第6回プロレスごっこ王アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 05/08〜05/10

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、モノマネあり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。プロレスごっこゴールデンウィークSP4連発を終えたばかりで、周囲には腐乱死体が転がりまくりの様相である。
「あの‥‥昨日の今日で言うのもなんですが、昨日でゴールデンウィークは終わったと思うんですけど‥‥なぜ、また今日も集められているんでしょうか?」
 だが、かろうじて質問する元気のあるスタッフの一人が、果敢に尋ねてみる。
「ここのところずっとスペシャルつづきで、通常バージョンを全然やってなかったじゃないか。だから、今回は久々の通常版というわけだ。普通の第6回プロレスごっこ王選手権をやる、ただそれだけのこと。だから、子ども向けからアダルティーな時間帯になってるしな! それでもおかしなことを言っているというんだったら、いくらでも言ってくれ!」
 おかしいところだらけで、ツッコミどころが分からん! と、スタッフ一同暴動寸前である。
「第6回って‥‥特番込みなら通算18回目じゃん! 第1回を第64回とか、冗談で言ってたころがなつかしい‥‥だんだん冗談でなくなってきてるよ‥‥」
「でも、5月もゴールデンウィークが終わったし、6月は子どもたちにとっては一年で唯一土日以外の休みがない憂鬱な月なわけだし、スペシャルに関してはもう疑心暗鬼になる必要ないじゃないか!?」
「どうせ、なんか別の方法考えてるんでしょう?」
「それはどうかな‥‥フフフ」
 プロレスごっこの一番えらい人の笑い声が耳に残る中、ともかく第6回芸人プロレスごっこ王選手権の企画がスタートした。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・プロレスごっこは安全第一です。怪我はもちろん、ちょっと血が出ただけでもNGです。

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・春SP13 4月23日 08:00〜
・GWSP01 4月29日 07:00〜
・GWSP02 5月03日 07:00〜
・GWSP03 5月04日 07:00〜
・GWSP04 5月05日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0244 愛瀬りな(21歳・♀・猫)
 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0791 美角やよい(20歳・♀・牛)
 fa1890 泉 彩佳(15歳・♀・竜)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)

●リプレイ本文

『さあ、久しぶりにはじまりました、第6回プロレスごっこ王選手権。こんな深夜番組の実況をやっていいのか、というサトル・エンフィールド(fa2824)でお送りします。ちなみに心はいつも15才とか某学会長みたいなことを言っているので、一切問題ありません』
 実況のサトルの横には、解説としてなぜかバニーガール姿の愛瀬りな(fa0244)が座っている。
「こんばんは、愛瀬りなです。解説として参加させていただきます♪ ふつつか者ですが、みな様どうぞよろしくお願いいたします」
 丁寧に深々と礼をする愛瀬の横で、サトルがおもむろにアイマスクを装着する。番組による、よい子のサトルへの配慮なのかは分からない。とにかく、暗記した台本だけが頼りの目隠し実況となることだけは確かである。
「蒸れたりしませんか?」
『大丈夫です。初夏仕様ということで、メッシュになってますから』
「それなら、心配無用でしたね」
 そんなザルでは目隠しの意味はないのでは、とは気づかない愛瀬であった。
『最初の試合にまいりましょう。佐渡川ススム(fa3134)、いっぱしに美人セコンドをつけの登場だッ! ちくしょう、ススムのくせに生意気だぞ! それに、戦う相手がゴールデンウィークの倦怠感だ? ナメるな!』
 いかにもやる気のなさげな佐渡川が、小鳥遊真白(fa1170)に引きずられて入ってくる。しかし、リングインするやいなやゴロゴロしだす。
「どーせ、これが終わっても仕事なんだ‥‥」
 鼻をほじりながら、まったくやる気をみせない佐渡川。
 レフェリーのモヒカン(fa2944)が、早速カウントを取りはじめる。こんなむさい画で時間を食ってなるものかと、超高速カウントであっという間にテンカウントである。
