ムチャキング7海の日SPアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/17〜07/19
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「スポーツじゃないんだが、俺には便乗したいものがある!」
「は? なんですか、いきなり‥‥」
「海の日に便乗したい!」
「はぁ‥‥でも、ピッチングマシンはどうするんですか?」
ここでいうピッチングマシンとは、過去ムチャキング1〜5で使われた、火薬を使ってピストルと同じ原理で球を発射する、野球の硬球なら時速300キロで飛ばせるというシロモノのことである。
「そんなこともあろうかと、水中用に改造しておいた! 飛ばせるものが銛限定になってしまったが‥‥だが、それがいい!」
「‥‥そこまで準備してあるんだったら、便乗したいじゃなくて、便乗するって言い切ってくださいよ!」
「ある意味理不尽‥‥だが、それがムチャ魂ッ!」
「はぁ‥‥とにかく、ムチャ魂ですね?」
こうして、スポーツイベント便乗チームの意味がなくなってきたムチャキング7海の日SPがスタートした。
『無謀王決定! ムチャキング7・海の日スペシャル』
海に素もぐりし、飛んでくる銛を受け止めることでムチャ度を競い合います。試技は何回でも可。
ムチャキングの選出について
・優勝者には、職業としてムチャキングを名乗る権利が与えられます。
・ムチャキング選出は、スタッフの独断と偏見によってなされます。
・ムチャキングは、現在空位です。
・新たにムチャキングが誕生した場合、以前のムチャキングの方が参加していた場合はムチャキングから転落となります(元の職業に戻ります)。
・過去に与えられたことがありますが、今後はムチャキング以外のムチャ○○が与えられることはありません。女性でもキングです。
事前に用意される小道具
大概のものは用意されます。持ち込みも可です。なお、場所はどこかのそれなりに水深のある海となります。
注意点
・死なないようにがんばりましょう。
・銛を受けようと避けようと、ムチャキング争いには関係ありません。リアクションがすべてです。
過去の放送スケジュール(最近5回分)
・ムチャキング2 3月30日 22:30〜
・ムチャキング3 4月19日 18:00〜
・ムチャキング4 5月27日 07:00〜
・ムチャキング5 6月12日 22:00〜
・ムチャキング6 6月18日 22:30〜
●リプレイ本文
照りつける太陽がまぶしいどこかのビーチ。しかし、バカンスのような甘ったれたものに来ているわけでは無論ない。そう、戦士に休息はない。待っているのはムチャな戦場だけである。
そして、集まった8人の戦士の焦点は一点に絞られていた。すなわち、前回誕生しなかったムチャキングが、今回こそ誕生するのか? についてである。ましてや、前回誕生したムチャクイーン、ムチャジャックが揃い踏みなのである。
「ところで、キングが誕生したら、クイーンを嫁にもらえたりすんの?」
そう言いながら、キングにもなっていないのに調子に乗って、クイーンこと草壁蛍(fa3072)の腰に手を回すジャックのチェダー千田(fa0427)。たちどころにクイーンの逆鱗に触れ、鞭でビシバシとしばかれる。
「ダメだって! もう鞭が気持ちいい身体になっちゃってんだから!」
試技がはじまってもいないのに、早くもチェダーが昇天しかかってしまう。
「こ、これが‥‥伝説のムチャってヤツですか!?」
その様子を見て、上野公八(fa3871)が驚愕の声を上げる。上野の脳は、すでに夏の日差しで蝕まれているようだ。しかし、夏の日差しのせいだから、とはしない男がただ一人。
「んなわけあるかぁ!」
鋭く一回転しての裏拳を上野のテンプルに決めたのは、ミゲール・イグレシアス(fa2671)。巨漢の空手の使い手が手加減なしとはシャレにならないが、本人がムチャしなきゃと努力した結果なので、努力には報いてあげねばならない。
