ムチャキング3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/19〜04/21

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「NPBもMLBも普通にシーズンに突入してますし、ピッチングマシンの出しどころがないっスねぇ‥‥」
「メチャクチャ金かけたのにな。このまま死蔵だと怒られちゃうな‥‥」
 過去ムチャキングの1と2で使われた、火薬を使ってピストルと同じ原理で球を発射する時速300キロのピッチングマシンのことである。
「改造するにも、サッカーのW杯はまだ先ですしねー」
「‥‥それだ!」
「え!?」
「サッカーボールだけじゃなく、いろんな球を発射できるようにするんだよ。で、それをムチャして受け止めるんだ。昔、なんかで見たことがある! 確か白黒の映像だったが、大砲の弾を腹で受け止めるビックリ人間を!」
「いや、それじゃ本当に大砲じゃないですか!?」
「砲丸とか、ボーリング球とか、超見てみたくね?」
「死人が出ませんかねー?」
「出たら出たでそのとき考える。今はいい画が撮れそうなら突き進むのみ、だろ?」
「えー」
 こうして、もはやスポーツ便乗とは遠くなってきたムチャキング3がスタートした。

 無謀王決定! ムチャキング3
『超高速の球を受け止めろ。 死ななかったら10万円!』

 ムチャキング選出は、採点によってなされます。
・20点満点。
・ムチャの度合いとおもしろさの兼ね合いで、採点されます。

事前に用意される小道具
 大概のものは用意できます。持ち込みも可です。なお、場所は球場のままです。

注意点
・退場処分、流血、怪我、死亡したら0点になります。
・というか、死者が出たらお蔵入りです。
・但し、流血はカメラに映らない範囲ならOK、怪我は覚られないようガマンすればOKです。
・死ななかったら10万円とありますがこれは煽り文句なだけで、正確には点数が一番高くてムチャキングに選出された人に10万円です。
・敢闘賞や技能賞など、優勝以外で若干の賞金が出るかもしれません。

過去の放送スケジュール
・ムチャキング  3月09日 23:00〜
・ムチャキング2 3月30日 22:30〜

●今回の参加者

 fa0016 エディ・マカンダル(28歳・♂・蝙蝠)
 fa0048 上月 一夜 (23歳・♂・狼)
 fa1267 もりゅー・べじたぶる(27歳・♂・パンダ)
 fa1881 アースハット(27歳・♂・鷹)
 fa2172 駒沢ロビン(23歳・♂・小鳥)
 fa2599 若宮久屋(35歳・♂・狸)
 fa2609 朱凰 夜魅子(17歳・♀・竜)
 fa2830 七枷・伏姫(18歳・♀・狼)

