ダジャレに命を懸ければアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/29〜05/31

●本文

 TOMITVの会議室。ムダにアツい上司が、部下を呼びつけていた。
「おい、この間のダジャレの番組もよかったじゃねえか。というわけで、なんかダジャレ言ってみろ!」
「え!? えーと、布団が吹っ飛んだ‥‥」
「‥‥そうか、がんばれ‥‥」
「え!? そんなも反応だと困ってしまうんですけど‥‥」
「‥‥ダジャレのリアクションにツッコミ待ちとはいい度胸だッ!」
 ムダにアツい上司なので、スカしたかに見せても結局は鉄拳制裁である。
「じゃ、そういうことで‥‥」
 だが、それだけでそのまま去っていこうとする上司。部下は止めるしかない。
「わーっ! もう1回番組撮って、ダジャレの腕を磨いて来ますんで、見捨てないでくださーい!」
「おもしろい番組を撮るのが目的であって、ダジャレの腕を磨くのが目的なんじゃない。手段が目的を凌駕してどうする!」
 ムダにアツい上司なので、前回とまるで逆のことを言っても鉄拳制裁である。
「まーいーや。やっちゃえばいーじゃない」
「今回は随分やっつけですね‥‥」
「誰のせいだッ!?」
 ムダにアツい上司なので、たまにはまっとうな理由で鉄拳制裁である。
 ともあれ、ダジャレを使ったおもしろVTRを競い合う企画の第3弾がスタートした。

『ユー、ダジャレに命懸けちゃいなよ』

 ダジャレを実際に収録してきたVTRのおもしろさを競い合います。撮ってこないで、スタジオ収録中にその場でやることも可能です。
 各VTRごとに採点され、優勝者には賞金10万円が授与されます。
 例:『布団が吹っ飛んだ』
 干してある布団が風で吹き飛ばされるだけだと点は低く、寝ているところに爆破で布団ごと吹き飛ばされれば点が高い。
 例:『アナコンダで巣穴混んだ』
 イラストがその収録例。その後噛み殺されたり、絞め殺されたり、丸呑みされれば、高得点が期待されます(本当に死んだら0ですけどね)。

その他注意点
・命懸けとはいえ、死んだら負けです。というか、番組がお蔵入りです。
・もちろん、流血もNG。但し、流血を伴わない怪我はガマンすればOKです。
・敢闘賞や技能賞など、優勝以外で若干の賞金が出るかもしれません。

過去の放送
・ダジャレに命を懸けろ 4月21日 23:00〜
・ダジャレに命を懸ける 5月12日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0155 美角あすか(20歳・♀・牛)
 fa1050 シャルト・フォルネウス(17歳・♂・蝙蝠)
 fa1881 アースハット(27歳・♂・鷹)
 fa2529 常盤 躑躅(37歳・♂・パンダ)
 fa3205 桜庭・夢路(21歳・♀・兎)
 fa3578 星辰(11歳・♀・リス)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa3678 片倉 神無(37歳・♂・鷹)

