リフォームフットサルアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/16〜05/18
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●本文
登場人物
・ディレクターに昇進したばかりの男(以下、ディレクター)
・ディレクターの上司(以下、上司A)
・上司Aのさらに上司(以下、上司B)
TOMITVのこのディレクターは、最近マイホームを建てたばかりだった。しかし、上司Aの提案によってメチャクチャなリフォームをされてしまう。それが、リフォームで廃墟という番組だった。
ディレクターはその恨みを晴らすべく、ディレクターは上司Bの許可をもらって、上司Aの屋敷にメチャクチャなリフォームを施してしまう。それが、リフォームで廃墟の逆襲という番組だった。
上司Aはその恨みを晴らすべく、上司Bの愛車の数々にメチャクチャなリフォーム(改造)を施してしまう。それが、リフォーム廃車復活戦という番組だった。このときのショックで、上司AB共に病院送りとなってしまう。
そして──
「いやー、やっと退院できたよ」
「全快を祝って、フットサルでもやりたいと思うんだが、どうよ?」
一緒の病院にいたことで、上司AとBの間には奇妙な連帯感が生まれていた。
「退院、おめでとうございます。フットサルですか? 大変よろしいのではないかと‥‥」
ディレクターが、ただひたすらに低頭で出迎える。
「そうか! そいつはうれしいな!」
「こりゃ、おもしろい画がたくさん撮れそうだ!」
「はぁ‥‥」
大喜びする上司二人にも、ディレクターは何のことだかさっぱり分からない。
「じゃ、おまえん家でフットサルするから」
「は? 集合じゃなくてですか?」
「だから、おまえん家の中でフットサルするから」
「はぁ!?」
こうして、ディレクターのマイホームの中でフットサルをするという、プレイヤーにとっては気分爽快な番組が作られることとなった。
企画内容:
8名までの精鋭が、各自思い思いにサッカーボールを蹴りまくります。
ゴールは各自自由に設定できます(例:トイレの便器の中、火のついたガスコンロの上、電子レンジで1分以上チンしたら等)
フットサル自体の勝敗は存在しません。ディレクターに一番殺意を抱かせることができた人が優勝、賞金10万円とディレクターの殺意がプレゼントされます。
その他、勝手に自分ルールを作ってかまいません(例:ボールはボウリング球、スローインは壁にぶつけないといけない、ハンドは5秒までOK等)。
全体の細かいルールは、上司二人がルールブックです。
人に直接危害を加えてはいけません。
過去の放送スケジュール:
・リフォームで廃墟 3月4日 07:00〜
・リフォームで廃墟の逆襲 4月1日 18:30〜
・リフォーム廃車復活戦 4月17日 23:00〜
●リプレイ本文
再び静けさを取り戻したかに見えたディレクターの家。だが、今日という日は久方ぶりの熱気を放っている。
いや、もはや熱気を放っているというレベルではない。早くも屋根の上では、馬っ気を出している佐渡川ススム(fa3134)が絶叫していた。
「出演者に、おねぇちゃんが欲しいー!!」
血の涙を流しながら、選手全員が男という今日の試合を恨む佐渡川。
「いざ出陣、世界へ〜!! 我輩は名無しの演技者(fa2582)、ネームレスと覚えておけ! いつかは世界を制してくれる! 手始めに、この家から制圧してくれる!」
一方ガレージでは、名無しの演技者がさらにその手始めとして、ディレクターの愛車をボコボコにしていた。ちなみに試合開始前であるが、小さなことを気にしてはいけない。試合に先立ったデモンストレーションのようなものである。
「うひょ〜!」
その車の上に、屋根を突き抜けて佐渡川が降ってくる。自らの流した血の涙に足を滑らせ、転落してきたのだ。
「破壊! 破壊! 破壊!! 殲滅だあぁ!!」
だが、一度動き出した名無しの演技者の破壊衝動は止まらない。解体作業用巨大ハンマー捌きが止まらない。