●リプレイ本文

『ただピッチングマシン相手にムチャをするだけのこのムチャキング、なんと3回目を迎えてしまいました! もちろん、ピッチングマシンといってもただのピッチングマシンでないのは、ご存知のとおり。しかも、今回はグレードアップしての登場となります! なお、実況ならびに進行はアースハット(fa1881)でお送りします』
 すでにテンションが上がり過ぎて球場内をウロウロ、放送席に留まる気皆無のアースハットである。
『まずは、試合前の声を聞いてみたいと思います。ちょうど、若宮久屋(fa2599)選手ともりゅー・べじたぶる(fa1267)選手が談笑していますが‥‥』
「毎回思うんだけど‥‥これを企画している連中、自分らの身体のことを考えてくれてるのかねぇ? 怪我はおろか、死人が出たら、企画した方も罪になると思うんだけどさ」
「俺も過去の放送見てたけど、ホント無茶苦茶な企画だよなー、これ。一体、スタッフの頭の中はどうなっているのかと? って、参加することになった俺も俺だけど」
「それを言ったら、前回の今回で参加しつづけちゃってる自分はどうなっちゃうのよ?」
『結局、全員の頭のネジが完璧にイカレちゃってるんではないでしょうか。さて‥‥』
 他人に改めて言われると多少カチンとくるが、言い返せない自分が憎いとしか言いようがない。そんな間にも、どんな口径にも対応できるように改良された、火薬式のピッチングマシン、別名大砲の設置が完了する。
『‥‥準備が整ったようです。さあ、一番バッターは俊足巧打かどうかは知らないが、とにかくエディ・マカンダル(fa0016)選手の登場です!』
 エディがボールを手に、のっしのっしと番長の風格で自信満々に登場である。
『対する球は‥‥なんとゴムボール! 外見とは裏腹、いきなり甘ったれの登場です!』
「当たって怪我でもしたら大変じゃん!」
『なにやらチキンなコトをほざいておりますが‥‥第一球、発射! ストライーク、なんと微動だにせずに見逃しであります!』
 だがそれでも、エディは自信満々の姿勢をまったく崩さない。
「ふっ‥‥今のでボールのスピードは覚えたぜ。次の2投目で、バックスタンドに打ち込んでやるゼ!」
『相変わらず威勢はいいエディ選手、さあ第二球、発射! 今度は振ったーッ‥‥が、ストライーク! 空振りであります!』
 やっぱりそれでも、エディは自信満々の姿勢をまったく崩さない。
「今のは、この星をも砕くエディスペシャルバットの振り心地を試してただけだ。次こそは本気で打たせてもらうぞ!」
『‥‥第三球‥‥って、なんかボールが異常にデカァァーいぞ! バランスボーールッ! バランスボールです! ついにデカさに逃げやがりました!』
「ちょ、思った以上にデカっ! ちょ、アブないって! なにこのカワイ子ちゃん!?」
 自信満々の姿はどこへやら、空気抵抗で明らかにスピードの死んだバランスボールだったが、思わずバッターボックスから飛び出して逃げてしまう。
『なんと、ここまでやってまさかの三振だーッ!』
「ちょ、待ってくれ。振ってないし、ボールもどう見てもバウンドしてただろ!?」
『では第四球、発射!』
「ちょ、早ッ!」
 慌ててバッターボックスに入るエディだが、構える前にバウンドしてきたバランスボールになぎ倒されてしまう。
『これはデッドボールになるのでしょうか? あ、今点数が出ました‥‥1点です! もはや何点満点であろうと、勝ちはないと言っていいでしょう!』
「ふん、ゴムボールなど使うからそういうことになる」
 上月一夜(fa0048)が、のっしのっしとハマの番長の風格で自信満々に登場である。
「だから俺は、水風船で行かせてもらうッ!」
『またも安全第一のチキンヤロウの登場だぁッ!』
 しかし、エディ同様自信満々の姿勢をまったく崩さない上月。チッチッチと指を振り、アースハットを指差してみせる。
「人を指差しちゃあいけませんと言われてきたが、ここはあえて指差させてもらおう。俺が使うのはペイント弾、しかも熱湯だあッ!」
『な、なんだってー! と一瞬驚いてはみたものの、本当にスゴいのかよく分かりません! とにかく、最初の対戦を見てみましょう!』
「ふっ‥‥貴様に俺の拳はもったいない。金属バットで充分じゃ〜!」
 ピッチングマシンに向けて気合一閃、なぜか背中に担いでいた金属バットを取り出すと、剣道の竹刀を構えるようにホームベース上に立つ。
