ムチャキング6アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや難
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/18〜06/20
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「いよいよ、日本戦も2試合目ですねー」
「おう、ここはピッチングマシンで祝砲といかんとな!」
ここでいうピッチングマシンとは、過去ムチャキング1〜5で使われた、火薬を使ってピストルと同じ原理で球を発射する、野球の硬球なら時速300キロで飛ばせるというシロモノのことである。
「でも、相変わらずこの放送時間帯が気になるんですけど‥‥」
「うむ、例によって今回も生放送だ!」
「ええっ!?」
「サッカー好き芸能人たちが、日本戦の経過を一切見ることなく、生でやる暴挙。まさにムチャキング‥‥ってのが、前回からのコンセプトだったよな?」
「いつの間にそんなこと決まったんですか!?」
「たった今だ‥‥そう、それがムチャ魂ッ!」
「ムチャの意味がよく分からなくなってきましたが‥‥とにかく、ムチャ魂ですねッ!」
こうして、サッカーW杯便乗のムチャキング6がスタートした。
無謀王決定! ムチャキング6
『クロアチアの首都はサグレブ、コスモバルクの父馬もザグレブ、だから何!?』
ペナルティキックを止めるキーパーの役で、ムチャ度を競い合います。試技は何球でも可。
ムチャキング選出は、スタッフの独断と偏見によってなされます。
・優勝者には、職業としてムチャキングを名乗る権利が与えられます。
事前に用意される小道具
大概のものは用意されます。持ち込みも可です。なお、場所は陸上競技場内のサッカーグラウンドとなります。
注意点
・死なないようにがんばりましょう。
・ボールを止めようと止めなかろうと、優勝争いには関係ありません。リアクションがすべてです。
過去の放送スケジュール
・ムチャキング 3月09日 23:00〜
・ムチャキング2 3月30日 22:30〜
・ムチャキング3 4月19日 18:00〜
・ムチャキング4 5月27日 07:00〜
・ムチャキング5 6月12日 22:00〜
●リプレイ本文
『さあ、午後も10時半を回りました。すでに試合の方ははじまっていますが、ここからは横田新子(fa0402)の実況、解説、進行でお送りしていきます』
横田のナレーションで番組がはじまる。とはいえ、画面の方は無人の観客席が映し出されるのみである。試合云々以前に、確実に日本国内である。ニュルンベルクではないし、ニュルンベルクのマイスタージンガーが流れたりもしない。流れたところで、そこがニュルンベルクになるハズもないが。
『グループリーグ敗退が決定してしまうと、次の試合の裏でやってもムチャではなくなってしまうという、存亡の危機に立たされたムチャキング! 今回はどのような戦いが繰り広げられるのでしょうか!? すでに出場者一同、ピッチ上で画面を食い入るように見ています』
しばらく前の大ピンチを凌いだ後なので、草壁蛍(fa3072)がムチャを言って設置させた巨大プラズマテレビの画面に、全員の目が釘付けである。
今日の試合が、負けたらその瞬間にグループリーグでの敗退が決まってしまうという絶対に負けられない戦いなら、こちらも一部の人間にとっては、絶対に勝ちたい戦いなのである。
これまでも5人の歴代ムチャキングを生み出している当番組であるが、今回よりムチャキングの称号を公の場で名乗ってもよいということになったからである。それが名誉であるかどうかは、甚だ疑問の残るところではあるものの。
「大凧に乗っての登場だZe! 凧に乗るのは、忍者として常識Sa!」
実況する横田にカメラが切り替わった遥か後方の上空にポツンと、何やら点のようなものがある。音声は、そこから来ていた。