「ムチャの世界は広いですね。今度はお花畑が見えます‥‥」
なので、上野もチェダーと同じで脳だけ異世界に旅立ちかけてしまっている。
と、カメラが自分に向いたことに気づいたミゲールが、自己紹介をはじめる。
「まいど! 岩ちゃんです‥‥って、誰やねん!」
勝手な言い分の一人ノリツッコミ、でもツッコミだけは他人へで、今度は振り向きざまパイロ・シルヴァン(fa1772)に一本拳を見舞おうとするミゲール。
「見たかっ! 止めたどー!」
だが、パイロは試技用にジェラルミンシールドを持っていたので、受け止めてみせた。
拳が痛いのも気にせず、なおもミゲールがボケようとするそぶりをみせたので、そこへ草壁の鞭がピシっと割って入る。
『今回は、クイーンの宴へようこそ。私のしもべとなるキングに相応しい人がいるかどうか、実況・進行しながら見守ってあげるから、早くなさい!』
草壁の横では、武田信希(fa3571)が小姓のように付き従い、丸めた鞭を受け取っている。武田はただの解説役での参加なのだが、チェダーのような特殊な性癖に調教されてしまうのを恐れ、実況で草壁の前では従順でいることに決めていた。
「ふっ、ならば一番手はこのジャックめにおまかせを!」
先程の痴態はどこへやら、ビシっと決めると水中用に改造されたピッチングマシンの方へと寄っていき、装填されている銛になにやらロープをくくりつける。見れば、その先はサーフボードにつながっており、その上にチェダーが乗っている。
「俺はトビウオを超える‥‥発射ッ!」
果たして、勢いよく水面をかっ飛んでいくチェダー。
「これは、ドクターストップにしたほうがいいですね」
武田が家庭向け医学書を手に、まったく医学的ではない解説を入れているが、そんな間にもチェダーの姿は見る見るうちに小さくなっていく。
やがて、沖合いでドーンと水柱が上がる。そして、しばらくすると、なにやら船影が近づいてきた。
それは、2代目キングこと、夏姫・シュトラウス(fa0761)の乗った漁船であった。大漁旗が掲げられているので、漁は成功だった模様。
見れば、船縁に銛が突き刺さっていた。チェダーも頭から突き刺さっていたが、それは特に問題ない。問題なのは、夏姫が白い虎の覆面をかぶり、ホワイトタイガーマスクへと変身していることである。
この夏姫、普段はおどおどしているが、マスクをかぶると変なスイッチが入ってしまい、傲岸不遜なホワイトタイガーマスクに変身してしまうのだ。
「そこのバイオレットバイオレンスよ、頼まれていた本マグロはこのホワイトタイガーマスクが釣ってきたぞ!」
ドスっと、400キロはあろうかという見事なクロマグロを無造作に放り投げる。受け止めたバイオレットバイオレンスこと常盤躑躅(fa2529)の腰が、ありえない角度に曲がってしまった。『祝! フリフリシェイク海の日SP!!』と書かれたのぼりを背負って背筋がピンとなり、腰にも超合金製万歩計付きブラックベルトを巻いていたのだが、まったく役に立っていなかった。
そして、そんなことは一切無視して、とうっと砂浜に着地する夏姫。
なお、こんな浅いところに漁船が入り込めるのかという疑問もあるだろうが、ムチャキングだけに船もムチャをして座礁しているだけなので、気にしてはいけない。
夏姫は船縁に刺さったチェダーの放った銛を引っこ抜くと、それをピッチングマシンに装填する。そして、自分用に銛をもう一つ受け取る。
「紳士とは、いついかなるときも、己のスタイルを貫き通すものよ」
そう言い残すと、白のタキシード姿のまま海中に潜っていく夏姫。
「紳士とは、点を点で受け止めるという荒業をも成し遂げてみせるものよ」
水中で息も気にせずにしゃべると、飛んできた銛の切先に、構えている銛の切先をぶつけて受け止めようとする。