●リプレイ本文

 なぜかサウナの映像からはじまる、本日の『ダジャレに命を懸ければ』。
『さあ早速、命懸けのダジャレに挑んでくれるのはダレじゃ!?』
 司会進行のアースハット(fa1881)が、あまりの暑さにハイテンションな古典ダジャレでいきなり飛ばしにかかる。
「中国人、シャレもダジャレも通じないアルよ」
 だが、ここでこれから挑戦しようというのは、ダジャレとは関係なくただ命だけを懸けようという星辰(fa3578)である。
「というコトで、血を流さずに汗を流すアル」
 11歳の女の子の脱衣シーンは色々とまずかろうと、開始早々緊張が走る。
「大丈夫アル、下にはちゃんとスクール水着を着込んでいるアルよ」
 そう言って、スクール水着姿になる星辰。
 だが、折角スクール水着姿になったのに、今度はタイツ、セーター、防寒着と次々に着込んでいく。こうなると一度脱いだ意味が分からないが、シャレが通じないんじゃしょうがないということで流される。
 最終的に恰幅のいいリスの気ぐるみ姿になり、そのままサウナの温度を何のためらいもなく最高に設定してしまう。
「後は、カップ麺と同じで3時間待つよろし」
『確実に単位が間違ってる気がするけど‥‥今度こそダジャレを言うのはダレじゃ!?』
 そこで画面が切り替わり、今度は何の変哲もない道端が映される。そこには、美角あすか(fa0155)が炊飯ジャー片手に立っている。
「車が来るまで待ちましょう」
 とにかく、車が来るのを待ちはじめる美角。ただ言えるのは、ヒッチハイクなら、炊飯ジャーを持って立つ怪しげな女性の前では止まったりしないということだ。
 だが、タクシーは人を乗せるのが仕事なだけに、止まらないわけにはいかない。止まったタクシーに、カメラやら何やらとゾロゾロと乗り込んでいく。
「タクシーの中で、ご飯炊くしぃ!」
 まずは米を研ぐところからはじめ出す美角。運ちゃんの顔が段々険しくなっていくが、美角は命を懸けているので、まったく気にしない。
 やがて、美角が炊飯ジャーのスイッチを入れる。電源はどうしているのかとか、ヤボなことを聞いてはいけない。タクシーのシガーソケットから、なんのためらいもなく拝借である。おかげで運ちゃんの顔が鬼のようになっていたが、例によって命を懸けているのでまったく気にしない。
 しかし、それがいけなかった。運ちゃんがキレてしまって、アクセルベタ踏みである。
 途中の暴走シーンは放送できないので、気づけばサーキットである。
 気づいたらいつの間にかサーキットで走っていたかのように編集するのが美しいが、乗り換える様子もしっかり流しつづけるのがダジャレシリーズのよく分からない意地である。
 サーキットでは、すでに司会のアースハットが待ち構えている。
『‥‥というわけで、ダジャレを言うのはダレじゃ!?』
 そうは言っても、ヘルメットやらCCDの装着をしている美角に、答える余裕などない。なので、なぜか都合よくサーキットの隣にあった動物園にカメラが切り替わる。
「私は今、動物園に来ています。『カンガルーを考える』という本日のお題、そこでカンガルーに突撃インタビューを敢行しちゃいたいと思います!」
 そんなお題が出ていた記憶はまったくないのだが、着ぐるみでカンガルーに扮した桜庭夢路(fa3205)が、早速カンガルーの檻の中に入っていく。
「イ、インタビューさせてもらっても、よろしいでしょうか?」
 少し怯えたかのように震えながらマイクを差し出す桜庭だが、マイクでカンガルーの鼻をグリグリしてしまっている。
 となれば、生まれながらのボクサーであるカンガルーの反応は決まっている。カンガルーパンチである。桜庭が思わずうずくまりかけたところへ、さらにとどめのカンガルーキックが炸裂する。
「カンガルーを考えた結果、カンガルーはインタビューが嫌い! という結論になりました‥‥ガクッ」
 脳を揺らされたせいか、ムチャな結論に達する桜庭。だが、ツッコミを入れる物が誰もいないので、そのままカメラはサーキットへと戻される。
