ムチャキング4アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/27〜05/29

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「いよいよ、サッカーのワールドカップが近づいてきましたね」
「おう、これでピッチングマシンをどんな球でも発射できるように改造した成果が発揮できるってもんだ!」
 ここでいうピッチングマシンとは、過去ムチャキング1〜3で使われた、火薬を使ってピストルと同じ原理で球を発射する、野球の球なら時速300キロで飛ばせるというシロモノのことである。
「ついにサッカーボールを発射ですね! となるとバッターじゃなくて、今度はゴールキーパーですか?」
「そうだ! ただ、別にサッカーボールである必要はないよな?」
「はい!?」
「サッカーボールだけじゃなく、いろんな球からゴールを守るんだ。じゃなきゃ、ムチャキングと名乗るわけにはいかねーだろ?」
「いや、サッカーボールでも十分ムチャだと思うんですけど‥‥」
「砲丸とか、ボーリング球とか、超見てみたくね?」
「前回も同じコト聞いた気がしますが‥‥それじゃ、やる場所が野球場かサッカー場かの違いだけじゃないですか!?」
「それもまたやむなし!」
「えー!」
 こうして、サッカーW杯便乗のムチャキング4がスタートした。

 無謀王決定! ムチャキング4
『日本の背番号23は俺だ! ボールは友だち、全部受け止めてみせる!』

 ペナルティキックを止めるキーパーの役で、ムチャ度を競い合います。試技は何球でも可。

 ムチャキング選出は、採点によってなされます。
・20点満点。
・ムチャの度合いとおもしろさの兼ね合いで、採点されます。
・優勝者には4代目ムチャキングとして10万円が送られます。

事前に用意される小道具
 大概のものは用意されます。持ち込みも可です。なお、場所は陸上競技場内のサッカーグラウンドとなります。

注意点
・退場処分、流血、怪我、死亡したら0点になります。
・というか、死者が出たらお蔵入りです。
・但し、流血はカメラに映らない範囲ならOK、怪我は覚られないようガマンすればOKです。
・ボールを止めようと止めなかろうと、点数が一番高くてムチャキングに選出された人が優勝です。

過去の放送スケジュール
・ムチャキング  3月09日 23:00〜
・ムチャキング2 3月30日 22:30〜
・ムチャキング3 4月19日 18:00〜

●今回の参加者

 fa0016 エディ・マカンダル(28歳・♂・蝙蝠)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa1010 霧隠・孤影(17歳・♀・兎)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2582 名無しの演技者(19歳・♂・蝙蝠)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3502 水無月鈴(16歳・♀・小鳥)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