だが、そんな荒業がそう簡単に成功するはずもなく、腕をかすめて銛は飛んでいってしまった。
「ぬう‥‥しかし紳士とは、一度の失敗ごときであきらめたりはしないものよ」
夏姫は一旦浜辺に上がってくると、船縁に刺さっていたもう一つの銛──すなわちチェダーを引っこ抜くと、そのまま抱えてもう一度潜ってしまう。
果たして、銛の切先というか今度はチェダーの頭なわけで、的の大きさが全然違う。当たらない方がおかしいというものだった。
「な、なんか、首が重いなー? なんでだろうなー?」
脳天に銛を突き刺したまま、チェダーが海から上がってくる。自分でモザイクボードを使って流血を隠しているのだから、気づいていないわけはないのだが、脳に送られる酸素が少なくなっていて素で気づいてないようだ。
「チェダー、上! 頭の上!」
ミゲールがきっちりツッコミを掌底で入れて、スポーンと銛が抜ける。と同時に、頭頂部が噴水のようになってしまい、モザイクボードでは隠し切れなくなってしまって一旦画面が、放送席に切り替わる。
「駄目です、目が死んでいますね」
勝手なことを言ってサジを投げる武田。当の夏姫はといえば、ホワイトタイガーをレッドタイガーにするわけにはいかないと、陸に上がってからは一切チェダーに近づいていなかった。
そんな間にも、チェダーがギャグ要員持ち前の不死身の体力であっさり復活する。
『では次の人、行きなさい』
ボンデージ風味のピッチリした革の水着に身をまとい、デッキチェアに寝そべってトロピカルジュースを飲みながら、次の指示を出す草壁。まさにクイーンの面目躍如である。
「ピッチングマシンといったら、これで打ち返すのが礼儀ってものですよ!」
きっちり足の親指で砂をつかみ、バットをフルスイングする上野。しかし、そんな基本に忠実なスイングも、試技は水中なのでまったくの無意味である。
だが、野球のユニフォームを着たまま潜っていく上野。プロ仕様の木製バットなので身体もバットも水に浮いてしまうが、そこは重りでしっかり沈めているので問題はない。
海底で屈伸をし、バットを回して腕を伸ばし、そしてもちろんホームラン宣言。おかげで、しっかり深呼吸してから入ったが、すでに息苦しくなってきている。
それでも、銛が飛んでくればきっちりスイングする上野。しかし、水の抵抗が半端ではなく、完全に振り遅れてしまっている。
「まだまだワンストライク、あと最低でも2球あります!」
しゃべってしまって、余計に苦しくなる上野。明らかな自爆だったが、最低あと2球と言ってしまった手前、ここで上がってしまうわけにもいかない。
つづく第2球も空振り。というか、もはやスイングというよりはもがいているようにしか見えない。
第3球を待たずに、重りをものともせず、プカーっと土左衛門スタイルで浮かび上がってくる上野。とはいえ、すぐさま救助され、命に別状はない。
しかし、この程度ではクイーンにはご満足いただけないご様子。
『今一盛り上がらないわね。火薬の量を3倍になさい。これはクイーンの勅命である!』
「シャーベットもご用意しておりますが‥‥え、日焼け止め? ハイッ、ただいまお塗りいたしますッ♪」
火薬のセッティングに時間がかかっている隙に、自分はデッキチェアでくつろいだまま、チェダーに日焼け止めを塗らせる草壁。しかし、チェダーが普通に塗るだけのはずがなかった。
「あーっと、手が滑っ‥‥ぐはっ!」
わざとらしいまでに日焼け止めに手を滑らせて、草壁の胸と水着の間に手を滑らせるが、その感触を堪能する前に、クルクルクルーっとチェダーの首に鞭が巻きつく。
「けほけほ‥‥ふっふっふ、だが胸など前菜に過ぎん! 狙うはお股のみ! おっぱい星人とは違うのだよ、はーっはっは‥‥ぐはっ!」
最初はむせながら小声で言ってたものの、気づいたら感情が乗って最後には大声で絶叫してしまったものだから、草壁の逆鱗に触れたのは言うまでもない。
