ダジャレに命を懸けるアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/12〜05/14

●本文

 TOMITVの会議室。ムダにアツい上司が、部下を呼びつけていた。
「おい、この間のダジャレの番組、よかったじゃねえか。というわけで、なんかダジャレ言ってみろ!」
「え!? えーと、布団が吹っ飛んだ‥‥」
「‥‥天丼のつもりか?」
「ええ、一応そのつもりなんですが‥‥」
「ダジャレと関係ねーだろがッ!」
 ムダにアツい上司なので、いきなり鉄拳制裁である。
「ダジャレの番組持ってるんだったら、普段からおもしろいダジャレくらいストックしとかんか!!」
 ムダにアツい上司なので、口答えする隙も与えずに鉄拳制裁である。
「というわけで、もう1回番組撮って、ダジャレの腕を磨いて来い!」
「え!? おもしろい番組を撮るのが目的であって、ダジャレの腕を磨くのが目的じゃないんじゃ‥‥」
「手段が目的を凌駕するくらいさせてみろッ!」
 ムダにアツい上司なので、変なコトを言ってるのが自分と分かっていても鉄拳制裁である。
「というわけで、やってくれるな?」
「さっきから、『というわけで』ばっかりじゃないですか」
「細かいこと、気にすんなッ!」
 ムダにアツい上司なので、細かいことを気にして鉄拳制裁である。
 ともあれ、ダジャレを使ったおもしろVTRを競い合う企画の第2弾がスタートした。

『ダジャレに命を懸けろ』
 ダジャレを実際に収録してきたVTRのおもしろさを競い合います。撮ってこないで、スタジオ収録中にその場でやることも可能です。
 各VTRごとに採点され、優勝者には賞金10万円が授与されます。
 例:『布団が吹っ飛んだ』
 干してある布団が風で吹き飛ばされるだけだと点は低く、寝ているところに爆破で布団ごと吹き飛ばされれば点が高い。
 例:『小ウサギと銀行詐欺』
 イラストがその収録例。その後捕まらなければ、高得点が期待されます(多分、収録後に通報されます)。

その他注意点
・命懸けとはいえ、死んだら負けです。というか、番組がお蔵入りです。
・もちろん、流血もNG。但し、流血を伴わない怪我はガマンすればOKです。
・敢闘賞や技能賞など、優勝以外で若干の賞金が出るかもしれません。

過去の放送
・ダジャレに命を懸けろ 4月21日 23:00〜

●今回の参加者

 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0824 ベクサー・マカンダル(13歳・♀・鴉)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2396 海風 礼二郎(13歳・♂・蝙蝠)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)

