リフォーム三角ベースアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/04〜06/06

●本文

登場人物
・ディレクターに昇進したばかりの男(以下、ディレクター)
・ディレクターの上司(以下、上司A)
・上司Aのさらに上司(以下、上司B)

 TOMITVのこのディレクターは、最近マイホームを建てたばかりだった。しかし、上司Aの提案によってメチャクチャなリフォームをされてしまう。それが、リフォームで廃墟という番組だった。
 ディレクターはその恨みを晴らすべく、ディレクターは上司Bの許可をもらって、上司Aの屋敷にメチャクチャなリフォームを施してしまう。それが、リフォームで廃墟の逆襲という番組だった。
 上司Aはその恨みを晴らすべく、上司Bの愛車の数々にメチャクチャなリフォーム(改造)を施してしまう。それが、リフォーム廃車復活戦という番組だった。このときのショックで、上司AB共に病院送りとなってしまう。
 やがて退院してきた上司ABは、快気祝いにとディレクター宅内でフットサルを行った。それが、リフォームフットサルという番組だった。結局、ロスタイムが2時間もとられ、家は全壊してしまう。

 そして──

「いやー、おかげさまでまた新築に住むことができますよ!」
「そいつはめでてえな。俺たちも、がんばった甲斐があたっというもんだ」
 ディレクターが血走らせた目で、上司Aと話をしていた。皮肉たっぷりにトゲトゲした言葉だが、気にするような上司Aではない。まったく普通に応じている。
「そこでなんですが‥‥建前にぜひいらしていただきたく‥‥」
「ん? 別にいいけど‥‥わざわざ俺が行くようなことか?」
「ええ‥‥というか、あなたの家でやりますんで、いてもらわないと困るんですよ」
「は? じぶん家でやんなきゃ、意味ねぇだろ?」
「いえ‥‥おまえん家じゃなきゃ、意味がないんじゃぁ!」
 ここにきてブチギレるディレクター。さすがに、上司Aもイヤな予感がしてくる。
「おまえがフットサルなら、わしは三角ベースで勝負じゃぁ!」
「いや、ちょっと待て! ここは冷静になってだな‥‥」
「待ったなしッ!!」
 こうして、上司Aの屋敷の中で三角ベースをするという、リフォームという名前からどんどん遠くなっていく番組が作られることとなった。

企画内容:
 8名までの精鋭が、各自思い思いにボールを打ちまくります。
 チーム分けは特にしません。そのときのバッター以外の人が守備に回ります。
 用具はゴムボールにプラスチックバットが一応用意されますが、砲丸や金属バット、真剣等、好きなものを使用して構いません。というか、しろ。
 使用するボールは、基本的にそのときのバッターが指定します。が、ピッチャーがわざと間違えてしまっても問題ありません。というか、間違えろ。
 三角ベース自体の勝敗は存在しません。上司Aに一番殺意を抱かせることができた人が優勝、賞金10万円と上司Aの殺意がプレゼントされます。
 その他、各自勝手に自分ルールを作って構いません(例:急にキックベースがしたくなった、投げ当ての際はボールではなく実弾で撃つ等)。
 全体の細かいルールは、ディレクターがルールブックです。
 死人を出さないでください。

過去の放送スケジュール:
・リフォームで廃墟 3月4日 07:00〜
・リフォームで廃墟の逆襲 4月1日 18:30〜
・リフォーム廃車復活戦 4月17日 23:00〜
・リフォームフットサル 5月16日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0020 夜・黒妖(17歳・♀・猫)
 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0892 河辺野・一(20歳・♂・猿)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3599 七瀬七海(11歳・♂・猫)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