 イカレた打たれすぎのパンチドランカーどもの饗宴、ムチャキング。WBC便乗にはじまり、いよいよW杯便乗にまで到達し、数えること早くも4回目。
 よって、今回の舞台はサッカー場である。そして、サッカーらしくということで、手をつないでの選手入場だ。とはいえ、子どもたちではなく、出場者同士でであるが。
 まず先頭は、DarkUnicorn(fa3622)と湯ノ花ゆくる(fa0640)の姉妹コンビ。DarkUnicornはナース服に白黒の髪、そして顔にはマジックでツギハギ傷を書き込んでの登場である。傷の入れ場所を間違えてフランケンっぽくなってしまっているが、パンチドランカーなので仕方がない。
 一方の湯ノ花は、なぜか山ごもり明けのようなボロボロの服装で、何やらメロンパン以外のものを担いでいたが、こちらもパンチドランカーなので仕方がない。
 つづいて、エディ・マカンダル(fa0016)がパイロ・シルヴァン(fa1772)を肩に乗せて入ってくる。こちらは一転して、正統派スタイルでキーパーらしく決めている。
「ゴールはトモダチ、コワくなんかないよ!」
 だがそう言って、ゴールによじ登るパイロ。なんとかとパンチドランカーは高いところが好きなので仕方がない。
「おーい、あぶないぞ。早く降りてこーい」
 両手を広げて、パイロを呼び込むエディ。そこへパイロが飛び降りてくるが、勢いがよすぎてエディは受け止めたものの、転倒して後頭部をしこたま打ちつけてしまう。しかし、軽度のパンチドランカーが重度になっただけなので、気にしてはいけない。
 さらにその次に、霧隠孤影(fa1010)と水無月鈴(fa3502)が入ってくる。
『さぁはじまりました、ムチャキング。ここからの実況は私、水無月鈴でお送りしていきます』
 自分で実況しながら入ってくる水無月。別にパンチドランカーなわけではないので、そのまま実況席に着席する。
 一方の霧隠はバットを素振りしながらの入場だが、これもパンチドランカーなわけではない。対するは普通じゃないだけのピッチングマシンなのだから。むしろ、バットでパンチドランカーにする側である。
 最後に名無しの演技者(fa2582)と佐渡川ススム(fa3134)の入場だ。手をつなぐのではなく、仲良く腕を組んでラブラブでの入場だが、名無しの演技者が露骨にイヤな顔をしているのは言うまでもない。
「ムチャキング、フォーッ!」
 名無しの演技者の太ももに足をからませて、激しくピストン運動をはじめる佐渡川。
「俺の股間が火を吹くゼ!」
 そのままピッチングマシンに駆け寄ると、今度はピッチングマシンに向けて高速ピストンである。
「しっ! 見ちゃいけませんです!」
 慌ててパイロの目をふさぐ霧隠。今までのムチャを気取るためにパンチドランカーのフリをしていた人たちとは違って、佐渡川は本当に打たれすぎの人なので、見てみぬフリをしてあげるのが、せめてものやさしさというものだ。
「目標、眼前の佐渡川! 弾種、ボウリング砲丸! 撃てぇ!」
 そこへ、ナポレオン軍時代のフランス兵の格好をしていた名無しの演技者が、サーベルを抜いて合図を出す。
 果たして轟音が轟き、ボウリング球が発射される。となれば、発射口の前で腰を振っていた佐渡川の股間に直撃する以外の選択肢はない。
「〜ッ! こ、この刺激がたまらな‥‥い。ハァハァ‥‥」
 声にならない叫びを上げながらも、早くも昇天寸前の佐渡川。そのリアクションに、名無しの演技者がこんなはずではと愕然としている。
 だが、佐渡川はそれでもなお満足できていなかった。
「所長! 使い物にならなくなってないか、試させて欲しいんだ!」
 所属する神城台プロダクションの所長である霧隠の下へ駆け寄る佐渡川。いつしか下半身モザイク姿であるが、頭のネジが飛んでいる以前に最初からないので、特に問題はない。
「汚いもの、見せるなです!」
 だからといって、霧隠も問題なしで過ごせるわけもないので、持っていたバットを一振りである。
「〜ッ! こ、この刺激がたまらな‥‥い。ハァハァ‥‥」
 声にならない叫びを上げながらも、もっと気持ちよくなってしまう佐渡川。画的にあまりにも美しくないので、カメラが切り替わってしまう。
『えー、無事に始球式が終わりましたところへ、解説のDarkUnicornが駆けつけてくださいました』
 どこが無事なのかはよく分からないが、放送席の映像に切り替わったので水無月が冷静に進行する。