●リプレイ本文

 いきなり外国の風景が映し出される。といっても、それだけではどこの国だか分からない。
 そこで、右手にメロンパンを浸したビール、左手にソーセージの刺さりまくったメロンパンの湯ノ花ゆくる(fa0640)が現れる。BGMはもちろんワーグナー。日本人の偏ったドイツ観に合わせ、分かりやすく作ってある。
「ドイツ人ってどいつなん?」
 とは言っても、全員ドイツ人とも言えなくもないし、W杯が近いせいか国籍豊かと言えなくもない。大体、周囲の人々の中にZebra(fa3503)が混じっているが、湯ノ花はじめスタッフ一同誰も気づいていない。
 次の瞬間、何事もなかったかのようにスタジオの風景に画面が切り替わる。
 そして、あずさ&お兄さん(fa2132)のお兄さんだけがポツンと映し出される。お兄さんはなぜか歯科医師のカッコである。
『歯科医の視界に司会‥‥ということで、司会兼解説のあずさだよ! では早速、チェダー千田(fa0427)さんに登場してもらっちゃお!』
 無言でよろよろと現れたチェダーは全身包帯だらけで、松葉杖までついている。
『えーっと‥‥どうして、チェダーさんは怪我しているの?』
「‥‥それは、おまえを食べるためだよ‥‥」
 一応ボケては見るものの、普段のキレはまったく見られないチェダー。一体何があったのか? VTRがスタートする。
「どうも、チェダーです。今日は女子高生のメッカにやって来ました」
 まだ五体満足なチェダーが、若者で賑わう通りを歩く姿が映る。
「世の中の男性諸君が、思っても口にできなかったことを今、成し遂げる‥‥俺は今日、新世界の神になる!」
 自分のセリフに恍惚の表情を浮かべるチェダーをバックに、スーパーがデカデカと表示される。
『緊急企画! チェダー千田の『ブサイクにモザイク!』』
 モザイクボードを持ったチェダーが、早速最初の獲物を発見する。
「ブサイクにモザイク!」
 チェダー曰くありえない化粧でブサイクな女子高生の顔の前に、モザイクボードが差し出される。
 当然、返り討ちにあうチェダー。だが、まったく懲りる気配はない。
「ブサイクにモザイク!」
 今度は3人組の女子高生に、モザイクボードを当てる。
「うわっ、超チェダー!」
「超チェダーって、意味分かんないよ!」
 意味はどうあれ、ボコボコにされるチェダー。
「モザイク! モザイク! モザーイクっ!」
 順調に生傷を増やす中、段々パンチドランカーの症状が進行してしまったのか、まったく関係のない男子高生とかにまでモザイクボードを当て出すチェダー。なので、その男子高生の一人がZebraであろうとは、気づくはずもない。
「モザイクっ!」
 だが、判断力の低下は時として奇跡を生み出す。打たれすぎチェダーは、全面シャドウグラスの黒塗りの高級車から降りてきた、明らかにマル暴なコワい人にまで手を出してしまう。
 次の瞬間、一体それまでどこに隠れていたんだというほどぞろぞろと、若い衆がどこからともなく出てくる。ここからは当然、モザイクボードではなく本物のモザイクの出番である。
 チェダーは袋にされ、さらには事務所とおぼしき場所へと引きずられていく。それに引き換え、カメラの映像はドンドン遠ざかっていく。明らかにスタッフ一同逃げていた。
『なるほど‥‥そういうわけだったんですね!』
 スタジオでは、あずさがうなずいていた。一方、チェダーの手には松葉杖‥‥ではなく、モザイクボードが握られていた。
「ブサイクなカマにモザイク‥‥そして、色々と深い理由で放送できないここにモザイクだ‥‥」
 お兄さんにモザイクをかけた次の瞬間、あずさのスカートをピラとめくり上げ、そこにモザイクボードを当てるチェダー。
『電柱で天誅!』
 思わず、本当にどこから取り出したのか謎なコンクリート製の電柱で、豪快なツッコミを入れるあずさ。
 チェダーが膝から崩れ、顔面を床に打ち据える。ピクリとも動かなくなるチェダー。だが、親指を突きたてた右手が、やり遂げた男のすべてを語っていた。
 そこで画面がまた海外に切り替わる。
 メロンパンを無理矢理口に突っ込まれたヤギをかかえた湯ノ花が、雪山の斜面を滑っている。遥か後方でZebraがヨーデルを歌っていたが、すぐに雪崩に巻き込まれて消えた。
「スイスでスイスイスキーです」
