第5回プロレスごっこ王アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/30〜04/01

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、モノマネあり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

「あーっ! 気づいたら、前回から随分間が空いてしまっているじゃないか!?」
「え? そんな、レギュラー番組でもなんでもないんだから、結構いいペースで放映されていると思うんですけど。人気番組と言っていいくらいじゃないですか?」
 突然叫び声を上げるD。ADとしては、適当にフォローらしきものを入れるしかない。
「バカヤロウ!! 週一のペースでやって、気づいたらレギュラーになっちゃってたというオチを期待していたんだよ!」
「オチって‥‥さすがに上層部が気づくんじゃ?」
「うるせえ! 口答えすんな! とにかく、第5回をさっさとやるぞ!」
 理不尽なDの言い分はさておき、第5回芸人プロレスごっこ王選手権の企画がスタートした。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・プロレスごっこは安全第一です。怪我はもちろん、ちょっと血が出ただけでもNGです。

過去の放送スケジュール:
・第1回 2月16日 07:00〜 (第64回として放送)
・第2回 2月28日 23:30〜 (第72回として放送)
・第3回 3月10日 18:00〜 (第80回として放送)
・第4回 3月16日 18:30〜

●今回の参加者

 fa0048 上月 一夜 (23歳・♂・狼)
 fa0376 伊集院・帝(38歳・♂・虎)
 fa2333 三条院・棟篤(18歳・♂・ハムスター)
 fa2634 霧ヶ峰・まひ流(18歳・♀・ハムスター)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)