「早くどかないと、死んじまうぞ!」
フロントガラスを砕き、なおも屋根へと迫ってくるハンマー。
「ちょ! ハマって動けな‥‥うがぁッ!」
このように佐渡川と名無しの演技者が試合に向けてのコンセントレーションを高めている中、残る6人のメンバーは上司たちに自分ルールの提出を行っていた。
「‥‥というわけで、ゴールが壊れるたびにこの箱のクジを引いて、新しいゴールを決めてください」
そう言って、宮間映(fa0082)が上司Bにクジ箱を手渡す。その他、ボールもクジで決められる、そのボールを用いる本来のスポーツの用い方をしてもよい等、選手の総意が伝えられる。
「ワナみたいなものを仕かけるのはさすがに避けた方がいいと思うので、開始前に試合場のチェックをしてみてはどうでしょう?」
「言ってる意味が分からない」
ハンマー・金剛(fa2074)がそう提案するが、肩をすくめて首を振る上司B。言われるまでもなく分かっているが、あくまでも知らぬ存ぜぬを貫き通す。
だが、どちらにしろワナを仕かけるような輩はいない。全員が肉体言語でしか語る気がない様子で、柔軟やらのアップに余念がない。
「やめよーよぅ。みんな男だらけだからといって、やり過ぎは良くないよぉ〜」
「言ってる意味が分からない」
ヨシュア・ルーン(fa3577)が気弱なことを言っているが、やはり肩をすくめて首を振る上司B。言われるまでもなく分かっているが、あくまでも知らぬ存ぜぬを貫き通す。
「はっ! 男だからいけないのであって、女ならいいのかな? 偉い人も言ってるし。『私は世界を変えるのは女だと思っている』って‥‥じゃあ?」
急遽何やら書き込むと、クジ箱の中に放り込むヨシュア。
その他にも、各個人のみの自分ルールは、その場で行った後に説明することとなった。やはり何事も、事後承諾が楽なのである。
最終調整も終わり、試合開始場所となるリビングに、選手8名が一人ずつ手を挙げながら入場してくる。
「恋人とデートしたりするだけでは発散できない類のストレスが溜まっていて、爆発寸前ですよ」
まずは金剛がそう言いながら入場してくる。ディレクターのではなく、恋人のいない一部出場者たちからの殺意の獲得に早くも成功する。
そして、世紀末覇王スタイルのモヒカン(fa2944)、猫耳アイドルとして猫耳だけに留まらず猫手、猫足で登場の七瀬七海(fa3599)、マジシャンスタイルのZebra(fa3503)ら何の競技だか分からない格好の選手がつづく中、ようやくユニフォーム姿の宮間とヨシュアが入ってくる。
「ぶっ壊せ! より良い画をとるためだ! 多少の犠牲なんぞ気にするな!」
ハンマーを担ぎながら、名無しの演技者も入ってくる。その後ろには、ウォーミングアップのし過ぎで早くもボロボロの佐渡川がつづいている。
「我々はスポーツマンシップを乗っ取り、威風堂々と闘争することを誓約する!!」
モヒカンが選手宣誓を行う。スポーツマンシップに則る気がないのは言うまでもない。というか、スポーツの枠組みを超えたこの競技に、スポーツマンシップもクソもない。
「最初は‥‥タンスに決定!」
そして、いよいよ試合開始である。ディレクターが生気のない瞳で見つめる中、サッカーボールをいきなり人数分転がして渡す上司A。チーム分けする気ゼロである。
「おまえら全員点取り屋だ! 行け!」
こうなったら、ボールが何個あろうとも、ポジションがどこであろうとも、やることはゴールを目指すだけである。ただ一人、キーパーを除いては。
キーパーグローブをつけた佐渡川が、手に持っていたスプレーで床に線を引いていく。
「ボールは友だち、このスーパーグレートゴールキーパー佐渡川が全部止めてやるゼ!」
そう言って、タンスの前に立つ佐渡川。思わず、ディレクターが感動の涙を流してしまう。だが、それで打つのをやめる選手一同ではない。
「きゃーっ!」
