プロレスごっこGWSP04アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/05〜05/07

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、モノマネあり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。春のプロレスごっこSP11〜13の1日3連発を終えてまだ1週間も経っていないので、すでに死屍累々である。
「春のプロレスごっこSPからの流れで分かっているとは思うが‥‥というわけで、プロレスごっこ・ゴールデンウィークスペシャルがはじまるわけだが‥‥」
 何度目だよ、いい加減にしてくれと、スタッフ一同に早くも厭戦ムードが立ち込める。
「子どもをターゲットに、春休みに春のプロレスごっこSPをやった以上、次の大きな休みであるゴールデンウィークにプロレスごっこGWSPをやるのは必然。分かってくれ!」
 それでも大ブーイングである。が、一番えらい人がそれを手で制す。
「心配するなー。確かに、今年のゴールデンウィークは最大29(土)〜07(日)の9日間だ。だけど、それも平日に有給を入れたりすればの話。子どもたちに有給はないから、平日にはやらんよ。それに土日も排除して、純粋に祝祭日だけにしかやらん!」
「なんか、前回もこのノリでダマされた気が‥‥」
「もちろん、1日1本だ!」
「サー! イエッサー!」
 もはや疑う余地なしと、あっさりとスタッフの士気が戻る。どちらにしろ、過密労働に変わりはないのだが、うまく目先をそらされてしまった形だ。
「あー、そうそう。一応、各日に沿ったテーマを設けるから。5日はこどもの日だから、こどもの日に沿った内容が好ましい。ましてやクスリの日でもあるのだから、子どもたちをプロレスごっこに洗脳せよと言わんばかりだな、おい! あと一応、わかめの日だったり、おもちゃの日だったりもするわけだが、所詮こどもの日の派生に過ぎん。キワモノとしては、どどさイベ名古屋とかいう日でもあるらしいが、よく分からんから相手にしない方がいいな。とにかく、子どもたちをプロレスごっこに洗脳だ!」
「サー! イエッサー!」
 こうして、プロレスごっこ・ゴールデンウィークスペシャル第4弾、こどもの日編の収録がスタートした。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・プロレスごっこは安全第一です。怪我はもちろん、ちょっと血が出ただけでもNGです。

過去の放送のスケジュール:
・第1回 2月16日 07:00〜 (第64回として放送)
・第2回 2月28日 23:30〜 (第72回として放送)
・第3回 3月10日 18:00〜 (第80回として放送)
・第4回 3月16日 18:30〜
・第5回 3月30日 07:00〜
・春SP01 4月05日 07:00〜
・春SP02 4月06日 07:00〜
・春SP03 4月07日 07:00〜
・春SP04 4月08日 07:00〜
・春SP05 4月09日 07:00〜
・春SP11 4月23日 07:00〜
・春SP12 4月23日 07:30〜
・春SP13 4月23日 08:00〜
・GWSP01 4月29日 07:00〜
・GWSP02 5月03日 07:00〜
・GWSP03 5月04日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0376 伊集院・帝(38歳・♂・虎)
 fa1010 霧隠・孤影(17歳・♀・兎)
 fa2029 ウィン・フレシェット(11歳・♂・一角獣)
 fa2074 ハンマー・金剛(18歳・♂・獅子)
 fa2333 三条院・棟篤(18歳・♂・ハムスター)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3280 長澤 巳緒(18歳・♀・猫)

●リプレイ本文

『さあ、ちびっ子たちの惜しむ声とは裏腹に、プロレスごっこ王選手権・ゴールデンウィークスペシャルも今日で最終日だ。さらば懐かしの日々よ。もう戻れない、もう帰れない日々。太陽の‥‥もとい、明日からの日常のため、プロレスごっこを見て、大人も子どももガッツを取り戻して欲しいね。そんなわけで、額から角の生えた俺は仮面実況Χ。ギリシャ文字のカイであって、X(エックス)でも×(バツ)でも×(かける)でもない。それ以上でもそれ以下でもない、というかどうでもいい』
