ダジャレに命を懸けろアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/21〜04/23

●本文

 TOMITVの会議室。ムダにアツい上司が、部下を呼びつけていた。
「おい、なんかダジャレ言ってみろ!」
「え!? えーと、布団が吹っ飛んだ‥‥」
「‥‥それだけか?」
「それだけって‥‥え!?」
「つまらんわーッ!」
 ムダにアツい上司なので、いきなり鉄拳制裁である。
「テレビマンが普段からおもしろいこと言えなくて、どうするんだよ!?」
「だったら、なんだったら正解だったんですか?」
「そのくらい、自分で考えろーッ!」
 ムダにアツい上司なので、多少理不尽でも鉄拳制裁である。
「だが、特別に教えてやろう。今の布団が吹っ飛んだだったら、布団に入り込んで爆破されるぐらいしてみろ!」
「そんな‥‥いきなり用意できるわけないじゃないですか!」
「屁理屈をこねるな!」
 ムダにアツい上司なので、屁理屈をこねているのが自分であろうとも鉄拳制裁である。
「‥‥というわけで、今回の企画は分かったな?」
「ダジャレでいかにおもしろいVが撮れるかですね?」
「少しは分かってきたじゃねーか!」
 ムダにアツい上司なので、激励も鉄拳制裁である。
 こうして、ダジャレを使ったおもしろVTRを競い合う企画がスタートした。

『ダジャレに命を懸けろ』
 ダジャレを実際に収録してきたVTRのおもしろさを競い合います。撮ってこないで、スタジオ収録中にその場でやることも可能です。
 各VTRごとに採点され、優勝者には賞金10万円が授与されます。
 例:『布団が吹っ飛んだ』
 干してある布団が風で吹き飛ばされるだけだと点は低く、寝ているところに爆破で布団ごと吹き飛ばされれば点が高い。
 例:『獅子に4×4(しし)の答えを聞く』
 イラストがその収録例。この後噛まれたり、食べられたりしなければ、高得点が期待されます。

その他注意点
・命懸けとはいえ、死んだら負けです。というか、番組がお蔵入りです。
・もちろん、流血もNG。但し、流血を伴わない怪我はガマンすればOKです。
・敢闘賞や技能賞など、優勝以外で若干の賞金が出るかもしれません。

●今回の参加者

 fa0892 河辺野・一(20歳・♂・猿)
 fa1890 泉 彩佳(15歳・♀・竜)
 fa2860 静琉(16歳・♂・兎)
 fa3120 (14歳・♀・狼)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3448 リアストラ=ルエイン(9歳・♀・猫)
 fa3449 グレッグ(59歳・♂・蛇)
 fa3487 ラリー・タウンゼント(28歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

