第64回プロレスごっこ王アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや易
報酬 0.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/16〜02/18

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、モノマネあり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
 これまでごくごく一部では静かなブームではあったのだが、ついに公共の電波で流れる日がやって来たのだ。
 だが──
「大変です! 出場予定者が仕出し弁当に当たって、全員入院してしまいました!」
「なにっ! ベタな展開だな‥‥いや、だが一大事だ!」
 駆け込んできたADに、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフ全員が血相を変える。
「‥‥うーむ、こうなったら急遽若手を呼んで、なんとかするしかあるまい」
「でも、レスラーvsピラニア入り水槽程度ならムチャな若手ならなんてことはないだろうが、軟体レスラーvsボストンバッグあたりになると、他にできるヤツはおらんだろ?」
「ましてや、病人vs重病人の、喀血を血で洗う戦いなんて名人芸は‥‥」
 思わず、全員が腕を組んでうなってしまう。
「いや、悩んでいる時間はない! 台本込みで若手をかき集めるしかない! すぐに募集するんだ!」
 こうして、急遽ネタ見せの場に飢える若手芸人たちに、芸人プロレスごっこ王の場が開放されることとなったのだ。

 プロレスごっこは安全第一です。怪我はもちろん、ちょっと血が出ただけでもNGです。

●今回の参加者

 fa0330 大道寺イザベラ(15歳・♀・兎)
 fa0928 舞腹 旨井蔵(33歳・♂・豚)
 fa1453 御堂 陣(24歳・♂・鷹)
 fa2123 ブルース・ガロン(28歳・♂・蝙蝠)
 fa2333 三条院・棟篤(18歳・♂・ハムスター)
 fa2612 相川 聖子(30歳・♀・鷹)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)