 実況であるにも関わらず、なぜか覆面をかぶっての実況はウィン・フレシェット(fa2029)である。
『そして、解説はマリアーノ・ファリアス(fa2539)だ‥‥って、しばらくお待ちください』
 別に放送事故用の画面に切り替わることはないが、解説のマリアーノ待ちの時間ができる。
 やや遅れて、ガッシャンガッシャンと豪快な音を立て、マリアーノが入場してくる。
「5月5日といえば、端午の節句で五月人形で、若大将でゲーマーで‥‥じゃなくて、若大将で鎧兜だよね!」
 見れば、マリアーノが全身鎧兜をまとって入場してくる。いかに格闘家練習生とはいえ、まだまだ少年の身体のマリアーノには大きくて重く、入ってくるのに時間がかかる。
「大将は、軽々しく前線に出るものではなーい!」
 ようやく放送席までたどり着くと、ウィンの後ろの席にふんぞり返って座る。
『‥‥ということで、ゴールデンウィークスペシャルファイナル! 画面の前のみなさんもご一緒に、プロレスごっこランブル、レディ・ゴー!』
 なお、プロレスごっこランブルとは、時間差で次々と入場してくるバトルロイヤル形式プロレスごっこである。
 まず最初に、レフェリーの伊集院帝(fa0376)が入場してくる。普通、レフェリーは先にリングに上がっているものだが、解説のマリアーノがもっと入場に時間をかけたくらいなので、誰も文句は言えない。
 つづいて、ようやく選手としての一番手、ネコみみにメガネを着用した長澤巳緒(fa3280)が入ってくる。
 連続バク転で花道に登場したかと思うと、無人の観客席に何やらアピールし、花道を一気に駆け抜ける。そしてロンダートからいつの間にか設置されていたトランポリンに着地すると、伸身一回転でリングインである。
「この日のために、今までのVTRや女子プロゲームで勉強してきました」
 ゲームだけでこれだけの入場ができるとは、おそるべきゲーム脳の持ち主である。というか、今までのVを見てこのような入場になる発想が分からない。しかしそれでも、これだけのアクロバティックな動きでもメガネがズレもしないのが、めがねっ娘のたしなみ。
『長澤選手、ネコみみめがねっ娘レスラー『にゃがさわみお』としての入場だあッ! しかし、どうですか? この動きは』
「うむ、敵ながらあっぱれだ! それに引き換え、こいのぼりは喝だ、喝っ!」
 マリアーノが、なぜか若大将から親分に変わってしまっている。遅れて、長澤の対戦相手であるこいのぼりがペランペランと運び込まれてくる。
「うにゃ!にゃにゃにゃー!」
 獣化は一切していないものの、それでも心はいつも猫状態で、こいのぼりに襲いかかる長澤。
『時間差での入場なので、どんどんと次の選手が入ってくる! 今度は、霧隠孤影(fa1010)選手と佐渡川ススム(fa3134)選手だッ!』
 佐渡川がメガネ越しに、一番えらい人を見る。
「ふん、戦闘力2か。ゴミだな‥‥」
 どうやら、我々には見えないスカウターな数字が見えているようだ。
「せい、こらーです! せい、こらーです!」
 佐渡川の横で霧隠がテンション高く威嚇するのに対し、今度はそちらをメガネ越しに見てみる。
「バカ‥‥な‥‥」
 そこで、ボンッとメガネに仕込んでおいた火薬が爆発する。
「目が‥‥目がーっ!」
 火薬の量を間違え、リングにたどり着く前に悶絶する佐渡川。
「さ、早く行きますよ」
 だが、まったく気にも留めない霧隠に、問答無用で引きずられていく。
「ひ、ひにゃぁ〜! た、食べられるにゃー!」
 リング上では、鯉のぼりの口に下半身を突っ込んだ長澤が必死にロープにたどり着こうとしていたが、それとは一切関係なしに佐渡川目がけいきなりドロップキックを放つ霧隠。
 だが、まだフラフラしている佐渡川にすらも弾き返されてしまう。
「むむむ‥‥では、四の字固めです!」
 技の名前を宣言してからかけるのもどうかと思うが、マトモにかかりはしないので大した違いはない。
「うごーっ!」
 佐渡川の悲鳴が上がる。どこをどうなったのか、長澤も加えた3人で絡み合い、これまたどこをどうなったのか、長澤が佐渡川に電気アンマをかける状態になってしまっている。
「あーっ! イカン、このままでは‥‥」
 佐渡川があやうく昇天しかかるが、こどもの日にそんなことになっては屈辱ということで、若干名残惜しくはあったものの長澤を振りほどく。
「なんてもの、触らせるのにゃ!?」
「いや、確かに気持ちよかったが‥‥って、そうじゃなくて! 好きで踏みしだかれたんじゃ‥‥」
 子どもには見せられない諸般の事情により立ち上がることのできない佐渡川に向かって、問答無用と走り込む長澤。佐渡川の片膝を踏み台にし、シャイニングウィザード!