●リプレイ本文

『さあ、はじまりました。このエキサイティングバイクな、第96回こと第5回プロレスごっこ王選手権。エキサイティングマイクが壊れて、何も聞けないばかりの大熱気をみなさんに伝えますは、サトル・エンフィールド(fa2824)です。そして、他人のプロデュースする番組の解説は天下一品、プロデューサーのスモーキー巻(fa3211)さんの解説でお送りします!』
『よろしくお願いします』
 解説なのに、なぜかギターを持っての登場はスモーキー。すでにギターを掻き鳴らしているのだが、その音は一切拾われていない。
『スモーキーさんは弾き語り解説に挑戦する予定でしたが、先程申し上げましたとおり、エキサイティングマイクが壊れてしまっているので、画だけでお楽しみください』
 実況と解説の音声は拾っていることを、深く考えてはいけない。そもそも、エキサイティングなマイクが何なのか謎であるが。
『さあ、佐渡川ススム(fa3134)選手が早速入って参りました!』
 エアギターの如く狂乱の演奏を行うスモーキーを尻目に、佐渡川が颯爽と入場してくる。
「この俺が、プロレスごっこ王史上最高と言われた、あの第93回ギャラクシアンウォーズの再現を、まとめて見せてやるぜ!!」
 聞いたことのない大会名を出して宣言する佐渡川が、ムダにカッコをつけてトップロープ越しにジャンプする。しかもそのとき、なぜか猿のマスクをかぶりながら。一応、リングインと同時に猿マスクに変身という画が欲しかったようだが。
『あーっと、大方の予想どおり自爆だぁ!』
 期待に違うことなく、マスクをかぶるのに失敗して、頭から受身も取れずに落下する佐渡川。首が不自然な角度に曲がっている気がするが、気のせいではない。
「‥‥ワン、ツー!」
 レフェリーの伊集院帝(fa0376)が、するどくカウントをとりはじめる。
『あーっと、レフェリー両手を交差、試合を止めたッ! 試合開始前にも関わらず、早くもTKO決着だーッ! まさに、何しに出てきたんだ状態でありますっ!』
『佐渡川、ムチャしやがって‥‥』
 ようやくギターの音声が入ってないことに気づいたのか、はたまた単に飽きたのか、スモーキーが放送席に戻ってくる。
 スタッフに担がれて運び出される佐渡川と入れ替わるように、こちらは最初からきっちりマスクをかぶった三条院棟篤(fa2333)が入ってくる。
『食欲覆面Xが帰ってきたッ! どこへ行っていたンだッ、食欲覆面Xッッ! 僕たちは、君を待っていたッッッ! 三条院棟篤の登場だーーッ!』
『どうやら、北極かどこかへ行っていたようですよ!?』
 巨大な氷とカキ氷マシンを見て、分かりやすい連想をするスモーキー。
『食欲覆面Xが、性懲りもなく挑戦であります。過去、巨大ケーキ、アツアツおでんとことごとく敗北を喫している。ああそれでも、ああそれなのに、ダイナマイト四国のごとき不屈の精神のみで挑みます。今回はカキ氷ッ!』
『カキ氷を急いで食べるときは、頭を温かくすると頭が痛くなりにくいんだ。もっとも、このクソ暑い季節にそこまでやりたくはないだろうけどね』
『いえ、まだ初春では‥‥』
「季節外れと言うなかれ! 寒すぎるとカキ氷が有利すぎるし、暑いとカキ氷に溶けて勝ち逃げされかねない。今こそ、ベストバウトが生まれる時!」
 放送席のやりとりに黙っていられず、三条院が放送席に向かってアピールする。
「分かる、分かるよー」
 すでにカキ氷を手にした伊集院レフェリーが、その横でうんうんとうなずいている。
『あーっと、レフェリーは明らかに食欲覆面X寄りだ! カキ氷にとっては、レフェリーも敵のハンデキャップマッチとなってしまうのかっ!?』
「ファイッ!」
 伊集院レフェリーの合図で、第二試合がはじまる。佐渡川の試合を第一試合と言っていいかは、甚だ疑問の残るところではあったが。
『震えるぞスプーンのハンド! 凍りつくほどタン! 刻むぞシロップのビート! メタルシルバーオーヴァードライヴ!』
 カッコよく言えばこうなるのだろうが、現実は氷の部分と溶けた部分を交互に口に運ぶという、なんとも甘ったれた戦法をとっているだけである。
『これはやや好き嫌いが別れるところだね。おかげで場内大ブーイングだよ』
 言うまでもないが、観客などいないのでブーイングなど起きようはずもない。だが、そんなヌルい戦いを名レフェリングで盛り上げるべく、伊集院が動いた。巨大な氷をカキ氷マシンにかけては、わんこそばの如く補充していく。
『あーっと、レフェリーは実はカキ氷寄りだったッ! 三条院さんには冷たい、まさに氷の処刑台だーッ!』
 そして処刑は執行され、体温をすっかり奪われた三条院がスタッフに担がれて運び出されていく。先程と攻守を入れ替わるようにして、今度は佐渡川が入ってくる。もちろん、首は不自然に曲がったままである。
「プロレスごっこよ、私は帰ってきた!」
『なんと! 先程TKOを食らったハズの‥‥また自爆だぁ!』
 伊集院がカウントをとるまでもなく、スタッフに担がれて運び出される佐渡川。
『でも、今ので首が元に戻ったかもしれませんよ』
 だが、スモーキーの言葉どおりにはならず、反対の方向に不自然に曲がっただけであった。
『‥‥つづいては、古河甚五郎(fa3135)選手による、ガムテープ職人vs白い絨毯をお送りします』
『なるほど、相手がマットならぬマットとはね。お客さんから『あの言葉』が聞こえてきそうだね』
 ホーガンばりに耳に手を当て、観客の声を聞くマネをするスモーキー。何度も言うが、観客などいない。『たたんじまえ』と言わせたいスモーキーだが、言える人間がそもそもいないのである。
「ノー、ノー!」
 とそこで、伊集院が古河の持ち込もうとしたセット用清掃具を止める。絨毯がよくて、清掃具がダメな理由がよく分からないが、とにかく凶器認定である。
「OK、OK!」
 ならばと、やむなく取り出したガムテープが、あっさりとOKされる。ガムテープがよくて、清掃具がダメな理由がよく分からないが、とにかく前フリである。