「あの情け容赦のない被弾術‥‥タダモノではないのッ。アマチュアとは思えぬ‥‥ドMにも程があるとはこのことじゃの」
『被弾‥‥術、ですか。さあ、次のエディ選手はどのような被弾術を見せてくれるのでしょうか?』
「被弾などせぬ。きっちり止めるッ!」
 ゴール前では、すでにエディが両手を広げてボールを待ち構え、準備万端であった。
「目標、エディ! 弾種、サッカーボール! 撃てぇ!」
 名無しの演技者の合図で、ボールが発射される。凄まじいスピードとはいえキーパー真正面なので、しっかりとキャッチすることはできなかったものの、さすがにゴールを守ることはできた。
「何をしている、早く撃てい!」
 すぐさま第2弾が撃ち込まれる。今度はサッカーボールではない。
 が、それをキャッチしたのは上空から降ってきたパイロだった。なんとかとパンチドランカーは高いところが好きなので、いつの間にかクロスバーの上にパイロが舞い戻っていたのだ。
 飛んできたのは番組スポンサーのジュースのペットボトルだった。パイロはおもむろにそれを飲みはじめると、
「おいしいっ!」
 と、カメラにラベルをかざしてみせる。
「ちょ、それは俺の‥‥ぐぼはっ!」
 抗議しようと横を向いたエディのテンプルに、次のペットボトルが見事に突き刺さる。
「‥‥ッ! 止めた、止めたって。ホラ!」
 意識が飛んだのか一瞬間ができたが、すぐにパイロに対抗して飲みはじめるエディ。
「ゴクゴク‥‥うまい! ぐぎっ!」
 だが、カメラに向けてさわやかな笑顔を見せようとしたところに、今度はアゴをかすめてペットボトルが飛んでいきゴール! エディは膝から崩れ落ちる。
 担架に乗せられ、エディが野戦病院と化したベンチ裏へと運ばれていく。といっても、先客は下半身丸出しでうずくまる佐渡川しかいなかったが。
「目標、パイロ! 弾種、テニスボール! 撃ちまくれぇ!」
 一方、パイロはまたもクロスバーの上に退避していた。
『これはどういうことですか?』
「パンチドランカーの症状の一種で、高いところにいないと落ち着かないわけじゃな!」
『聞いたことない症状ですが‥‥単にボールを怖がって降りてこないだけな気がするんですけど』
「気のせいじゃ! それよりもちょっとナースのお仕事に行ってくるぞえ」
『あ、エディさんの治療ですね』
 DarkUnicornが席を立ったころ、パイロは秘密兵器を取り出していた。
「対策はこれさ!」
 取り出したるは、対暴徒用ネットガン。これでテニスボールを一網打尽というわけだ。
 テニスボールの砲撃が一瞬止んだ隙に、無意味にコーナーポストを三角飛びして降りるパイロ。
「スーパーグレートカラテキーパー──略してSGKKと呼ばれたこのパイロの死に様見さらせ、愚民ども!」
 だが、手は空ではなくネットガン。それがパイロクオリティ。
『あーっと、しかし球の勢いがまったく死にません!』
 結局本当に死に様を見せて、野戦病院の住人が一人増えただけだった。
『つづいては‥‥入場時から持っていた塊が気になります、湯ノ花選手です』
「山ごもりで‥‥金属探知機使っていたら‥‥見つけてしまいました‥‥不発弾です‥‥」
『ムチャキングで山ごもりすることも謎ながら、山ごもりで金属探知機を使う意味がさらなる謎を呼んでますが‥‥どういうことでしょうか? って、解説のDarkUnicornさんはナースのお仕事中でしたね』
 見れば、DarkUnicornはエディとパイロの治療に当たっていた。
「‥‥というわけで、治療費は三千万円じゃ!」
「ちょ、勝手に治療した上にぼったくり過ぎ!」
「払えなければ代わりに身ぐるみ全部置いていけ‥‥じゃッ!」
 モグリのナースだけに、ムチャな金額を吹っかけるのはお約束である。だが、本当に服を奪い取りにかかるDarkUnicorn。すでに下半身のみ自らはいでしまっている佐渡川が放置なのは、言うまでもない。もちろん治療からして放置なのも、言うまでもない。
 そんなやりとりの外野はさておき、不発弾のセッティングを終える名無しの演技者。だが、どうしても一つの疑念が拭えずにいた。
「‥‥撃つ直前になってから聞くのもなんだが‥‥信管は抜いてあるんだよな?」
「はい? なんですか‥‥それは? 聞いたこと‥‥ないです‥‥」
「ああ、だがもう止まらない‥‥発射!」
 動き出したピッチングマシンに、もはや名無しの演技者にはどうすることもできない。とにかく、今はピッチングマシン発射の際の爆発で誘爆しなかったことに感謝するだけだ。