「ぐぼはっ!」
 と思いきや、なぜか伊集院のテンプルに長澤の膝が入っている。
「ちゃんと技にかかるですー! ちゃんとしないとお給料出さないです!」
 一方、霧隠は佐渡川に理不尽に怒っていた。
「いえ、最善は尽くして鋭意努力はしているのですが‥‥すみません‥‥」
 切り札を出されては、佐渡川も言い訳もできずに謝るしかない。なので、誤ってみせる佐渡川。
「‥‥まかせてくだせぇ、所長が相手するまでもねぇ! この俺が相手してやりますぜ!」
 どこをどう解釈したらそうなるのか、とはいえわざと誤っているので、倒れている伊集院にサッカーボールキックを見舞っていく佐渡川。
「ぬおーっ! どうせやられるなら、女の子がイイーっ!」
 伊集院の断末魔の叫びに、佐渡川の蹴りがピタリと止む。
「そうだよな。やっぱり、そうだよな‥‥」
 そっと手を差し出し、伊集院を起こす佐渡川。
「ここは共同戦線と行こうじゃないかーっ!」
「心の友よ‥‥」
 二人肩を組み、長澤と霧隠を不敵な笑みで見つめる佐渡川と伊集院。身の危険を感じたのか、女性陣も自動的に手を結んでいる。もはや、こいのぼりは完全に忘れ去られた存在だ。
『なんということだーッ! 急遽タッグが結成されたーッ! これはどういうことでしょう?』
「戦国の世は、いつも下克上じゃのう!」
 相変わらず、キャラ継続中のマリアーノ。解説として、まったく役に立ってないのは言うまでもない。
『レフェリーもいなくなり、リング上は完全に無法地帯だが、それでも次の選手はやって来る! ハンマー・金剛(fa2074)選手が、棺桶を引きずっての入場だぁッ!』
 二組が火花を散らす中、悠然とその中央に棺桶を設置する金剛。どういう仕組みかは謎であるが、時折ガタガタと揺れてみせたりもする。
『悪霊を再度封印するためには、戦って勝たねばならないが、霊魂と戦えるレスラーはコイツだけだ‥‥って、この状態でやるのかッ!?』
「出会ったら、即戦闘開始。それが戦場ってモンだろ?」
『そういう問題ではない気がするが‥‥』
 微妙な空気の中、まったく構うことなく金剛が棺桶に向かって右手を差し出すと、蓋が開いた。
 次の瞬間、金剛の身体が大きく後ろへ吹き飛ぶ。だが、すぐに起き上がると、今度はロープへ吹き飛びざまラリアット見舞う。
 さらには、逆さまの体勢のままトップロープを、持ち前の力で上っていく‥‥というか、見えない悪霊に持ち上げられていく。そして、後頭部から落下‥‥というか、雪崩式のパワーボムを食らう。この辺は、受身の確かな本職レスラーの腕の見せ所である。
 そんな最中でありながらも、いやそんな最中だからこそ、佐渡川と伊集院が長澤と霧隠に向かってじりじりと間合いを詰めていく。
 それはさておき、金剛の戦いの方は早くも終盤である。見えない悪霊の首根っこをつかむと、そのままチョークスラムで棺桶の中に叩き込む。蓋も閉じられ、ついに決着である。
 立ち上がった金剛が周囲を見渡し、おもむろに、
「REST IN PEACE」