「Hahaha! 神出鬼没のガルフォード・ハワード(fa3963)、ここに参上だZe!」
しかし次の瞬間、横田の隣にマイクを持ったガルフォードが現れる。
『あれ!? となりますと、あの凧には一体誰が‥‥?』
「忍術の神秘Sa!」
映像が大凧に取り付けられたCCDに切り替わると、そこにはチェダー千田(fa0427)がなぜか侍の格好をして、青ざめていた。
「上様はすぐにワガママ、農民はすぐに一揆。ハァ、ブルーだ‥‥じゃない、ブルーでござる‥‥侍、ブルーでござるよ」
リアルサムライブルーを体現しているチェダー。上空高くに舞い上げられて青ざめつつも、なんだかんだで余裕がありそうである。
『あーっと、ここでピッチ上にはリリーフカーが登場です』
バリバリにチューンしたリリーフカーが、リリーフカーにはあり得ないスピードで疾走している。見れば、覆面女子レスラー、ホワイトタイガーこと夏姫・シュトラウス(fa0761)が、タキシードの上のマントをなびかせて、高笑いを上げている。
『2代目ムチャキングの夏姫嬢の登場です! しかし、リリーフカーから上空に伸びた縄が気になってなりません!』
ふと大凧の紐がどこから伸びているか目をやれば、リリーフカーに結ばれているではないか。しかし、夏姫はそんなことも気にせず、観客席目がけて一直線である。見る見るうちに、壁が目の前に迫ってくる。
しかし、夏姫はスイッチが入ってしまっているので、自分でも止めることができない。そのまま観客席の壁に激突し大クラッシュ、壁も車も見る影もなくグチャグチャである。
だが、夏姫は激突の寸前で宙に舞うと、無意味にひねりを加えて華麗に着地である。そして、着地と同時に仕込んでおいた火薬でリリーフカーが大爆発である。
となれば、結んであった紐が無事なわけがない。見れば、チェダーの乗った大凧がクルクルと小さくなっていく。やがてキラーンというSEと共に見えなくなるチェダー。
夏姫はといえば、着地のカッコよさに酔いしれているところなので、紐が切れたことなど気にしてはいない。無論、スタッフはプラズマの画面の方に集中しているので、それ以上に気づかない。
なので、ちょうどハーフタイムになってピッチングマシンと戯れようと出場者が集まってきたところで、チェダーがいないことに気づきもしない。大体、カメラはセクシー三巨頭を映すのに忙しい。そう、サッカーの応援にセクシーなお姉さま方は付き物なのである。
『牛飲馬食のエロテロリスト、美角あすか(fa0155)さんだーッ!』
まずはホルスタイン柄のレースクイーンタイプのワンピースを着て、牛耳装着の美角である。何よりも、尻尾がワンピースに穴を開けて出ているので、中でどうなっているのだろうと気になって仕方がない。尻尾はどうつけているんだ? 下着についたタイプ? まさか禁断のアナルプラグタイプ? だったら、下着は股のところが開いてるヤツ? それとも‥‥と、男子の妄想は尽きることがない。
『その拳は白き焔! 中華拳法の使い手、竜華(fa1294)さんだーッ!』
それにつづくは、足を高々と上げるハイキックの型で入場してきた竜華だ。あり得ないほどのスリットの開いたチャイナドレスに、蹴り上げられたムッチリした太ももが絶品である。こちらも猫耳に尻尾と装着だが、下着までも装着している。とはいえ、スリットから下着がチラついた方が破壊力があるとの判断は間違いではあるまい。
『エキセントリックな職業にチェンジするためにやって来た、草壁蛍さんだーッ!』
そして最後は草壁だ。こちらはサッカーらしく、ダボダボのアルゼンチンのレプリカユニフォームを着ている。が、ただそれだけである。もちろん、ズボンなんぞはいていない。胸元からは、かなり谷間が見えているのだが、下着らしきものは一切見えない。そのせいで、まさかパンツはいてない? という妄想が頭を過ぎって仕方がない。
