リフォームで新築が水没アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/17〜07/19
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●本文
登場人物
・ディレクターに昇進したばかりの男(以下、ディレクター)
・ディレクターの上司(以下、上司A)
・上司Aのさらに上司(以下、上司B)
TOMITVのこのディレクターは、最近マイホームを建てたばかりだった。しかし、上司Aの提案によってメチャクチャなリフォームをされてしまう。それが、リフォームで廃墟という番組だった。
その恨みを晴らすべく、ディレクターは上司Bの許可をもらって、上司Aの屋敷にメチャクチャなリフォームを施してしまう。それが、リフォームで廃墟の逆襲という番組だった。
ディレクターと上司Aは一連の恨みを晴らすべく、上司Bの愛車の数々にメチャクチャなリフォーム(改造)を施してしまう。それが、リフォーム廃車復活戦という番組だった。このときのショックで、上司AB共に病院送りとなってしまう。
やがて退院してきた上司ABは、快気祝いと称してディレクター宅内でフットサルを行った。それが、リフォームフットサルという番組だった。結局、ロスタイムが2時間もとられ、家は全壊してしまう。
さらにその報復として、ディレクターは上司Aの屋敷で三角ベースを決行。それが、リフォーム三角ベースという番組だった。番組終了時のガス爆発により、上司Aの屋敷は完全に吹き飛んでしまう。
そして、上司Aは原点回帰としてディレクターの建て直していた家に、完成前にリフォームを敢行。上司Aにとってはすばらしい家が完成する。それが、リフォームで新築が廃墟という番組だった。
こうして、次の問題は完成したディレクターの家をどうしようかということに移った‥‥
そして──
「冷静になって考えたんだが‥‥あの家に満足しているかね?」
すっかり落胆したディレクターのところに、上司Aが神妙な面持ちでやって来ていた。
「‥‥満足できると思ってるんですか?」
ディレクターの声は、もはや達観した男のそれであった。
「思っていない。だから、水に流そうと思うんだが‥‥どうかな?」
「水に流せるとでも思っているんですか?」
ディレクターの声が荒くなる。全然達観してないじゃんという話だが、今問題なのはそんなことではない。
「いや、そういう意味でじゃなくてだな。家を文字どおり水に流してしまおうと思ってだな」
「は?」
「家をクレーンで吊り上げ、そのまま輸送、海へとクレーンで沈める。出場者は、その中で普通にリフォームをしているという体で、最後まで逃げ出さなかった人が優勝。ただし、呼吸が止まっていないこと‥‥どうだ、出場者がそういう画になるんだったら、少しは気分が晴れるというものじゃあないかい?」
「晴れるかどうかは‥‥やってみないと分かりませんね!」
「そうか、やってくれるか!」
こうして、自分だけヒドい目に遭うくらいならみんなでヒドい目に遭ってやるというやや後ろ向きの理由で、リフォームとは名ばかりの海の日便乗企画がスタートした。
企画内容:
8名までの精鋭がディレクターの家のリフォームという体で中にいるところを、家ごと海に沈められます。
最後までリフォーム作業に没頭していて家の中に残ったという人が優勝です。
屋根は家の中ではありません。
優勝賞金10万円。ただし、死んだら負けなので、死ぬまでガマンするのはやめましょう。
過去の放送スケジュール(最近5回分):
・リフォームで廃墟の逆襲 4月1日 18:30〜
・リフォーム廃車復活戦 4月17日 23:00〜
・リフォームフットサル 5月16日 07:00〜
・リフォーム三角ベース 6月4日 07:00〜
・リフォームで新築が廃墟 7月5日 07:00〜
●リプレイ本文
ディレクターの家を海に沈める‥‥環境問題は、人工漁礁にするという大義名分により問答無用でクリアにしてしまっている。だが、その中に人を入れたまま沈めるのは、海の男もやめろと言ったという。