 そのサーキット場では、コース上に様々な障害物が用意されていた。
「‥‥早まったかな、俺‥‥」
 シャルト・フォルネウス(fa1050)は、すっかりダウナーである。それもそのはず、障害物の一つに磔にされているのだ。
「こんなネタを思いついてしまった、鋭すぎる自分の脳が憎い、憎すぎるッ‥‥!」
 とはいえ、今はまだそのネタを披露するまでの恐怖をただじっと待つのみである。
 一方、その障害物の横では雨宮慶(fa3658)が無数の神棚の設置を終えていた。とはいえ、シャルトの無事を祈ってというわけではない。
『これは何でしょうか?』
「この神棚は紙だな」
 いつの間にかやって来ていたアースハットが、雨宮に尋ねる。
「炎上させたいので、援助してください」
『はい、ライター! それとこれを忘れちゃだめだな‥‥はい、ガソリン!』
 神棚に平然とガソリンを振りかけていくアースハットに、当たり前のように火を点けていく雨宮。
「ちょ、おま、俺の横で何やってんだよ!?」
「ちゃっかり着火!」
 すでに紙の神棚はガソリンで爆発気味に勢いよく燃え、黒煙を上げている。しかも、シャルトのすぐ横の障害物の木にまで引火している。
『キミィ‥‥文句があるんだったら、ダジャレで言ってくんないと!』
「この状態で言えるかッ!」
 とは言え、美角の乗った車が突破する際、火が点いていなければならないので、消すわけにもいかない。
「‥‥やっぱり早まったな、俺‥‥」
 やや疑問形から、断定に変わるシャルト。だからと言って、何も変わるわけでもない。
 一方、美角の方のセッティングも終わっていた。美角の乗り込んだスポーツカーの横には、レースクイーンとして常盤躑躅(fa2529)が立っている。
 といっても、常盤は筋骨隆々の大男である。その常盤がパンダの覆面をかぶってセーラー服を着込んでいるのだ。ターゲットがあまりにピンポイントすぎて、これをお色気と悦んでいる視聴者が存在するのか疑わしいくらいである。
 だが、常盤はまったく気にすることはなく、むしろ意気揚々にダジャレを畳みかけてくる。
 急発進した美角の車にあおられて、常盤のスカートがめくれ上がる。
「オ〜ムーレツゥ〜★」
 そう言って、どこからともなくオムレツを取り出す常盤。パンチラといえば『OH! モーレツ』ということらしい。数年前にリメイクされたとはいえ、誰が覚えてんだという世界だが、演じている常盤がオッサンなので仕方がない。それがオヤジギャグの真骨頂なのであるからして。
『うげぇ! イチゴパンツのパンチラ。ありえねー!』
 戻ってくるなりイヤなものを見せられたアースハットが、ガックリとうなだれる。だが、美角の車の実況をせねばならないので、なんとか踏みとどまる。
 見れば、美角の車は無意味にジグザグ走行したり、片輪走行したりとやりたい放題である。そこへ、アースハットにメモが手渡される。
『えーっと‥‥ボインがボインボインと揺れてます』
 激しく揺れる車内の画に切り替わる。といっても、胸がどうこうという次元の揺れではないので、何が何だかよく分からない。しかも、そこへもう一度常盤のパンチラが映し出される。確実にチャンネルを変えろと言っているしか思えない。
 だがそんな間にも、車はシャルトの磔にされた障害物に向かって進んでいく。
「車よ、こっちに来るま!」
 ついにシャルト渾身の、一世一代のダジャレが炸裂する。
 とはいえ、来るなではなく来るまと言っているので、ぐんぐんと迫ってくる車。もっとも、来るなと言ったところで何の変わりはないのであるが。
「‥‥やっぱり早まったな、アハハ‥‥」
 いよいよジャンプ台に差しかかる車。そして宙を舞い、壊れたように笑うシャルトの頭上ギリギリのところを突き破って、走り去っていった。
「だっふんだぁ!?」
 常盤がやってくると、そんなことを言ってくる。脱糞した? を有名ギャグとかけて聞いているようであるが、よく分かりにくいのに加え、元よりそれに答えられる気力などシャルトには残されていなかった。
