リフォーム廃車復活戦アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/17〜04/19

●本文

登場人物
・ディレクターに昇進したばかりの男(以下、ディレクター)
・ディレクターの上司(以下、上司A)
・上司Aのさらに上司(以下、上司B)

 TOMITVのこのディレクターは、最近マイホームを建てたばかりだった。しかし、上司Aの提案によってメチャクチャなリフォームをされてしまう。それが、リフォームで廃墟という番組だった。
 その恨みを晴らすべく、ディレクターは上司Bの許可をもらって、上司Aの屋敷にメチャクチャなリフォームを施してしまう。それが、リフォームで廃墟の逆襲という番組だった。
 これら二つの番組を経て、ディレクターと上司Aの間には奇妙な連帯感が生まれていた。
「っつーかさ、家っつーのはダメージがデカすぎると思うわけよ」
「まったくその通りですけど‥‥言い出したのはあなたですよ!」
「うむ、さすがにその点は反省している」
「まあ、過ぎたことはしょうがないですけど‥‥」
 だが、憎しみの連鎖はそう簡単にとぎれたりはしない。
「だが、許すまじは、あの番組を許可したあの男だ!」
「そういえば、クラシックカーやら、スポーツカーやら、随分と色々と車を乗り回しているみたいですねぇ」
「やはりここは、我々でガツンとYankee魂を叩き込んでやらねばなるまいよ!」
「まったくですね!」
 こうして、上司Bの自動車の改造番組が作られることとなった。

企画内容:
 8名までの精鋭が一車ずつ割り振られ、各自思い思いにYankee魂を感じられると考える改造を施します。改造作業に費やせるのは丸一日(24時間)です。
 なお、Yankeeをどのようにとらえようとも、個人の勝手であります。

 車は、大まかな車の種類を指定してください。
・リムジン
・スポーツカー
・ワンボックスカー
・キャンピングカー
・フォークリフト
 など。

過去の放送スケジュール:
・リフォームで廃墟 3月4日 07:00〜
・リフォームで廃墟の逆襲 4月1日 18:30〜

 上司Bに一番殺意を抱かせることができた人が優勝、賞金10万円と上司Bの殺意がプレゼントされます。

 道路交通法等を深く考える必要はありませんが(収録は私有地で行います)、死傷者が出るような危険な改造はやめましょう。

●今回の参加者

 fa0631 暁 蓮華(20歳・♀・トカゲ)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1434 ルュニス(15歳・♀・蝙蝠)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3453 天目一個(26歳・♀・熊)

