ダジャレに命を懸けそばアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/26〜06/28
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●本文
TOMITVの会議室。ムダにアツい上司が、部下を呼びつけていた。
「おい、この間のダジャレの番組もよかったじゃねえか。というわけで、なんかダジャレ言ってみろ!」
「ふっふっふ‥‥ぐはっ!」
ムダにアツい上司なので、ヒーローが変身ポーズを決めるがごとくの意味ありげな笑いの最中でも、カチンときて鉄拳制裁である。
「ちょ、まだ何も言ってないじゃないですかっ!?」
「調子に乗って笑ったのがムカついた‥‥で、なんだ?」
「ダジャレに命を懸けそば‥‥ダジャレに命を懸け○○シリーズと、かけそばをかけてみたわけなんですが‥‥どうでしょう?」
「解説しなきゃ理解してもらえないようなダジャレなんか言うな!」
部下の力作も、鉄拳制裁で一蹴である。とはいえ、これは鉄拳制裁でも文句は言えないところであろう。
「‥‥やっぱりダメですか?」
「いや、今度のダジャレの番組はそのタイトルで行く。どんなグダグダ具合になるか、楽しみだな‥‥ふっふっふ‥‥ぐはっ!」
じっとガマンの子だった部下だが、上司も意味ありげな笑いを上げたので、鉄拳制裁のお返しである。
「ふっ‥‥いいパンチしてるじゃねぇか。世界を獲れるゼ‥‥ガクッ!」
「うぉーっ!」
死んでいない上司の亡骸を抱えて、大声を上げて号泣する部下。意味不明の展開に誰もついてこれてないが、そもそもいつも周囲から浮いているので、最初から誰も気にしていない。
そんなわけで、ダジャレを使ったおもしろVTRを競い合う企画の第4弾がスタートした。
『別にそばを使ったダジャレである必要はないそば。え? 語尾につける言葉そば?』
ダジャレを実際に収録してきたVTRのおもしろさを競い合います。撮ってこないで、スタジオ収録中にその場でやることも可能です。
各VTRごとに採点され、優勝者には賞金10万円が授与されます。
例:『布団が吹っ飛んだ』
干してある布団が風で吹き飛ばされるだけだと点は低く、寝ているところに爆破で布団ごと吹き飛ばされれば点が高い。
例:『カメを噛め』
イラストがその収録例。その後おもしろリアクションがなければ、低得点確実です。
その他注意点
・命懸けとはいえ、死んだら負けです。というか、番組がお蔵入りです。
・もちろん、流血もNG。但し、流血を伴わない怪我はガマンすればOKです。
過去の放送
・ダジャレに命を懸けろ 4月21日 23:00〜
・ダジャレに命を懸ける 5月12日 07:00〜
・ダジャレに命を懸ければ 5月29日 07:00〜
●リプレイ本文
薄暗い一室、そこは刑事ドラマなどにありそうな、演出過剰な取調室のようであった。机の上には大量の資料が積まれ、その横のイスにふんぞり返って座っているのはベクサー・マカンダル(fa0824)である。
となれば、取り調べを受けるのは相方である海風礼二郎(fa2396)しかいない。ベクサーの対面にはイスではなく座布団が敷かれ、その上に逃げられないよう縄で縛られた上で、正座させられている。
なお、座布団と言えば聞こえはいいが、石でできたギザギザの座布団である。
「ベクちゃん‥‥痛いよぅ。一体、何をしようっていうの?」
「ええい、黙れ! ネタは挙がってるんだ!」
「ええっ!?」
電気スタンドを押し当てて、海風を押し黙らせるベクサー。そしてコホンと咳払いをすると、資料を取り出してゆっくりと語りはじめた。
「海風礼二郎、現在中学生。優秀なるベクサー・マカンダルに引っ張られ、人気若手お笑いコンビやみくもあんどんとして頭角を現すに至るが‥‥小学5年生のころまでおねしょをしていた、間違いないな?」
「な、ちょ、ベクちゃん、何言ってるの!?」
「ええい、ネタは挙がってるんだ!」
