番長のマッハパンチアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 06/29〜07/01

●本文

 TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「ミスターの通算得点を抜いて、交流戦も終わりましたねぇ‥‥こうやって名選手の通算記録をじわじわ抜いていくのに、シーズン単位では無冠の帝王っていうのに、改めてホレなおしちゃいますね!」
「そうだな‥‥ふぅ‥‥」
 にこやかな後輩に対して、先輩は深くタメ息をつく。
「‥‥どうしたんですか、先輩。まだ賞金のコト、気にしてたんですか?」
「ん? ああ‥‥あれからずっと考えてたんだがな。俺たちがこの企画をはじめたのは番長をリスペクトしてだよな? だけど、今の番組の状況はどうだ? 番長はお金のコトなんか気にしない。そうじゃなかったのか?」
「プロデューサー番長の先輩が一番気にしてる気がしますが‥‥まあ、ホンモノの番長はメチャクチャもらってるわけですけども。でも、だったら賞金なんかなくしちゃえばいいじゃないですか!」
「そ、それで出演者番長が集まるかな‥‥?」
「なに弱気なコト言ってるんですか。だって番長ですよ! 集まらないわけないじゃないですか!?」
「そう、そうだよな! 番長だもんな!」
 こうして、ただ番長好きが集まるだけという、どんどんターゲットが狭まっていきそうな番長リスペクト企画の第4弾が、例によって早朝というターゲット層が分からない時間に放送されることとなった。

『マッハパンチのような素早い動きだと、番長は筋肉を傷めてしまいますよ編』

ルール
・全員が番長に扮して、野球の試合をします。ただそれだけです。
・普通にマジメに野球をするだけではお笑い番組ではなくなってしまうので、乱闘が多発したりする仕様になっております。
・あくまでもおもしろ番長映像を撮るのであって、乱闘時に必要以上に加害してはいけません。
・野球以外でも、グラウンド内でしたいことを、好きなようにして構いません。番長は何にも縛られないのです。
・その他細かいルールは特にありません。が、法律は守る必要があります。

過去の放送スケジュール
・番長のジャンピングニー 4月30日 7:00〜
・番長のロシアンフック 5月18日 7:00〜
・番長のストレート 6月06日 7:00〜