●リプレイ本文

「よろしくメカドぉぉっ‥‥ぐぼはっ!」
 突然タイトルコールをはじめようとした佐渡川ススム(fa3134)に、たったったと走ってきたディレクターが飛び蹴りをかます。必要以上に豪快に吹き飛んだ佐渡川が顔を上げると、キッとディレクターを睨む。
「‥‥ナニすんだよ、ナベさんッ!?」
「誰がナベさんだっ! っつーか、番組名が違うだろうがっ!」
 番組名もディレクターの名前もボケ倒しの佐渡川が、引きずられながら退場させられていく。正しい番組名は、リフォーム廃車復活戦。だからといって、廃車が復活するようなエコロジーな番組のわけもない。
 そこへ、本日の主役である上司Bがオープンカーに乗り、にこやかに両手を振りながら颯爽と登場である。どうやら、まだ番組趣旨は説明されてないらしい。
「まあまあ、さ飲んで!」
「ん? ああ‥‥」
 降り立った上司Bに駆けつけ一杯よろしく、天目一個(fa3453)が日本酒を勧める。
「‥‥ぷはぁっ! 空きっ腹にはキクな〜。って、なんで朝っぱらから飲まなきゃならないんだい?」
 天目の傍らには一斗樽が置いてあり、一体どれだけ勧める気だという感じである。
「よく言う人がいるでしょ。お酒を飲まなくちゃ、やってられないって。つまり、そういうコトよ♪」
「ふむ、やはりそういうコトか‥‥」
 何かを察した上司Bが、再びオープンカーに乗り引き上げていく。
 そして、改めて上司Bの登場である。こんなときのために、別バージョンの入場もしっかりと考えてあったようで、軍用ジープに全身甲冑姿での登場である。
 さらには槍を持って、仁王立ち。車上からの突進を考え、日本刀よりも槍ということのようである。それでも、機関銃による一斉掃射でないのが唯一残されたやさしさなのだ。
「待たせたな。では、はじめようか」
 口調こそ穏やかであるものの、どこか得体の知れぬ凄味を感じさせる上司B。すでに、上司Aはディレクターを残して逃げてしまっている。
 そんな中、一番手として森里時雨(fa2002)が登場する。
「千葉の半分はヤンキーで出来てます。後の半分は中国産の落花生と東京の植民地っス‥‥って、それはヤンキーとは関係ないけど。料理長、英車を持ってこい!」
「アメ車じゃなくて?」
「はぁ? ヤンキーは、アーサー王宮廷にいるもんと決まってんだろ!」
 確実にわざと間違えているだろくらいのノリで、豪快に間違える森里。そして、変わり果てた上司B秘蔵の英国産自動車が運び込まれてくる。
 まずイヤでも目に入ってくるのが、その外観。仏恥義理、夜露四苦といった族仕様漢字満載の千社札が、耳なし芳一もはだしで逃げ出すほどに貼りまくられている。
「デコりは軽めっスけど、大切なのは中身っス!」
 そう言って、上司Bを中へと促す森里。だが、上司Bが押しても引いても、ドアが開くことはなかった。
「開かなねーぞ、おい!」
「憧れのハコ乗りのために、ガラス撤去の上でドアをすべて溶接したっス。片輪走行はむずかしいんで、デフォで車が傾くように重心を調整したっス。傾きすぎて横転するのもマズいっスから、補助輪も付けたっス」
 純トロでもキメてるかのようににこやかに、淡々と説明をつづける森里。それにつれて上司Bの様子が、仁王立ちから侠客立ちへと悪化していく。だが、森里にまったく気にする様子はない。
「クラクションの類は常時鳴らすンが通なんで、エンジン始動で自動演奏っス」
 ガラスのあった場所から手を伸ばすと、キーを回す森里。エンジンがかかると同時に、クラクションが爆音で音楽を奏で出す。
「刻むはイギリス国歌のThe Star−Spangled Banner、訳すところの星条旗! 排気は京都議定書を仏恥義理!」
 星条旗はどう考えてもユニオンジャックではないのだが、国家紛争の火種など気にしないのがヤンキー魂である。
 そこでついに、上司Bがブチギレである。後方に立ててあった竹槍を、手にした槍で滅多切りの滅多突きにする。
「ぬぉ、爆撃機すら撃ち落とす竹槍が微塵切りに! それじゃ、ヒーローじゃないスか!」
 だが、暴れたせいであっという間に酔いが回り、稼働時間は短かった。
 そこへ、暁蓮華(fa0631)がアメリカンポリスよろしく、ガムをクチャクチャさせながら登場する。
「Yankeeとはイギリス人ではなく、アメリカ人の俗称だ。というわけで、絶望に負けない彼らの魂を、これで学んで欲しい」
