ムチャキング5アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや難
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/12〜06/14
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「いよいよ、日本戦ですねー」
「おう、ここはピッチングマシンで祝砲といかんとな!」
ここでいうピッチングマシンとは、過去ムチャキング1〜4で使われた、火薬を使ってピストルと同じ原理で球を発射する、野球の球なら時速300キロで飛ばせるというシロモノのことである。
「でも、この放送時間帯が気になるんですけど‥‥」
「しかも、今回に限り生放送だ!」
「ええっ!?」
「サッカー好き芸能人たちが、日本戦の経過を一切見ることなく、生でやる暴挙。まさにムチャキング!」
「じゃあ、我々も見られないじゃないですか!」
「そうなるな‥‥だが、それもムチャ魂ッ!」
「ううっ、ムチャ魂ですねッ!」
いつしか号泣する二人。だがそれでも、サッカーW杯便乗のムチャキング5がスタートした。
無謀王決定! ムチャキング5
『背番号23の極一部はこんなところで勝手に戦っているぞ! そんな戦い誰も望んでいなくてもだ!』
ペナルティキックを止めるキーパーの役で、ムチャ度を競い合います。試技は何球でも可。
ムチャキング選出は、採点によってなされます。
・20点満点。
・ムチャの度合いとおもしろさの兼ね合いで、採点されます。
・優勝者には5代目ムチャキングとして10万円が送られます。
事前に用意される小道具
大概のものは用意されます。持ち込みも可です。なお、場所は陸上競技場内のサッカーグラウンドとなります。
注意点
・退場処分、流血、怪我、死亡したら0点になります。
・というか、死者が出たらお蔵入りです。
・但し、流血はカメラに映らない範囲ならOK、怪我は覚られないようガマンすればOKです。
・ボールを止めようと止めなかろうと、点数が一番高くてムチャキングに選出された人が優勝です。
過去の放送スケジュール
・ムチャキング 3月09日 23:00〜
・ムチャキング2 3月30日 22:30〜
・ムチャキング3 4月19日 18:00〜
・ムチャキング4 5月27日 07:00〜
●リプレイ本文
『さあ、ついにはじまってしまいました、W杯日本初戦! 空挺、レンジャーに在籍し、その気になれば戦車も操縦できる元陸上自衛官ということで、今日の実況、解説、ベンチリポート等々すべての声の仕事は、この緑川安則(fa1206)が担当だッ!』
緑川のアツい実況ではじまるが、カメラが映し出すは無人の観客席。午後の昼下がりではなく夜であるし、明らかに神聖ローマ帝国の面影などない。言うまでもないが、カイザースラウテルンではないのだ。
そして、ピッチ上では試合ではなく、ピッチングマシンが使われていることもなく、宴会のようなものが行われている。
『というわけで、ムチャキングシリーズ第5弾! まずは、街の様子をリーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)君に伝えてもらおう。リーゼロッテ君?』
「はい、現場リポーターのリーゼロッテです。私は今、日本サポーターの集うスポーツバーに来ています!」
街の様子やスポーツバーといっても、カメラの映像はそのままピッチ上の宴会にズームインされただけである。
その中心にいたのは、サムライブルーにレプリカユニフォームに身を包んだ真田勇(fa1986)、ワンセグ携帯付きである。というか、どちらかといえば、主役は真田ではなくワンセグ携帯といえたが。
「今回は日本戦の裏で生放送をやるという、視聴率を気にしないムチャも加えて放送しております。なので、個人的にも試合の方が気になるので、無口にワンセグ携帯を見つつ、思い出したように適当にリポートしちゃいまーす♪」
宣言どおり、早くもリポーターの仕事を忘れ、ワンセグ携帯を取り囲む人々の中に溶け込んでしまっているリーゼロッテ。
「ドイツといったら‥‥やっぱりビールにソーセージだよな!」
若宮久屋(fa2599)がピッチングマシンで発射する球にと、ビールにソーセージを大量に持ち込んでいたのだ。そして、気づいたら飲み食いをはじめてしまっていた、ただそれだけのこと。