しかし出場者たちは今、すでにクレーン船に乗り込んでしまっているのだった。すでに、家の中でリフォーム作業に忙しい。ある者はリフォーム番組の体裁をなんとか保とうと、ある者は脱出の際を盛り上げようと‥‥。
「ふぅ‥‥これだけ描けばOKだろう」
ピンクのペンキ片手に、壁一面にウサギのシルエットを描いていたエディ・マカンダル(fa0016)が、ようやく一息吐く。彼のいる場所は浴室だった。ご丁寧にも、浴槽にはお湯まで張っている。
「さーて‥‥せっかくだから入っておくか」
裸になり、浴槽に浸かるエディ。だが、すでに沈められる瞬間は間近に迫っていた。
「みゃ〜‥‥とにかく、頑張る‥‥」
なぜか着せられたスクール水着を自分で引っ張りながら、一心不乱に壁に絵を描いているのはミミ・フォルネウス(fa4047)。
エディが浴室の壁画にこだわっているのに対して、ミミは特に決まりごともなく適当な場所を見つけては描いている。それは、恐怖心を打ち消すための作業のようにも見えた。
「さんさんと輝く太陽、真っ青な海‥‥」
姫野蜜柑(fa3982)が思いを馳せるは、浜辺でのグラビア撮影、夏向けの青春ドラマの収録、熱帯夜の野外ライブ。
「そして水没予定の新築、その中でハンマーを振るう私‥‥」
だが現実は、作業着姿でハンマーを担ぎ、壁を打ち抜いている姫野。言ってて段々とむなしくなってくる。
「大体、水没させるのにリフォームとは、これいかに? ま、リフォームとは人間のためだけのものじゃない、今回はこの家の新たな住人となるだろう魚たちのためのリフォームだから。お魚さんが住みやすい環境にしてあげなくちゃね」
リフォームといっても、人工漁礁としてのリフォーム。沈められた後のことを考えてのリフォームとは心憎い。
「いや、カンペキにこじつけだけどね‥‥」
しかし、また落ち込む姫野。浮き沈みが激しいが、家自体にもっと激しい浮き沈みが待ち構えている。
そして、縁側の横に巨大水槽を運び込んでいたのは、パトリシア(fa3800)だ。
「前回のリフォームで庭に作られた、スゴい防犯装置。でも、庭まで運ぶことはできませんから、まったくのムダになってしまいましたね。そこで、代わりに番犬‥‥もムリなので、番ザメを飼っちゃいましょう!」
パトリシアがさらりと物騒なことを言っているが、水槽の中身はあっさりサメである。
さすがに巨大ホオジロザメはムリだったので、シュモクザメでガマンである。とはいえ、その名のとおりハンマーヘッドなニクいヤツ。立派な人食いザメである。
「サメってスゴいんですよ。数キロも先から、血の匂いを嗅ぎ付けて集まってくるそうです。あ、冷蔵庫にお肉入れてこなきゃ‥‥」
そう言ってキッチンに向かうパトリシア。手にした大きな包みからは、赤い液体が滴っている。そう、鮮度抜群の血の滴る肉の塊が入っているのだ。
もちろん、血を垂らしながらキッチンに向かっているのは、悪意のないイタズラともいうべき、わざとというヤツである。
一方、何もせずに携帯ゲーム機で時間をつぶしているのは七瀬七海(fa3599)。
「だって重いんだもーん☆」
とは彼の言であるが、それもそのはず。スキューバーダイビングの装備一式をすでに身をまとっているので、まだ水の入ってこない陸上ともいえる家の中ではロクに動けないのである。
とはいえ、酸素ボンベは反則扱いで中の酸素は抜いてあるので、どこまで役に立つかは未知数であったが。
そこまで露骨に持ち込まずに、さりげなく持ち込みをしていたのは駒沢ロビン(fa2172)だ。
「海の家をモチーフにしたリフォームをしたいんです!」
そう言って持ち込まれたものは、ビーチパラソルやデッキチェアもあれば、海の家で出す食事の食材もあれば、水中メガネ、浮き輪、シュノーケル、フィンといったものあった。
そう、この一番最後の一群こそが、駒沢の本命であった。が、七瀬のように堂々と持ち込む者もいたので、まったくの徒労であったのだが。