 午後11時の時報と共に、一面ブリザードの映像が映し出される。そして映像が寄りになり、すでに凍りかけている河辺野一(fa0892)が現れる。氷柱と化したマイクを手に、南極でカラオケという命懸けのロケである。
『WildReportの苺(fa3120)が、南極からお送りしているのだ〜♪ ダジャレに実況って、なんかおかしーのだ?』
 実況を買って出たために世界中のロケに付き添うハメになった苺が、現地から声を届けている。すでに素朴な疑問を抱きかけているが、まだまだ序の口に過ぎない。
「オレの墓標に名はいらぬ!! 死すならば戦いの荒野で!!」
 寒さのあまり、世紀末救世主だか覇王だかなキャラ作りで、河辺野がカラオケをはじめる。だが、このまま行くと永久凍土でマンモスの仲間入りをしそうな雰囲気である。
 そこで一曲目にシャウト系を持ってきて、身体を温めようとする。だが、極限の寒さで奥歯がガタガタいって変にこぶしも回り、もはや何を歌おうにもド演歌である。
「たまーに凍傷するのも、闘将らしくていいでしょう!?」
『あ、早くも一発目が出たのだ‥‥気温以上に寒いので、一旦スタジオに戻すのだー!』
 歌の合間の河辺野のダジャレに、情け容赦なくスタジオに戻す苺。
 果たして映像はスタジオに切り替わり、ノータイに半袖スーツという涼しげな格好の司会、ラリー・タウンゼント(fa3487)の姿が映し出される。一応、ワイプで河辺野が画面隅に映されているのが、天帝の慈悲であろうか。歌なのに音声は一切ないが。
『というわけで、こんばんは。司会のニューヨーカー、ラリー‥‥って、うわぁっ!』
 ラリーが自己紹介していたところで、横に並んで立っていた苺に気づいて驚く。苺はといえば、何を驚いているのかと不思議そうな顔をしている。
『アレ? 生中継ってスーパーが出ていた気がするんだけど‥‥なぜここに?』
「言ってる意味が、分かるけど分からないのだー」
『分からないなら、しょうがないね。では早速、スタジオでの一発目に行っちゃおう! 泉彩佳(fa1890)さんの萌えダジャレだ!』
 泉が、まずは生着替えをはじめる。もちろん、素っ裸になって着替えたら放送できなくなるので、一番キワどくて下着姿までではあるが。そして、折角の画にワイプは不要とばかりに、河辺野の姿が消える。戦いの荒野は、かくも厳しいのである。
 だが、佐渡川ススム(fa3134)が泉の生着替えをおそろしいまでに凝視していた。
「淫らな目で見るということは、淫らな行いをすることに同じ。つまり、今淫らな目で見ている我々は、アヤちゃんと淫らなコトをしているも同然ってコトなんだよ!」
「な、なんだってー!?」
 隣に座っていた静琉(fa2860)が驚きの声を上げるが、どちらかというとコイツに関わってはいけないという危険信号的なものであった。
「はいっ! 『チアガールが立ちあがーる!』でーす!」
「ふっ、俺も立ち上がっているゼ。俺の隠れた牙がな!」
 佐渡川が余計なコトを呟いていたが、一切スルーである。その佐渡川のところへ、チアガールの衣装に着替え終わった泉が歩いていくと、一声かける。
「よっ! モンキー?」
 違うところに血液が総動員されていて脳にあまり血が回ってないので、一瞬猿のようにということか? と思いかけたが、しばし考えた後に『モンキー=元気』だと気づく。
「ふっ、モンキーだぜ、俺の隠れた牙がな!」
『ぷっ‥‥あ、失礼』
 ちょうど佐渡川のテントを見たラリーが、思わず吹き出してしまう。
「くっ、自分がニューヨーカーだからって、小バカにしやがって! 日本男児は硬さで勝負なんじゃあ! 日本刀の反りを見せてやる。反りにソーリーと言わしちゃる!」
 ズボンを下ろすべく、ベルトをガチャガチャと外しはじめる佐渡川。
 ピコっ! 突然、ピコピコハンマーで泉の股間を軽く叩くラリー。
「ちょ、急に何するんですかっ!?」
『え? ニッポンのコメディ番組見てたら、ピコピコハンマーで女性の股間を叩くというマンピコという伝統的ツッコミがあるって‥‥』
「あるにしても、ツッコミを入れる相手が違うでしょ! 入れるなら、あっち!」
 ラリーの顔を引っ掴むと、佐渡川に向ける泉。
 英字新聞1週間分を湿らせて折り込んだ、破壊力抜群のハリセンに持ち替えるラリー。女性にはピコピコハンマーでやさしく、男性にはハリセンで情け無用というのがニューヨーカーのたしなみ。
 ちょうどズボンを下ろし終えた佐渡川の股間に、ハリセンを縦に振り下ろすラリー。声にならない叫びが上がり、前のめりに倒れる佐渡川。