「やっぱり、サッカーは悪魔の行事でした‥‥大人たちは徹夜し、ビールをラッパ飲み。天誅を待つまでもなく、人誅を下さなければなりません! そうですよねっ!?」
「ソーセージを食べながら言っても、説得力の欠片もないよ!」
一人プンプンしている七瀬七海(fa3599)だったが、ソーセージはしっかり食べている。リーゼロッテが鋭くツッコミを入れるが、当然リーゼロッテもすでにソーセージを食べはじめてしまっている。
「はーい、次のソーセージが茹で上がりましたよー」
そこへ、サムライブルーの大きめだぼだぼジャージ上下に、純白のエプロンドレスと三角巾を着けた上野公八(fa3871)が、ソーセージの大皿を持って入ってくる。
高校サッカー部の男子マネージャー、部員たちのアイドルというバックバージンがピンチな設定の上野であるが、今日の部員は全員それどころではない。上の空で、そのソーセージをつまむだけである。
「えーと‥‥見ないの?」
「見ますよ。でも、今はみんなの食事を作ってあげたいですし。ハチ、部員のみんなが球を追い回してるところが、なんか好きだから。ルールは、球技らしいことしか知りませんけどね。オフサイドって、ハイパントからのダブルコンタクトですよね? W杯って、J2、J1の上のJ0の通称ですよね!?」
リーゼロッテの問いかけに、そう答える上野。これには、リーゼロッテもどうツッコミを入れたものかと途方に暮れてしまう。
こんな調子で、30分の生番組とは思えないほどのまったりとした進行である。もっとも、野球でいうならローテーションの谷間というか敗戦処理というか、確実な負け戦に挑むわけだから、ムダにハイテンションでがんばる意味もない。
裏では国歌斉唱もとうに終わり、試合もはじまっているころだが、こちらはこれから国歌斉唱である。
豪州代表の黄色と緑のユニフォームを身にまとったTyrantess(fa3596)による、デスメタル国歌斉唱。このためだけに、わざわざバックバンドをデトロイトから連れてきている。普段ならこんなアレンジが放送されることもないだろうが、今日だけはどうせ誰も見ていないだろうという大らかさが‥‥やはりない。
あっという間に、ナゾの黒服集団にどこかへと引きずられていくTyrantess。だが、みんなワンセグ携帯の画面に夢中で、Tyrantessがどうなったかなど誰も気に留めはしない。
動きらしい動きはここまでで、後はだらだらとソーセージとビール片手にワンセグで観戦する様子が流されるばかりである。まあ、違った意味でムチャな番組であることは確かであるが。
『えっ!? はい、はい‥‥なんと今、緊急入電だ! スポンサー様のご厚意により、賞金はナレーターの私を含め、参加者全員に100万円ずつと言っている! 本家の方のボーナスは、1次リーグ1勝で1選手あたり100万円、それとまったくおんなじだーッ! 本家が活躍度に関係なく全員同じ金額なら、こちらも負けじと全員に問答無用で100万円! そう、サッカーもムチャキングも、選手のやる気を出させるためにはボーナスが一番効くーッ!』
このままではイカンということで、緑川がナゾの電波を受信して、勝手なことを言い出す。
しかし効果てきめん、ワンセグの画面に後ろ髪を引かれつつも、全員がノロノロながらもゴールに向かって立ち上がる。
そのときだった、試合が動いたのは。そして、チェダー千田(fa0427)が動いたのは。突然リーゼロッテに飛びかかると、そのユニフォームを破りにかかるチェダー。
「ちょ、いきなり何すんのよっ!」
リーゼロッテが、怒りの背負い投げでチェダーを投げ飛ばす。見事にゴールに吸い込まれ、ゴールネットを揺らすチェダー。
が、突然パパパパーンとゴールネットが爆発する。そう、気づけばゴールネットが有刺鉄線に変わっている。電流爆破マッチのロープを編み込んだ形にしたものに変わっていたのだ。
「なんとなくおもしろそうなので、ゴールを電流爆破マッチ仕様にしておいたのですが‥‥まさか、こんな風に役に立つとはね! というわけで、これからゴールを守るみなさん、ボールに吹き飛ばされるとこのダミー人形のようになってしまうから、しっかり命懸けでゴールを守ってくださいねー♪」
上半身ブラ姿にされつつも、にこやかにチェダーをダミー人形呼ばわりするリーゼロッテ。どこか寒気すら感じられた。
