【AoS】海プロごっこアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/27〜07/29

●本文

『Athletic of Summer 便乗:海のプロレスごっこ王選手権』

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居あり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。その前に、プロレスごっこの一番えらい人がすっと進み出る。
「Athletic of Summerって知ってるか?」
「ああ、夏を満喫するタレント陣を、我々スタッフが指をくわえて眺めているだけという‥‥」
「バカヤロウ!」
 負け犬根性の染みついたことを言うスタッフに、さっそくえらい人が鉄パイプ一振りで制裁である。
「これは神の与えたもうたチャンスなんだ! 海の日のプロレスごっこでムダに金をかけてしまった海上リングを、そのまま使えるというな!」
「いや、まあおっしゃるとおりなんですけど‥‥栄えあるAoSに使い回しって‥‥」
「バカヤロウ!」
 俺様の妙案に難癖つけやがるとは何事だと、えらい人の鉄パイプがまたも唸りを上げる。
「使い回しなんて人聞きの悪いことを言うな! 先を読んで、あらかじめ海上に設置しておいたと言え!」
 言い方はどうあれ、実際に有効活用できるのであれば文句はないので、またも海上リングによるプロレスごっこ王選手権がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・Athletic of Summerの結果には一切関係しません。便乗企画ですから。
・それではあんまりだということで、プロレスごっこ王ランキングのポイントが通常の2倍になります。
・Athletic of Summer便乗企画ということで、引きつづき海上にリングが設置されます。
・それ以外は、普段のプロレスごっこと変わりはありません。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによるプロレスごっこ王の決定が近づいた場合、その数回前に告知されます。現状、遠い未来の話です。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。

ランキング(上位3名、第10回プロレスごっこ王分まで)
 1位 若宮久屋(fa2599) 3pt
 1位 佐渡川ススム(fa3134) 3pt
 1位 三条院棟篤(fa2333) 3pt
(同順位の場合、先にそのポイントを獲得した方が上になります)

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第8回 6月23日 08:00〜
・第9回 7月08日 07:00〜
・第10回 7月11日 07:00〜
・第11回 7月14日 07:00〜
・海の日 7月17日 11:00〜

●今回の参加者

 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)