 上司Aの屋敷。今日、ここが三角ベースの戦場になろうとしている。
 かつての『リフォームで廃墟の逆襲』でダメージを受けたものの、日本建築の真髄ともいうべき素材のよさもあって、その後内装を直しただけで元通りの姿を取り戻している。
 だが、今回ばかりはそうもいかないのかもしれない。
『もりのなかまたちが、リフォームにやってきました』
 厳かな屋敷には不似合いなファンシーなフォントで、スーパーが入る。そこへ、着ぐるみという名の完全獣化、半獣化した面々が、選手として続々と入場してくる。
 それを、不機嫌そうに上司Aが見つめている。その手には、すでに日本刀が握られ、小刻みに震えている。古い屋敷だけに、こういった骨董品には事欠かない。とはいえ、手にした日本刀は実用性重視。刀身が酸化するのも気にせず、すでに抜き身である。
 だが、そんな上司Aがどう思っているかは一切無視で、構わず選手入場である。
 まずは、セクシーな猫コスチュームという名の半獣化での入場は、夜黒妖(fa0020)である。片方の肩にハンマー、片方の肩に斧を担ぐという物々しいいでたちではあるが、明るく飄々としたものである。
「森の動物さんのお友だちの黒妖だよ♪ よろしくね〜!」
 上司Aに挨拶する黒妖。危うく斧vs日本刀の戦いになるのではないかと危惧されたが、まだ上司Aにもかすかな余裕があるので免れた。
 つづいて、黒妖と同じような感じで蝙蝠の耳と翼を生やしたコスチュームという名の半獣化で、湯ノ花ゆくる(fa0640)が入ってくる。
「三角ベース‥‥噂で名前だけは聞いたコトがありますが‥‥よく分かりません‥‥」
 ということなので、足下だけは硬式野球用のスパイクを履いている。無論、屋敷に上がったからといって脱いだりはしない。ただ地味に床にダメージを与えつづけるのみである。
 そして、草壁蛍(fa3072)が狐姿の上からタイトスーツ、その上に白衣をまとっての登場である。
「死球式、楽しみよね」
 死球式が何なのかは追々説明するとして、草壁が不敵な笑みを浮かべている。
 その様子を、日傘を差して庭から眺めているのが、極々普通の着物姿のDarkUnicorn(fa3622)。
「みな、ああも堂々としてしまって‥‥大丈夫なんじゃろうか?」
 他人事のように遠い目をしているが、その中に身内の湯ノ花が混じっているのは気のせいではない。
 以上4名が、華やかな女性陣である。よって、上司Aもスケベ心でかろうじて平静を保っている。そして、ここからが問題のむくつけき男どもの登場である。
 まずはダブルモンキー、猿が如くの佐渡川ススム(fa3134)と、小粋な匠こと河辺野一(fa0892)が入場してくる。
「やぁ! テレビの前のよい子のみんな、ミッ‥‥ぐぼはっ!」
 つづいて入ってきたチェダー千田(fa0427)が、危険なキャラ名を口にしようとして、上司Aの飛び蹴りを食らう。一応、まだ日本刀には早い時間帯のようである。
 そして最後に、最年少で小柄な七瀬七海(fa3599)が猫の着ぐるみという名の完全獣化で入ってきて、入場行進は終了である。
 以上が、DarkUnicornと愉快なもりのなかまどもである。
 そしていよいよ、試合に先立っての死球式である。
 死球式──単に始球式の始を死にかけているだけではない。死球とはデッドボール。すなわち、確実にぶつけるということである。
 ということで、ピッチャーは草壁。そして、バッターに上司Aが引きずり出されてくる。なので、他の面々全員が守備につく。
「さあ、思いっきりやっちゃって下さい♪」
 余計なことに、上司Aに薪割り用の斧を手渡すチェダー。だが、差し出した柄の部分がスパっと斬り落とされる。
「ちょ、まだ投げてもいないのに、振るの早いって!」
 上司Aの日本刀一閃、チェダーの前髪ごと斧の柄を斬っていたのだ。チェダーの腕の方を斬り落とさなかったのが、わずかに残された理性であろうか。
 そのままチェダーには見向きもせず、バッターボックスに入って草壁をキッと睨みつける上司A。
 対する草壁も、剣術道場の娘だけあって、まったく動じていない。ここは落ち着いて牽制球を一球挟む。死球式とは、バッター以外も命懸けなのである。
「うごっ!」
 しかし、始球式で牽制球が来るとは思ってもいなかったファーストの佐渡川が、まともにアゴに軟球を食らう。度重なるムチャっぷりにガラスのジョーになっているので、あっさり崩れ落ちる佐渡川。その代わり、慣れたもので回復も早い。