裏がハーフタイムという隙間産業の狙い目に、瞬発力のあるお色気をもってくるあたり、心憎い構成である。
『ではまずダミー人形の試技として、ゴール前の赤白チェックのユニフォームを着た切り株を吹っ飛ばしてもらいましょう』
始球式の要領で、美角、竜華、草壁を引き連れたピッチングマシンが、早速始動する。
「Hmm‥‥今こそ、空蝉の術だZe!」
だが、そこで何を思ったのか、ガルフォードが突然叫ぶ。次の瞬間、本当にガルフォードと切り株が入れ替わっていた。
「Ouch! しくじったZe! 逆のシチュで入れ替わるはずだっだのSa‥‥」
本当は自分に球が来たら切り株と入れ替わるはずだったのだが、切り株がダミー人形として使われてしまったので、切り株だけで反応してしまって自ら球を食らう形になってしまったというわけだ。
『ガルフォード選手の必死のクリアーで、ゴールならずッ! でも、エロスを求めるあなたはチャンネルそのままで!』
美角がテニスラケットを持ち、テニスボールを指定する。
「千本ノック風に打ち返しまーす!」
千本もやってられるかぁ! とキレる以前に、1球目でいきなりガットが突き破られるが、小さなことは気にしない。というか、ピッチングマシンが連射仕様になっているので、止まってはくれない。あっという間にテニスボールの山に埋もれ、折角のセクシー衣装が意味なしである。
「貴様ッ! 見ているなッ!」
そんなカメラの前に突然割って入って、視聴者にアピールするウィン・フレシェット(fa2029)。
『突然のフレームインは、自称すばらしきウィン・フレシェットですッ!』
「ほーら、ズボンの下はトランクスだぞ!」
そして、突然ズボンを下ろすウィン。どうやら、別の番組でブリーフ番長と呼ばれたことを、根に持っているらしい。
『あーっと、ちゃんと女性向けの映像も用意されていました‥‥っていうか、まだ幼さの残る少年のこんな映像を流してしまっていいんでしょうか? あ、どうせ見てる人なんかいないということで、いいんですね? はい』
ということで、ならばと竜華がやって来ると、次々に脱がしにかかる。
「トランクスの下は、ボクサーショーツだぞ!」
「まだまだ! ボクサーショーツの下は、ブーメランパンツだぞ!」
「ちょ、そろそろヤバイんだけど‥‥ブーメランパンツの下はサポーターだぞ!」
「ちょ、本当にヤバイって、放送事故になるって!」
だが、さすがにサポーター姿になったところで、ウィンが激しく抵抗する。だが、こういう抵抗は逆に相手を燃え上がらせてしまうものだ。
「えー、どうヤバイのかな〜?」
竜華が強引にサポーターを引きずり下ろす。
「サポーターの下は‥‥しくしく‥‥」
下にはまだ何やら装着していて、モロということにはならなかったが、泣き出してしまうウィン。さすがに竜華もやりすぎたかと、気まずい表情である。
「むう、あれはまさか包茎矯正パンツ!?」
『し、知っているのか、チェダーっ! って、いつの間に戻ってきたんですか?』
お星様になったハズのチェダーは、平然と横田の横で解説者モードである。
「戻るも何も‥‥布団の中ではあんなに激しかったキミなのに、照れ隠しのつもりかい? ベイベ〜‥‥ぐぼはっ!」
横田にバコっと殴られるが、余計に壊れてしまうチェダー。そのままふらふらと女子たちの方へと吸い寄せられていってしまう。
だが、横田のツッコミは素手のものであったが、草壁は違う。球に打上げ花火を選んだ草壁は、ホッケーマスクをかぶってチェーンソーを振り回している。しかも、チェーンソーの振動に酔いしれて、すっかり狂乱の淑女状態である。
「はっ!」
ここに来て、ようやくチェダーが正気を取り戻す。持っていたモザイクボードを、慌てて見えそうで見えないユニフォームの裾がピラピラしている草壁の股ぐらに当てる。