 どこからどう見ても装甲車が現れる。しかも、ガラスには弾痕や亀裂が走り、装甲もボコボコにへこんでおり、歴戦の古強者っぽい雰囲気である。元が上司Bの4WDだったとは、とても思えない。
「そして、中にはダミー人形を‥‥」
 どこからどう見ても迷彩服を着たディレクターが、中に座っていた。
「うぉーっ!」
 上司Bが雄叫びを上げて、軍用ジープで突進してくる。言うまでもなく飲酒運転だが、私有地なので気にしてはいけない。
 ドカーンと豪快な音を上げて、4WDに激突する。もちろん本物にはかなわないので、4WDは大破である。その中から、命からがらディレクターが逃げ出してくる。
「軽い冗談だ‥‥が、スリルはあっただろう?」
「冗談って‥‥突っ込んでくるなんて、聞いてないよーっ!」
「うむ、あたしも聞いてない」
 あっさりそう言ってケラケラ笑う暁に、もはやディレクターは先に逃げ出した上司Aを逆恨みするしかなかった。
「にゅふふふふ〜ん、へぃぇいぇいぇ〜〜♪」
 そんな中を異様なテンションでの登場は、ルュニス(fa1434)である。アーティストとしての創作意欲が高じ、突き抜けた高みにまで行ってしまったようだ。
 そこへ、スポーツカーが運び込まれてくる。今のところ、どこもおかしいところは見受けられない。
「ほみゅ? にゃふぅ‥‥とりあえず電ノコください」
 突然真顔になって、電動ノコギリを要求するルュニス。いきなり、ボンネットに×字傷のダメージ加工である。上司Bの目の前で、生改造ショーだ。さらには金槌を取り出し、今度はドアにダメージ加工である。
「えっと、80年代ヤンキー的自己破壊型退廃美、なのだそうですが‥‥」
 ディレクターがおずおずと上司Bに説明するが、もはや耳に届いていないのは言うまでもない。今ここで物言えるのは、もはや槍のみなのである。
「そこへなおれい!」
 情け容赦なく槍を突き立てようとする上司B。
「ジャマするなでありまっす!」
 だが、ルュニスにさっくりとチェーンソーで槍を受け止められてしまう。当然、槍の方が折れてしまった。
「およーふくのコーディネートも、インナーが大事なのですね」
 いよいよ内装に移っていくルュニス。だが、車がボコボコにされていることよりも、魂の槍を折られてガックリの上司Bである。もはや、止める気力も失われていた。
「ちょっと待った! 80年代と聞いちゃあ、私も黙ってられないわね!」
 待ったをかけた草壁蛍(fa3072)が、ド派手にハーレー4台の先導で入ってくる。その後ろには、無理矢理オープンカーに姿を変えられたワンボックスカーが入ってくる。見れば、マッチョなアメリカンの等身大フィギュアが実に4体、ハコ乗りしている。
「えっと、80年代アメリカ、勘違いニューヨークだそうですけど‥‥聞いてます?」
 ディレクターがおずおずと上司Bに説明するが、槍のショックでもはや耳に届いていないのは言うまでもない。
 よく見れば、ワンボックスカーから鎖が伸びており、4台のハーレーと結ばれている。ハーレーの上には、こちらは女性の等身大フィギュアが据えられ‥‥おや、草壁はどこに? と思えば、上司Bの脇にやって来ていて、解説をしていた。
「無論、エンジンにはツインターボにニトロ噴射付きという伝統的なお約束を遵守‥‥」
「ニトロとはさすがだよ、いっつぁん!」
「誰がいっつぁんよっ!」
 未だに番組冒頭のキャラを引きずっていた佐渡川が草壁に抱きつこうとするが、あっさりと張り倒される。一方、上司Bはと言えば、ルュニスに敗れて以来倒れっぱなしである。
「さーて、ここらでもう1回元気づけてあげないとね!」
 番組冒頭で日本酒を振舞った天目が、颯爽と登場する。元気というよりは、確実にあれから上司Bの行動がおかしくなった気がするが、気にしないでおこう。
「私は基本に忠実にベンツよ!」
 とある業種ではベンツといえば黒塗りであるが、ドピンクでの登場である。しかも直塗りではなく、ピンクのコットンの噴き付けである。しかも、屋根前方にはこんもりとコットンが持ってあり、耳のようになっている。
 それもそのはず、ピンクのテディベアをイメージしてのものだからだ。もちろん内装もピンク尽くし、テディベアだらけである。
 スペアの槍が届けられ、息を吹き返す上司B。
「そうそう、その調子! 追いかけて、つかまえて御覧なさい! あははは‥‥」
 無邪気に草原を走り回るがごとく、逃げる天目に追う上司B。もっとも、明らかに殺伐とした雰囲気がしていたが。