●今回の参加者

 fa1201 大間 仁(26歳・♂・狼)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa2029 ウィン・フレシェット(11歳・♂・一角獣)
 fa2860 静琉(16歳・♂・兎)
 fa3101 真田 雪村(40歳・♂・猫)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 6月末、空調完備のドーム球場の番長にすら経費削減の風が吹き荒れる今日このごろ、早速プロデューサー番長が鉄拳制裁を受けていた。
「プロデューサー番長さんのバカーー!! なに弱気なこと言ってるんですか!? たとえ商品がバナナの皮だって、勝つためだけに全力を尽くす、それが番長魂じゃないですか!? 賞金なんかなくったって、番長は集まりますよ!」
 グーパンチ番長となったパトリシア(fa3800)が、グラウンドに集まった他の番長たちを指し示す。とはいえ、前回詐欺師番長として名を馳せたパトリシアにそう言われても、どこか釈然としないプロデューサー番長である。
 そんな中、早くもマウンド上では大間仁(fa1201)が投球練習をはじめていた。
「パトリシアがグーパンチ番長で来るなら、俺はもっと強いグーを出すしかねぇ‥‥」
 投球モーションに、どんどん捻りが加えられていく。おかげで、名前どおりのハマの大魔神ではなく、もちろんハマの番長でもなく、トルネード番長を名乗る始末である。
「はーっはっは! この下界の豚どもめ!」
 守備陣番長も実に心強い。まずは、二塁ベース上にやぐらを築き上げてしまった祭り番長、犬神一子(fa4044)である。学ラン、サラシ、下駄に葉っぱをくわえた、この番組ではデフォともいえる番長装備の祭り番長だ。そして、番長と煙は高いところが好きなので、早くもやぐらの上から支配者番長ぶりを発揮している。
 そう、番長といえばだんじり、だんじりといえば祭り、祭りといえばやぐら、やぐらといえばとにかく高く、どこまでも高く。バベルの塔が天の怒りを買う以前に、ここはドーム球場だからそもそも天に限界があるのだが、それを突き破ろうというのが番長魂である。なので、今なお増築中である。
「うん、やっぱりこの番組は性に合うね! この空気がたまらないなぁ」
 ファーストの静琉(fa2860)がやぐらの下までやって来て、ダンス番長っぷりを発揮している。やぐらを回るように踊り狂っているので、ダンスというよりは番長を崇め奉る舞といった趣ではあるが。
「僕には、腕力はなくてもほどよい若さがあるよ! だから、踊り、ダンスは欠かせないよね!?」
 意味不明のことを言っているが、きっちり動ける番長が守備につくのは心強い。たとえ、静琉がはめているグローブが肉球グローブだったとしてもだ。
 対する攻撃陣も、番長ばかりなので破壊力十分である。まず最初に、4番打者としてタケシ本郷(fa1790)が登場である。
「ふむ、学ランを着るのは早二十年ぶりか?」
 犬神同様の葉っぱをくわえた番長デフォ装備に身をまとい、本郷がバッターボックスに入る。
「ケンカ番長、否! 暴力番長、タケシ本郷じゃい!」
 バットも持たず、すぐにでもマウンドに向かって走れる体勢をとる本郷。一方の大間も、ロージン代わりに置かれた名酒久ポ田の一升瓶をあおり、確実に指が滑る準備万端である。
「すべてが番長! その心意気は素晴らしい。だが、俺はあえて一投を投じてみたい。番長の伝説とその魅力は、数々のライバルとの名勝負やドラマにあったのではないか!」
 何やら小むずかしいことを言いながらも、大間がトルネード投法で投じたその一球はキャッチャーミットなど目指さず、本郷の頭目がけて一直線である。
 ただし、それも本郷がバッターボックスに立っていればの話である。本郷はすでに、マウンドに向かって突進している最中である。
「ションベン臭い小童など、肉体言語の話し相手にもならんわ!」
 一回り以上も年下の大間目がけて、ドロップキックを放つ本郷。とはいえ、ガキ相手だろうがスパイクの刃を立てるのが、番長のたしなみ。
 そしてもちろん、攻撃をかわすなどといった、はしたない番長など存在していようはずもない。あくまでも受け止めるものなのである。
 果たしてなんとか受け切った大間だが、なおも本郷は前かがみになった大間の頭をフロントヘッドロックに捉え、そのままジャンピングDDTにかかる。もちろん、狙うはマウンドの土などという甘ったれたものではない。硬いプレートの部分をピンポイントで狙うのである。
 しかし、いつまで経っても、大間の頭が突き刺さることはなかった。ただ、気づけばヘビのダミアンに噛まれていただけである。
「ヘビ、関係ないじゃん!」
 ピューと赤い液体を2本噴き出しながら、大間が文句を言う。
「いや、DDTってDamien’s Dinner Timeの略だし‥‥別に鬱憤晴らしにやっている訳ではないぞ。すべては愛だ!」
 かつての在籍球団のようなキャッチフレーズを持ち出し、恍惚の表情を浮かべる本郷。しかし、ダミアンは番長ではなくただのヘビなので、即刻退場である。仕方なしに、本郷もとりあえずはベンチに引き下がる。
 つづいて、真田雪村(fa3101)がバッターボックスに入る。これまた4番打者として登場であるのは、言うまでもない。
 リアルDDTの傷癒えぬ大間だったが、真田が昼間のパパはちょっと違う番長だったことを受け、ベタなホームドラマ番長へと変身してしまう。
「お父さん、貴方を三振に打ち取ったら‥‥娘はもらっていくぞ!」
 娘さんを俺にくださいと、ハートフルなシーンを目指したハズが、つい口が滑って時代劇の悪人のようになってしまう大間。だが、番長たるもの一度言ったことを訂正したりするようなマネはしない。こうなったら、そのままとことん突き進むのみである。
「‥‥故意にしろ故意じゃないにしろ、俺は守るべき者を命を懸けて守りたい。そういう者がいれば──娘に手を出すような奴がいれば、命を懸けてマウンドに走り、そいつを倒したい」
 持っていたバットを、竹刀のように縦に素振りする真田。いや、番長は竹刀など使わない。いつでも真剣所持の気持ちである。
 そして、肝心の娘さんであるところの阿野次のもじ(fa3092)は、スコアボードの上にチアガール番長となって立っている。