だが、そんなところで正気も戻ったのがいけなかった。明らかに花火でなくチェダーを狙ってきたチェーンソーはかわしたものの、花火の方にジャストミートである。
ひゅるる〜ドン! と、再び上空の人となってしまうチェダー。
『結局、チェダーさんはパンツのナゾを墓まで持っていってしまいましたね‥‥』
だが、そんなチェダーどころの騒ぎではない。いつの間にかピッチングマシンが分身の術を使ってしまっている。
車の爆破以来テンション上がりっぱなしの夏姫は、ハンドポケットからの居合いでサッカーボール撃ち落としまくりである。ムチャを通り越して、刃が牙な世界に旅立ってしまっている。
一方、草壁は花火の球に関係なくチェーンソーを振りつづけ、美角はテニスボールの山の中でもがいていたし、竜華はといえば泣きながらゴールを守るウィンに、ヤケになってサッカーボールを発射しまくりである。
このまま放送時間終了かと思ったとき、密かに気配を殺していたガルフォードがついに動いた。
「おっと、賞金をいただくのを忘れたZe、さらBa!」
そう言って、優勝者用の袋を強奪するガルフォード。そのまま逃走しようとするも、一応中身を検めてみる。
「どーれ、いくらくらいはいっているんだYo? なんだ、この紙っぺらHa?」
中から出てきたのは、ムチャキング認定書だった。
「ほう、ガルフォード君がムチャキングか。じゃあ、私はムチャクイーンを名乗るわね!」
気づけば、ガルフォードのすぐ後ろにすっかり正気に戻った草壁が立っていた。ムチャクイーンを名乗るだけあって、勝手に押し通す女王様っぷりである。
「なんだYo〜、こんなのいらないZe!」
紙っぺらをヒラリと投げ捨てるガルフォード。同じく集まってきた竜華の手にピラっと止まる。
「え? 私がムチャキング!?」
そこへ、ものスゴい勢いでチェダーが殺到してくる。いつの間に戻ったんだとかヤボなコトを聞いてはいけない。
「俺のいない隙をつくとは、この卑怯者どもめ!」
『いない隙も何も、ほとんどの間いなかった気が‥‥』
横田の冷静なツッコミも気にしない。
「ムム、こうなったら‥‥クロアチアのユニフォームがチェスボードだけに、チェスの駒か? いや、ここはトランプだな。よし、キング、クイーンときたら、俺はジャック、ムチャジャックになる!」
チェダーが勝手に宣言する向こうでは、竜華がスタッフと何やらモメている。
「え、無茶的女帝ってダメなの? ムチャキング以外ダメって、融通きかないなぁ‥‥じゃ、いーらないっ!」
そういって、認定書を破り捨ててしまう竜華。
「ちょ、キングいないって。ムチャジャック単体じゃ、ハイジャックしたり、切り裂いたりする人みたいじゃん!?」
「ジャック・ザ・リッパーみたいに、ムチャジャック・ザ・チェダーってカッコいいじゃん!」
ウィンもやって来て、自分だけ恥をかいて終わらせてなるものかと、勝手なことを言い出す。
「本当にカッコいいと思ってんなら、そんな笑いながら言わねーだろっ!」
「よかったな! おめでとう!」
そこへ夏姫もやって来る。スイッチが入ったまんまなので、チェダーの肩を引き寄せて激しく揺さぶる。
『というわけで、ムチャキングは該当者なしというまさかの結末。しかし、その陰でムチャクイーン、ムチャジャックの二名が誕生しました!』
うんうん満足げにうなずく草壁の横で、チェダーががっくりうなだれている。だが、下を向くにはまだ早い。
『これからは、履歴書、名刺にはもちろん役職ムチャジャック、さらには確定申告も職業、屋号をムチャジャックに‥‥』
「マジっスか‥‥」
「みんなポカーンだね。なんでムチャジャックなのか、誰も見てなくて誰も分かんないんだからさ‥‥そうだ! 俺のパンツのヒミツも、誰も分からないんだ!」
ウィンがトドメを刺しにかかる。自分に都合のいい解釈まで披露するが、それはどうだろう? この日の視聴率は、凄まじい低さを記録したとか。しかし、世の中にはVTRというタイムシフティングの装置があるのだ。