「まさに、大根切りなのだー!」
『え? エノキ切りじゃないの?』
 苺の解説に、余計なコトを言ってしまうラリー。
「日本では、バットを思いっきり振り下ろすことを、大根切りというのだ!」
『ふむふむ、大根切りで佐渡ちゃんのバットが中折れ、ということだね?』
「日本では、中折れというのは‥‥って、そんなことまで説明できないのだ!」
 さすがの天真爛漫向日葵娘、苺でも、思わず頬を赤らめて困ってしまう。
「ふっ、ならば俺が説明しよう」
 さっきの今で平然としている佐渡川が、前かがみの姿勢のままイスに座り直す。
「この俺のように、あれだけのことがあってなお、隠れた牙が牙でありつづけるのではなく‥‥ぐぼはっ!」
 突然、佐渡川が倒れる。見れば、自分の番だったのに途中から放置プレイ状態にされていた泉が、ブラジャーを鞭のように使って佐渡川を叩いていた。
「今のは、天使のブラだ!!」
 どうも天津飯の分だとかけているようだが、高度すぎて分かりにくい。
『ということは、今は何も‥‥』
「この死体をどうしたいの? 仲間になりたいの? この遺体が言ってたよ、死ぬのって痛いって」
 怒った体でありながらも、きっちりダジャレを折り込むことは忘れない泉。これにはラリーも、大仰に首を横に振るしかなかった。
『では、つづいてのVTRをご紹介! イルの『男子とダンス』だッ!』
 この騒ぎに巻き込まれないようにじっとしていた静琉が、颯爽と立ち上がる。
「男子はダンスィーと発音してくれよな! というわけで、僕も海外ロケに行ってきたよ。では、早速見てください、どぞ!」
 先程の河辺野とは真逆の映像が映し出される。河辺野が一面の白銀ならば、静琉は一面の赤茶である。なお、河辺野の映像は切られたままである。
『WildReportの苺が、灼熱の砂漠からお送りしているのだ〜♪ って、ワイルドすぎるのだ。南極→砂漠って、濱口のケニア→ロシアよりもヒドい気がするのだ! ダジャレ番組なのに、シャレになってないのだ!』
 苺の素朴な疑問が疑念に変わりかけているが、ようやく序二段程度にしか過ぎない。
「えっと、ただ男子と踊っても駄目なんだよね? 命懸けじゃないと‥‥」
 静琉の説明セリフに、カメラが男子たちへと切り替わる。男子といっても、壮年というにもムリのあるお爺ちゃんたちが十人ほど映される。
「ちょうど太陽がてっぺんに来たし‥‥ミュージック、スタート!」
 砂と岩だけの世界で、男子たちをバックに踊りはじめる静琉。
『彼の熱い心が、映像にも汗をかかせるほどなのだっ! これぞ男の中の男、むしろ漢とかいて『をとこ』っ!?』
 確かに静琉こそ元気一杯に踊りまくっている。だがどちらかというと、男子たちがいつ天に召されるか、見ている者に違う汗をかかせてくれるといえよう。
 そこへついに、男子の一人が暑さで倒れる。
『何、映しているのだ。早くスタジオに戻すのだ!』
 八熱地獄の映像が慌しく切れて、スタジオに戻る。
『‥‥あの、明らかに老人虐待だったような‥‥こんなの流しちゃって、いいのかな?』
「いいのだ!」
 静琉が気まずそうに口笛を吹いていたが、苺が力強く答えたために、ラリーもそっちに乗るしかない。
『いいようなので、次へまいりましょう! そういえば、南極の河辺野アナはどうなってるかな? 苺さーん?』
 苺はもちろん隣にいるが、一応生中継の体で南極の苺に呼びかける。
『もう、身体中カチンコチンじゃないかと思うのだー、身も心も寒そーなのだっ』
 言ってるそばから、河辺野の動きがロボットダンスのようになっていき、ついにはそのままの姿勢で倒れてしまう。
「河辺野ッ! その命がけの行動ッ! わたくしが敬意を表するッ!」
 もっとも、そんなことを言ってるあたりは余裕がありそうにも見えなくはなかったが。
『何、映しているのだ。早くスタジオに戻すのだ!』
 八寒地獄の映像が慌しく切れて、スタジオに戻る。
『‥‥あの、明らかに八甲田山だったような‥‥こんなの流しちゃって、いいのかな?』
「いいのだ! ここからが本題なのだ!」
 苺がそう言うと、人一人入れそうなくらいの赤黒い箱が運び込まれてくる。冷凍便で送られてきたことから、簡単に想像はつくところだが。
 果たして、中からマイクを握ったままの河辺野が出てくる。
「さて問題です。南極で歌ったのは、全部で何曲だったでしょうか‥‥ガクッ」