●リプレイ本文

『プロレスごっこの理想を再び掲げるために! あまたの英霊が無駄死にでなかったことの証しのために! AoS成就のために! 塊状リングよ、私は帰ってきた!』
 放送席用ボートの上で、こぼれ落ちる涙を拭おうともしないのは実況のサトル・エンフィールド(fa2824)。海上でなく塊状なのは、涙でかすんでよく見えないからか、リングのよくない未来が見えているからなのか。
 サトルの横には、特別ゲストの解説として、槇島色(fa0868)が水着姿で座っている。よく見れば、手にしている写真集の表紙の槇島と、まったく同じ水着である。そう、俗にいう告知での登場というヤツである。
 一方、リング上では古河甚五郎(fa3135)が、すでにやり遂げた男の顔をしていた。
「低予算番組‥‥素敵なのか侘しいのか、複雑な響きですね。おかげで、セット中にビッシリになってしまいました、修理のガムテが!」
 リングは前回からずっと海上に放置されたままだったので、すでに損傷が尋常ではない。古河がお得意のガムテテクで応急処置は施したものの、いつ轟沈しても不思議ではない。
 そこへ、チェダー千田(fa0427)がすっ飛んでくる。そして、古河に向けてビシっと指を突きつける。
「ポイント2倍の今大会、トップに独走させる訳にはいかんのだ! 覚悟!」
 古河はすでに6ptと独走状態に入りつつある。対するチェダーは1pt。だからかどうかは分からないが、古河がリングに貼ったガムテの上から、新たにモザイク柄のガムテを貼って回り出す。
「ええい、待たれい!」
 そこへ遠くから怒声がしたかと思うと、小型漁船がグングン近づいてくる。ついには、ドッカーンとリングに堂々と激突してしまう。
『漁船でリングが半壊ーッ!?』
 チェダーと古河が必死に鉄柱にしがみついていると、漁船の中からなにやら人影が飛び出してくる。
「うろたえるな、小僧ども!」
 その人影は、夏姫・シュトラウス(fa0761)の覚醒体、ホワイトタイガーマスクであった。そう、こんな登場の仕方だが、今回のレフェリーなのである。
 夏姫は白と黒のよくあるレフェリーの衣装ではなく、夏にふさわしく水着だったりもせず、ホワイトタイガーの誇り、白のタキシード姿である。レフェリーである前にホワイトタイガーマスクでありたい、そんな17の朝なのである。
 そんなことよりも、リングが半壊してしまったが、ホワイトタイガー的には気のせいである。
「紳士たるもの、黙ってリングの修復だ。ガムテ修復のシマ争いに、ちょうどよかったではないか‥‥ファイッ!」
 いいことをしたとばかりに、古河とチェダーの戦いを勝手にはじめさせてしまう夏姫。すでにガムテでどうこうなる次元ではない気がしてならないが、とにかく自分たちの立つ場所を確保するためにガムテとモザイクガムテの対決である。
「ちょっと、待ったぁ!」
 ただでさえ収拾のつきにくいところへ、さらにあずさ&お兄さん(fa2132)のちょっと待ったコールである。見ればお兄さんの姿はなく、体長3mはあろうかというミズダコに絡みつかれたあずさの姿があるだけである。
「チェダーさん、『ダジャレに命を懸ける』で受けたセクハラの屈辱、今ここで晴らさせてもらうよッ!?」
『さあ、あずささんの逆襲なるか? しかしキングチェダー、余裕の表情です!』
「モザイクボードのように汚らわしいものは‥‥」
「え?」
 言いつづけるあずさの股間に、何食わぬ顔でモザイクガムテを貼り付け完了しているチェダー。
「〜ッ!? な、なんて見事なモリマンなんだ‥‥今回こそ、逝ける‥‥ッ!」
 貼り付けた際の感触に昇天しかけるチェダー。そこへ、赤鬼となったあずさがミズダコでフルスイングである。
「ああ! チェダーさんが海の藻屑に‥‥早く救出しなくては、ガムテで!」
 海面を囲うようにガムテを張り巡らせ、その範囲を狭めて大量の浮遊物を引っ付けようという古河の作戦である。
「小僧、試合はつづいているぞ!」
 こんな状況でも、あずさの本来の試合を続行させようとする夏姫。そう、乱入してきたからよく分からなかったが、本来はあずさvsミズダコなのである。
「えー!? えーと、デレっとしてないで、シャキッとしたらどうなのっ!?」
 促されて、無理矢理ミズダコを挑発する体を作るあずさ。しかし、ミズダコは先程チェダーへのフルスイングに使われてしまっていたので、ぐったりしたままである。