ヨシュアが悲鳴を上げると、足を押さえてうずくまる。一見普通のサッカーボールだったが、実はタイガーショットが打てそうな砂入りボールだったのである。早くもボールをクジで決めない、初っ端から飛ばし気味の上司たちだった。
「鍛え方が足りませんね。ならば、この俺の鍛え上げられたキックが吼えますよ!」
「ペナルティーエリア外からのシュートなら、100%止めてみせるゼ‥‥」
金剛のシュートが唸る。だが、キーパー佐渡川の真正面だ。
「ぐぼっ! 殺す気かーッ!」
佐渡川が前のめりに倒れる。だが、まだ悪態をつく余裕はある。
「ニャニャ瀬ニャニャ海、行きますニャー!」
そんな佐渡川にまったく構わず、七瀬が猫足でペナルティーエリア内からのシュートを打つ。
「うわっ! ちょっ!? そのラインの内側に入っちゃダメだろー!!」
七瀬の蹴ったボールが、人間の蹴ったボールにあるまじき凄まじい勢いで佐渡川一直線である。砂入りボールであるにもかかわらず、ボールがひしゃげるほどの勢いである。
「ぐぼはっ!」
佐渡川の身体が見事に吹き飛ぶ。ボールに押されて身体ごと吹っ飛ぶ演出など、演出過剰のサッカーアニメ以外でそうそう見られるものではない。
タンスが木っ端微塵となる。ただ、グシャっというイヤな音がタンスの砕ける音だったのか、あるいは佐渡川の身体中の骨が砕ける音だったのかは謎である。
とにかく、早速佐渡川が担架で運ばれていく。
「じゃ、次のゴールは‥‥キッチンのシンク! ボールはバレーボール!」
そんな出来事にはまったく動じることなく、上司Aが次のゴールとボールを淡々と指定する。
「壁が邪魔だな。ブチ抜いてやる!」
相変わらず持ちつづけていたハンマーで、宣言どおり壁を打ち抜く名無しの演技者。ドアは一切無視である。
「ふぅ、これでゴールが見えるようになったな。通り道ができたぞ!」
「これはありがたい‥‥アターック!」
Zebraが、早速がら空きになった壁越しにスパイクを打つ。
「あーっ! 外れた。しかし‥‥ワープボール!」
なぜか、再び手元にバレーボールが現れる。奇術師Zebraの本領発揮である。もちろん、奇術師なのでタネは明かせられない。
「また外れた‥‥しかし、ワープボール! それでも外れた‥‥しかし、ワープボール!」
Zebraがワープボールの無限ループにハマりかけていたころ、他の面々も黙ってシュートの番を待っていたわけではない。
「すまぬ抜かれた、タックルで止めても良いか?」
「どうぞ」
「ショルダーチャージじゃぁッ!」
モヒカンが宮間に話しかけると、ショルダーチャージをかける。
別に自分の足下にボールはあるのだから、他のプレイヤーから奪う必要など微塵もないのだが、そんな些細なことは一切無視である。
「一流のフットサルプレイヤーは、物は壊しても人は壊さないって聞きました」
どうぞと言っておきながら、ひょいと避ける宮間。
ドカーン! 轟音と共に、モヒカンが名無しの演技者が打ち抜いたのとは別の壁にめり込んでいた。
「投げ出さないこと、信じ抜くこと。勝敗よりも最後まで戦い抜くこと、それが一番大事ッ!」
壁の破片を撒き散らしながら、今度は七瀬にショルダーチャージにいくモヒカン。
だが、身軽な七瀬はアクロバティックにムダに大きいリアクションで避けてしまう。着地と同時に、放り投げていたボールをキャッチする。
「肉球で保持するなら、何時間でもハンドはOKay!」
カメラに向かってニャーと微笑む七瀬。今はバレーボールなのでハンドはOKだが、これでホールディングもOKである。
一方のモヒカンは、目標を失ってまたも壁に‥‥と思いきや、その壁はすでに名無しの演技者によって打ち抜かれてしまってない。仕方ないので、わずかに残った柱に激突する。
ドカーン! 柱をへし折ってなお、モヒカンの勢いは止まらない。
「邪魔だ! 怪我をしたいのか!!」
そのモヒカンに、名無しの演技者の番長ばりの殺人スライディングが襲う。
今度はモヒカンがひょいと避ける。避けられるならさっさと止まれという話だが、それとこれとは話が別である。
「うおー! 誰か止めろ!」
と言いつつも、スライディングの行き先は確実にディレクターに向いている。