 上司Bがぜえぜえと倒れこんだ頃には、佐渡川が復活していた。いや、叩かれるほど元気になるのが佐渡川である。
「俺はTOMITA2000GTだッ! 店頭で確認してきたところ、コレが一番高かったのだ!」
「え? もっと高い車あったけどな‥‥」
「なにぃ! 俺の目にはこれ以上高額なものが映らないようなフィルターがあるのか? これが格差社会ってヤツか、ガッデム!」
 Yankee魂丸出しで悔しがる佐渡川。
「くそっ! こうなったら、15の夜を走り出しちまうしかねぇ!」
 自分の改造していた車に乗り込んで、一人走り出す佐渡川。
「‥‥って、しまった! 暴走車に改造していたんだ‥‥うぉー! 出してくれー!!」
 やがて、遠くで爆発が起こったが、その爆炎をバックに白い虎の覆面女子レスラー、ホワイトタイガーマスクこと夏姫・シュトラウス(fa0761)が立っていたので、その効果ということでそれ以外には何もなかったものとして処理された。
 とそこへ、なぜか着替えを済ませて赤頭巾着用の上司Bがやってくる。狼ではなく虎なのだが、気にしないでおくのが主役に対する礼儀というものである。
「どうして、この車はガラスがまったくないの?」
「真の男とは、常に肩で風を切るものよ」
「どうして、ハンドルが固定してあって一切曲がれないの?」
「真の男とは、常に前だけを見つめて進むものよ」
「どうして、いっつぁんもいないのにニトロを搭載しているの?」
「真の男とは、常に誰よりも先を進むものよ」
「どうして、佐渡川のボケの車みたいにブレーキを壊してあるの?」
「真の男とは常に走りつづけ、決して立ち止まらないものよ」
「どうして‥‥って、やってられるかぁ!」
 散々ノッておきながら、ここに来てブチギレの上司B。だが、ホワイトタイガーとなった夏姫はそれ以上にキャラに入り込んで凶暴化してしまっている。なんのためらいもなく上司Bの老体にラリアットを叩き込む。
「うろたえるな、小僧!! 真の男なら、常に冷静沈着で紳士であるものよ」
 さらに倒れたまま動かない上司Bに、関節技をキメていく。慌てて若手セコンドのごとく、全員が夏姫を引き剥がしにかかる。
 だが、本来登場予定のなかった緊急車両、救急車の登場となってしまった。上司Bが救急車で運ばれる中、未だ興奮収まらぬ夏姫が勝利のウィーを叫んでいる。
 そして、上司Bがいなくなったのを見計らって、上司Aが戻ってくる。佐渡川が爆破されようとも、上司が救急車で運ばれようとも、まったく動じずむしろ笑顔。Yankee魂を越えたTOMITV魂がそこにはあった。
 なので、主役不在だろうと平然と収録は進む。いよいよ、最後の湯ノ花ゆくる(fa0640)の登場である。
「‥‥ゆくる‥‥お菓子の家を‥‥食べることが‥‥ちっちゃいころからの‥‥夢‥‥だったんですッ♪」
 運ばれてきたのは、お菓子の家と化したキャンピングカーであった。タイヤに巨大アンパンを使っていてまともに走れていないが、もはや大事の前の小事に過ぎない。
 壁面にはあり得ない量の菓子が埋め込まれ、天井に至ってはメロンパンだけである。
「‥‥お菓子の家‥‥ヘンゼルとグレーテル‥‥ぐれーてる‥‥ぐれてる‥‥ヤンキー‥‥」
「よっ! ウマイこと言うねー。あー、このメロンパンもウマイや!」
 上が抜けて、実に伸び伸びとしている上司A。
「あっ、あいつの形見の槍が落ちてるな! じゃ、代わりにゆくるちゃんを斬っちゃおっかなーっ!」
 もはや、上司Aのやりたい放題である。上司Aの放った切っ先が、湯ノ花の胸元をかすめる。と、なぜか赤い液体がぶしゅっと吹き出る。
「えっ? ええっ!?」
 ショックのあまり、昏倒する上司A。その中を悠然と立ったままの湯ノ花が、胸元からつぶれたイチゴジャムメロンパンを取り出す。
「‥‥あ‥‥えと‥‥護身用に‥‥入れておいた‥‥イチゴジャム‥‥メロンパンが‥‥」
 だが、もはや上司Bにその声が届くことはない。
 こうして、本日二度目の救急車である。この事態に、ディレクターがほくそ笑んでいたとか、いないとか。
 その事態もあってか、優勝は湯ノ花ゆくるに決定した。一応の表向きの理由は、ヤンキーを本来の米国人という意味、あるいは日本で転じた不良的な意味で捉え、ゾク車系の改造が多かった中、独自のメルヒェン解釈で我が道を突き進んだからというものではあったが。
 また、開始早々上司Bに日本酒をススメ、上司Bの退場‥‥もとい、メチャクチャな展開の礎を築いた天目一個に、技能賞として賞金5万円が授与された。