「もう車内にいてもしゃーないで‥‥」
 そんなやりとりはさておき、コース脇に設置されたキッチンセットの前でキキーッと止まると、美角が炊飯ジャーを持ったまま飛び出してくる。
 そのキッチンセットでは、片倉神無(fa3678)がカレーを作っていた。
「このカレーは辛ぇー」
 自分でスパイスから調合する片倉。唐辛子は最低限ハバネロ、ベースはデスソースである。とはいえここから作っていたのでは時間がかかりすぎるので、液体と呼ぶには無理があるまで徹底して煮込んだものが、完成品として出てくる。
「何事もハードボイルド! それが男の手料理!」
 蓋を開けると、途端に咳き込む片倉。臭いだけで涙が止まらないシロモノである。シュールストレミングとは方向性こそ異なれど、共に殺傷力のある臭いだ。とても華麗に食べられそうにはないが、あくまでも今回のダジャレは辛さ命である。
「片倉さーん、ご飯持ってきましたよー!」
「‥‥男は一度涙を流したら、枯れ果てるまで流しつづけるものよ。よって、今は食べることができん!」
『じゃあ、誰が食べるんだよ!?』
 男泣きの片倉の横で、美角とアースハットの目が合う。とはいえ、二人ともこんなものを食べる気はない。雨宮はといえば、障害物の消火活動に逃げてしまっている。
 となれば、3時間待たせ中のあの人しかいない。そのサウナが、これまた都合のいいことに、サーキットに併設されていたのである。
『調子はどうかな?』
 アースハットを先頭に、一同がサウナに入ってくる。
「ちょうど鍋焼きうどんを、カラシたっぷりで食べていたところアル」
 中では、星辰が汗だくになりながらも、何食わぬ顔で鍋焼きうどんを食していた。
「そんなおまえに朗報だ! もっと汗をかいてこそのサウナだよな!?」
「そうアルが?」
「そんなおまえに、辛ぇーカレーだ!」
 とそこへ、カンガルーを連れた桜庭がサウナにやって来る。
「インタビュー嫌いのカンガルー。だけど、カレーは好きかもしれません」
 カンガルーをカンガレーにしてやろうというわけだ。先程のアグレッシブさはどこへやら、カンガルーはすでにぐったりしている。
 動物虐待と思われるかもしれないが、先程殴られているのでこれでおあいこという理論で問題なしである。なお、カレーは蹴られた分で相殺予定だ。
「よし、みんなで食うぞ!」
 片倉の手によって、全員にカレーが配られる。片倉、星辰、それに桜庭というかカンガルーは元より、アースハットと美角にまで配られてしまっている。
「〜ッ!!」
 次の瞬間、声にならない叫びが蔓延する。すぐさま、桜庭がカンガルーを連れて退室していく。カンガルーはカンガルー、カンガレーにはなれなかったのだ。
 そして、美角も早々に離脱。残るは片倉に星辰、アースハットだけである。
『さー、どっちが先に完食するのかっ!?』
 だが、アースハットが実況をはじめて、第三者の位置に逃げ延びる。これで、片倉と星辰の一騎打ちである。
「ムム‥‥やはり俺が作っただけあって、うまいな!」
 ハードボイルドな男は、辛さごときにあれこれ言ったりはしないのだ。
「マイルドでおいしいアル!」
 一方の星辰も、こんなところでサウナを出てしまうわけにはいかない。
『このままでは辛ぇーカレーじゃなくなっちまうぞ!?』
 アースハットにそう言われても、片倉は動かない。ダジャレでなくなってしまおうが、ハードボイルドを貫き通す。
 結果、ほぼ同時に二人して完食である。そして、星辰の約束の3時間に達し、全員がサウナを後にする。
「残暑が厳しいざんしょアルね」
 外に出るやいなや、ついにダジャレを発する星辰。
「運が良かったら、1万2千年後にまた会おうアル」
 星辰は倒れることなく、天に向かって拳を突き上げる。その姿勢のまま、星辰は絶命していた。いや、本当に死んではいないが。
 こうして、殺人カレーを本当に食べやがった星辰が優勝となり、賞金10万円が送られた。
 そして、その殺人カレーを作り上げた片倉に技能賞5万円が送られた。