走れ、人間ども3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/11〜06/13

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の、自称スポーツイベント便乗チームに、一人の男が駆け込んできた。
「いやー、香港馬は相変わらず強いですねー! 去年のスプリンターズステークスにつづいて、安田記念も勝っちゃいましたよ。なんででしょうかねー、せん馬ばっかだからですかねー?」
「関係ねーだろ? だったら、おまえも去勢してみるか?」
「勘弁してくださいよ、あこがれの種馬生活が夢と消えちゃうじゃないですか」
「どっちにしろ使ってないじゃん‥‥って、話がアレにそれてきたからこのへんにして。で、アレか。例によって『走れ』シリーズか?」
「そうです。理由後付け感バリバリですが、そんなことは気にせずやっちゃうんです。で、前回はマシンに乗ってやったので、今回は自分の力だけでやってもらいます」
「んー、いいんじゃないの?」
 悪い意味で慣れてしまったのか、やる気があるんだかないんだかよく分からないテンションで、競馬場疾走企画の第4弾がスタートした。

使用コース
・競馬場の芝コースを使用。基本は直線のみ使用。
・ハンデが長い場合、左回り芝コースを使用。500m地点から200m地点にかけて高低差2.5mの坂あり。
・要するに、府中にある某競馬場です。
・気分次第で、ダートコースに変更の場合あり。

事前に用意される物
・大抵のものは用意されますが、あくまでも自分の力で走らねばなりません。
・番組用意のものでなく、持ち込みでももちろん構いません。
・実況は用意されません。自分で実況しながら走ることは可能です。実況だけの参加も可能ですが。

ルール
・何を使っても構いませんが、とにかく自分の力のみで走らねばなりません。
・逆立ちなら腕の力で走ることになります。平泳ぎなら手と足の力です。
・獣化は視聴者に気づかれない限りなら、いくらでも使って構いません。但し、その分ハンデ距離は長くなります。
・優勝賞金10万円。敢闘賞5万円。
・その他細かいルールは、俺がルールブックだ! とスタッフが申しております。

過去の放送のスケジュール
・走れ、人間ども 4月04日 22:00〜
・走れ、人間ども2 5月01日 07:00〜
・走れ、マシンたち 5月25日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0085 一二三四(20歳・♀・小鳥)
 fa0769 凜音(22歳・♀・一角獣)
 fa1294 竜華(21歳・♀・虎)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)