●リプレイ本文

『さあ、はじまりました、第64回芸人プロレスごっこ王選手権。過去63回に何があったかは不明ですが、新進気鋭の注目株、サトル・エンフィールド(fa2824)の実況でお送りします』
 サトルの実況がスタジオ内にも響く中、小柄で恰幅のよいマスクマンがリングに向かっていく。
『すべてが謎のマスクマンゆえの食欲覆面X、ただその正体が三条院・棟篤(fa2333)であることしか分かっていません』
 さりげなく正体がばらされるが、ごっこに正体も何もない。
 ついで、巨大なウェディングケーキが運ばれてくる。その花道の横には、なぜか布団で寝ている御堂陣(fa1453)がいるのだが、前フリなので一切触れられない。
「このケーキ風情が、かかってこんかい!」
『おっと、ゴングが鳴る前に食欲覆面Xが突っかけていった!』
 いきなり、ケーキに頭から突っ込む三条院。
『食べ物を粗末にして、いきなりPTAを敵に回したっ! いや、違う。食べています。しかし、大食い、早食いでも結局はPTAを敵に回してしまう〜ッ!』
 だが、そのままでは息がつづかず、普通にナイフとフォークを取り出して食べようとする三条院。が、レフェリーがその凶器にカウントを取りはじめる。
『あー、食欲覆面Xの反則負け! しかし、ゴングが打ち鳴らされる中、やめないッ!』
『完食だ! ウェディングケーキの死亡確認! これにて大往生間違いなしであります』
 しかし、本当に大往生しそうなのは三条院の腹であるのは言うまでもない。
『さあ、次の試合のグルメレポーター、舞腹旨井蔵(fa0928)が入ってきました』
 舞腹が上半身裸で自慢の三段腹を揺すりながら踊るは、本人のみにご存知ウマイさんダンスだ。
『レフェリーに促されても、ムダに時間をかけて入場しております。ついつい尺を考えて行動してしまう芸人にはできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ〜!』
 ただでさえ止まらない汗が滝のようにしたたり、全身がキラキラと輝いて見える。まさに脂の宝石箱である。
『一方、対戦相手は親子丼でありますが、しかしこれは‥‥』
 舞腹に対していたのは、普通サイズの丼であった。
『先程のケーキに比べ、あまりに小さい親子丼‥‥おっと、先程試合を終えた三条院さんが解説に駆けつけてくれました‥‥どう見ますか、三条院さん』
『僕のが凶器やったわけで、箸も凶器になるんちゃいますか』
 果たして、舞腹の箸が没収されていた。
『さあ、いきなり苦しくなった舞腹選手‥‥抜き手だーっ!』
 もはや手で食べるしかないと手を突っ込んだ舞腹だったが、すぐさま手を押さえて悶絶する。
『ケーキとは違う、俺は熱いんだと主張しております親子丼! ただの黄金色の宝石箱ではありません!』
 舞腹はリング下に降りると、近くにあった水槽に手を突っ込んで冷やす。
『えー、この水槽は台本によると、ブルース・ガロン(fa2123)選手と戦うはずだったのですが‥‥これでは、100回の腕立てよりも1回の打ち合わせの意味がなくなりそうだ!』
 サトルの解説により、ブルースのお笑いのハードルが上がってしまった。お笑い初挑戦のテナー歌手としては、もはや苦笑しかない。
『あー、ここで舞腹選手にリングアウトが宣告されました』
 変わって布団がリングに運び込まれる。
『ここで、先程から花道脇で寝ていた御堂選手が布団ごとリングに運ばれていきます。対する目覚まし時計選手はスヌーズを備えた上、先程標準電波を受信し、体調は万全です』
 ジリリリ‥‥早速、目覚ましが鳴る。
 と、布団の中から手が伸びたかと思うと、目覚ましを止めた。
『ありえなーい! ただ普通に止めました。しかし、スヌーズはここからしつこい!』
 御堂は今度は起き上がると、ごっこには必要以上の大技を繰り出した。
『おーっと、ここでジャーマンスープレックスが出たっ! ブリッジがムダにキレイなアーチを描いております』
 毎朝の時計とのスパーリングは伊達じゃないと内心思いながら、再び布団に戻る御堂。そして今一度、スヌーズが作動する。
 今度はムクっと起き上がると、ストンピングを雨嵐と落としていく。だが、目覚まし時計はそれに耐え切れなかった。
『さー、壊れた壊れた。台本にはないぞ、アドリブでどうこなす!?』
 サトルのフリともいえる実況を受けたが、御堂は固まってしまっている。
「キ、キレ‥‥コワレてないですよ」
 しばしの後、カメラ前でそう指を振ってみせる御堂。結局、無効試合となった。
 つづいて、相川聖子(fa2612)とワンピースが入ってくる。
『さあ、ゴングが鳴りました‥‥おや、またゴングが打ち鳴らされました。レフェリーの両手が交差されてます‥‥これはどういうことですか?』
『この体格差では、ワンピースが危ないというジャッジであろう‥‥』
 試合がまだ先のモヒカン(fa2944)が、解説席に来ていた。
『実行委員会で協議されているようですが‥‥はい、続行ですか』
『その謎の実行委員会はどこに?』
 モヒカンのツッコミは完全にスルーし、サトルが試合続行を宣言する。それを受けて、相川がワンピースを着はじめる。
『おーっと、これはワンピースの固め技です』
 相川は最後の仕上げに背中のボタンを留めにかかる。だが、ビリーっという豪快な音を立てて、縫い目から一気に裂けてしまう。
『なんということだ‥‥ワンピース真っ二つ! 目の前で残酷ショーが繰り広げられてしまった! 今思えば、レフェリーの裁定は正しかった。しかも、ワンピースは自前であります!』
 入れ替わっては大道寺イザベラ(fa0330)、赤いエナメルのハイレグにピンヒール。相川とは違った意味でのピチピチ衣装。無論、手には鞭だ。
『さあ、大道寺様vsADであります』
「女王様とお呼び! この薄汚い豚が」
 堂々と鞭を振るう大道寺。
『あの鞭は、凶器では?』
 先程箸で反則負けを喫した舞腹が指摘する。同じく三条院もその横でうなずいている。
『実行委員会によると、大道寺様の鞭はもはや身体の一部なので、反則ではありません!』
 誰に確認することもなく、サトルが一気に実況していく。
『大道寺様、ADを場外に引きずり下ろします』
 大道寺は、近くにあった水槽にADの顔を突っ込んだ。
『あーっと、水責めだ! またもブルース選手の対戦相手の水槽だッ! これでは、100回のスクワットよりも1回の打ち合わせの意味がなくなりそうだ!』
 またまたハードルを上げられたブルースは、もはや頭を抱えるしかなかった。
「さあ、お舐め!」
 水槽から引きずり上げると、ADの顔に足を差し出す大道寺。
『段々と早朝にふさわしくない妖しい空気になってイク〜っ! あまり大きい画だと問題がありそうなので、ここからはワイプで、画面右下の画でご覧ください』
 未だ大道寺のADへの責めがつづく中、さっきの今で水槽とブルースがリングに上がる。
『実質、本日3試合目となる水槽選手。それに対し、ブルース選手がどう挑みますか』
 だからといって、ブルースとて今さら組み立てを変えるわけにはいかない。きっちりとチョップ、ストンピングと技を仕かける。
『これは一方的だ。ブルース選手、フォールに行く!』
 だが、そこで体勢が入れ替わって水槽が上になった。となれば、水は落下するもの。
『黒い毒霧だ! いつの間にかタコまで入っていた〜』
 そのままタコがフォールし、ブルースでも水槽でもなく、タコの勝利となった。
『しかし、オーソドックスなスタイルで安定感さえ感じられました。とても初挑戦には思えません!』
 最後に登場したのは、小学生男子の服装をし、マッチョな身体にランドセルがはち切れんばかりのモヒカンであった。すべて違った意味だが、ピチピチ系の多い日ではある。
 そのランドセルから、縄跳びの縄が出てくる。
『いえ、凶器ではありません。対戦相手です。自分のランドセルの中に潜んでいるとは、モヒカン選手も思いもしなかったことでしょう!』
 早速、縄跳びをはじめるモヒカン。だが、見た目上明らかだが、ランドセルが邪魔でうまく跳べない。
「このランドセルがっ!」
 ランドセルを投げ捨て、ニーを落とし、再び縄跳びに入るモヒカン。だが、それでも二重跳びで引っかかってしまう。
「この紐がっ!」
 縄を叩きつけ、エルボーを落とす。しかし、ニーではなくエルボーなのがいけなかった。そのまま縄に絡まってしまう。
『モヒカン選手から絡まりにいってるようにしか見えませんが、縄の一方的な攻撃! ぐいぐい締め上げていきます』
 とそこへ、大道寺が入ってきた。
『おーっと、ワイプの中で戦っていたはずの大道寺様、いつの間にかリングに復帰です。これはどうしたことか?』
『やはり、縛りに納得いかなかったんじゃ?』
 戦っていたはずのADが、いつの間にか解説席に来ていた。
『おや? 縄を逆にほどいていますが、これは‥‥あーっ、荒縄を取り出しました。縄に納得がいっていなかった模様です!』
『鍛え抜かれた筋肉には、やはり荒縄の跡がよく似合うという判断かと』
「いや、俺の贅肉の方が食い込みがいいぞ!」
「だったら、僕のケーキで膨らんだ腹の方が!」
 そこに、舞腹と三条院も殺到する。
『もはやリングは阿鼻叫喚の‥‥あーっと、試合の途中ですが、生放送でもないのに時間が来てしまいました。さようなら!』