春のプロレスごっこSP05アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/09〜04/11

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、モノマネあり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。
「年度の変わり目、特番シーズンなわけだが‥‥」
 いよいよプロレスごっこの特番が組まれるのか? プロレスごっこが市民権を得るのか? スタッフ一同に、期待に満ちた緊張が走る。
「そして、子どもたちは春休みだ。そこで、だ。プロレスごっこ王を、毎朝流しつづける。朝起きたらプロレスごっこ。春休み中このリズムで生活してもらい、世の子どもたちをプロレスごっこで洗脳するのだ!!」
「サー! イエッサー!」
 よく分からないノリだが、早速春のプロレスごっこスペシャル5日目の収録がスタートした。
「しかし、5日目にもなると、何がおもしろくて何がおもしろくないのか分からない‥‥全部おもしろく感じる‥‥」
「ある種、ランナーズハイだよな‥‥」
 お子様方よりも先に、収録スタッフの方が洗脳完了のようである。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・プロレスごっこは安全第一です。怪我はもちろん、ちょっと血が出ただけでもNGです。

過去の通常放送のスケジュール:
・第1回 2月16日 07:00〜 (第64回として放送)
・第2回 2月28日 23:30〜 (第72回として放送)
・第3回 3月10日 18:00〜 (第80回として放送)
・第4回 3月16日 18:30〜
・第5回 3月30日 07:00〜

過去の特番放送のスケジュール:
・春SP01 4月05日 07:00〜
・春SP02 4月06日 07:00〜
・春SP03 4月07日 07:00〜
・春SP04 4月08日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa0892 河辺野・一(20歳・♂・猿)
 fa1385 リネット・ハウンド(25歳・♀・狼)
 fa1453 御堂 陣(24歳・♂・鷹)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2807 天城 静真(23歳・♂・一角獣)
 fa3294 (10歳・♀・ハムスター)
 fa3308 ヴァールハイト・S(27歳・♂・竜)