 と叫んだ。すると、会場が暗転する。次に照明がついたとき、もはや金剛の姿はなかった。
 だが、棺桶の蓋が開いていた。見れば、佐渡川と伊集院が棺桶に詰められている。
 このわずかな暗転の時間に、どのような熾烈な戦いがあったのかは分からない。だが、佐渡川と伊集院があっさりと返り討ちにあったのは間違いない。
「この淫獣どもを、早く封印せねばです!」
「地獄に帰れにゃ〜!」
 長澤と霧隠が、蓋の上から釘を打ちはじめる。
「うぉー! 男と一緒はイヤーっ!」
「レフェリーがいないと、試合が成立しないぞー!」
 佐渡川と伊集院の悲鳴が上がるが、聞き入れられるはずもない。
「では、火葬場直行なのです〜」
「灰になるのにゃ〜」
 佐渡川と伊集院のドンドンと内から叩く音をBGMに、棺桶を担いで本当に出て行ってしまう長澤と霧隠。
『なんと、リング上はこいのぼりだけになってしまったーッ! 時間差ゆえにこれから登場する選手は非常に有利だ! 今、食欲覆面Xこと三条院棟篤(fa2333)選手が最後の選手として入場だッ!』
 端午の節句ということで、三条院の対戦相手として大量の柏餅やちまき、笹団子等が運び込まれてくる。
 その包囲網を突破すべく、早速ものすごい勢いで食べはじめる三条院。
「恐るべきはバトルロイヤル、簡単に味を変えられるのはええが‥‥まったく先が見えん!」
 だが、そう易々と突破できるものではない。リング上に置かれた量だけでも半端ではないのに、リングサイドを埋め尽くさんばかりに過剰に用意してある。
「まさに、食べ物によるリンチ状態やー!」
 まだまだ余裕がありそうな口調の三条院だが、明らかに顔色が悪くなってきている。
「もはやこれまデっ! 斬り込むゾっ!」
 突然、おもむろに鎧を脱ぎ出すマリアーノ。とはいえ、一人で簡単に脱げるようなシロモノではないので、ウィンに実況を中断させてまで脱ぐのを手伝ってもらっている。
 そんな間にも、三条院は前のめりに倒れそうな気配である。
「ただでは死なヌっ! 道連れは多い方がいいからのぅ!」
『えー、俺もかよ!? 本番前に楽屋で弁当食っちゃったのに!』
 文句を言うウィンを問答無用で引っ張って、リング上の三条院に加勢するマリアーノ。三条院に待望の援軍到着である。
 が、時すでに遅し。三条院がそのままマットに大の字に倒れる。
『もう、こいのぼりの優勝でいいじゃねーか。なんで俺まで戦うハメに‥‥』
「殿中でござる、殿中でござるよ!」
 マリアーノが意味不明の受け答えで、ウィンを逃がさない。
 結局、マリアーノもウィンも三条院の後を追ってマットに大の字に倒れるだけであった。
 そう、子どもの日だけにこいのぼりの勝利で終わったのである。
『うぷっ‥‥さて‥‥名残‥‥惜しいですが‥‥今日で‥‥ゴールデン‥‥うぷっ‥‥ウィーク‥‥スペシャルは‥‥うぷっ‥‥終わりです。まだ見たりない‥‥‥‥おえぇぇ‥‥』
 苦しみの中、それでも実況を全うしようとするウィンであったが、リバースしかけたところで、放送はプチンとあっさりと切られた。