しかし、駒沢はそんなことには気づかず、海の家風リフォームに忙しかった。
また、如鳳(fa2722)はアメコミの亀のコスプレ姿で臨んでいた。
「しかしこのコスプレ、今の若い者は分かるまいのう‥‥ほっほっ」
亀の獣人であることを最大限に活かし、いかに獣化してもバレないかをごまかすことにのみ注力している如鳳。とはいえ、バレた場合は別の意味で命懸けである。
このように、意図の分かる作業をする者たちもいれば、まったく分からないことをする者もいた。豊浦まつり(fa4123)である。
「こっちはこっちで、命を張ったギャンブル、楽しませて貰おうかな‥‥?」
そう言って、2階になぜかカジノを設置している。なお、目玉は中央に置かれたルーレットだ。
なので、豊浦自身もタキシードに蝶ネクタイとディーラーのような格好をしている。
『じゃあ、クレーン下ろしまーす!』
ここで、ディレクターの合図がかかり、ついにリフォームという名の水没がスタートである。
まず最初に水没したのは、言うまでもなく縁側のパトリシアの水槽である。あっという間に、シュモクザメが大海原に気持ちよさそうに放たれていく。
まだ床下浸水なので、家の中に入り込んだりはせず、そのままどこかへ泳いでいってしまう。カメラもあっという間に見失ってしまい、こうなってはあとはどこかの海水浴場に現れたりしないことを祈るしかない。
そんな間にも、家の中は早くも床上浸水状態である。
「Oh my fucking god! 風呂じゃなかったのかよ!?」
のんきに風呂に浸かっていた駒沢だが、浸水に思わず悪態を吐く。悪態の意味はさっぱり分からないが、少なくとも慌てていることは分かる。なんとかタオルを拾い、それを股間に当てて廊下に飛び出る駒沢。
廊下は、すでに膝くらいのところまで海水が来ていた。そこへ、窓を突き破って海水が一気にどっと押し寄せてくる。哀れエディは、あっという間に流されていく。
家の外に、ぷかりとエディの股間を隠していたタオルが浮かび上がってくる。
そしてその横には、エディの下半身が突き出ていた。シンクロナイズドスイミングのように美しくなく、おぞましい犬神家状態になっているが、画面は家の内部の様子を映し出すのに忙しく、エディの不適切な映像を撮っている余裕はないので問題はない。
とにかく、まずはエディが脱落である。
一方家の中では、階段を上った姫野が、階下に合掌していた。
「せめてこの家が魚のいい住処になって、おいしい魚が獲れますように‥‥」
だが、まだ1階には残っている人々がいる。
「わわっ! でも、こんなこともあろうかと‥‥水中メガネ!」
絵を描くどころではなくなり、一瞬慌てたミミだったが、誇らしげに水中メガネを取り出すと装着してみせる。だが、迫り来る水の前に、視界が多少確保できるだけでしかない。
「あ‥‥シュノーケル忘れてた‥‥」
仮にシュノーケルがあったところで、酸素ボンベがなければあまり意味はないのだが、気が動転していて今はまだ気づかない。
そして、ミミの気づかないシュノーケルの存在意義を実感していたのは、駒沢である。
「ムム‥‥って、殺・す・気・ですかっ!」
シュノーケルを叩きつける駒沢。シュノーケルは空気がどこかになければ、ただの飾り以下の存在であると今ごろながらに気づく。
「こんなハズではなかったんですが‥‥」
仕方なしに、空気を求めて2階への階段を上る駒沢。シュノーケル同様、フィンも歩くのにジャマで、脱ぎ捨ててしまったのは言うまでもない。
そして、空の酸素ボンベが足かせのように効いているのが七瀬である。2階へとつづく階段を上っているのだが、重くて仕方がない。かといって、1階にとどまっていては息がもたない。
「あれー? 水中スピーカーのスイッチ、どこへ行っちゃったんでしょうか?」
そこへ、胸元に『2の2 ぱとりしあ』と入ったスクール水着に着替えたパトリシアが駆け込んでくる。
「なんじゃ、みんな2階へ行ってしまうのう。どうれ、わしも様子を見に2階へ行ってみるかの‥‥」
こうして、2階にはエディ以外の全員が集まることとなった。
