ!」
「えーと、こういうときは‥‥秋刀魚の刀ダンス☆ サンマを秋刀魚、ブレードを刀って、漢字で書くのがポイントさ☆」
 パイロを助けようとあれこれ考えた挙句、動転してエクササイズブレードでダイエットをはじめてしまう月見里。その様子に、常盤が気づく。
「その後ろ姿、後背位でしてえ〜」
 月見里で欲情したのではない。なんかガイコツが透けて見えるカンジのパイロで欲情したのである。
「さあ‥‥シュビビビ‥‥あれ? なんか痺れるな‥‥ビビビ‥‥ナイスなイスに座っていいっスか? 座位っスよ‥‥ビビビ‥‥」
 言っているコトは相変わらずだったが、パイロ同様に常盤もピカピカ光り出した‥‥ような気がする。
 とまあ、相変わらずの男性陣を無視して、月見里がエクササイズからクッキングに戻っていた。
「香りマツタケ、味シメジ‥‥シメジは終わったから、マツタケを‥‥でも、高いんだよね。このマツタケなんて、一本一万するんだって。マッ、タケ〜‥‥おや、こんなトコに安物が‥‥」
 場の空気に飲まれてしまったか、キッと樋口を見る月見里。
「確かにカントン省産だけど‥‥中国産をなんでも粗悪品と思ってもらっちゃ困る! 膿も出るお得な‥‥ぐほっ!」
「腐ってるじゃない!」
 月見里の蹴りが樋口に決まったところで、舞台は変わって屋外である。庭というか、庭ですらない家の裏手では、レイリン・ホンフゥ(fa3739)が花を植えて回っていた。
「日陰に咲くノムさ‥‥じゃないアル、月見草にもスポットを当ててあげないとダメダメアルよ。って、彼岸花だけど。ん? ダジャレと全然関係ない? 分かってるアルヨ」
 そう、リフォームとダジャレというONは家の中で華々しくやっていればよいのである。だが、パシフィックというべき彼岸までは、外回りの日々である。こうやって土まみれで必死に根を張らせていっているからこそ‥‥って、壁に穴あけてそこに挿していっているだけだが。
「穴あけ? ならば、この股間のドリルを‥‥ムム、いない‥‥」
 どうやって復帰できたのかは分からぬが、常盤がすっ飛んでくる。だが、そこにはすでにレイリンの姿はなかった。その前に、ビスタ・メーベルナッハ(fa0748)にピューと引っ張っていかれてしまっていたからだ。
 レイリンがビスタに連れて行かれた先は風呂場、バスルームであった。
「バスを吹っ飛ばす! というわけで、早く脱いで!」
「ええっ! 死んじゃうアルヨ‥‥」
 口答えするレイリンに構わず、服を脱がしていくビスタ。
「そのヘンは大丈夫。ただちょっと、裸体が全国放送に乗っちゃうだけだから」
「ダメアルヨ! そりゃ、死んだらおしまいアルけど‥‥キレイな身体のままでいたいアル!」
 必死の抵抗を見せるレイリン。そこへ、女性陣の入浴タイムと聞きつけた常盤と樋口がかっ飛んでくる。
「どんな膜をも一撃必殺‥‥この股間のドリルを‥‥」
「破戒僧の彼岸の悲願を叶えるべく、格差社会の殻を破壊しに‥‥」
 相変わらず勝手なコトを言っていたが、扉を開けたときにはすでにガレキの山となっていた。彼らは一足遅かったのだ。
「こうなったら仕方がない。そのドリルで皮を‥‥」
「フッ‥‥お前を信じるな! お前を信じない俺を信じろ! いや、俺は俺が信じられなくなってきた‥‥アッー!」
 残された男子2名がどうなったのかは分からないが、舞台は変わって寝室である。
「ちぃーす! おいら琥竜(fa2850)ってんだ。よろしくぅ〜!」
 琥竜がカメラ目線でキメていたところへ、バタンとドアが開け放たれる。
「寝床はねーどこ?」
 半裸のレイリンを背負ったビスタが飛び込んでくる。まさかこのままおいしい目に会えるのか? と一瞬思った琥竜であるが、すぐにそうでないコトに気づく。
「えーと‥‥ここは床の間、え〜男の間? だから女人は禁制ー‥‥ぐぼはっ!」
 床の間を指しながら言った琥竜であったが、あっさり吹き飛ばされる。暴走ビスタを、簡単に止められるハズがないのだ。おかげで、障子に頭から突っ込んで大穴を開けてしまっている。
「おぉ〜、障子が不祥事なことに‥‥って、そっちの方が不祥事じゃんか!?」
 琥竜が必死にダジャレを言っている隙に、すでにビスタはレイリンをベッドの上に寝かせていた。
「くっ、どうせ混ぜてもらえないなら‥‥先生! 先生ー! 今日は無礼講だそうですよーッ!」
 ドゴーン! 突如として壁が打ち抜かれる。そこから姿を現したのは、ドワーフ太田(fa4878)であった。
「Break outじゃと! うむ、ちゃんとやっておるぞ。無礼講とBreak outで苦しいだなんて、少しも思っとらんぞ!」
 聞いてもいないコトに言い訳しつつ、解体屋御用達の巨大ハンマーを振り回す太田。
「ところでこの廊下、壊してもいいじゃろうか?」
「できれば、階段を。でも怪談はこわ〜い。ワイ談に切り替えだぁ‥‥ぐぼはっ!」
 そう答えた琥竜であったが、ワイ談を通り越してヒワイな行為に及ぼうとしたため、ビスタこそ受け入れ体勢があったものの、あっさりレイリンに迎撃される。
「むぅ、この床板は実に不愉快た!」
 そして、その太田の一言で全員床の下に真っ逆さまなのであった。