 次の瞬間、何事もなかったかのようにスタジオの風景に画面が切り替わる。スタジオでも何事もなかったかのように、チェダーだけがいなくなっている。
『つづいてはやみくもあんどんのお二人、ベクサー・マカンダル(fa0824)さんと海風礼二郎(fa2396)さんなんですが‥‥スタジオに来てませんね。どうしたんでしょう?』
 映像がどこぞの会議室に切り替わる。そこに、ベクサーと海風の二人がいた。
「ねえ、ベクちゃん。時計を放っとけい、猫が寝込んだ辺りがいいと思うんだけど、どうかな?」
「古典の授業じゃないんだから‥‥」
「じゃあ、これはどうかな? 研究員の減給、スチール家具を捨てーる、他にも‥‥ダンゴムシのタンゴ、ダンゴムシのアルゼンチンタンゴ‥‥カレイの可憐なカレンダー、カレーの可憐なカレンダー、カレーの辛えカレンダー‥‥」
 同じようなのばっかじゃないかとキレそうになるベクサーだったが、グッと耐えるのがリーダーの器量というものである。
「ベタなオヤジギャグ‥‥もとい、視聴者に分かりやすいダジャレもいいけど‥‥もっとさ、こう‥‥なんていうの? ヴィジュアル的にも絵になるのが良くない?」
「そんなこと言うなら、ベクちゃんが考えてよ!」
「いいよ‥‥」
 あっさりOKをもらって拍子抜けの海風に対し、ベクサーは海風の首根っこをつかむと、そのまま窓の外へと身体を放り出す。
「真下に落ちました、ってのはどう?」
「ちょ、ベクちゃ!」
「暴れると危ないって‥‥あっ!」
 海風の姿が消え、うわーっという悲鳴が小さくなっていく。
「何撮ってるんだ!」
 そこでブチっと映像が切られる。なぜかカメラを遮る役がZebraだったが、海風が転落してしまったことに比べれば大事の前の小事である。
『‥‥なるほど、こんなことがあったんですね』
「そうなんですよ、大変でした‥‥」
『わっ!?』
 驚くあずさの前に、海風とベクサーが平然と立っていた。先のチェダーのように、包帯ぐるぐる巻きとかいうこともない。
「まー、1階だったもんね‥‥」
 ここでまた画面が切り替わり、ニューヨークからの映像になる。
 通りに浴槽を置き、メロンパンを大量に浮かべて不思議な色を醸し出している湯船に湯ノ花が浸かっている。
「ニューヨークで入浴です」
 道行くニューヨーカーたちが怪訝な目で眺めているが、裸ではなくスクール水着なのでまったく恥ずかしくない。遠巻きにZebraも眺めていたが、何一つ恥ずかしいことなどない。
 さらに画面は切り替わって、スケート場が映し出される。
「稲婆のイナバウアーじゃ!」
 冬織(fa2993)が大声で号令をかけると、お婆さんたちがスケートリンクに勢ぞろいである。
「ひぃ、ふう、みぃ‥‥稲という名の婆さんも、結構おるもんじゃの」
 その中に明らかに男であるZebraが混じっているが、誰も気づかない。
「さて、わしがトゥーランドットを熱唱するゆえ、稲婆たちはイナバウアーを気張るのじゃぞ‥‥ふむ、イナバウアーどころか背筋さえ伸びぬの。失敗じゃ、次にまいるぞえ」
 一瞬で切り捨てると、振り返ることなくスケート場を後にする冬織。次の瞬間には、教会の前に立っていた。
「本日最初は、度胸で読経じゃ! 度胸のいる様々な場所へ、読経しに乗込むぞえ」
 先程のはカット前提で、何事もなかったかのように一発目のように振舞う冬織。
 その後、お化け屋敷、結婚式場と回り、やがてどこかで見た風景にたどり着く。そう、先程のチェダーのときに見覚えのある、某事務所前である。
「野郎ども、殴りこみ読経じゃ!」
 木刀をびしっと事務所に向ける冬織。それに合わせて、うぉーっとZebraが突撃していく。
「ふむ、わしは逃げておくので、みなもうまく逃げるのじゃぞ。次にまいるぞえ」
 その後どうなったのか分からぬまま、プレハブお茶の間セットの前に立っている冬織。
「本日最初は、火事で家事する佳人な歌人じゃ! 佳人な歌人のわしが家事をしておくゆえ、そこな家族はくつろいでおるがよい」
 先程のもカット前提で、何事もなかったかのように一発目のように振舞う冬織。一方、家族にはいつの間にかZebraである。佳人の家族だけあって、傷一つないキレイな顔のZebra。とはいえ、ボディについては見えないので分からなかったが。
「家事といえば、料理じゃな!」
 巨大中華鍋にてんぷら油をなみなみと注ぎ、火を点けたらそのまま放置である。
