第72回プロレスごっこ王アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
牛山ひろかず
|
芸能 |
フリー
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
やや易
|
報酬 |
0.7万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
02/28〜03/02
|
●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、モノマネあり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
これまでごくごく一部では静かなブームではあったのだが、先日2月16日に第1回である第64回プロレスごっこ王が放映された。
そして、その数日後──
「大変です! 出場予定者が今度は生水に当たって、全員入院してしまいました!」
「なにっ! ベタな展開だな‥‥っつーか、そいつら胃腸弱すぎだろ!」
駆け込んできたADに、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフ全員が血相を変える。
「‥‥うーむ、こうなったら前回同様、若手を呼んでなんとかするしかあるまい。すぐに募集するんだ!」」
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・プロレスごっこは安全第一です。怪我はもちろん、ちょっと血が出ただけでもNGです。
●リプレイ本文
『さあ、はじまりました、第72回芸人プロレスごっこ王選手権。実況は私、名賀井稔則(fa1985)でお送りしてまいります。解説はサトル・エンフィールド(fa2824)さんです。サトルさん、よろしくお願いします』
『放送されていない間の7回が気になりますが、とにかくよくぞ72回もやったと言いたいですね。という訳で、これまでの分はDVDを見て予習をしておいて欲しいですね』
72回もやってないし、言うまでもなくDVDなど一切発売されていないのだが、サトルの無責任な解説はつづく。
『とにかく買え! と。あなたのその1回のレンタルが、次回作をなくしているのだと思って欲しいですね!』
そこへ、リングに小野田有馬(fa1242)とレフェリーの伊集院帝(fa0376)が上がった。
『さあ、いきなりセットが用意されています。小野田選手によります、貧乏助教授とカップ焼きそばvsステンレス製流しの一戦であります。サトルさん、どう見ますか?』
『2対1とは、卑怯ですね。それに大体、このセットを作るのにどれだけのお金がかかっていると思ってるのかと言いたい。製作側の人間でもないのに言いたい』
ステンレス流し台は、底のしっかりしていない安物であることとの小野田の細かい指示があり、逆に制作費がかかってしまったという逸品である。
『さあ小野田選手、早速カップ焼きそばにお湯を注いでいきます』
「ワン、ツー‥‥」
『おっと、いきなり伊集院レフェリーがカウントをとりはじめましたが‥‥これはひょっとして?』
『ええ、そうです。きっちり3分間、180カウントする気でいやがりますね』
「ファイッ!」
途中のカウントはしっかりカットされ、試合開始の合図からはじまる。
「流しの下を『ベコッ!』と言わせずにお湯を捨てきれたら私の勝ち、『ベコッ!』と言ったら流しの勝ちです」
『試合をはじめるにあたり、きっちり説明するあたりはさすがであります小野田選手』
「あちっ!」
蓋の上のくぼみのお湯に悶絶する小野田。お湯飛沫が伊集院にもかかって、二人して悶絶する。
『これは、蓋の上にもわざとお湯を張っておきましたね』
『ええ、熱湯ものの基本動作です』
『あーっと、悶絶しているレフェリーを踏み台にした! いよいよお湯を捨てにかかります』
『今の今になって踏み台が必要になる意味が分かりませんが‥‥レフェリーがいい顔をしているので放置しておきましょう』
「鳴れ! 鳴れ!」
そして、何事もなく捨てられていくお湯。
「なんで鳴ってくれないの!」
『あーっと、試合終了! 小野田選手の圧勝ーッ! しかし、小野田選手は収まりがつかない!』
ちゃぶ台返しやら、流しを蹴ったり、荒れ狂う小野田。
『レフェリーが踏みつけられたままなので止める者なく、リング上はまさに無法地帯と化しております!』
『これは、小野田選手がどう締めるか見ものですよ』
しかし、サトルに振られてもこれ以上どうこうすることができず、暴れたまま伊集院と肩を組んで降りていってしまう。
『微妙な空気になりましたが‥‥セットを片づける間に、遥雄哉(fa0206)のダンスをご覧ください!』
「うーん‥‥おいらに務まるかな〜?」
とボヤいていた割には、そつなくこなす遥。
『本来ならば水着のラウンドガールなのでしょうが、ショタ向けとターゲットを絞ってお送りしております!』
『気がつけば、次の蘇我町子(fa1785)選手がパンダの着ぐるみの上にエナメルコスチュームでトップロープに上っていますね。特撮戦隊モノの女幹部のイメージなのだそうですが、中身がパンダって‥‥ますますターゲットが分からなくなって、実にいいですねぇ』
サトルの言葉通り、いつの間にか蘇我がトップロープに立っていた。
「をーほほほ! 私が白いマットのジャングルを、赤く染めて見せますわぁああっ!」