しかし、すっかりボロボロになってしまったチェダーだが、自分の行動の解説は忘れない。
「あ、申し遅れてました。日本がゴールを決めたら、女性陣が一枚脱ぐ! 相手のゴールが決まれば、俺が一枚といわず脱ぐ! 名づけて、他人の視聴率と書いてフンドシと読む、ウハウハ大作戦‥‥ガクッ!」
そこまで言って、力尽きるチェダー。そして、放送も終了目前だ。ハーフタイム、ロスタイム抜きでも90分もやるサッカーの試合とは、尺が違う。30分番組でどうこうしようというのが、そもそもムチャなのである。
『はい、はい‥‥またまた緊急入電だ! スポンサー様のご厚意により、賞金はナレーターの私を含め、参加者全員に800万円ずつと言っている! 本家の方は1次リーグ3戦全勝でやっともらえる額が、今まさに労せずに我々の手にッ! そう、W杯の裏番組という時点で、すべてがムチャキングなんだあぁッ! 生放送だから、スポンサー様もウソは言いっこなしだッ!』
ギリギリ放送に乗っかる最後のところで、またまたナゾの電波を受信して、勝手なことを言い切る緑川。
というわけで、ここからは番組のロスタイム。放送は一切されないが、ムチャキングなので無意味な戦いでも絶対に負けられない戦いというものがあるのである。
『さあ、生放送が終了してようやく今、ゴールの前にはじめてキーパーが立ちました。対するガンナーの七瀬、今ボールを‥‥発射!!』
「悪魔の行事に人誅を! 裁くのは俺のボールだッ!」
物騒なことを言いながら、七瀬が特製のボールを発射する。
「ちょ、自分はソーセージを発射してもらうハズ‥‥って、散々食べちゃったしな‥‥ぐふっ!」
キーパーの若宮がボールを受け止めるが、ガソリンたっぷりの火炎球を止められるハズもない。あっさり吹き飛ばされる。
となれば、待っているのはリーゼロッテ謹製の電流爆破ネットである。先程チェダーの味わったフルコースを、若宮も堪能である。
「もー、汚すのは構いませんが、破いたり焼いたりしないでくださいよー」
マネージャーキャラ継続中の上野が文句を言いながら、洗濯物のユニフォームをクロスバーを物干し竿に見立てて干していこうとする。
「洗濯物は、汚させないんだからっ☆」
この後、キーパーとして墨汁弾と戦うための前フリをする上野だが、これは電流爆破ゴールである。洗濯物が乾く以前に、パパパパーンと黒コゲの穴だらけである。
「えーと‥‥」
そしてキーパーはいなくなったが、七瀬は発射の手を緩めない。一応ゴール近くまで来ていたものの、未だにワンセグ携帯の画面に釘付けの真田にまでボールを放つ。
「‥‥ん?」
一瞬意識が飛んだ後、倒れていることに気づいた真田だが、それでもそのままの姿勢で画面を見つづけている。もしかしたら、球が当たったことに気づいていないのかもしれない。
『あーっと、裏でハーフタイムが終わったこともあって、全員また観戦モードに逆戻りだーッ! こうなったら、禁断のスペイン代表優勝ボーナス、8,300万円を出すしかないのかーッ!?』
倒れていた者たちも全員むっくり起き上がり、再びスポーツバーでの観戦モードである。先程も気にしていたわけではないが、今度は放送もされていないので、そのまま時間は流れていく。
そして、ムチャキングなんかこのままグダグダで終わってもいいじゃないかという空気が流れかけたころ、事件は起こった。
当初の宣言に従い、突然ズボンを脱ぎはじめるチェダー。モザイク柄のフンドシが姿を現す。とはいえ、下半身から脱いでいくあたり、まだまだ余裕がある展開である。
「ふっ、これが最後の砦さ‥‥コイツは俺にとって、まさしくGK!」
だが、すぐに上も脱ぐことになり、そしてすぐに最後の砦のはずのフンドシも脱ぐことになり、気づけばチェダーは完全に全裸である。
そして、試合終了。一方のムチャキングな面々も、死屍累々である。
「‥‥うう‥‥いや、後のを勝てば‥‥なんとか‥‥っス‥‥」
全裸でプランプランさせながら立ち尽くすチェダーの横では、真田がすっかり肩を落としている。
意気消沈のまま、それでもムチャキングの方は表彰式である。もちろん、100万円や800万円、ましてや8,300万円が本当に支払われることなどない。
優勝は国歌斉唱で連行され、それっきり戻ってくることのなかったTyrantessに決まり、賞金10万円が送られた。
そして、チェダーに全裸ボーナスの5万円が支給された。