「ほれ、みなで掃除じゃ。そこ、雑巾はもっと固く絞る!」
 お茶の間セットに戻ると、家族の気をそらすためにしばらく小芝居がつづく。
「ふむ‥‥そろそろ火も回りだしたころじゃな」
 小声で小さく呟くと、掃除させている家族を残して、一人キッチンセットに戻る冬織。すでに発火していたが、まだ満足できないとばかりに謎の液体をかける。
「ここで一句‥‥大火事だ、ああ大火事だ、大火事だ」
 そう詠みながらも、自分で鍋にガソリンを注いでいるので、爆発に近い火災である。
「わしはあらかじめ作っておったこの脱出口から失礼する。ではの!」
 しばらく業火に包まれるプレハブが映った後、例によって何事もなかったかのように地球外の映像に切り替わる。
「NASA経由で‥‥月に‥‥来ています。TOMITVの技術力は‥‥世界一ィ‥‥です。月でウサギと餅つき‥‥です」
 月面セットに宇宙服を着ての登場は、これまた湯ノ花である。バックで餅つきをしているのが、ウサギの着ぐるみを着たZebraだったが、誰も気づかない。
 だが、とにかく家事から無事に逃れたということか? いやいや、収録日の前後関係が不明なので、無事だったのかどうかは不明のままである。
 そんな謎はさておき、映像はジャングルに切り替わる。そこには、眠るトラに忍び寄る草壁蛍(fa3072)の姿があった。
「虎ぶったら、トラブった!」
 背後に回りこむと、叫びざま虎を殴る草壁。当然、虎は激怒で起き上がる。だが、肝心の虎がZebraの方に向かっていってしまったので、全員無事である。
「これじゃ、全然トラブってないわね。次のをやりましょ」
 画面は切り替わって、Zebraの部屋の中である。
「庭には二羽、ニワトリがいる」
 庭ではなくZebraの部屋の中だが、構わずニワトリの放し飼いである。
 さらに構わず、その二羽のニワトリの首を刀で刎ねる草壁。血が床に、壁に、そして草壁自身に飛び散るが、その辺はモザイクで問題なしである。
 ドン引きのZebraを無視して、毛をむしりはじめる草壁。見事な鳥肌に仕上げると、鉄条網で覆ってみせる。
「これで鳥肉は取りにくくなったわ」
 Zebraとしてはツッコミたいのは山々だが、返り血を浴びてやり遂げたいい表情をしている草壁には、もはや何も言い返せない。
 草壁はなおも勝手にバスルームに入ると、シャワーで返り血を洗い流す。
「シャワーを浴びるしゃーわせー♪」
 もちろん草壁は全裸だが、なぜかどこからともなく現れたチェダーがモザイクボードを差し出しているので、まったく問題ない。そう、チェダーまで全裸だが、まったく問題ないのだ。
 だから問題ないまま画面は切り替わり、シャトルの大気圏突入である。もちろん、操縦するは湯ノ花。ちゃんと手動操縦なので、突入角度を間違えたのは言うまでもない。
「大気圏突入は大危険で耐えきれん」
 窓の外にはウサギの着ぐるみを着たZebraが張り付いていたが、犬死にではないとはいかない様相だ。
 やがて大爆発が起こり、スタジオに映像が戻る。
 スタジオには、全員の元気な姿があった。あくまでも命懸けであって、命を散らすわけにはいかないのだ。だから、チェダーの姿がないことは気にしてはいけない。
 なので、例によって何事もなかったかのように表彰式である。
『すでに病院に向かわれているチェダー千田さんに、敢闘賞5万円が送られます。また、全VTRに見切れていた‥‥って見切れてたってレベルじゃない気がするけど、Zebraさんに技能賞5万円が送られます』
「ずっと『ダジャレを言うのは誰じゃ』って言って回ってたんだけど、まったく音声拾ってもらえてなかったね‥‥」
 5万円をもらっても、ガックリのZebraである。
『そして優勝は、ニワトリを情け容赦なく絞めた‥‥ニワトリの命を懸けて、そして奪った、草壁さんに決定です!』
「あっりがとうございまーす!」
『それでは、ポエムと油揚げとお湯が入った器!』
 締めの挨拶をして手を振るあずさだったが、スタジオ中ポカーンである。察したあずさが、慌てて説明をはじめる。
『ポエムが詩でSee。お湯、湯、you。油揚げが入った、揚げイン、again‥‥って、自分で自分のダジャレ解説ってマヌケだよぅ‥‥』
 あずさがギリギリのところで司会兼解説の解説をまっとうしたところで、番組は終了した。