今一度電気スタンドを押し当てて、海風を黙らせるベクサー。
「はい‥‥間違いございません‥‥」
「よろしい。で、おねしょをしてセンチメンタルな気分のときには、詩を書いてごまかしていた。これも間違いないな?」
「べ、別におねしょをしたときにポエムを書いていたわけじゃ‥‥」
「じゃあ、単にセンチメンタルな気分のときには詩を書いていたわけだね?」
「う‥‥間違いございません‥‥」
自爆気味に認めざるを得ない海風。
「小学6年生のとき、同じクラスの女の子にラブレターを書いたけど、結局出せずじまいだった?」
「はい‥‥」
「おまえん家のカレー、はんぺん入ってるの?」
「はい‥‥」
というか、足の痛みが尋常でなくなってきたので、早く終わらせてしまいたいという思いが強くなってきていた海風。
「なんでそんなことまで知ってるの!?」
「お前の部屋のゴミ箱に入っていたのを見つけたからに決まってるだろ! 思い出は重いでー!」
「思い出‥‥重いです‥‥でも、許せない、許せないよ! ベクちゃん」
「許してチョンマゲ♪」
突如として、チョンマゲのヅラをかぶった佐渡川ススム(fa3134)が現れる。これには、ベクサー、海風とも今までのことを完全に忘れ去って、仲良く静かなる怒りしかこみ上げてこない。
ベクサーはすぐさま海風を縛っていた縄をほどくと立たせ、代わりに佐渡川を座らせる。もちろん、ギザギザの石座布団の上にだ。そして、海風とは違って膝の上にはきっちり重そうな石をこれでもかと載せる。
「うごー! 許してチョンマゲ‥‥いや、許さないでくれ。このままつづけてくれ! もっと、重くしてくれ!」」
そう言って、自分から抱く石の数を増やしにかかる佐渡川。これには、重い思い出のことも忘れて、二人してドン引きである。
「これは困ったのぅ!」
佐渡川同様突然現れ、コマを回しはじめるDarkUnicorn(fa3622)。全然困っているようには見えないが、困った人間はもう佐渡川だけで十分である。
「ヒノトさん、いいところに来た! 俺の口に、その布を噛ませてくれ。これがホントの猿に猿ぐつわ! くっく‥‥はは!」
痛みが気持ちよくなりすぎて、壊れたように笑い出す佐渡川。
「ジロジロジロジー、ジロジロジロジィーー、ジロジロジロ‥‥はっ!」
そんな佐渡川をじっくりと凝視して観察していたDarkUnicornが、ある重大なことに気づいてしまう。
猿に猿ぐつわなどといっているが、この猿とは、佐渡川が猿種族の獣人であることを意味しない。大体、獣人であることを明かせるハズもない。そう、猿が如く自らの保護皮膜付きのを慰めるという意味なのである。
(ここはジロジロジロジーのジーを‥‥いや、さすがにそれはボツじゃな。事実をありのままに伝えるだけとはいえ、わしにはヨゴレすぎじゃ!)
「ええい! おぬしに毒されて変なネタしか思いつかなくなったではないか! げしげし!」
佐渡川を殴るDarkUnicorn。だが、佐渡川を悦ばせているだけなのは、言うまでもない。
「ベクちゃん‥‥?」
完全に気圧されてしまった海風が、ベクサーのすそを引っ張る。
「うん、早く汚れた大人の空間から抜け出そう!」
ベクサーが慌ててドアからセットの外に出ると、鍵をかける。すばやくドアの隙間にコーキング材を流し込み、さらに上からコンクリートで壁と同化させる。
「ちょ、ベクちゃん。まだ僕が残っているよぅ!」
ドアの内側から、ドンドンと叩く海風。だが、ベクサーは早くも壁紙を貼りはじめてしまっている。もはや、ベクサーは涙を流して海風を見送るしかない。
「犬死にじゃあないよ! 相手が猿だけに、犬猿の仲ってね」
「それって、犬死にの犬ってことじゃ!?」
そこまで言って、佐渡川のアツい視線に気づく海風。
「さあ、礼二郎君。もう石がないんだ。膝の上に乗らないか?」
「ひいぃぃっ!」
海風の断末魔の叫びはさておき、ベクサーの移動した隣の部屋には、アメリカーンな忍者のガルフォード・ハワード(fa3963)が数人待ち構えていた‥‥数人!?