「ようこそ。当店では、皆様の命を‥‥と言うと大げさだけど、脱出をベットしていただきます」
すっかりカジノにリフォームされた2階の部屋には、豊浦が待ち構えていた。
「‥‥と、堅苦しくカジノ風に言ってみたけど、まあ要は負けたヤツが賞金獲得をあきらめて先に脱出って手筈でどうよ? ってコトね」
そう言って、ルーレットをパンパンと叩いてみせる豊浦。そう言っている間にも、2階の床にまで海水は回ってきている。
「えっと‥‥私はそこまでムリをする気はないんで‥‥お先に!」
水を吸って重くなった作業服を脱ぎ捨てて水着になると、そのまま外へ飛び出していった姫野。これで2人目の脱落である。
「さっき一人流されたのが見えたから、これで残るは6人かな。ぶっちゃけるとさ、お互い意地張ってギリギリで醜態さらして逃げるよりは、こいつでパッと決めて、負けたヤツは潔く身を引く方がまだカッコイイ思うし‥‥悪い話じゃないと思うけどね?」
決断を迫る豊浦に対し、余裕なのは如鳳である。
「別にわしはムリにやる必要はないんじゃ‥‥高見の見物を決め込ませてもらうぞい」
一人離れて、窓際のイスに座る如鳳。とはいえ、すでにイスが浮いてしまっていて、転倒してスコーンと頭を打ってしまう。
だが、そんな如鳳のボケに構っているヒマはない。結局、残る4人は豊浦の乗ることにしたのだ。
「えっと、えっと‥‥じゃあ、私は赤で!」
「じゃあ、僕は黒にします」
「みなさんと同じところに賭けてもアレですし‥‥私はODDにしますね」
ミミと駒沢が赤と黒、パトリシアが奇数と普通に2倍のところに賭けるのに対し、七瀬は一味違った。
「一発大勝負! 僕は優勝賞金10万円の10に一転勝負です!」
なぜか36倍の勝負に出る。換金してチップにしているわけでもないので、倍率の高いところに賭ける意味が不明であるが、ギャンブラーたるもの小さいことにこだわってはいけない。
「全員賭けたね‥‥んじゃ、行くよ!」
ホイールに球を投げ入れる豊浦。全員が見守る中、運命の球はどこに入るのか?
と、ついに水面がルーレットにまで到達してしまう。海水より軽い球を使っていたらしく、プカーと浮かび上がってしまう球。どうすんだよという目で、全員が一斉に豊浦を見る。
「球が浮いてしまって決まらない‥‥しょうがない。これは親の総取りで、ディーラーである私の一人勝ちだね?」
頭をかきながらも、堂々と言ってのける豊浦。これには、ふざけんなと怒号が飛び交うが、そこへ大波が来て、一気に全員が家の外へとさらわれてしまう。ギャンブラーの末路とは、概してこのようなものである。
しかし、ルーレットの勝負は流れても、番組本来の勝負はつづいている。もっとも、こちらも全員がほぼ同時に投げ出されてきたので、誰が最後まで残っていたのかよく分からなかったが。
『スロー映像で確認しますんで、そのまましばらく待機していてくださーい!』
一応、シュモクザメが近づいてくる気配はないようだが、気が気ではない一同。もっとも、ずっと下半身だけ突き出して浮いているエディの方が気になって仕方がないのだが。
『えー、判定の結果が出ました。豊浦の優勝、おめでとう!』
幸運の女神は、根っからのギャンブラーの豊浦に微笑んだ。実はディーラーとして立っていた場所が窓から一番遠く、豊浦が最後に投げ出されたというわけだが、そこまで考えてルーレットの配置を考えたかどうかは定かではない。ただ、勝ったのは豊浦という事実だけである。
「ギャンブルで勝ったお金は、パーっと使わなくちゃね。みんなで焼肉でも食べに行こうか! もちろん、ディレクターも上司Aも抜きでね!」
歓声が起こる。ただ一人、如鳳をのぞいては。
「懐石料理や精進料理がよかったの。裏方50年のわしには、肉体労働の後でも脂はキツいんじゃよ‥‥ああ、あんな場所に座ってなければ!」
嘆いたところで、料理が変わるものでもない。というか、ディレクター抜きという言葉を聞いたディレクターが疎外感を感じてすねてしまい、なかなか引き上げてくれなかったという。