「うぎゃ!」
すでにとっくに放心状態だったディレクターに、鋭いスライディングを避けられるはずもない。
「世界を目指すなら、この程度耐えてみせろ!!」
ディレクターを無理矢理引きずり起こすと、ポンポンと頭を軽く叩く名無しの演技者。だが、そのままへなへなと座り込んでしまうディレクター。
しかし、名無しの演技者は世界を目指すには後ろは振り向かないとばかりに、そのまま試合に復帰していってしまう。
片や止まれないモヒカンであるが、その前になぜかラグビーボールをもった金剛が待ち構えていた。
「あとはモヒカンさんさえ凌げばトライです!」
モヒカンの強烈なタックルが金剛を襲う。2mの巨漢同士の激突。なんとか踏みとどまる金剛だったが、ボールを前に落としてしまう。ノックオンである。
「ラグビーではボールを前に投げられないではないか! ということで、今からアメフトに変更だ!」
「ならば、こちらはオージーボールで行かせてもらいましょう!」
もはや完全にボールは好きに使っていい状態になっていたが、未だに黙々とバレーボールと格闘しているのがZebraである。
「‥‥しかし、ワープボール! それでも外れた‥‥しかし、ワープボール!」
キッチン中がバレーボールになっているが、こんなにどこから出したんだとか無粋なことを考えてはいけない。これはマジックなのだから。
「あ、入っちゃった!」
「次のゴールは‥‥」
Zebraが喜びのダンスを披露する中、上司Aが淡々とクジを引く。一応、ゴールの方のクジ引きは続行のようである。
「えーっと、なになに‥‥選手は全員女装すること。化粧は顔の80%を被うこと‥‥って、しゃらくせえ、もうどこでも好きなトコにゴールしやがれ!」
「えー、せっかく入れたのにぃ!」
ヨシュアが非難の声を上げるが、上司二人は完全無視である。唯一味方してくれそうなディレクターも、放心状態でうずくまったままである。
「しょうがない、死に化粧を‥‥」
庭に運ばれたまま放置されていた佐渡川の顔に、勝手な化粧をしはじめるヨシュア。
だが、家の中は無秩序な戦場である。
「名WTBと呼ばれたこの俺の足捌きについて来れますか?」
「見くびるな、こう見えても迷CBと言われた男よ!」
金剛はラグビー、モヒカンはアメフトのままだったが、なぜか噛み合っていたし、かと思えば、宮間がボウリング球で鋭いフックボールを見せたかと思うと、名無しの演技者がハンマーでゲートボール返し。
Zebraがシュートを放ったかと思うと、そのボールが七瀬だったり、それなのに七瀬が見事な空中殺法でボール以上の働きをみせたり。
「はい、あと5分!」
上司Bが、淡々と時間を告げる。家の中はすでに居住不可能なまでに荒れているが、まだ家自身は建ったままである。それでは、選手たちの誇りは満たされない。
もはや少しでも丸いものを連想できればボールとばかりに、宮間が四角い水槽を蹴破る。水槽といえば金魚鉢、金魚蜂は丸いというわけだ。
七瀬はその水槽から溢れた魚とじゃれているし、いつしか金剛とモヒカンはスクラムを組んで壁と戦っていた。名無しの演技者はハンマーを振るいつづけ、Zebraは家が崩れたときに備えて、早々に新たなマジックの仕込みをはじめている。
「キーパーも上がるゼ!」
「あーん、服のコーディネートがまだだよぅ!」
いつの間にか、佐渡川が復帰してくる。その後ろを、婦人服を持ったヨシュアが追いかけていく。もはや、完全に迫り来る時間との戦いであった。
「ロスタイム、家が崩れるまで!」
だが、上司Bの一言ですべては一変する。結局この2時間後、家はただの瓦礫の山と化した。
「新築決定、おめでとうございます♪」
ポンとZebraの手の中に花束が現れると、それをディレクターに手渡す。
そして、家が壊れる一番直接的な破壊工作を繰り広げた名無しの演技者に、上司二人から優勝賞金10万円が送られた。
また、役に立っていたかどうかは謎であるが、ゴールキーパーとしてボールを止めようとした佐渡川に、ディレクターから敢闘賞5万円が送られた。