「こ、こうなったら!」
 夏姫に小皿を渡すと、包丁とわさび醤油を取り出すあずさ。もはや活け作りしかないという最後の手段である。
「凶器に包丁を使うその心意気やよし! 存分にやるがいい!」
 さらっと凶器をスルーする夏姫。すでに、自分の小皿にはわさび醤油が満たされている。
「チェダーさん以外の海の藻屑ばかりかかりましたが、これも高性能ゆえですね、ガムテの! って、お兄さんじゃないですか!」
 最初の回収を終えた古河の目に飛び込んできたのは、リングの残骸に混じったお兄さんの変わり果てた姿だった。あずさの登場時から行方不明だったが、ずっと海面を漂っていたらしい。
「ちょ、待てっ!」
 そこへ、スルスルとタコの足が伸びてくる。お兄さんに絡みつき、ガムテからお兄さんを奪い取ろうとする勢いである。
『こ、これは期せずして、吸盤vsガムテの吸着力頂上決戦ですッ!』
「ふむ、うまいではないか!」
 そんなことは関係なしに、勝手にタコの足を一つ切り落とし、すでに食べはじめている夏姫。
 そのころ、浜辺にチェダーが打ち上げられていた。砂浜では、夏風邪をひいてしまった湯ノ花ゆくる(fa0640)がずっと寝込んでいたのだが、さすがに布団に包まって直射日光を浴びつづけるのに限界を感じたのか、ムクっと起き上がる。
 チェダーはあずさのタコ一閃で脳を揺らされ、しかも打ち揚げられたばかりのピアノマン状態、対する湯ノ花風邪と暑さで意識朦朧、まさに夢のパンチドランカー対決である。
 湯ノ花はチェダーをちゃぶ台の前に座らせると、説教をはじめる。
「この少子化のご時勢、Hなのはいいですけど‥‥あずさお姉ちゃんに手を出すくらいだったら、このメロンパンオナホを使いなさい。電子レンジで軽くチンすれば、人肌のあたたかさに‥‥」
 湯ノ花の脳内設定では、チェダーが長男、あずさがその姉の長女、お兄さんが一番下の妹で次女ということになっているようだ。そして、チェダーは姉の股間を触って喜ぶ、それなんてエロゲ? というキャラの模様。
 しかし、モザイクボードもモザイクガムテも海に流されてしまっているので、使うわけにはいかないチェダー。というか、さすがに使ってしまうとわずかに、本当にわずかばかり残っている人として大切な何かまで失われてしまうような気がしていた。
「あ、お義母さん。今、お食事の用意をしますから、その間これでくつろいでいてください」
 そんなヌルいチェダーに興味は失せたとばかりに、今度は出番を待って腕組みして立っていた草壁蛍(fa3072)に、イスとして三角木馬を勧める湯ノ花。風邪と熱中症で頭が茹っているので、非常にアグレッシブである。
「わー! セクハラはダメよ!」
 そこへ、ホースを持って突っ込んできた槇島が、放水で木馬を吹き飛ばしてしまう。
「槇島さん‥‥メロンパンを洗うときは、そっとやさしくですよ」
 パート先の後輩という脳内設定の槇島の手に、湯ノ花はそっとメロンパンを渡す。もはや槇島には、何がなんだか分からない。
「チェダーお兄ちゃんに渡したのは挿入れられる方ですけど、これは挿入れる方‥‥」
「わー! だから、セクハラはダメよ!」
 悪の権化を吹き飛ばせとばかりに、湯ノ花を放水で吹き飛ばす槇島。その横では、草壁が神妙な面持ちで倒れた木馬に腰かけていた。
 一方、リング上では古河が二度目の引き揚げを行っていた。
「リングの残骸ばかりですね。このまま引き揚げますと番組の邪魔になりますので、このまま会場周囲に貼り付けてしまいます、ガムテで! まさに海のモズク! ああ、残骸で夢いっぱいの夢の島です☆」
 自分のセリフに酔いしれる古河。
「小僧、くだらんわ、くだらなすぎるわ!」
 たまらず夏姫が、ハリセンで鋭すぎるツッコミを入れる。古河は海面を切って、一気に砂浜まで吹き飛ばされてしまう。
「いてて‥‥しかし、無傷です、ガムテのおかげで!」
 どうガムテで助かったのかは不明であるが、古河が顔を上げると、目の前ではチェダーが花火の打ち上げ準備をしていた。まだ脳が揺れているのか、手つきが非常に危なっかしい。
「AoS期間限定のうみんちゅ五尺玉のチェダーが、本当に五尺玉を打ち上げてやるゼ!」
『ああ、チェダーさんがまた自爆しそうなことを言っているーッ!』