●リプレイ本文

『ああ、ついにこの日がやって来てしまった‥‥5日間にも及んだプロレスごっこ王選手権・春のスペシャルも、今日で千秋楽。泣いても笑ってもコレで最後! だったら、大笑いして帰ってくれッ!』
 天城静真(fa2807)の実況で、長かった春のプロレスごっこSPの最終日がスタートした。
『早くも、リング上にはファミレスセットが運び込まれているぅーッ! 本日の一発目は、河辺野一(fa0892)選手がコーヒーと千日戦争だッ!‥‥って、戦う前から千日戦争って決めつけていいのか?』
 天城が自分の実況に素朴な疑問を抱く中、ラウンドガールの槇島色(fa0868)がハイレグワンピースの上からドレスエプロンという姿で『第一試合』と書かれたプラカードを持ってリングに上がろうとする。しかし、ドレスエプロンでハイレグワンピースが隠れてしまうので、一見しただけだと裸エプロンにしか見えない。
 素朴な疑問も実況すらも忘れて、思わずぽかーんと口を開けて見入ってしまう天城。だが、レフェリーのパイロ・シルヴァン(fa1772)は違った。選手でもなんでもないラウンドガールの槇島を止めると、凶器確認のボディチェックを行いはじめる。
『パイロ、 おそろしい子ッ! 末おそろしい11歳だッ! しかし、子どもは平然とこういうコトできてズリーよなー‥‥』
 思わず愚痴という形で、実況に引き戻される天城。そんな中、ようやく主役である河辺野が入場してくる。
「あー、ここのファミレスのセットって、コーヒーがおかわり自由だったなー」
 分かりやすい状況説明セリフを吐きながら、セットのイスに座る河辺野。
『さあ、まだイヤな顔一つしていないパイロレフェリーがコーヒーを運んで‥‥試合開始だぁッ!』
「なにぃっ!? お、おまえは‥‥」
 ブラックコーヒーに大仰に驚いてみせる河辺野。だが、戦い方はただ河辺野がひたすらにコーヒーを飲み干しつづけるのみである。
 やがて、クリーム、砂糖の投入を開始する河辺野。飽きてきたら味を変えていくのは、この手の定番戦術である。
『追い返そうとするどころか、ファミレス側も戦力総動員で迎え撃つ! 膠着状態とはいえ、決してまったりしているわけではなーいッ!
 もはや一々厨房と往復するのもダルいので、わんこそば状態で待ち構えているパイロ。しかも、ドリップマシンの前には槇島が待機し、こちらはバケツリレー状態である。
『‥‥本当に千日戦争になりかねないので、この間に次の試合がサックリとスタートだッ!』
 いつの間にか着替えていた槇島が、今度はパッツンパッツンの体操着にブルマ姿でラウンドガールを務める。そして案の定、パイロのボディチェックである。
『あーっと、またしてもパイロのボディチェック! 11歳にして、早くもセクハラオヤジ状態ッ! このままでは、末はタシーロかミラーマンかッ!?』
 一方、この間に河辺野がペースアップをしている。
「お互いのパワーが完全に対等では、千日戦争に陥るのみ。だが、その均衡は今崩れ去った!」
 しかし、すぐに槇島が戻ってきて均衡は取り戻される。そんな中、リング上には鉄棒が運び込まれ、半袖半ズボンの学校指定の体操着姿という葵(fa3294)が入場してくる。この体操着は完全な私物らしく、胸と背中には『1−A 葵』とでっかく書いてあるのがマニア心をくすぐらずにはいられない。
『あーっと、パイロのヤローがここでもボディチェックだーッ! 相手が中一では条例違反のところだが、その相手が小学生ならいいのかッ? チクショーっ!』
 もはや完全にエロ私怨状態の天城の実況の中、葵が手にしたシルクハットをポンと一叩きすると、白いハチマキが飛び出してくる。一応マジシャンであることをさりげなくアピールだが、特に意味はない。
『さあ、葵選手の対戦相手は積年のライバル鉄棒だぁッ! しかし、なぜのぼり棒ではないのかッ!? 縦と横の違いだけじゃねーか、今からでも遅くないッ!』
「って、ええー!?」
 見れば、のぼり棒でこそなかったものの、やたらと高いところに鉄棒がある。小柄な葵には、どんなにがんばっても届きそうもない。
「ああ、スマン、スマン。それは俺のだ。首を吊ると背が伸びると聞いたもんでな。俺の身体に合った鉄棒も用意してもらってたのよ」
『あーっと、次の試合のヴァールハイト・シュテルン(fa3308)選手が乱入だぁッ! しかし、デカァァイッ! これなら、この鉄棒の高さも説明不要だーッ!』
 突然のヴァールハイトの乱入に、一日一善ならぬ一試合一コスプレを心がけていた槇島が、慌ててミニスカナース服に生着替えである。あまりのことに、パイロは恒例のボディチェックを忘れてしまった。
『ヴァールハイト選手、なにやら書初めのようなモノを取り出しましたが‥‥えーと、なになに『めざせ! しんちょう2mいじょう!!』‥‥今のままでも十分デカいだろーがッ!』
 だが、この心境は196cmというあとちょっとで2mというヴァールハイトにしか分からない。平然と鉄棒にロープを結びつけて輪っかを作ると、その中に首を通してぶら下がる。
『ホントに行きやがったーッ! 首吊り自殺という言葉を知らないのか、この男はーッ!?』
 しかし、ヴァールハイトは海王の名を持つ某死刑囚以上の余裕で、親指をグッと突きたててみせる余裕まで見せている。
『‥‥試合が長引きそうなので‥‥っていうか、長引かなかったら死者発生で番組がなくなってしまうけど‥‥葵選手の鉄棒が再開だッ!』
 今度こそちゃんと葵の体格に合った鉄棒が運び込まれる。
「今日こそボクが勝ってやるー。まずはコテ調べ、豚の丸焼きブリーカーだー」