 それだけ言って、倒れ込む河辺野。クイズ番組ではないので、誰も答えない。仮にクイズ番組だったとしても、途中のVがないので誰も答えられないが。
 自分で自分に敬意を表するだけのことはあるが、死して屍拾うものなし。河辺野はすぐさま病院に搬送されていった。
『‥‥だ、大丈夫なのかな?』
「人工透析のように一旦血液を体外に出して、それをヒーターで温めて体内に戻すという治療が必要なのだ。そうしないと、冷えた血液が心臓に急激に流れ込んで、心臓が止まってしまうそうなのだ♪」
『というか、そんな人を病院よりも先にスタジオに連れてきてよかったのか‥‥』
「いいのだ!」
『いいようなので、次へまいりましょう! 佐渡ちゃんによる『メイドが冥土へご案内☆』のVTRだッ!』
 佐渡川が、未だに前かがみのまま立ち上がる。
「ふっ、芸能生命を棒に振るかもしれない、とってもスリリングなロケだったゼ! まあ、見てくれ!」
『『冥土のお仕事☆』収録現場前からお送りしているのだ〜♪』
 国内ロケ、それも局内ロケと楽チンである。やはり十両昇進で関取クラスともなると、快適なロケが許されるというものである。
 そこへ、佐渡川が『メイドが冥土へご案内☆』と書かれたのぼりを背負って登場する。
「佐渡川ススム、TOMITVが誇る深夜の人気特撮番組、『冥土のお仕事☆』へ突入するであります!」
 旧日本軍二等兵のように、ビシッと敬礼する佐渡川。だが、それも一瞬のこと。
「メイドさんたち〜、ボキを冥土でご奉仕してちょ〜!」
「お待ちください、ご主人様!」
 佐渡川がスタジオの扉にダイブしようとしたところへ、エプロンドレス姿になった泉に呼び止められてしまう。しかも、出会い頭にスコーンとアゴにテコンドー仕込みの飛び膝が入る。
「えっと‥‥お帰りなさいませ。ご飯にします? それともおプロレスか‥‥あれ?」
 プロレスと風呂ですをかけているわけだが、すでに風呂ではないプロレスを選択してしまっていると言えなくもない。しかも、佐渡川は随分昔に負った傷を治さずに収録をこなしまくるという、スポ根のような芸人魂を変なトコで見せているので、もはやKO寸前であった。
「‥‥ハァハァ、い、痛いより、したい気持ちの方が、強いんだ‥‥ゼ」
 それだけ言い切ると、ドシャアと崩れ落ちる佐渡川。なぜかやりとげた男の顔で。
『何、映しているのだ。早くスタジオに戻すのだ!』
 佐渡川にだけ天国の映像が慌しく切れて、スタジオに戻る。
『というわけで、佐渡ちゃんによる『痛いんじゃない、したいんだ』のVTRでした〜』
「ちょ、違‥‥いや、違わないけど、違うんだ!」
『えっ、違う? 本当は『痛いことがしたいんだ』って!? 大変申し訳ありませんでした。ということで、折角だからスタジオで痛い目に遭ってもらっちゃお!』
 またも泉の生着替えがはじまる。今度は、V中と同じメイドの衣装へとチェンジである。おかげで、凝視に注力せねばならない佐渡川の反論が止まる。
『アヤちゃん、いつものやったげて!』
「おう! 見たいか? 彩佳のプロレス技〜♪」
 佐渡川に確認をとるまでもなく、コブラツイストをかける泉。さらに、卍固めへと移行する。
「技は痛いけど、密着する技は気持ちがイイッ! このままでは、痛いのが気持ちよくなってしまう、パブロフの犬ーッ!」
 佐渡川の絶叫に泉が慌てふためいて、技のかかったまま体勢が崩れてしまう。佐渡川が股間から崩れ落ち、悶絶どころかピクリともしなくなる。
「あ、あの‥‥口から泡吹いてるみたいなんですけど‥‥」
『ああ、それは気持ちがよすぎた証だから』
「え! 痛くなくて、嬉しいんですか!?」
 あははーとラリーが笑い話で済ませてしまったが、佐渡川はやはり病院へと搬送されていく。
 そして、尊い犠牲を出しつつも表彰式である。
『優勝は‥‥生着替えを披露してくれた泉彩佳さんだッ!』
「わ、ありがとうございます!」
『つづいて、三賞の発表! まずは、凍傷になりながらもやり切った河辺野一さんに、敢闘賞5万‥‥って、この場にはいないけど』
 河辺野は、病院で懸命な治療を受けているようだ。
『そして、お色気をヨゴレで演出してくれた佐渡川ススムさんに、殊勲賞5万‥‥って、この場にはいられないけど』
 佐渡川が、病院で懸命な治療をしてもらえているかどうかは分からない。
『最後に、他人にのみ命懸けを追求した静琉さんに、技能賞5万!』
「ありがとー!」
 静琉が賞金を受け取り、Vサインで笑顔である。こうして、命懸けの戦いは幕を閉じた。