「砲丸とか、ボウリング球とか、超見てみたくね? ガクッ」
 そうとだけ言い残し、でもやっぱり崩れ落ちる佐渡川。ファーストに、代わりにチェダーが入る。一方のピッチャーの草壁は、佐渡川の形見のボウリング球を手にしている。
 アンダースローではなく、大きく振りかぶって投げようとする草壁。といっても、またも牽制球である。しかも、一旦サードの七瀬に投げるかに見せかけて、振り向いてファーストのチェダーに送球である。
「カッキーン!」
 持っていた斧の刃の部分で打ち返してしまうチェダー。砕けながらも、ボウリング球は一直線に上司Aに向かっていく。そして、甲冑をへこませて、上司Aはノックアウトである。
 とはいえ、草壁はまだバッターに向かって投げていないので、死球式ははじまってもいないということになる。なので、無理矢理ディレクターが連れてこられる。
 ここにきて、ようやく普通に硬球を投げる草壁。ここでは、三角ベースで硬球が普通なのかは瑣末な問題に過ぎない。どちらにしろ、ディレクターが上司Aの後を追うしかないのである。
 だがそれでも、草壁は容赦がない。
「お前の痛みは、たった一球分だけだろう! 上司Aの家はな‥‥今からその何百倍もの痛みを受けるのだぞ!?」
 その草壁の宣言で、いよいよプレイボールである。最初のバッターは黒妖。対するピッチャーは河辺野といつの間にか甦生している佐渡川である。ピッチャーが二人いるが、三角ベースなので問題はない。
「三角ベースって初めてだなー。あ、バットってコレ?」
 巨大スレッジハンマーをブンブン振り回して素振りをする黒妖。悪気があるならともかく、素でバットと思い込んでいるだけにタチが悪い。
「行きますよ!」
「おう‥‥分身魔球だな!」
 猿の着ぐるみコンビで、同時に投げて分身魔球ということである。が、大きく振りかぶったところで、佐渡川がいきなり大声を出す。
「はじめぇっ! 俺は皮かぶってるけど、お前はキャラかぶってんだよぉっ!?」
 ワケの分からないカミングアウトつきで、突然分身魔球を全否定する佐渡川。突然ハリセンを取り出すと、河辺野を滅多殴りである。
 だが、なぜか突然手が光ると、自分だけ吹き飛ぶ佐渡川。そのまま壁に人型の穴を作って、強制退場である。
「股間が火を吹くハズが、なぜ手が‥‥ガクッ」
「えーと‥‥」
 河辺野は、ただただ呆然とするしかない。結局、一球も投げないうちに、ピッチャー交代である。ピッチャーは最低打者一人と対しなければいけないのだが、怪我等のやむを得ない理由があれば交代は可能である。というか、三角ベースでそんなに細かいルール適用などないのだが。そもそも、二人がかりで投げようとしていたのが平然と通っていた世界なのだ。
 リリーフでの登場は、七瀬である。砂鉄を詰め込んだ重さ十分のフットボールを手に、肩を振り回している。
「どうもしっくりこないなー」
 一方の黒妖は、バットを斧に持ち替えていた。
「あー、これが滑り止めにいいですよ」
 そう言って、オリーブオイルを手渡す七瀬。黒妖は柄の部分にオイルをたっぷり染み込ませ、すっぽ抜けること間違いなしの凶器を作り上げる。全然止めてなくてやすくしているだけだが、気にしてはいけない。元々がそういう趣旨の番組である。
 そして、ようやく第一球。斧だけに、黒妖は薪割りのごとく大根切りオンリーである。が、どちらにしろすっぽ抜けるしかにない。そのためのオリーブオイルだっただけに。
 ガチャーン。爽快な音を上げて、窓ガラスが砕け散る。が、上司Aは先程からダウンしたままなので、止めるものは誰もいない。普通にゲームが進行するだけである。
 それを受けて、何食わぬ顔でスコーンと壁に穴を開ける河辺野。
「あー、これはですね。スコアボードなわけですよ」
 誰に聞かれているわけでもないが、解説をはじめる河辺野。そこに、湯ノ花がツルハシで穴を広げると、メロンパンをはめていく。今回は空振りなので、ストライク。毒々しい蛍光イエローのメロンパンが、Sの穴にはめ込まれる。
 じゃあボールだったらどうなるんだろうと気になってしまったので、今度は七瀬がバウンドするように投げ、黒妖もそれを見送る。
 それを受けて、またまたスコーンと壁に穴を開ける河辺野。そのBの穴に、湯ノ花が緑色の普通のメロンパンである。
