プロレスごっこGWSP02アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/03〜05/05

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、モノマネあり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。春のプロレスごっこSP11〜13の1日3連発を終えてまだ1週間も経っていないので、すでに死屍累々である。
「春のプロレスごっこSPからの流れで分かっているとは思うが‥‥というわけで、プロレスごっこ・ゴールデンウィークスペシャルがはじまるわけだが‥‥」
 何度目だよ、いい加減にしてくれと、スタッフ一同に早くも厭戦ムードが立ち込める。
「子どもをターゲットに、春休みに春のプロレスごっこSPをやった以上、次の大きな休みであるゴールデンウィークにプロレスごっこGWSPをやるのは必然。分かってくれ!」
 それでも大ブーイングである。が、一番えらい人がそれを手で制す。
「心配するなー。確かに、今年のゴールデンウィークは最大29(土)〜07(日)の9日間だ。だけど、それも平日に有給を入れたりすればの話。子どもたちに有給はないから、平日にはやらんよ。それに土日も排除して、純粋に祝祭日だけにしかやらん!」
「なんか、前回もこのノリでダマされた気が‥‥」
「もちろん、1日1本だ!」
「サー! イエッサー!」
 もはや疑う余地なしと、あっさりとスタッフの士気が戻る。どちらにしろ、過密労働に変わりはないのだが、うまく目先をそらされてしまった形だ。
「あー、そうそう。一応、各日に沿ったテーマを設けるから。3日は憲法記念日だから、憲法記念日に沿った内容が好ましい。他にも世界報道の自由の日だったり、ナリタブライアンが産まれた日だったり、先負だったりするわけで、そういったものをテーマにするのもアリだ!」
「サー! イエッサー!」
 こうして、プロレスごっこ・ゴールデンウィークスペシャル第2弾、憲法記念日編の収録がスタートした。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・プロレスごっこは安全第一です。怪我はもちろん、ちょっと血が出ただけでもNGです。

過去の放送のスケジュール:
・第1回 2月16日 07:00〜 (第64回として放送)
・第2回 2月28日 23:30〜 (第72回として放送)
・第3回 3月10日 18:00〜 (第80回として放送)
・第4回 3月16日 18:30〜
・第5回 3月30日 07:00〜
・春SP01 4月05日 07:00〜
・春SP02 4月06日 07:00〜
・春SP03 4月07日 07:00〜
・春SP04 4月08日 07:00〜
・春SP05 4月09日 07:00〜
・春SP11 4月23日 07:00〜
・春SP12 4月23日 07:30〜
・春SP13 4月23日 08:00〜
・GWSP01 4月29日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0892 河辺野・一(20歳・♂・猿)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3205 桜庭・夢路(21歳・♀・兎)
 fa3306 武越ゆか(16歳・♀・兎)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

『ちょっとだけ間が空きましたが、ゴールデンウィークもいよいよ後半戦。きょうから3日連続でお送りするプロレスごっこ王選手権・ゴールデンウィークスペシャル、今日は5月3日にちなんだ試合が繰り広げられます! 実況は、引きつづきサトル・エンフィールド(fa2824)でお送りします そして、解説はコイツだッ!』
 サトルがハリセンを取り出すと、何の脈略もなく解説のヨシュア・ルーン(fa3577)をタコ殴りである。
「ちょ、意味が分かんないよ、サトルくん! はじめての異形の百鬼夜行、悪夢の百貨店であるプロレスごっこを、子どもにもお年寄りにも分かりやすくバリアフリーに解説しようと思ってやって来たのに、あんまりだよぅ!」