「ファイッ!」
 凶器チェックだけ済ますと、後は投げっぱなしの伊集院である。早速、古河と絨毯の戦いがはじまる。
「えー、絨毯表面の汚れを、さっとガムテを巻いた手で撫でていきます。コロコロのあれと同じ原理ですね」
 もちろん、粘着力が違うので、絨毯の毛ごとごっそり持っていってしまっているが。
「ああ! 中まで汚れが入っちゃってますよ!」
 ハイヒールを取り出すと、叩いて汚れを浮かす古河。
「なんだか、マニア様から『俺も踏んで!』との声援が」
 今度は、古河がホーガンばりに耳に手を当て、観客の声を聞くマネをする。汚れを浮かすというより、ヨゴレを浮かび上がらせようという魂胆である。
『むしろ、僕が踏まれたいッ!』
『12歳でその趣味だと、20歳のころにやれる趣味が残ってなくなりますよ』
「ヨゴレ‥‥もとい、汚れも浮きましたし、一気にガムテで剥ぎ取ります! ああでも、幅広の物にガムテ巻いて転がすといっても、自分の身体しかありません‥‥」
 わざとらしく言ったところで、首が不自然に曲がったままの佐渡川が三度登場してくる。
「まだだ、まだ終わらんよ!」
 だが確実に衰弱していく体力では、ロープを飛び越えることなどできるはずもなかった。
『あーっと、佐渡川選手がまた運ばれていきます! しかし、どうなるのでしょう? 台本では、身体中ガムテで巻いて、佐渡川さんに芸者遊びのように帯に見立てたガムテをくるくる引っ張ってもらい、あーれーとなって絨毯の上を転がってめでたし、めでたしとなるハズだったのですが‥‥』
『さあ、ここからのアドリブに注目ですよ!』
 本来は『よいではないか!』の合いの手を入れる役だった伊集院が、仕方なしガムテを巻いてあげる。さすがにネタバレしている帯あーれーまではやらないが。
「なんとか汚れは落ちました!」
 そう言って、勝ちを確信してレフェリーを見る古河。だが、伊集院は非情の宣告をする。
「両者ノックアウト!」
 見れば、古河を芯にガムテープ、絨毯の海苔巻き状態になってしまっている。両者動けずでドロー、というわけだ。
「あたたかい‥‥」
『健闘の古河選手、やはりスタッフに担がれて退場していきます。
『しかし、絨毯に包まれてあたたかいとは、先程の三条院選手に分けてあげたかったですねぇ』
 そこで一瞬間ができる。本来ならば、懲りずに佐渡川が出てくるころである。
『‥‥さすがに佐渡川選手はもう出て来れない模様です。さあ、ドンドンいきましょう。霧ヶ峰まひ流(fa2634)選手による、関西系女子高生vs数学参考書の一戦です!』
『数学かぁ‥‥正直、僕も苦手だったね。誰がやっても答えが同じになる、それが性にあわなかったのさ』
 霧ヶ峰が、数学の問題集片手に、パジャマ姿で現れる。むさ苦しかったリング上が、一気に華やぐ。
「ほな、ぱぱっと今日の分片付けてまうかー」
『あーっと、言葉とは裏腹、いきなりペンが止まったーッ!』
『気持ちはどうあれ、できないものはできないですからねぇ』
「ギブアップ?」
 早くも伊集院が確認をとるが、霧ヶ峰としてはさすがにここまで早く負けを認めるわけにはいかない。
「ふっ、さすがは幾多の生徒をリングに沈めてきた数学、そう簡単には勝たせてくれへんわぁ。せやけど、うちは一味違うでッ!」
『気分転換のマンガだぁッ!』
『これは危険ですよ。一度こうなったら、なかなか戻れません』
 パジャマ姿ということも手伝って、すっかりリラックスして寝転がりながらマンガを読みふける霧ヶ峰。
『‥‥おや!? 次の試合のハズの上月一夜(fa0048)選手、ノートパソコンを持っての乱入です! 一体、何をしようというのかっ!?』
 女子高生の部屋にストーカー男乱入か!? というような画だが、そんなワケはない。ある意味、もっとヒドかったかもしれないが。
『どうやら、気分転換にウェブ巡りを勧めてるんじゃないですかねぇ‥‥って、エロサイトを見せてやがる!』
「なんつーもん、見せとるんじゃ、ボケェ!」
 恥じらいながらもブチギレる霧ヶ峰。たまらず伊集院が凶器認定でノートパソコンを取り上げる。
『やはり、伊集院レフェリーとしては、小学生の娘に自分の出ている番組を見せられないのは問題ですからねぇ‥‥と言っている僕自身12歳なのですが、深くは考えないでおきましょう!』
「違う、違う。前フリだって!」
 そんな中、必死の言い訳でノートパソコンを取り戻す上月。
『なし崩し的に、上月選手による対ブラクラ、ブラウザクラッシャー戦がはじまろうとしています!』
 そこへ、『FINAL ROUND』と書かれたプラカードを持って上がる霧ヶ峰。
『自分の試合をうやむやにされたのに、ラウンドガールをやっていますッ!』
『涙ぐましいですねぇ‥‥ある意味、数学との戦いをうまく誤魔化せたと思っているのかもしれませんが‥‥』
 霧ヶ峰がリングを降り、上月がノートパソコンに向きあう。
『しかし、ブラクラってのはなかなか厄介でね。僕もすでに今月二度ほど‥‥おっと、どうやって誘導されたかは秘密だよ』
『いや、先程のでエロサイトだってバレバレじゃ? しかし、地味すぎて、何が何だか放送席からはさっぱりなのですが‥‥』
『そんなこともあろうかと、放送席のモニタにも映るようにしておきました』
 スモーキーがさりげなく自爆するが、用意のよさでなんとか誤魔化す。
『‥‥グロ画像キターッ! 精神的ブラクラです。これ以上は放送不可能! 没収試合ですッ!』
『いや、もう最初からモザイクだらけで、見てる人なんだか分からないと思うんですけどね』
 観客はいなくとも騒然とする中、佐渡川がなぜか自転車をキコキコこいでの登場である。もちろん、首は不自然に曲がっているままだ。
「俺、もう終わりなのかなぁ?」
『バカ野郎、まだはじまってもいねーよ! と言いたいところですが、試合は一度たりともはじまらなくても、番組はお別れの時間です。ごきげんよう、さようなら!』