「さあ、さっさと次の試合に行ってくれ!」
「ちょっと待ってください!」
 モヒカンが次の試合を促すところへ、解説の愛瀬がリングに上がってきてしまう。もちろん、モヒカンはそれを止めようとはしない。
「なんだか、お疲れのようですので‥‥栄養ドリンクを持ってきました。ぜひ、飲んでください♪」
 なぜかウィスキーをはじめとする大量の酒瓶がドンと並べられる。
「いやいや、どう見てもお酒じゃん!」
 倦怠感に完全敗北を喫した佐渡川であるが、さすがにツッコミを入れずにはいられない。
「え? プロレスの世界では、お酒をスポーツドリンクというのではなかったでしたっけ?」
「そんな人はごく一部、というかたった一人!」
「ああ! でしたら、こちらの方をどうぞ♪」
 それではとばかりに、スッポンの生き血やらトカゲの丸焼きやら、怪しげな物体が次から次へと用意される。
「ムム‥‥だが、せっかくりなちゃんが用意してくれたものを、断れる俺ではないのだよ!」
「何を! 若いモンには負けんぞ!」
 スッポンの生き血ドリンク、マムシ添えに手を伸ばすと、モヒカンも負けじと黒コゲのトカゲの丸焼きに手を伸ばす。
 数秒後、リングの上には燃え尽きた男の姿が二つあった。倦怠感云々以前に、生命活動停止である。
「もしよろしければ♪」
 やり遂げた顔の愛瀬が解説席に戻ってきて、サトルにも勧める。
『ついに金髪の猛獣が現れた! 九条運(fa0378)選手が肉塊と魚を捌きまくる! しかしレフェリーなき無法地帯に、凶器の包丁は完全スルーだッ!』
 都合よくアイマスクで何も見えないとばかりに、次の試合の実況をはじめてごまかすサトルであった。
 九条が着流しに白サラシという男くさい料理人スタイルで、カツオ一尾と10キロの牛肉の塊を担いで登場する。
『肉塊は、個人的に持って帰って食べたいところです。そう、米国産牛肉でなければ‥‥』
 今のご時勢、米国産牛肉は手に入らないので、贅沢にも国産ブランド牛のものである。なので、肉塊にさりげなく脊椎がついているが、心配無用なのである。
 試合の様子は早送りで一瞬に凝縮され、あっという間にサイコロステーキにタルタルステーキ、カツオのタタキが出来上がる。
「エイドリアーン!」
 完成に際し、意味不明の勝利の雄叫びである。
「どうですか、お味は?」
 レフェリーのモヒカンに食べてもらおうとするが、モヒカンは未だにグロッキー状態である。
『レフェリーの復帰に時間がかかりそうなので、この間に次の試合にまいりましょう! 美角やよい(fa0791)選手が、巨大メンコと対戦だぁ! これが大人の玩具って奴かッ!?』
「それは違うと思いますよ?」
 死屍累々の合間を縫って、巨大メンコが並べられていく。美角がマットを叩いた程度ではびくともしない。巨大なだけあって、ちょっとやそっとの風圧ではめくれもしないのだ。
「こうなったら‥‥とうっ!」
 コーナー最上段に上り、ダイビングボディプレスを見舞う美角。ようやく、メンコがちょっとだけ気持ち浮き上がる。
 ならばともう一度コーナー最上段に上る美角。だが、佐渡川がその様子をただ寝転がって見守るはずもなかった。
「とうっ!」
「うっ!」
 なぜか、ムーンサルトプレスを受けている佐渡川。美角がコーナー最上段に上る隙に、スルスルっと身体を移動させていたのだ。
「この圧着される感じが‥‥ぐはっ!」
 すべて言い終わらせることなく、情け容赦なく膝が落とされる。だが、佐渡川は余計に喜ぶだけであった。
「さあ、九条君もどうかね?」
「いや、さすがに俺は‥‥いやでも、アクション俳優として受け身の練習はしておいた方がいいのかもしれないな。じゃ、俺もお願いします!」
 モヒカン待ちで手持ち無沙汰だった九条をも誘う佐渡川。そう言って一瞬躊躇った九条だが、結局マットの上に仰向けになる。
「やるかっ!」
 ダイビングボディプレスとはならずに、さっくりと踏みつける美角。それでも、あやうく新感覚に目覚めそうになってしまう九条であった。
『さすが大人の遊び、収拾がつかなくなってきたので、問答無用で次の試合にまいりましょう! 泉彩佳(fa1890)が身体測定&健康診断に‥‥って、エロース!』
 保健室セットが運び込まれ、制服のブレザーと靴を脱いだだけのシャツ姿で登場する泉。その後ろには、なぜか美角も鋭く順番待ちをしている。
 そこへ、すりガラスのつい立ても運び込まれてくる。
『なんだー!? あの視界を遮る曇りガラスは! ふざけんな、金返せ!』
 サトルの血の涙を流しながらの叫びの中、白衣を着た医師の格好の佐渡川と、佐渡川にすっかり悪の道に引きずり込まれてしまった九条が看護師の格好で現れて、平然とつい立ての向こう側へと回る。
「じゃあ、前はだけてみせて」
 聴診器を手に、佐渡川が泉に声をかける。
 ピーッ!