「コンセントを‥‥ビビビ‥‥壊せんと‥‥ビビビ‥‥」
 一方、再びの台所である。コンセントではなくパイロ自身が壊れたままであったが、月見里はそれ以外のコトを気にしていた。
「シメジ、マツタケと来て‥‥あとは何があったかな? クリ? そう、クリがあったね☆」
 別に秋の食材にこだわる意味はないが、こだわりの職人になってしまっているので止められない。
「クリクリ坊主が栗食って、クリクリ舞いを繰り返し、クルリと庫裏に繰り込んだ‥‥有名な早口言葉だけど‥‥ぐぼはっ!」
「なぜリスが出てこない!? クリときたら、リスだろうが!」
 いきなり突き飛ばされる月見里。すっかり漢の顔になった樋口と常盤が戻ってくる。漢の顔になっているので、女子どもにも容赦はない。
「答えは‥‥これじゃあ!」
 帰ってくるはずのない返事が、あさっての方向からしてくる。ドッカーン! と同時に、ブルドーザーが突っ込んできた
「エロカッコイイ俺様が、傍観者を決め込んでいたからだゼ!」
 中から、相変わらず表面積の少ないコスチュームのTyrantess(fa3596)が降りてくる。
「おっと、こうしている場合じゃねえ。また会おう!」
 そして、また乗り込むといずこかへと去っていってしまう。
「ビビビ‥‥あー、死ぬかと思ったよ‥‥」
 その隙に、ようやくパイロが電気地獄から脱出する。自分でやったコトとはいえ、この行き場のない怒りをどうすればいいのか? そりゃ、ディレクター宅にぶつけるに決まっている。
「もーこうなったら、土台が、どー大爆発!!」
 基礎部分にはレイリンにビスタ、琥竜、太田が落ち込んでしまっているが、そんなコトはパイロに知る由もない。
「出られない? いっそ、土台も壊してみるというのはどうだい?」
 もちろん、太田たちもそんなことになっているとは露知らぬ。だから、こんな軽口も言えるというものである。
「畳ってイグサ? いい草でできてんのぉ〜、ほうほう‥‥ぐぼはっ!」
 チュドーン! 下から畳をいじっていた琥竜など目もくれず、爆発はすべてをなぎ倒した。
「ああ‥‥我が家が‥‥」
 高台から見下ろしていたディレクターの膝が、ガックリと折れる。
「まだだ‥‥まだ、終わらんよ‥‥」
「‥‥え?」
 上司Aの言葉に、耳を疑うディレクター。まさか、家の心配をしてくれる日が来るなんて! だが、家がまだ終わらないと言っていたわけではない。
「ケホケホ‥‥」
 ビスタとレイリンが互いの肩を支えあいながら、アフロになって出てくる。無論、口から吐くのは白い煙である。
 もっとも、それすらもマシな方である。鍛え方が足ら〜ん! というように無傷の太田は放っておくにしても、琥竜は犬神家状態でガレキの山に突き刺さっている。
 一方、パイロがいたからか比較的無事だった台所からも、愛する樋口を従えた常盤が飛び出してくる。
「こうなったら、こっちも爆破だ! おやまがふっとんだ、おやまあ‥‥ポチっとな」
 果たして、小山というか、スタッフ勢ぞろいの高台が吹き飛んだ。
「まだって‥‥これですか!?」
「うむ‥‥さらばだ!」
 地すべりに、次々と飲み込まれていく。ディレクターがもはやこれまでと思ったとき、パッと手が握られた。ブルドーザーのTyrantessが助けに来ていたのである。
「やー、どうなることかと思ったゼ!」
「あ、ありがとう!」
 だが、助けてくれる人が善人とは限らない。Tyrantessが、自分で言った言葉を考え込んでしまう。
「やー、どうなる‥‥ヤー、ドうなる‥‥ヤード唸る‥‥庭唸る‥‥そうか! 全面庭にすべく、ブルドーザーが唸りを上げるってわけだな! よし、すぐ戻るぞ!」
「もーやめてー!」
 ディレクターの悲痛な叫びもむなしく、平然と引き返すTyrantess。
「こりゃ、十日以内に倒壊だな!」
 一方、高台の崩れる様を見届けた太田は、家の様子を見てボソリと呟いていた。すでに半壊で十日ももちそうにないが、そこへラテン語の歌が聞こえてくる。
『 怒りの日は彼の日なり
  ダビデとシビラの予言の如く
  世界を灰燼に帰せしめん
  審判者が来たりまして
  全てを厳かに裁く時
  人々はどれほど恐れおののくのか♪ 』
 キャタピラでアスファルトの道路を破壊しながら、高柳徹平(fa5394)の戦車がやって来たのである。
「ウチを撃っちまおう、イエー!!」
 ドーン! ズドーン! 平然と砲撃がはじまる。ここは日本だから特殊効果だが、特効の火薬でも半壊の家は衝撃に耐えられない。
 結局、ディレクターを乗せたTyrantessが戻ってきたころには、すっかり更地にガレキの山という状態に変わっていた。
 そして、高柳が『俺がトドメを刺しました、えっへん』とばかりに、ふんぞり返って立っていた。
「これが本当のヤードなしってね。ああ、この場合は宿も庭も両方なくなるんだけど」
 Tyrantessがディレクターの背中を叩くが、そのまま力なく崩れ落ちてしまう。
 そして、出場者10名全員は戦車とブルドーザーに箱乗りして帰っていった。ディレクターがたたずむのを残して。ディレクターは呆然と‥‥いつまでも、いつまでも‥‥。