『泣き虫の解説なんざ、前にもいた! だから、僕が違う解説に仕立て上げてやる!』
 ハリセンを手に、意味不明のスパルタ教育を宣言するサトル。ヨシュアには、サトルが悪夢の百貨店である。
「そんな、ヒド過ぎるよー、うるうる‥‥」
『だから、泣くな! かぶる!』
「‥‥ちょうど今、埼玉県の熊谷さんから苦情の電話が入りました。このショッキング映像に、おじいさんが心筋梗塞を起こしたそうです」
『そんな苦情、入ってねーよ!』
 涙を堪えて声を振り絞るヨシュアに、サトルの冷酷なツッコミが入る。
『大体、生放送じゃねーだろが!』
「そんな身も蓋もないこと言ったら、この番組成り立たないよぅ!」
『さあ、ノリと勢いだけがすべて! 刹那にすべてを燃焼させるチャレンジャーたちの入場だぁッ!』
 ムダに放送時間を消費してはいけないと思ったのか、それとも単に飽きたのか、サトルが普通に実況をはじめる。
「うわーん、あんまりだー!」
 ヨシュアの泣き声をBGMに、武越ゆか(fa3306)が入ってくる。前回の春SP11に引きつづき、未だにポンポンを作っている。が、さすがに引っ張ってもしょうがないので、入場中にさっくり完成させる。
「はいっ!」
 武越はチアガールなので、泣いているヨシュアを応援すべく、ポンポンをヨシュアに放り投げてリングイン。
「これをどうしろと!?」
『解説なら、そのくらい自分で考えろーッ!』
 またまた、サトルの理不尽なツッコミに泣かされるヨシュア。仕方なく、解説なのにポンポンをつけて、武越の試合の応援をしてみたりする。
 だが、そんな武越はすでにリング上に運び込まれた黒電話と対している。
「ガチャ‥‥もしもし、私ゆかちゃん♪ 今日は私の非誕生日なの! 明日もあさってもだけどね! そう、非誕生日といえばプレゼント☆」
 明日もあさってもどころか、武越の非誕生日はあと数ヶ月つづくのであるが、その間ずっとプレゼントを渡すつもりだろうか? とはいえ、そこは応援特化型バラドルの意味のない意地である。
『1年のうち364日もある日を持ってくるあたり、さすがであります!』
「よい子のみんなに、うれしいお知らせでーす☆ なんと、番組特製アイロンプリントTシャツプレゼント〜! モチロン選手のサイン入り! 今から、ゆかがこの場で作っていきまーす。応援してね!」
 パソコンやらプリンタやらが運び込まれる。アイロンプリント用紙に印刷するところから、まずははじめるらしい。
 だが、裏表を間違えたり、紙詰まりを起こしたりと、ただゴミだけが増えていく。
 今一度電話に手をかける武越。いつの間にか放送席のヨシュアの前にも黒電話が置かれていて、それが鳴っている。
『ほら、鳴ってる。早く出ろ!』
「えーっと、もしもし?」
「ガチャ‥‥もしもし、私ゆかちゃん♪ 鏡像印刷って、どうやるの? PCオタのシュアっちなら、できるよね?」
 電話している体ながら、問答無用で放送席からヨシュアを連れて行く武越。サトルはただ、それを生暖かく見守るのみである。
 武越が強制徴集したヨシュアと家内制手工業に勤しむ中、喫茶店のセットが運び込まれてくる。
『河辺野一(fa0892)選手が入ってきました! 憲法をはじめとする六法はもとより、古今東西ありとあらゆる法律を暗記し、司法試験に挑むとのことです。そう、今日は憲法記念日です!』
 河辺野が駆けつけ10杯でコーヒーをがぶ飲みしつつ、店を潰す勢いで何度もおかわりを頼む。一向に勉強をはじめる気配はない。そんなうちにも、置いてあったマンガ誌の方に目が行ってしまう。
「少年マンガが努力、友情、勝利だというならば、憲法は基本的人権の尊重、国民主権、平和主義が3本柱なのです!」
 そう言って、マンガを読みはじめる河辺野。だからといって、マンガを読んでいる場合でないのは言うまでもない。
『河辺野選手、本当に司法試験に挑む気はあるのでしょうか? 敵は無数の強者を跳ね返してきた猛者、まさに鉄壁! このままでは、叩き落とされて地面にキスするのを待つのみかーっ!』
 すっかりくつろいでしまった河辺野をよそに、湯ノ花ゆくる(fa0640)がヨレヨレの拳法着を手にチャイナドレスで乱入してくる。