高らかに宣言も終わらぬまま、バランスを崩してのリングイン。もっとも、伊集院が下敷きになっているので、蘇我に何のダメージもない。
『おっと伊集院レフェリー、またも恍惚の表情を浮かべております!』
『明らかに自分から踏まれにいってますからね‥‥先程の試合で目覚めてしまったのではないでしょうか?』
『気を取り直しまして‥‥つづきましては、正体不明のぱんだますくvs竹&笹団子であります』
『正体不明も何も、散々蘇我選手って言っちゃってますけどね‥‥それはさておき、また2対1ですか。ハンディキャップマッチが多いですね』
竹と笹団子が運び込まれる。笹団子を見るやいなや、蘇我が猛然と襲いかかる。
『ぱんだますくだけあって、本当に笹ごと食べてますよ! 笹団子って、普通は笹の葉の部分は食べないものですよね?』
『ええ。人はどうして無茶するのでしょう? 腹を下すべきはあなたたちではないハズなのに‥‥っつーか、お茶の間のよい子はマネして欲しくないですね』
順調に笹団子の数を減らしていた蘇我だったが、急激にペースが落ち、お腹を押さえはじめる。
『サトルさんの解説通り、腹下しの兆候でしょうか!?』
『いやー、笹団子に苦しむパンダの画は、子どもたちのトラウマになりかねませんよ』
「ギブアップ?」
伊集院が確認をとるが、蘇我は首を振る。
『あーっと、ここで伊集院レフェリー、両手を交差! 試合を止めましたッ! ぱんだますく、敗退であります!』
前の試合の肩組みとは違った意味で伊集院の肩を借りて、リングを下りていく。
『さあ、本日のメインエベントであります! 若干ややこしいことにはなっていますが、2試合並行して行われ、それぞれの試合で先に勝った方が最終的な勝者となります!』
おでんの入った鍋が二つ、カセットコンロにかけられて運ばれてくる。鍋の中はグツグツと沸騰しており、リアクション一切無視の本気鍋である。
『我らがヒーロー、荒ぶる大食漢、食欲覆面Xに挑みますは、熱々の関東風おでん!』
『食欲覆面Xは、前回すでに正体は三条院棟篤(fa2333)選手と割れているんですが‥‥堂々として大したものです』
食欲覆面Xこと三条院が入ってくる。その正体を暴いたのはサトル本人なのだが、三条院以上に堂々と解説している。
『一方、食べるためにマッチョになった、手段は目的を凌駕する、若宮久屋(fa2599)選手は熱々の味噌おでんに挑みます!』
『これはもう、関東vs名古屋の代理戦争ですね!』
試合に先立って伊集院が凶器チェックを行うが、二人の箸は華麗にスルーされる。もっとも、箸を取り上げたら沸騰する鍋に素手で挑むしかなくなって、実質オンエア不可能になってしまうが。
『さあ、ゴングが鳴りました!』
「このおでん、やっちゃうぞ、このヤロウ!」
「いいから、早く食え!」
ゴチャゴチャ言ってすぐに食べ出さない三条院に業を煮やし、伊集院が頭をはたく。伊集院に押されて、鍋に顔を突っ込んでしまう三条院。
「ぐわっちゃちゃーっ!」
三条院が、顔を押さえて悶絶する。
『さすがは食欲覆面X、のっけから飛ばしています』
『伊集院レフェリーは三条院選手の相方ということで、ツッコミどころが分かっていますね』
『それを尻目に、若宮選手飛ばしてます。口の中は、早くもデロデロだぁーッ!』
「アチアチッアッチャーッ!」
だが若宮も熱さに耐え切れず、玉子をぽーんと吹き出す。その玉子が、キレイに伊集院の顔面を捉える。
「アチャーッ!」
今度は、伊集院が顔を押さえて悶絶する。
『リング上では、早くも悶絶大会であります‥‥っと、なぜか蘇我選手のぱんだますくが、いつの間にかトップロープに上がっている〜ッ!』
「をーほほほ! 私が白いマットのジャングルを‥‥」
『笹団子戦のダメージはまったく見られません! それよりも、先程と一言一句違わぬセリフを言ってるぞ! ということは!?』
「‥‥赤く染めて見せますわぁああっ!」
予想通り、バランスを崩してリングに落下。その際、おでんの鍋もひっくり返してしまう。
『赤くは染まらなかったが、地獄色には染まったぁッ!』
『ちょっと待ってください、名賀井さん。なぜか小野田選手が湯切り前のカップ焼きそばを持って実況席に突っ込んできてますよ!?』
「危ないよ、どいてどいて!」
名賀井がサトルに引っ張られた方向を見ると、これまたなぜか小野田が向かってきている。
『あーっと、これは実況席も地獄色に染まろうとしているのかーっ!』
予想通り、小野田は実況席前で足を滑らせ、カップ焼きそばがぶちまけられる。
だが、名賀井とサトルはマイクだけ持って、かろうじて避難していた。
『‥‥‥‥』
「‥‥どうしたことか、私のマイクの音声が通ってないようですが‥‥あーっと、マイクだと思っていたら、おでん缶だったぁっ!」
よく見れば、マイクだと思っていたものはおでん缶だった。名賀井は音声がきっちりガンマイクで拾われているのを確認すると、おでん缶をマイク代わりに実況をつづける。
その横では、やはり同様にマイクがおでん缶だったサトルが、おでん缶を開けて食べはじめている。
「サトル選手、おでん缶を完食ッ!」
いつの間にか復活した伊集院がやって来ると、サトルの手を挙げる。
「なんとなーんとッ! まさかのサトル選手の勝利だーっ! しかし、リング上ではまだ三条院選手と若宮選手がおでん相手に戦っているッ! 私には、かわいそう過ぎて止めることができませんッ!」
カメラが段々と引きになっていく。リング上では、未だに三条院と若宮がおでんと悪戦苦闘していた。