●リプレイ本文

「ぐっもーにん〜、お天気、快晴、吸運! 絶対快晴黙示録体質のいっちゃんです。ご覧ください、雲一つない青空となりました!」
 雨こそ降っていないもののぐずついた天気の下、なぜかセーラー服姿に機関銃を持った阿野次のもじ(fa3092)が、大ウソの実況をしている。
「それでは、実況の一二三四(fa0085)さんにマイクをバトンタッチしたいと思います」
 って、おまえが実況じゃないのかよ!? というツッコミもなんのその。すぐさま控え室へと駆け込んでいく阿野次。
『‥‥ただいまご紹介にあずかりました、実況の一です。馬場コンディションは良馬場、今回も臨場感あふれる映像をお届けできればと思います』
 いつ降り出してもおかしくない雨に備えて、ポンチョ姿。マウンテンバイクにまたがり、片手にはハンディカメラ、片手にはマイクという突撃スタイルの一。ハンドルをどう握るのかとか、下賎なツッコミは無用である。
『では、枠順どおりに紹介してまいりましょう。1枠1番、パイロ・シルヴァン(fa1772)選手。人力車を引いてのハンデは50mとなります‥‥って、うわっ!』
 パイロを見た一が驚いて、思わず後ずさる。それもそのはず、ギプスに松葉杖という見事なまでのケガ人スタイルだったからである。
「‥‥何も言わずに、こちらの映像をどうぞ」
 パイロの合図で、馬場入り前の映像に切り替わる。この番組を専属で担当というスタッフは自称スポーツイベント便乗チームの先輩と後輩の二人しかいないが、その先輩の方である番組Pと話し込むパイロの画が映される。
「この出走表を見てくださいよ。あずさ&お兄さん(fa2132)はゴニョゴニョだから、男が俺しかいないわけじゃない。だから、画面に黒さを添えるために、ぜひ協力してもらいたいんだ!」
「ヤだよ。なんでそんなコトしなきゃなんないんだよ?」
「‥‥仕方ないなぁ。ならば肉体言語で説得するのみ!」
 そして、画面が現在のボロボロになったパイロに戻る。肉体言語での説得が役に立ったかどうかはさておき、一応Pは人力車に乗り込んでいてくれている。
『つづきまして、同じく50m地点の2枠2番はあずさ&お兄さんによるカゴ‥‥おや?』
 一がカゴに近づくと、担ぎ棒の前後に人形がぶら下げられていた。もちろん、どちらもお兄さんである。一応、分身の術かなくらいに考えて、深く突っ込まないのが礼儀である。
「ガラガラガラ‥‥」
 中からカゴの戸が開けられ、和装のあずさが顔を出す。
「今回のテーマは『駕籠姫』だよ。というわけで、私は事前のダイエットにがんばったから、今日はお兄さんにがんばってもらうだけだね!」
『はぁ‥‥』
 ぶら下がってプランプランしているお兄さんを見ながら、曖昧な返事しか返せない一。
「ラガラガラガ‥‥」
 あずさが戸が閉め、それっきりカゴの中に引きこもってしまう。
『気を取り直して‥‥やはり50m地点、3枠3番は凜音(fa0769)選手です』
 そこには、サムライブルーのユニフォームに身を包んだ凜音の姿があった。その横には、家庭用の芝刈り機が置いてある。そして、延長コードが長々とどこかへとつながっている。
「W杯の芝の長さは28ミリ! それに引き換え、ここは野芝8センチ、洋芝10センチとすくすくと成長し過ぎよね。それに、やっぱり内の方が荒れているし。そう、かつての正GKカーンは隣の家の芝が不揃いなのに腹を立て‥‥」
『あの‥‥それって、日本じゃなくてドイツチームですよね?』
「そうだけど、それが何かしら?」
 いつの間にか、ドイツの白いユニフォームに早着替えしてしまっている凜音。こうなってしまっては、一に返す言葉はない。
『つづいて10m後方、60m地点からのスタートは4枠4番の竜華(fa1294)選手です』
 そこには、サムライブルーのユニフォームに身を包んだ竜華の姿があった。といっても竜華にとってのユニフォームとは、チャイナドレスである。なので、足下もカンフーシューズである‥‥かと思いきや、ここはちゃっかりサッカースパイクである。
 そして、竜華の横には小柄な女性スタッフがこのためだけに呼ばれていた。
『竜華さんは、どのように走られるのですか?』
「女子の憧れ、お姫様抱っこで走るぞ! とはいっても、するほうだけどね!」
『なるほど。だからウェディングドレスを着せているのですね』
「うん。女役がウェディングドレスで、男役がチャイナドレス。お姫様抱っこの正装だよね!」
『そうですね、つづいて‥‥』