『おまえが司法試験で憲法に挑むのなら、私はアイロンで拳法着に挑む‥‥って、分かりやすいまでに憲法と拳法を間違えています、湯ノ花選手! ここはメロンパン芸人の意地を見せ、生着替えにまでもつれ込ませて欲しいところですッ!』
 武越のアイロンプリント用のアイロンをそのまま流用して、湯ノ花がおもむろにアイロンがけをはじめる。
 そろそろ拳法着もピシっと決まろうかというころ、湯ノ花がようやくあることに気づく。
「‥‥って、ご‥‥ごめんなさい‥‥です。ゆくる‥‥アイロンネタで‥‥かぶって‥‥しまってた‥‥です。で‥‥出直して‥‥来ます‥‥」
 武越はまったく気にしていなかったが、湯ノ花はそそくさと退場していってしまう。ヨシュアにしてみれば、おまえも巻き込まれて手伝えくらいに思っていたが、そうはならない。
「しかしッ! 我々には選挙権があるッ!!」
 突然そんなことを言った河辺野が、2冊目のマンガにとりかかる。
 地道に内職状態の武越にヨシュアと、相変わらずくつろいでいる河辺野。そこに突然、店内には不似合いなノリノリなBGMが爆音で流れる。
『赤いファーをたなびかせ、エナメル製のド派手衣装に身をつつみ、桜庭夢路(fa3205)選手の入場だぁッ! 抱えているスイカは、やはりスイカ割りかっ!? 今度こそ生着替えかっ!?』
「大型連休の朝から、プロレスごっこを見てくれてありがとう!」
 スイカを抱えながらも、軽くステップを踏みながら、手を振る桜庭。その拍子にスイカが転げ落ちて割れてしまうが、そんなことは気にしない。この季節のスイカが高かろうとも、そんなことも気にしない。
「休日といえばバカンス。バカンスといえばスイカ割り! 季節を先取りした真剣勝負が、今はじまる!」
 リング上には武越とヨシュアの内職班、河辺野の司法試験勉強とは名ばかりの読書班がいたが、その隙間を縫うようにすでに割れているスイカをセッティングする桜庭。
 そして、周囲をあえて完全に無視して目隠しをすると、グルグルバットをはじめてしまう。
「えー! そんなに回さないでくださいよー!」
 と言いつつも、自分で回っているのはお約束である。フラフラになりながら、辺りかまわずバットを振り回す。
『行ったーッ! 必要以上の破壊力! これが金属バットです!』
「ひぃっ!」
 ちょうどパソコンの画面から顔を上げたヨシュアの目の前を、バットが通過する。見事なまでに、パソコンを物理的に破壊する桜庭。
『惜しいッ! スイカとは違う赤い花火が見たかった!』
「ヒドいよー、サトルくん。うるうる‥‥」
 号泣のヨシュアをよそに、武越は何事もなかったかのようにまた電話をしている。
「もしもし、私ゆかちゃん♪ これからアイロンがけするよ!」
 それはさておき、フラフラの桜庭は未だにバットを振りつづけている。
「のわっ!」
 河辺野が身をかわすと、ガチャーン! と壮大な音が響く。見れば、コーヒーカップやら何やらが、テーブルごと粉砕されてしまっている。
「ちょ、待ってください!」
 さすがに、河辺野が桜庭を止めて、目隠しを取る。
「‥‥ひっ! このようなひどいことを、一体誰が!?」
 周囲の光景に、素でびびる桜庭。
「‥‥それはいいとして、一つ言っておきましょう。スイカ割りといえば海。そして、海の日といえば、司法試験、二次試験の論文式試験の日なんですよ! その勉強を妨害するとは、一体どういうことですかっ!?」
「それを言うなら、短答式試験の日も今日じゃなくて、5月の第2日曜、つまり母の日ですよね?」
「ぬぅ! 一体、いつそれを!?」
 思わぬ返し技に、固まってしまう河辺野。そこへ、桜庭がスイカの切れ端を差し出す。
 結局、落としたときに割れた以外は無事だったスイカを二人仲良く食べながら、退場していく桜庭と河辺野。そう、プロレスごっこでは食べ物を粗末にしたりはしないのだ。なので、コーヒーについては一切ツッコミ無用である。
「どいつもこいつも憲法記念日を履き違えやがって! 自分が憲法との戦いというヤツを見せてやる!」
 入れ替わって入ってきたモヒカン(fa2944)が、早くもヒートアップしている。
「日本国憲法第19条にこうある。『思想及び良心の自由は、これを侵してはならない』とな。だから、自由に物申させてもらう!」