 別名ナマケモノの名前から分かるとおり、両手両足を使って鉄棒にぶら下がる、ただそれだけのことである。さすがに、葵でも楽勝でクリアである。
「この程度じゃ終わらないよー」
『葵選手、ここで大技の『DX前回りハリケーン』が出たーッ! 一見すると普通の前回りだが、実はやっぱり普通の前回りだーッ!』
「でもボク的にはかなりの大技なんだよー。さあ、これでトドメだー」
『今度は『スーパー稲妻ファイナル坂上がりボム』だーッ! 一見すると普通の逆上がりだが、実はやっぱり普通の逆上がりだー‥‥って、デキてねーじゃん!』
「よいしょ‥‥うんしょ‥‥あっ!」
 自称大技の連発で握力がなくなり、尻から墜落の葵。早くも涙目である。
「‥‥次こそは、絶対ボクが勝ってみせるのー」
 捨てゼリフを残して、涙も拭かずに走り去っていく葵。その際にヤケになってハチマキを取り出したシルクハットを投げ捨てたのだが、これがどうして、すでに顔面蒼白のヴァールハイトの頭にキレイに乗っかってしまう。おかげで、顔色がよく見えなくなってしまい、本当にヤバいのがいつか分かりにくくなってしまった。
『あーっと、ここで河辺野選手の方に動きがあったようだ!』
「くっ、バカな‥‥カフェインによる利尿効果だとぉ!」
 完全に手の止まった河辺野のバックにDOGOOOON!! とアメコミチックなSEが入るが、確実に使いどころを間違えている気がする。だが、河辺野にそれを指摘する余裕はない。利尿効果云々以前に、これだけガボガボ飲んでいれば、誰だってトイレが近くなるというものである。
『河辺野選手、今リングを下りてトイレに向かった。だが、限界まで膨らんだ膀胱が、走ることを許してくれないッ! リングアウトの20カウント以内には、とても戻ってこれそうにない。これで長かった試合も決着だぁッ!』
 リング上では、今度は生着替えとならなかった槇島が、今度はミニスカメイド服姿で『Final Round』と書かれたプラカードを掲げている。そのプラカードがシール式で、その下に何か書いてあるようだったが、今は知る由もない。
『さあ、いよいよ本当の大トリ、御堂陣(fa1453)選手が対戦相手の洋服ダンスを担いでの入場だぁッ! ちょっと大きすぎてふらついているようにも見えるが‥‥あーっと、転倒ッ! やっぱり転倒ッ! タンスは木っ端微塵だぁッ!』
 タンスの角に小指をぶつけないようにと注意するあまり、床の出っ張りに小指を引っかけてしまう御堂。だが、御堂はうろたえることもなく、チッチッチと指を振ってみせる。
「前回出さしてもらったときの目覚まし時計で痛い目に遭ってるからな。今回はちゃんとスペアを用意してきたゼ!」
 こんなこともあろうかとと、もう1個タンスを取り出す御堂。だが、今度は床に注意するあまりタンスの角に小指をぶつけ、あやうくタンスを落としそうになってしまう。
『いや、御堂選手もタンスも大丈夫だ。しかし、試合前から対戦相手は無事かとか、負傷しないで済むのかとか、試合の成立を心配するのははじめてだーッ!』
「ふっふっふ、気づいちまったぜ。あんたの弱点というものをよ!」
 重かったタンスの引き出しを、次々と外しにかかる御堂。相手の階級を一気に下げようという腹積もりである。
「プロレスとは、相手の引き出しを出し切らせ、その上で勝つことと見つけたり!」
 ウマイこと言っちまったと勝ち誇る御堂のところに、突然ひらりと上空からシルクハットが降ってくる。
「ん?」
『そういえば、ヴァールハイト選手のコトを忘れていたーっ! 口から魂を吐くかのように、泡のようなものを吹いているーッ!』
 緊張が走る中、咄嗟に機転を利かした御堂が、引き抜いたタンスの引き出しを重ねて、ヴァールハイトの足下に置いていく。たちまち、ヴァールハイトの血の気が戻ってくる。
「‥‥ふぅ、身長が天まで届きかけていたような気がするんだが‥‥あれ?」
 思わず笑い出す御堂。タンスも笑っているかどうかは、さすがに分からないが、協力して人命救助に当たった御堂とタンスに絆が芽生え、もはや戦う雰囲気ではなくなっていた。
 それを見届けた槇島が天城のマイクを奪うと、先程のプラカードを持ってリング中央に進み出る。そして、シールをめくると、『END?』の文字が現れた。
「これでプロレスごっこスペシャルは終了です‥‥あれ? 『END』って断定で書いたハズなのに‥‥??」
 逆に、槇島の頭の上にハテナマークが浮かんでしまう始末である。
 そこへ、待ってましたとばかりにパイロがマイクを奪う。
「さて、ここで重大なお知らせがあります。7月には、1週間スペシャルがあるからよろしくね! 何って、もちろん夏のプロレスごっこSP06〜12でーす。エアチェックを‥‥あっ!」
 今度は天城が、パイロからさらにマイクを奪い直す。
『た、大変なコトに気づいちまったゼ。春のプロレスごっこSP05、みんなこれを春のプロレスごっこ王選手権スペシャル第5回の略だと思っていた。そう、SP05はSPと05に分解されると勝手に思っていたんだ。だけどそうじゃない‥‥』
「どういうことだ、キバヤシ!?」
『誰がキバヤシだ!‥‥本当はSP05はSPと0と5に分解されて、スペシャル第0章の第5回ということなんだ。第0章‥‥プロローグ‥‥つまりは、序章に過ぎなかったということだったんだよ!!』
「な、なんだってー!?」
 ここぞとばかりに出演者が全員集まって、なんだってーの大合唱である。
 第1章の第1回、つまりは春のプロレスごっこSP11へとつづくのかもしれない。というか、つづく。合掌。