「そういうことなら‥‥ゆくるもAoS期間限定のらまんちゃ五円玉の一員です。砂浜で‥‥五円玉を探すのです‥‥」
『ああ、ゆくるさんが地味過ぎるーッ!』
 いつの間にか、槇島に吹き飛ばされたはずの湯ノ花も復帰していた。
『あーっと、ついにムチャクイーン動くッ! 草壁さんが、リングに向かって泳ぎはじめました!』
 なぜかバタフライで豪快に水しぶきを立てながら、リングに向かう草壁。
 ザバーッと草壁がリングに上がると、水着にホッケーマスクという正装の姿が現れる。
「フッ‥‥存分に戦うがいい!」
 何かわかり合えるものがあるのか、ニヤリと笑うとチェーンソーを手渡す夏姫。
「言われるまでもないわ」
 チェーンソーを受け取った草壁が、用意された対戦相手の巨大氷柱を、見る見る間にカキ氷にしていく。
 全部カキ氷にしてしまったところで、今度はそれで雪ダルマを作りはじめる草壁。そのころには、浜辺のチェダーの発射準備が整っていた。
「AoS、盛り上げてこーぜ!」
 ついに、チェダーの五尺玉が火を吹く。案の定、五尺玉と一緒に打ち上げられるチェダー。だが、がっしりと古河の手をつかんでしまっており、古河もろとも打ち上がってしまった。
「かくなる上は最終手段! 一緒に堕ちようぞ‥‥フハハハ!」
 堕ちるのがランキング外か地獄かは分からないが、まずはその前に五尺玉が炸裂する。
「ぐはっ! 焼けた五円玉が‥‥」
 五尺玉に仕込まれていた五円玉で、体中に焼印を押されまくるチェダー。対する古河は、ガムテで鉄壁の防御である。
「ああ、五円玉がたくさん降ってきました。これも、日ごろの行いのせいですね‥‥」
 焼けた五円玉を、メロンパンで受け止めて回る湯ノ花。
 片や、焼け焦げたチェダーに放水する槇島。こんなときのためのホースじゃなかったのにと、首をひねることしきりである。
 こうして花火で盛大に終わろうかというところへ、プロレスごっこの一番えらい人がリング上にひょっこり現れる。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ! しかも、2倍、2倍〜」
 1位 チェダー千田 6
 2位 あずさ&お兄さん 4
 3位 古河甚五郎 2
「目指せ、プロレスごっこ王‥‥」
 いつもどおり、えらい人がそのまま超高速で引き上げていこうとしたときだった。草壁がえらい人に狂月幻覚を使いざま、俊敏脚足で一気に距離をつめる。バレない範囲で獣人の特殊能力を使いまくりである。これで、えらい人との対戦に持ち込もうというのだ。
 いや、草壁はそうしているハズだった。だが、現実には今、砂浜の湯ノ花の隣でメロンパンを食べている。気づけば、草壁は汗びっしょりである。得体の知れない何かに、汗が頬を、額を、全身を伝う。
「あ‥‥ありのまま、今起こったことを話すわ。えらい人に向かっていたと思ったら、いつの間にかメロンパンを食べていた。な、何を言ってるのか分からないと思うけど、私も何をされたのか分からない。頭がどうにかなりそう‥‥」
「お義母さん、さっきご飯を食べたばかりでしょう!?」
 湯ノ花が、草壁がボケているとばかりにメロンパンを取り上げる。
『な、なんということでしょう! 今の瞬間でしょうか? いつの間にか、草壁さんの職業がムチャクイーンからムチャプリンセスに格下げされていますッ!』
「プリンセスだなんて、かわいくてうらわましいわ‥‥ところで、現在私が出演中の『魔女が王子に恋してるCP』と『獣王武神ヒャクジューオー』、DVD化されるのでよろしくね〜♪」
 サトルの驚きのセリフも、槇島がキッチリ告知にすりかえる。その横では、地上に戻った古河がリングに向かって最敬礼していた。
「海上会場の予想耐用年数1年です、ガムテなので! 海上会場滅亡の日まで、あと364日です!」
 そう言う古河の目の前で、夏姫がリングから漁船に飛び移っている。
「このリングももはや不要。さらばだ!」
 ポチっとなにやらスイッチを押す夏姫。と同時に、リングが水柱に突き上げられて粉砕される。364日も待たず、いきなり木っ端微塵である。ついでに、夏姫の乗っている漁船も転覆してしまう。
「ふっ‥‥火薬の量を間違えちまったようだな‥‥ガクッ」
 砂浜に打ち上げられた夏姫が、そう言って力尽きる。
 こうして海上リング編は、リングの消滅をもって幕を閉じた。