「忍者は何人Ja?」
突然、問題を出すガルフォード。ベクサーは、何と答えてよいものか分からない。
「‥‥3人か? これだけとは、麩菓子ない奴じゃな!」
いつの間にか、麩菓子をほおばっているDarkUnicornがいて、代わりに答えていた。どのように佐渡川ルームを抜け出してきたのか、それは永遠のナゾである。
「不甲斐ないっTe? いやいYa、分身の術を使ってダジャレを言うから、それだけで体力を消費するのSa〜」
これまた分身の術の原理は永遠のナゾであるが、本人曰くとても疲れるらしい。だが、忍術までナメられたまま終わるわけにはいかないので、新たなるネタに挑戦である。
「空蝉の術で、ノックアウトだZe〜」
人間サイズのニンジンのぬいぐるみと入れ替わるガルフォード。
「これは何Ja?」
「さて、麩菓子も食べ終わったことだし、次の部屋に行くかの」
「Hahaha、残念ながらハズレだZe〜。これは忍者ならぬ、ニンジンJa〜」
さりげなくダジャレを折り込むガルフォードを残し、ベクサーを引っ張ってドアをくぐってしまうDarkUnicorn。
次の部屋は、リビングダイニングキッチンになっていた。そのリビングでは星辰(fa3578)がテレビを見ており、キッチン‥‥というか土間では、Zebra(fa3503)がかまどの火加減と格闘していた。
「中国人、東洋の秘術をまた見せつけるアルね」
リビングでゴロゴロとテレビでW杯観戦しているだけの星辰。見れば、ギプスをした腕を吊っている。
「ああ、これだけで賞金が入るアル。骨折したおかげで、くたびれ損の骨折り儲けアルね!」
別に本当に骨は折れていないのだが、どちらにしろくたびれ損には一切なっていない気がしてならない。
一方、土間ではZebraが勝手口の戸をなぜか厳重に鍵締めすると、奇術師らしく恵まれた体格でマッチョポーズである。
そして、マジックではおなじみのBGMが流れはじめる。そんな中を、一々ポージングしながら釜に米と水を入れ、蓋をする。そして、自らの頭にもシルクハットで蓋をする。これで、奇術師Zebraの戦闘準備完了である。
「先人の知恵‥‥はじめちょろちょろ、中ぱっぱ‥‥」
そう、かまどとの戦闘といえば、料理の火加減‥‥ではない。
「‥‥しかーしっ!! お釜には! お構いなしじゃあ〜ッ‥‥って、あれ!?」
薪に火をつけると、おそろしい勢いで燃え上がる。Zebraは灯油で発注していたハズなのに、爆発気味に黒煙を上げるかまど。お釜にお構いなしどころの騒ぎではない。
そう、スタッフがわざとらしく灯油とガソリンを間違えておいたのである。スタッフもお構いなしの構えである。
とはいえ、この程度のハプニングで慌ててはいけないのが奇術師である。まだ、大脱出のマジックが控えているのだ。
勝手口には、もはやリビングでくつろいでなんかいられなくなった星辰と、不運にも通りがかってしまったDarkUnicorn、ベクサーが開かないドアと格闘していた。
「これは困ったのぅ!」
またまたコマを回しはじめるDarkUnicorn。どう考えても困ってはいない。
「本当に、ただの骨折り損のくたびれ損になってしまったアルよ‥‥」
折れたはずの腕でガンガン戸を叩く星辰だが、ビクともしない。
そこへ、ようやくZebraが駆けつけてくる。
「このマジックに‥‥マジっ、クラクラ‥‥ぐはっ!」
この期に及んでダジャレを言うZebraに、ベクサーが怒りの電気スタンドを押し当てる。
「こんなことなら、早いとこ豚をブッ叩いてブタバコにブチ込まれておくんじゃった‥‥」
コマはどこへやら、子豚を抱きかかえながらDarkUnicornが嘆くが、Zebraは未だに余裕の態度を崩さない。
「赤子泣いても蓋取るな‥‥お釜にお構いなしじゃぁ〜!」
確かに釜に構っている場合ではないのだが、Zebraのこの余裕が三人には余計にムカついてならない。が、それも脱出できるアテがあってのことに違いないと、わずかな光明を見出さずにもいられなかったが。
すると、ガンガンとバールのような物で戸を叩きはじめるZebra。これには、一同ポカーンである。
「何やってんの? 早くしないと! さあ一緒に!」
そう、マジックの基本はガマンとムリヤリなのである。やっとの思いで、ドアは打ち破られた。
「重い思いをして、がんばりました‥‥」
まずはベクサーが、飛び出してくる。
外では、すでに隣室のガルフォードが忍術で脱出していた。別に普通に走って出てきただけではあるが、アメリカン忍者は大味なので気にしない。
「これでマジックとは、麩菓子ないのう!」
そうは言いつつも、DarkUnicornが食べているのは豚の丸焼きであるが。
「火病と本物の火はまったく別物アルよ!」
星辰も文句を言うが、言いたくても言えない人がまだ残っているのだ。そう、密室に閉じ込めらてしまっている佐渡川と海風だ。
火の回りはどんどん激しくなり、長屋のセット一面が完全に炎に包まれる。
そのときだった。炎の中から人影が! 佐渡川が海風を駅弁売りのポーズで抱きかかえながら、脱出してきたのだった。
「さすがに、これは勘弁してチョンマゲ‥‥ガクッ」
そう言って、力尽きる佐渡川。しかし、もはやチョンマゲのヅラがアフロのヅラになっていたのでダジャレ不成立である。
「こ、これは‥‥礼二郎はススムにオカマにお構いなしに掘‥‥ぐはっ!」
「人の相方を勝手にヨゴレにすんなっ!」
勝手なことを言い出すZebraに、相方よりも大切に持っていた電気スタンドを押し当てるベクサー。
こうして、セットを炎上させたZebraが全員の命を懸けさせたということで、優勝賞金10万円を手にした。