『これはなんとも大胆な構えです。さあ第一球、発射! って、割れたーッ! 水風船が爆風に直接当たれば、割れて当たり前だーッ! さあ、どうしますか、上月選手?』
「えーと‥‥トスバッティングでお願いします‥‥」
 結局、アースハットがトスを上げることとなった。熱湯が入っているので、つまみながら持って投げる。いくらなんでも、これはさすがにジャストミートである。
「あちゃぁ〜〜!!! 熱湯だなんて、聞いてないよ〜‥‥ということでどうでしょうか?」
 リアクションを一しきりとった後、最後は下手にご機嫌をうかがう上月。
『点数が出ました‥‥0.5点です! まさか小数点以下があったとは‥‥違う意味で驚きの決着です!』
 上月がガックリと肩を落としてベンチに下がる中、3番の若宮がダチョウの卵とトンカチを持って入ってくる。バッターボックスに入ると、まずはデモンストレーションとばかりに、コンコンと軽く叩いてみせる
「ダチョウの卵の殻をナメちゃーいけないよ。トンカチで軽く叩いたくらいじゃ、割れないからねっ!」
『打順はなんの関係もないとはいえ、さすがにクリーンナップともなってくるとそれなりにムチャをしてきます!』
 だが実は、このときに軽くヒビを入れて細工をしていたのだが、若宮以外に知る由もない。
「腹で受け止めちゃうよーっ! バッチコーイ!」
『これは期待できそうです。さあ第一球、発射! って、今度も割れたーッ! 生卵が飛び散るぅッ! 食べ物を粗末にして、PTAがコワいぞーっ!』
 早いか遅いかの違いだけで、どっちにしろ割れてPTAに怒られた気がしないでもないが、想定外だったのは、卵の殻の破片がかなりの凶器だったことだろうか。細かいつぶてとなって皮膚を切り裂いてくるので、流血しないように耐えなければならない。どのようにすれば流血を避けられるのかは、よく分からないが。
『白身と黄身がほどよくミックスされて若宮選手にかかり、このままパン粉をつけてフライにしたいくらいですが‥‥あーっと、点数が出ました。5点です。20点満点では微妙な数字ですが、現在のところぶっちぎりでトップ!』
 細かい傷を映されないようにそそくさとベンチに下がる若宮と入れ替わって、4番目というだけで主砲扱いの駒沢ロビン(fa2172)が、豆腐と中華鍋を手に入ってくる。
『これも柔らか系、チキンヤロウであります‥‥いや、違うッ! 中華鍋にはアツアツの麻婆豆腐の餡が入っています! これは麻婆豆腐を完成させてしまおうという、粉砕前提の高等テクニックだーッ!』
「食べ物を粗末にはしないアルよ! PTA、コワいアルよ!」
 中華料理ということで、お約束で語尾にアルをつけてしゃべる駒沢。ピッチングマシンに豆腐が装填される時点で粗末にしている気がしなくもないが、瑣末な問題は気にしてはいけない。
『さあ第一球、発射! って、予想どおり、いや予定どおりに木っ端微塵だーッ! しかし駒沢選手、グラウンドに落下する前に鍋に入れるべく走る、走るッ!』
「あちゃ! 熱いアルよ!」
 鍋を持って走り回るので、中のアツアツの餡に苦戦しながらも、キャラ作りは忘れない。お笑いが本職ではないだけに、そういうところは生真面目である。
「ゼエハア‥‥か、完成アルよ‥‥」
 さすがに粉々になって宙を舞う豆腐を全部鍋に入れるのは不可能で、マウンドを中心に白いものが点々としている。が、ともかく麻婆豆腐の完成である。
『いやー、これはウマい。ビールが合いますねーっ!』
 収録中にも関わらず、麻婆豆腐をつまみにビールをうまそうに飲み干すアースハット。
『さあ、点数が出ました! 5点です。しかし、この俺が気持ちよくビールを飲めたということで、2点加算! 合計7点でトップとなりました!』
 問答無用で強権発動のアースハット。だが、ここでは進行も務めるアースハットがルールブックである。
『つづいては‥‥初代チャンピオンが帰ってまいりました。七枷伏姫(fa2830)選手、前回出場時同様、甲冑に兜、面頬の完全武装での登場ですッ!』
 だが、七枷が手にしているのは妙にセレブなものだった。球は水晶玉、バットにいたっては特注も特注、やはり水晶で作られている。
『水晶玉だけでも、普通に市販されているのを勝ったら百万円を超えそうなシロモノですが‥‥前回大会では重機で球場を破壊したような番組ですから、誤差のうちでしょう! やはりTVというのは夢を与えるものですから、金を湯水の如く使ってナンボです!』
 番組制作費など気にする立場ではないアースハットが、お気楽な実況をする。