『あーっと、モヒカン選手、電話に手をかけた!』
「これから、靖国参拝問題について、しかるべき場所へ物申ーす!」
 黒電話から何やら電話するモヒカン。とはいえ、武越の黒電話は、どうダイヤルしようとも解説席へのホットラインでしかない。
『えー、出たほうがいいんでしょうか‥‥っぷ!』
 電話に出ようとしたサトルが、謎の組織をイメージした黒服のスタッフに口をふさがれてしまう。
「ちくしょう。なかなか出やがら‥‥うおっ!」
 同じく、リング上のモヒカンが黒服に連行されていく。
『あーっと、今モヒカン選手が謎の組織に拉致られてしまいました。彼の無事を、もはや祈るしかありません! おや? まだ電話がなっていますね。出てみましょう』
「えっと‥‥民主主義‥‥国家‥‥である‥‥日本の‥‥象徴を‥‥って、ご‥‥ごめんなさい‥‥です。ゆくる‥‥電話ネタで‥‥かぶって‥‥」
 見れば、リング上に電話口に湯ノ花がいるではないか。ただ、言い終わる前に口にメロンパンを突っ込まれ、やはり謎の黒服集団に連れて行かれてしまう。
『我々は、何も見ていませんし、聞いてません。さあ、次の試合にまいりましょう!』
 リング上には、もはやアイロンがけに精を出す武越とヨシュアしか残っていない。そのヨシュアは、強制連行された方がマシだったと思っていたが。
『あずさ&お兄さん(fa2132)が入ってきました。あずささんが‥‥あー、ゴミをぶちまけた! 一体何の凶行だーッ!?』
 ただでさえ、桜庭が砕いた河辺野のセット類や、武越の失敗した紙くずだらけだったところへ、あずさが大量のゴミをぶちまける。
「凶行って‥‥ゴミの日なだけだよぅ!」
『そうでした。5月3日はゴミの日でもあります! 単純な語呂合わせですが、ゴミの回収日と紛らわしいのがいけません。だからこそ、5月30日がゴミゼロの日として用意されているのかもしれませんが』
 だが、今日はゼロの日の方ではないので、リング上は早くもゴミ屋敷である。
「未分別のゴミの山と戦うよー!」
 とはいえ、あずさがぶちまけた袋の数々には、いずれにも『燃えるゴミ』『燃えないゴミ』『リサイクルゴミ』と書いてあった。あえてまた分別前の姿に戻してしまったのは、あずさのせいといえる。
「この‥‥破れた‥‥傘は‥‥先を‥‥鋭く‥‥削れば‥‥携帯用の槍‥‥として‥‥使える‥‥デス‥‥って、ご‥‥ごめんなさい‥‥です。ゆくる‥‥ゴミネタで‥‥かぶって‥‥しまってた‥‥です。で‥‥出直して‥‥来ます‥‥」
 いつの間にか黒服の手より逃げ出し、ゴミ拾いに混じっていた湯ノ花が、またいつの間にかそそくさと退場していってしまう。
「待ってよー! あー、行っちゃった。時間ないから、手伝ってもらおうと思ったのにー」
 あずさがそう言ったところで、もはや手遅れ。ゴミの収集車がやって来てしまった。
「うー、こうなったら最後の手段!」
 手当たり次第に、ゴミ収集車に向けてゴミを投げつけるあずさ。もちろん、『よい子は絶対にマネしないでね!』のテロップが流れる。
 だが、勢い余ってか、ゴミ投入装置の中にお兄さんをも投げ込んでしまう、お兄さんに向けて、押し込み板が牙をむく。
「わー! 待ってよーっ!」
『人の命を奪う事件も起こってしまうほどの加圧力! お兄さんがいかに人形とはいえ、押し込み板を早く止めなければ‥‥って、間に合わなかったーッ!』
 あずさの力走むなしく、お兄さんが圧縮されて飲み込まれていく。もはや、あずさには最敬礼で送り出すしかなかった。
『以上で全試合を‥‥あちーッ!』
 シメにかかったサトルの背中に、なぜか武越がアイロンを当てていた。
「いえ、密かに全部失敗してしまっていたので、もうTシャツがなくて‥‥というわけで、サトリンの背中の皮付きのアイロンプリントTシャツ、抽選で1名様にプレゼントしまう。どしどし応募してね〜!」
『あげません! っていうか、サトリンって誰ですかッ!?』
「では、明日の国民の日地獄変でお会いしましょう!」
 激昂するサトルの横で、にこやかにお辞儀をするヨシュア。
『あ、おま、何勝手にシメて‥‥下克上か? 下克上なのかッ!?』
 サトルの絶叫が響く中、構わず番組は終了していった。