 よく分からない竜華の理論はさらりと流して、次の枠の紹介に移る一。
『70m地点は、5枠5番DarkUnicorn(fa3622)選手。おや、なにやら巨大な袋を担いでいますが‥‥』
「これには深いワケがあってな。こちらを見るのじゃ!」
 DarkUnicornの合図で、何やらTOMITV上層部を前にしたDarkUnicornの画に切り替わる。
「わしの競争ハンデは、3千万円の札束じゃ! 通帳の数字上での話じゃない。現ナマで3千万円じゃ! もう実弾を渡してもらわんと、信用できぬからにの‥‥」
 その後しばらく押し問答がつづき、最後には、
「3千万円じゃなきゃヤダヤダヤダ、イヤじゃ〜よよよ‥‥」
 と駄々をこねて、ウソ泣きまでする始末。
「ええい、資本主義のメス豚か!? だったら、この3億円を背負って走ればよかろう!」
 顔を見合わせた上層部が、実に1万円札だけで30キロにもなる袋を、ドンと投げてよこす。
 慌てて袋に飛びつくと、早速中を検めるDarkUnicorn。
「レースで勝ったら、今度こそ1割よこせ‥‥じゃッ!」
「分かった、いいだろう」
 あっさり了承する上層部。この3億円、上の方だけ見せ金で本物で、後はただの紙っぺらであることは言うまでもない。
「‥‥ということがあったのじゃな。この30キロという重み、たまらんのう!」
『なるほど、この重そうな袋の中に3億円が入っているのですね』
 そう言って伸ばしてきた一の手を、DarkUnicornが思わず払いのけてしまう。
「ええい、触るな! わしのじゃ! これはわしのものじゃ!」
『すっかり人格が変わってしまったようですが‥‥つづきましては、100m地点の6枠6番、阿野次のもじ選手ですが‥‥あ! 今走ってきました』
 番組冒頭ではセーラー服姿だった阿野次だが、ウェディングドレスに着替えて走ってくる。
「ウェディング姿に着替え、ブーケを手にタタタタン登場! レースに先駆けレースに糸で缶をくくりつけ出走、走るとかなり煩そう! でも気にせずダッシュ! ウイニングロードというバージンロードを駆け抜けろ、阿野次のもじとウェディングドレス!」
 なぜか自分で本馬場入場の実況をしながらの登場である。
『このやや後方110m地点、パトリシア(fa3800)選手とやはりウェディングドレス』
「ウェディングドレス、ちょっとかぶり過ぎちゃいましたね。でもまあ、6月ですから!」
 なお、阿野次とパトリシア10mの違いは、阿野次がウェディングカーのように缶をジャラジャラぶら下げている分である。
『そして大外8枠8番は、おいらが200m地点からの発走となります』
 一がそのまま後方へ進んで200m地点に行くと、これで各人枠入り完了である。ムダに豪華な生演奏によるファンファーレが鳴り響き、いよいよレーススタートである。
 バラつきのない揃ったスタート‥‥とはならなかった。それもそのはず、あずさ&お兄さんがピクリともしないからである。お兄さんの足が地面に着いていないのだから、当然といえば当然なのだが。
 だが、突然カゴがニョキっと持ち上がる。見れば、カゴの下から足が生えていた。このカゴ、実はハリボテで、ハリボテを突き破ってあずさが足を出したのだ。
 これで走れる! かと思いきや、そううまくはいかない。カゴがじゃまで、まったく前が見えていないのだ。だが、それでも進みはじめたことには変わりはない。
 一方あずさの内のパイロも、順調なスタートが切れていなかった。ギプスと松葉杖がジャマで、うまく人力車を引っ張れない。
「ああ‥‥もうジャマだから外しちゃえ!」
 やられたフリをしてつけていたものだったのだが、まったく意味のないことに気づいて、ギプスと松葉杖を放り捨てるパイロ。これで、ようやくノロノロと人力車が動きはじめる。
 軽ハンデ組の中で、特にトラブルのなかった凜音は、順調に芝を刈りながら進んでいる。通った跡はキレイに刈り込まれ、馬場造園課の人たちは大泣きである。
 一方のウェディングドレス軍団は、特に奇をてらったわけでもないので、まずまずのスタートを切っていた。竜華はスタッフをお姫様抱っこしながらでやや重々しい足取りだったが力強く伸びていたし、阿野次とパトリシアも芝に裾をとられつつもだが、順調に前との差を詰めていっていた。
 対して、絶好のスタートを切ったのはDarkUnicornだ。
「勝てば1割‥‥勝てば1割じゃッ!」
 逸る気持ちを抑えながら、後半の末脚勝負に備えてここは無理に飛ばしたりせず、じっくりと脚を溜めている。