『さあ第一球、発射! って、やっぱり木っ端微塵ーッ! 百万円が木っ端微塵だーッ!』
 水晶玉が砕け散り、キラキラと光を反射する。まさに莫大な金の一瞬の煌き。だが、七枷はそれで終わらせる気はない。細かくなった水晶玉の破片を、水晶のバットで一々打ち返していく。
『あー、そんなに激しく打ちまくったら、バットの方も‥‥って、言ってるそばから砕けたーッ! 被害総額は、気にしない方が吉ーッ!』
 水晶のバットが砕け散り、キラキラと光を反射する。先程以上の一瞬の煌き、だがそれ以上にスタッフの涙が輝いていたとか。
『点数が出ました。芸術性が認められたか、スタッフ一同ヤケになったか、7点です! トップに並びました、七枷選手!』
 手ぶらとなった七枷がガシャガシャと甲冑を鳴らして引き上げていくと、同じくガシャガシャと板金鎧を鳴らして朱凰夜魅子(fa2609)が入れ替わり入ってくる。ただし、七枷が和なら、朱凰は洋である。
『朱凰選手、本日一番の暴挙、ボウリング球であります。それだけに重装備で臨みます!』
 ヘルムに盾は当然装備、騎乗槍を手にボウリング球を串刺しにしようというのである。
『第一球、発射! 朱凰選手、吹っ飛んだーッ! 盾がベコリとヘコんでおります、恐るべきはボウリング球。ついに大砲の世界に突入だーッ!』
 一度倒れると中々起き上がれなかったが、それでもなんとか起き上がると、スペアの盾を受け取って、今一度構える朱凰。
『諦めなければゲームセットではないとはいえ、なんというムチャっぷり! ムチャキングの名に相応しい名勝負の予感がしてまいりましたッ! 第二球、発射! ムッ、砕けた! ボウリング球も槍も砕けたッ!』
 速すぎてよく分からなかったが、ボウリング球と槍が砕けていた。
『スーパースローの映像で見てみましょう。この、ちょうど槍の切っ先がボウリング球に触れる瞬間、なんと指を入れる穴に入ってます。奇跡です、今奇跡を目の当たりにしているのですッ!』
 近くで実況していたゆえ、破片の流れ弾を食らって倒れているアースハットだったが、興奮覚めやらぬ様子で実況だけは止まらない。
『これは高得点が‥‥出ました! 18点ッ! 後ろにまだもりゅー選手が控えているので満点でこそなかったものの、超高得点が叩き出されましたッ!』
『いよいよ最後のバッターとなりました。もりゅー選手が、燕尾服で正装しての登場であります! 球はホイップクリームを大量に盛ったパイ、伝統芸に最新マシンの導入だぁッ!』
「偉大なる先人に負けぬように、体を張るぞ!」
『おーっと、どうやら正装の意味は先人への敬意を示してのもののようであります。さあ、第一球発射! あーっと、クリームが飛び散ってしまって、うまく飛びません!』
 もりゅーの顔には、白い斑点のように、わずかばかりのクリームがついただけである。そこへ、アースハットが近づいていく。
『バッターボックスの位置じゃあ届かないですね。さあ、どうしますかっ!?』
 そうは言いながらも、明らかにもりゅーをマウンドに近い方向に連れて行こうとするアースハット。
「いや、死ぬ、死んじゃうって!」
『さあ、第二球発射ですッ!』
 アースハットがもりゅーの身体を押さえつけたまま、第二球が発射される。おそろしい勢いで飛んできたパイがもりゅーの顔面をとらえ、そのままもりゅーは膝から崩れ落ちる。
『いやー、すばらしいムチャ魂を見せてもらいました。得点の方は‥‥』
 アースハットがそこまで言いかけたところで、もりゅーが蘇生する。
「ホイップクリーム、ウマー‥‥なんて、にこやかに言うと思ったら大間違いだっ!」
 どこから取り出したのか両手にパイを持つと、手当たり次第に投げつけはじめるもりゅー。
『えー、もりゅー選手は12点でしたが、グラウンドが地獄絵図と化したところで失格となりました』
「誰のせいだっ!」
 そこへもりゅーがやって来て、アースハットの顔にたっぷりとパイを塗りたくっていく。だが、アースハットは実況をやめない。
『優勝は18点で文句なしッ! 朱凰夜魅子選手です! なお、麻婆豆腐を完成させて俺の舌を楽しませてくれた駒沢ロビン選手に殊勲賞5万円が、金がかかっただけの美しい映像を見せてくれた七枷伏姫選手に技能賞5万円が送られます!』
 そこでもう一度、アースハットの顔にパイが投げつけられる。さらにもりゅーがカメラにも投げつけ、画面が暗転したところでちょうどお開きの時間となった。