「俺は変化球を好まない、打! 打! 打! 狙うは真芯だから、YA! YA! YA! だーけど理解るぜ、燃える友情。直角フォークなら、カラぶるゼ!」
 ピッチャーとバッターの間で何が起きているのかなど知る由もなく、意味不明の番長応援歌熱唱である。
 その熱唱ぶりに、やぐらの回りを踊っていただけの静琉が黙っていられるはずもない。守備などそもそもあってないようなものだけに、スコアボードに上ると番長応援歌に合わせてダンス番長見参である。
 だが、足場の悪い高所でもダンス番長は普通に激しく踊り狂うのみなので、あっという間に身投げ番長である。もちろん、命綱やパラシュートなどという甘ったれたものを、番長がつけたりはしない。あくまでも大自然の掟にのっとり、自由落下あるのみである。
 ついに静琉が放送が中止になるほどの毒々しいまでにキレイな赤い花を咲かせるかと思いきや、なぜかマジック番長Zebra(fa3503)のステッキの花が映し出される。
 そう、皆がスコアボード周辺に気を取られている隙に、気づけばバッターが真田からZebraに入れ替わっていたのだ。さすがはマジック番長Zebraと言うべきか、やはり真田は昼間のパパは本当にちょっと違った番長だったと言うべきか。
 だがしかし、番長は隠しごとが許せないのである。たとえそれがマジックであろうとである。なので、入れ替わりマジックの様子がビジョンにリプレイで映し出される。
 しかしマジックとはよく言ったもので、実際には忍び寄ったZebraが真田を袋詰めにして隔離し、自分が代わりにバッターボックスに立ち、画面が戻ってきたらそれらしくステッキを花に変えてみただけの話である。
 このように、番長マジックの基本はとにかく力技でなくてはいけないのだ。もちろん、応用だろうと力技でなくてはならないのだが。
 ということで、バッターは相変わらず4番のZebraである。対するピッチャーは、いつの間にか静琉である。あの後どう助かったのか、それは永遠のナゾである。番長は隠しごとが許せないとはいえ、時に番長には神秘性も必要なのである。
「必殺打球、カニバル・ボール!」
 Zebraが叫ぶと、静琉がヘロヘロの球を投げる。もちろん、強振するZebra。
「カッキーン!」
 景気よくZebraが叫ぶが、球はどこにも飛んでいかない。そう、消えてしまったのだから。ボールがバットに当たって消えてしまった、というマジックである。
 しかし、マジック番長は相変わらず隠しごとがお嫌いの様子で、Zebra本人の解説付きでのスローリプレイである。
 すると、バットはボールを捕らえることなく、キャッチャーミットに静かに吸い込まれている。その音も、大声でカッキーンと叫ぶことによって打ち消し、カメラがさも打ち返したかのようにミットではなく架空の打球を追ってしまって分からなくしているというわけだ。番長マジックだけあって、相変わらずの力技である。
 だが、ここで終わっては番長の名が廃る。
「マイザーズ・ドリーム!」
 Zebraの合図で画面がスコアボード上に切り替わると、そこにボールが転がっているではないか!
 とはいえ、さっき静琉が置いておいただけであるのは言うまでもない。
 そこへ、リリーフカーに乗って大間が現れる。Zebraの仕込みに協力していた静琉のワンポイントも終わり、クローザーである大魔神番長がいよいよ登場である。大間が先発していた? 先発していたのは、あくまでもトルネード番長である。
「やれやれ、ヒドい目に遭った‥‥が、娘はやれねぇぞ!」
 そこへ、真田も戻ってきてしまう。今度こそ、阿野次を賭けた戦いが勃発してしまうのか? してしまうのである。もちろん、乱闘という形でだ。
「ふっ、ユキムラになら‥‥ションベン臭い小童どもを相手にするような手加減は不要だな!」
「おう、命懸けで来い!」
 そこへ、肉体言語で語らう相手を探していた本郷も乱入してきて、あっという間に大混乱である。
 一方そのころ、アホの子のようにやぐらを高くしつづけていた犬神が、ついにドームの天井に到達する。
「ん?」
 だが、天井のその部分がどこかおかしいことに気づく。気づいてしまった以上、その異変である布をペラっとはがすしかない。
 すると、今まで狙撃兵番長としてずっと気配を消してきたウィン・フレシェット(fa2029)が、天井にくくりつけられた格好で姿を現す。
「うぅ‥‥」
 おいしいタイミングを見計らって、いつ撃ち込んでやろうかとずっとガマンにガマンを重ねていたのに、すべて水の泡である。
 そして下界では、乱闘の激しくなったところを見計らって、パトリシアが満を持して嵐を呼ぶ番長として登場していた。
「ドームで全天候型、そんなヌルい場所を番長は望みません!」
 巨大扇風機と放水車を運び込むと、たちまちのうちに人工嵐のできあがりである。自分は学帽に学ランと番長デフォ装備と見せかけておいて、下にはちゃっかりスクール水着を着込んでいるパトリシア。これで放水はまったく問題ない。
 しかし、たまったものではないのがやぐらである。暴風に、激しく揺れるやぐら。そのてっぺんでは、揺れが尋常ではない。
「鎮まれい! 言いたいことがあるなら、風で語るな! 拳で語れ!」
 下界に向かって叫ぶ犬神。だが、逆にそれで体勢を崩してしまう。
「うおっ!」
 犬神が慌ててウィンに手を伸ばすが、ウィンの服を破いただけに終わり、落下していってしまう。
「うわーん! また今回も脱がされたよー!」
 あっという間にもうお婿にいけない番長となって号泣番長であるが、今問題なのは露出番長という羞恥プレイ中のウィンではなく、落下番長という極めて特殊なプレイ中の犬神である。
 今度こそキレイな赤い花が咲いて放送中止か!? との期待が膨らむが、残念なことにすぐにやぐらの途中に引っかかってしまって、無事である。もっとも、グラグラと不安定にゆれるやぐらなので、いつどうなるかは知れたものではない。
 だが、下界の人間に雲の上のできごとなど知ったことではない。そして、プロデューサー番長には下界の乱闘すらも関係ない。ただ、パトリシアの嵐による修繕費がどのくらいかかるのか、気が気でないだけである。
 結局、賞金を出していても誤差レベルで吸収されてしまうほどの出費になったとか、ならなかったとか。