 しかし、当たり前だが大外の一がマウンテンバイクなのでぶっちぎりに速い。とはいえ実況も兼ねる身、そのままちぎって捨てるわけにはいかない。
『どうですか?』
「ウェディングドレス着て走ってるシーンって、ちょっと映画のワンシーンみたいで楽しいかなと思ったんですけど‥‥競馬場をウェディングドレスで疾走って、どんなB級映画なんでしょう?」
 パトリシアが律儀に答える横では、同じく缶を引きずったウェディングドレス阿野次が走っている。少なくとも、正気な映画ではないだろう。
 そうこうしているうちに、ハンデも消化されてきたゴール目前である。
「今投げられる、運命の一投! 受け取れ、オトメどもー! きゃっち、まい、はーと☆」
 突然、ブーケトスをする阿野次。とはいえ、最初から持っているパトリシアは見向きもしない。だが、ウェディングドレスを着て気分が盛り上がってしまった竜華の抱くスタッフが、思わず手を伸ばしてしまう。
「うわっ!」
 こうして、一組脱落である。
 一方、前が見えないなりにがんばっていたあずさだが、ついによろけて、右隣の凜音の芝刈り機にぶつかってしまう。巻き込まれはしなかったが、弾き飛ばされて、今度はパイロに激突だ。
「あ〜れ〜‥‥」
 重量感溢れる人力車に飛ばされ、そのまま真正面に吹っ飛んでいくあずさ。そのまま、1位入線でまさかのゴールである。但し、他の人たちにぶつかって、弾き飛ばされての入線だけに、審議は免れないところだろう。
「わしの1割が‥‥ああ‥‥」
 その様子を目の当たりにし、DarkUnicornが一瞬落胆する。が、再び全力で走りはじめる。
「あっ!」
 あとちょっとのところで、凜音の芝刈り機の電源コードが延びきってしまっていた。本当にあとちょっとだけに、電源を抜いてしまって駆け込みたいところだが、それでは落馬相当の失格になってしまうので意味がない。
「スタッフさーん、延長ケーブルもう一つお願い!」
 その隙に、2〜4位入線でパトリシアと阿野次がほぼ同時に飛び込む。やや遅れる形で、インタビューに追っていた一が入った。こちらは、写真判定と挙がっている。
 そして、5位入線でDarkUnicorn。だが、ゴールしてもなお、全力疾走をやめない。確実にこのまま競馬場の外へ出ていってしまおうという勢いである。
 6位入線はパイロ。あずさにぶつけられ、最後に一旦スピードが殺されてしまったのが痛かった。
 つづいて竜華。お姫様抱っこをしていたスタッフがブーケを取りにいってしまったので、7位入線もがんばった方といえるか。
 最後に、ようやく延長コードの届いた凜音が入り、これで全員がゴールである。
『ただいまの競走は、スタート直後に2番あずさ&お兄さん号がお兄さんではなくあずさで走りはじめた件、1番パイロ号がギプスと松葉杖を放り投げた件、および最後の直線走路で6番阿野次号がブーケを投げた件、4番竜華号がそのブーケをキャッチしてしまった件、2番あずさ&お兄さん号がふらついた件、3番凜音号が追加の延長コードを持ち込んだ件、またゴール後に5番DarkUnicorn号が逸走した件について、併せて審議致します。お手持ちの勝人投票券は‥‥』
 相変わらず審議が異常に多いレースである。が、ゴール後のDarkUnicornの行動まで審議対象になるのは異例のことである。
 結局、スタッフに引きずられて、DarkUnicornが戻ってきた。
「まったく、シャレの分からない大人たちじゃな!」
 3億円事件を起こしかけておきながら、シャレで済まそうとする大らかなDarkUnicorn。
『‥‥あ! 今、確定の赤ランプが灯りました。全着順をご紹介しましょう』
  1着 7 パトリシア
  2着 6 阿野次のもじ
  3着 8 一二三四
  4着 1 パイロ・シルヴァン
  5着 4 竜華
  6着 3 凜音
  7着 2 あずさ&お兄さん(1位入線降着)
  失格 5 DarkUnicorn(4位入線失格)
『以上のように確定しました。あずさ&お兄さんは斜行でパイロさんと凜音さんの進路を妨害したため、6着の凜音さんの下の7着となりました。また、DarkUnicornさんは逃亡罪により失格となりました‥‥って、どこの国ですか!?』
 それはさておき、優勝したパトリシアに賞金10万円が送られた。また、はからずもブーケを獲得することになってしまった竜華に、敢闘賞として5万円が送られた。