 結局、黒妖はその後もすっぽ抜けを繰り返し、三振に倒れる。
 河辺野がアウトの穴を開ける。そして、湯ノ花が赤いメロンパンをOの穴に入れる。赤いメロンパンといっても、イチゴジャムなどという甘ったれたものではない。試合中の疲労回復のためにと、スッポンの生き血たっぷりのメロンパンである。甘ったれていないので、味については深く考えてはいけない。
「先生、出番です!」
「ふむ、いよいよわしの番かえ?」
 変わって、用心棒の先生のようにDarkUnicornがバッターボックスに立つ。手にするは、先程まで差していた日傘である。対するピッチャーは、湯ノ花である。
「ヒメ姉、行きますよ!」
「我が仕込み刀に、斬れぬモノなし‥‥じゃッ!」
 来た球を、日傘に仕込んでいた刀で斬り落とすDarkUnicorn。またくだらぬモノを斬ってしまったとばかりに刀を日傘の鞘にしまうことはなく、妖刀に魅入られたがごとく切れ味にホレボレしてしまう。
「くくく‥‥今宵も血を求めておる‥‥」
 気づけば、刀を振り回しているDarkUnicorn。これでは、上司Aとやってることに変わりはない。
「ならば私は、文明の利器で勝負よ!」
 負けじとチェーンソーを振り回す草壁。
「あ、楽しそうー! 俺もするー♪」
 この様子に黙っていられず、得意の斧で乱入する黒妖。とはいえ、オリーブオイルは健在なので、トマホーク状態である。
 そんな中、河辺野が冷静にカウントを取りつづけている。開いている穴を再利用などというエコなことは一切せず、新たに穴を開けていく。しかも、湯ノ花がピッチャーでいなくなったので、メロンパンではなくソバを穴に放り込んでいる。
「実は事前にさりげなく浴室をリフォームしておきまして。総ヒノキの浴槽で、まだ人が入っていないのをこれ幸いにとばかりに、そこでソバを茹でてきたわけですよ」
 聞かれてもいない解説を入れるのは、もはやアナとしての職業病である。
「そうだね。応援には、ロケット風船が定番だね」
 そのカオスを盛り上げようと、応援グッズをなにやら取り出すチェダー。どう見ても風船には見えない。空気の力ではなく、火薬の力を使うようにしか見えない。
「そうだね。手に入らなかったから、代わりにロケット花火を用意したんだね」
 それでもやはり、ロケット花火には見えない。ロケット風船はもとより、ロケット花火でもない、五尺玉である。
 五尺玉──素人には手の出せない、プロでも扱いのむずかしい巨大花火である──に平然と点火するチェダー。
「たまやー‥‥あれ?」
 見事なまでに天井を突き破れず、ポトっと落ちてくる五尺玉。
「うわーッ!!」
 それまでの喧騒はどこへやら、クモの子を散らすように逃げ出す一同。やや遅れて花火が炸裂する。
 ドカーン! 花火が炸裂すると同時に、なぜか大爆発。屋敷ごと何もかも吹き飛ばしてしまう。
 しばらくして、全員アフロヘアに黒コゲというコントスタイルで、ひょっこり首を出す一同。爆発のショックで、いつの間にか上司Aも甦生している。顔は般若になっていたものの。
「‥‥僕たちは芸能界で色々ストレスが溜まっているので、そのガス抜きを。屋敷はプロパンボンベのガス抜きを‥‥って、思ってやったんですけど、何か間違ってましたかねえ?」
「最初から間違いだらけだったが、特に間違い過ぎだッ!」
 七瀬が不思議そうな顔をして言うが、上司Aは般若の面のままである。
「いや、わたくしもソバを茹でるときにガス栓を全開にしたまま放置してました。わたくしのせいかもしれません!」
 そこへ、河辺野が土下座をして割って入る。
「こんなこともあろうかと、わしもどんな大地震や大爆発が来ても、これ以上壊れようがないくらい立派に、耐震偽装工事をあらかじめ施しておいたのじゃ。それが効いたのかもしれんのぅ?」
 悪びれた様子もなく、DarkUnicornも割って入る。
「いや、そもそも俺が花火を打ち上げなければ済んだことだと思う。だから、罰するなら俺にしてくれ」
「分かった。チェダーが全部悪いんだな!」
 日本刀を振り回しながら、チェダーだけを追いかける上司A。チェダーが逃げ回る中、その隙に河辺野がディレクターから優勝賞金10万円を受け取っている。
「え! なんで俺だけ‥‥かばい合って和やかに終わるトコじゃないの!?」
 そこで番組はエンディングを迎えた。和やかになることなど一度もなかったけれども。