「いてて‥‥でも、俺の番だしな! どいつもこいつもしょっぱい試合ばかりしやがって、俺が本当の‥‥って、おい! なに食ってんだよ!?」
腰をさすりながら常盤が立ち上がろうとした視線の先では、夏姫が常盤に投げ渡したマグロの、変わり果てた姿があった。
「ん? 活きのいいうちに食べてあげるのが礼儀と思って‥‥刺身はもう飽きちゃったから、カルパッチョにしてみたんだけど、食べる?」
マグロを盾に銛を受け止める予定の常盤だったが、こうも無邪気にパイロに言われては、怒る気力もなくなるというものである。
だが、ボケマッシーンのミゲールは、パイロの言葉を目ざとく拾っていた。
「ヤムチャ? ムチャとはちゃう。って、カルパッチョや! 一文字しかあっとらんやんけ。って、チョとチャで一文字もあってないやん! なんでやねん‥‥」
そう言いながら、どんどん海に潜っていってしまうミゲール。しかし、海に入りながらもしゃべるのをやめようとはしない。
「ヤムチャは飲茶って書くんやで。分かった、飲むんやな? って、飲茶は飲み物ちゃう。なんでやねん‥‥」
ミゲールはそのまま、火薬3倍増のピッチングマシンの前に立ってしまう。すでに酸欠で顔が青ざめてきていたが、それでもしゃべりは止まらない。
「チャウチャウちゃうんちゃう? うん、これちゃうちゃうちゃうねー。ってなんでやねん‥‥」
案の定、そのままプカーっと土左衛門スタイルで浮かび上がってくるミゲール。だが、上野のときとは違い、ボケを黙らせておけとばかりになかなか救助されない。
その様子をポカーンと見ていた常盤だったが、我に返ってカルパッチョを食べるのをやめる。
「チィッ! あんまりうめぇから、俺まで食っちまってたぜ‥‥ま、しょうがねぇか。俺にはマグロだけじゃない、コイツらもいるんだ!」
常盤が指差した先には、砂の上で熱せられた鉄下駄であった。
「そう、俺は一人じゃねぇ! 応援してくれるヤツがこんなにもいる。このように!」
鉄下駄の上で卵を割って、目玉焼きを作るパフォーマンスをしてみせる常盤。応援してくれるヤツとの関連が分からないが、それはそれである。
鉄下駄を両手にはめると、常盤も海に潜っていく。
「応援に応えてこそのムチャキングだろ? 実力もモチロンだが、運がねぇとそうそうなれるモンじゃねえ。ゴボゴボ‥‥」
気力も体力も運も、すべてに渡って充実していたが、水中では息ができないことを理解できる頭脳が足りなかったようだ。あっという間に、プカーっと浮かび上がってくる常盤。しかし、それでも一人ではない。今なら、ミゲールという土左衛門仲間がいる。
「大丈夫です。すべての証拠は、母なる海が洗い流してくれますから‥‥じゃあ、最後にパイロさん、お願いします」
武田のムチャブリで、パイロの試技がスタートする。目の前で大人2人が失敗するところを見ているだけに、ジュラルミンシールドを2枚重ねにした上、慎重に深呼吸してから潜るパイロ。
しかし、備えは万全であったとしても、草壁の改造を指示したピッチングマシンは半端じゃない。あっさりとジュラルミンシールドを打ち抜いて、そのまま飛んでいってしまった。
「バカな‥‥1万2千枚の特殊装甲が‥‥」
さすがに身体に命中することはなかったものの、6千倍もサバを読むパイロ。
こうして尊い犠牲を払いまくりながら、いよいよキングの発表のときが来た。
『私のしもべとなるキングに相応しいのは‥‥一番血を流したチェダーね!』
草壁の言葉に、思わずひざまずくチェダー。ジャックだろうとキングだろうと、クイーンが一番上のようである。
「ハイッ、キングでございますか? かしこまりました。キングの刻印として、こちらを踏みつけてくださいませ」
M字開脚で股間を差し出すチェダー。さすがの草壁もそこはイヤなので、蹴り倒すと背中をハイヒールで踏みつけてみせる。
「暑くなるとこういう人増えますよね〜?」
「いい? キングは暑い寒いに関係なく、いつもこうなのよ」
冷たい目でチェダーを見る武田に、草壁がそう教え諭していた。