「あ、メロンパンが‥‥落ちてしまいました‥‥拾わなきゃ‥‥」
 ちょうど湯ノ花がかがんだところへ、不発弾が通過していく。ネットを突き抜け、観客席に飛び込む。そして、大爆発。
『なんということでしょうかっ! 死傷者は出ていないようですが‥‥観客席の一部が消し飛んでしまいましたっ!』
 それでも、収録は平然とつづけられる。ムチャキングなのだから、この程度のムチャで引いてはいけない。
 反対側のゴールを使って、今度は霧隠が登場する。相変わらず、バットは持ったままである。
「目標、霧隠! 弾種、ゴルフボール! 撃てっ!」
「とりゃーです!」
 大きく振りかぶって、フルスイングする霧隠。だが、明らかにボールが通過した後から振っている。しかも、バットがすっぽ抜けて飛んでいってしまった。
「〜ッ! こ、この痛みが‥‥」
 そのバットは倒れていた佐渡川を直撃する。痛みの悦びのおかげで、眠れる佐渡川が蘇生してしまった。
「目標、霧隠! 弾種、野球の硬式ボール! 撃て!」
「うりゃーです!」
 今度は金属バットに持ち替えて、やはりフルスイングする霧隠。だが、相変わらずかすることすらなく、金属バットはすっぽ抜けて飛んでいく。
「〜ッ! こ、この痛みこそが‥‥」
 またも佐渡川を直撃する。少しずつ、何かを思い出しつつあるようだ。
「目標、霧隠! 弾種、ソフトボール! 撃て!」
「目標、霧隠! 弾種、サッカーボール! 撃て!」
「目標、霧隠! 弾種、バランスボール! 撃て!」
 ボールが段々と大きくなっていくが、そんなことはまったく関係なしに、その度に釘バット、鉄パイプ、日本刀と佐渡川に突き刺さっていく。
『あーっと、こらえ切れずに佐渡川選手が霧隠選手の下に向かいます!』
「次こそ大丈夫なのです!」
 涙ぐみながらそう言う霧隠の手を、そっと取る佐渡川。
「いい痛みだった‥‥だから、後は俺に任せて欲しい」
「ススム‥‥」
「所長の分はこの俺が‥‥ぐはっ!」
 だが、名無しの演技者の砲撃は止まるところを知らない。ちょっといいシーンだったのかもしれないが、スズメバチの巣が佐渡川を直撃である。
「ふふ‥‥だが、ウチのは鮮度が違うんでね!」
 しかも中身入りのオマケつきである。気づけば、霧隠は放送席に避難していた。
「ススム、言ったからにはがんばるです!」
「芸人なら、あの程度どうということはないじゃろ」
 DarkUnicornがいい加減な解説をしている。しかし、佐渡川は自称アマチュア芸人なので、あまり大丈夫ではなさそうである。
 スズメバチの大群に襲われる佐渡川をバックに、『このスズメバチの巣は、この後プロポリスにしてローヤルゼリーしました』と意味不明のスーパーが入る。そしてすぐに、顔のサイズが2倍に膨れ上がった佐渡川の画面に切り替わる。
「〜ッ! 痛みが‥‥痛みがなくなっちまった。これじゃハァハァできない‥‥」
 パンチドランカーな上にスズメバチの毒でトリップしてしまっているが、佐渡川なので特に問題はない。そのまま試技は続行される。
「ふふ‥‥鮮度が自慢シリーズその2。タコは明石! 明石で獲れた生きたままの天然ダコ! 鮮度抜群すぎて、墨吐きまくり!」
「デ、デビール‥‥フィーッシュ‥‥ガクッ」
 断末魔の叫びを上げて吹き飛ぶ佐渡川。『この佐渡川は、この後タコにおいしくいただかれました』のスーパーが入りかけるが、そこへ別の物が入ってくる。
 湯ノ花の乗った車だ。猛スピードで突っ込んできたそれは、佐渡川を跳ね飛ばして、ようやく止まる。
「時速300キロで‥‥飛んでくる‥‥ものには‥‥それに近い‥‥速度で‥‥体当たりすれば‥‥止めらる‥‥ハズ‥‥」
 湯ノ花が降りてくるや、開口一番これである。先程の不発弾の爆発を巻き起こしておきながら、まったく違うところに着目していたようだ。
『これはどういうことですか?』
「うむうむ。そうじゃな」
『なるほど、そういうことなんですね!?』
「うむうむ。そういうことじゃ」
 余人にはまったく理解できない水無月とDarkUnicornのやりとりであったが、その横で霧隠がうんうんうなずいているのでそういうことなのだろう。
 とにかく、佐渡川が車のゴールを許さなかったところで、シメとなった。もはや、ピッチングマシンを使ってもいなかったが。
 こうして、優勝はあらゆるものを受けた佐渡川に文句なく決まり、10万円が送られた。また、露骨にドリンクの宣伝を企てたエディに、スポンサーからの特別賞で5万円が送られた。