 ここでついにモヒカンが甦生する。九条の料理には一切目もくれず、ホイッスルを吹いて佐渡川と九条の元に駆けつけていく。
 しかし、駆けつけただけで止めることはなく、一緒に仲間に加わるモヒカン。なんのためのホイッスルだったのか、よく分からない。
「えっと‥‥じゃあ、前はだけてみせて」
「いい加減にしろ!」
 今まで様子を見守っていた小鳥遊だが、さすがにツッコミに入る。スコーン、スコーン、スコーンと3発叩き込んで、3人を引きずっていく。
「やっぱり、私の出番ですね?」
 バニーガールの上に白衣を羽織っただけの女医スタイルで、愛瀬がリングに上がってくる。
「はい、お願いします!」
 結局、男子禁制のまま泉の内科検診は終わってしまう。
「じゃあ、次は検尿ですねー」
「さあ、ここに!」
 しぶといまでに甦生した佐渡川が寝転がると、大口を開けて待ち構えている。
「アホか!」
 今一度小鳥遊にボコボコにされて、佐渡川が運ばれていく。その隙に、美角の内科検診も終わってしまう。
 検尿の紙コップを手に、スタジオを後にする二人。
 そこでなぜか照明が暗めになり、入場口がスポットライトで照らされる。そこに、黒い鱗風のマイクロビキニのみを着て登場はTyrantess(fa3596)である。そして、手にはなぜか紙コップである。
 おもむろに、その紙コップの中身を飲みはじめるTyrantess。九条とモヒカンは引き気味であるが、佐渡川は崇拝の目でTyrantessを見ている。
「‥‥って、水だーッ!」
 飲み干した紙コップを佐渡川に叩きつけると、リングインである。
「っつーか、カメラは見せ方分かってねぇし、大道具は手抜きだし、照明はあさっての方向だし‥‥大体、このつい立てがなってねぇじゃん!」
 そう言いざま、Tyrantessがつい立てを倒してしまう。そして、愛瀬に向き合ってドカっと座る。
「さあ、やってくんな!」
『僕たちはこういうのを待っていたんだ! Tyrantess選手の男気に乾杯!』
 メッシュとはいえジャマだとばかりに、ついにアイマスクを投げ捨ててしまうサトル。
 とはいえ、Tyrantessは元からきわどい衣装だけに、そのまま聴診器を当ててしまえる。
 いつもならここで佐渡川が文句を言うところであるが、いつの間にか姿を消している。ならば俺が行くしかあるまいと、モヒカンがホイッスルを吹いて突撃である。
「ちゃんと検査するなら、まずはそのビキニを取るべき! と愚考するが、いかがなものか?」
「そう言われれば、それもそうですね♪」
 Tyrantessが答えるよりも早く、愛瀬が勝手に同意してしまう。
「エロカッコイイ路線を目指しているなら、そのくらいできるハズだ!」
「それはエロカッコイイじゃなくて、ただのエロエロっつーんだよ!」
 なおもたたみかけにかかるモヒカンに、Tyrantessのハイキックが飛ぶ。
「その画、いいよ〜」
 だが、モヒカンがあっさりかわしてしまった上、いつの間にかカメラを持った九条が、そのハイキックをローアングルから股間接写である。
「えーっとなになに、次は照明さんがライト全開で温度を上げて、北風と太陽の‥‥」
 台本を片手に、スタッフの役どころを横取りの九条である。
「まあまあ、落ち着いて座ってくださいよ」
 そう言って愛瀬が手を伸ばすと、何気にTyrantessのブラのフックに手がかかってしまう。北風と太陽を持ち出すまでもなく、旅人はコートを剥がれてしまったわけだ。
「うわあ!」
 慌てて胸を腕で覆うTyrantess。
 しかし、残念なことにカメラに背を向けていたので、事なきを得るTyrantess。ガックリの九条とモヒカン。そして、のほほんと笑顔のままでまったく動じていない愛瀬。一番おそろしいタイプである。
 そこへ、泉と美角が戻ってくる。なぜかボロボロのゴミと化した佐渡川の身体を引きずって。
「ふっ、ちょっと場外乱闘してきちまったゼ‥‥ガクッ」
 場外乱闘と称し、カメラがなかろうと女子トイレまで追いかけていってしまった佐渡川だが、泉と美角に見事なまでに返り討ちに遭ったようだ。
 Tyrantessを完全に放置し、検査スティックを紙コップに差し込む愛瀬。
「二人ともOKです、潜血も蛋白も出てませんよー」
「蛋白質なら俺にまかせろ!」
 顔の形を変えてなお、ズボンを下ろしはじめる佐渡川。だが、あっという間に泉、美角、小鳥遊の三人がかりで袋である。
『僕、子どもだからなんのことだか分からない、全然分かんないよ!』
 そうは言いながらも、なぜかリングに向かって最敬礼のサトルであった。