【AoS】泳げ、人間くんアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/01〜08/03
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●本文
『Athletic of Summer便乗:泳げ、人間くん』
TOMITVのスタッフルーム。その中の、自称スポーツイベント便乗チームに、一人の男が駆け込んできた。
「Athletic of Summer便乗企画ですけど、番長シリーズはスケ番だらけのビーチサッカー大会をやることにしましたけど、走れシリーズの方はどうしましょうかねぇ?」
「そりゃ、泳げばいいんじゃねーか?」
後輩の問いかけに、ごく普通に答える先輩。とはいえ、後輩の方だってその考えに至らなかったわけではない。
「それって、普通の競泳っていうんじゃないんですか?」
「それもそうだな‥‥じゃあ、砂浜を走るか? 青春っぽく」
「それって、競馬場のダートコースとあんま変わらないんじゃないですか?」
「それもそうだな‥‥じゃあ、やめるか?」
「えー!」
あっさりあきらめる先輩。まあ、本当にあきらめたわけではなく、後輩の困った顔をちょっと見てみたかっただけだが。
「まー、そうもイカンから‥‥なんか動力源使っていいことにして、泳ぐか。クルーザーに引っ張られるもよし、パワーボートに引きずられるもよし、水遁の術を使えるものなら使ってみるもよし、そんな感じでどうよ?」
「確実にどれも泳いでない気がしますが‥‥まあ、AoS便乗だしそーいうもんですよね?」
「そーいうもんだな!」
こうしてAoS便乗にこだわるがゆえに競馬場は関係なくなってしまったが、それでも競馬場疾走企画と言い張る第6弾がスタートした。
使用コース
・水深のそれなりにある、沖合いの海を使用。
・海底、海中、海面、海上を一直線に突き進みます。
事前に用意される物
・大抵のものは用意されます。番組用意のものでなく、持ち込みでももちろん構いません。
・実況は用意されません。自分で実況しながら泳ぐことは可能です。それでおぼれたとしても、責任はとれません。
ルール
・何を使っても構いません。自分の力のみで泳いでも構いません。
・獣化は視聴者に気づかれない限りなら、いくらでも使って構いません。但し、その分ハンデ距離は長くなります。
・優勝賞金10万円。
・その他細かいルールは、俺がルールブックだ! とスタッフが申しております。
注意
・Athletic of Summerの結果には一切関係しません。便乗企画ですから。
過去の放送のスケジュール
・走れ、人間ども 4月04日 22:00〜
・走れ、人間ども2 5月01日 07:00〜
・走れ、マシンたち 5月25日 07:00〜
・走れ、人間ども3 6月11日 07:00〜
・叩かれろ、人間ども 7月02日 07:00〜
●リプレイ本文
「AoSが終わってから便乗っていうのも、ある意味シャレてますね」
「そうじゃのう‥‥」
周囲の参加者の肉体観察をしながらも、それを悟られないようにぼそりと呟いてみせる蕪木薫(fa4040)。本人は、水着の上からスパッツとTシャツという露出の高くないスタイルである。
その蕪木が言うとおり、AoS自体は白組の勝利に終わっているが、便乗企画にそんな結果は関係ない。というか、完全な個人競技である。とはいえ、AoSの余勢を駆ってか、参加8人中6人までもが白組である。
対して生返事のDarkUnicorn(fa3622)は、なぜかバニーガール姿である。そして、格好のことに構っている時間はないとばかりに競人新聞を読みふけり、過去のレース分析に余念がない。
「今までのレースを振り返って気づいたんじゃが‥‥ネタに走らずに普通に走った方が、ハンデも巻き込まれも審議対象の確率も低く優勝しやすいようじゃな‥‥」
出場者でありながら、赤エンピツ片手になにやら導き出した様子のDarkUnicorn。
「となれば、今回は普通に泳‥‥いや、イカン、イカンのじゃッ!」
結論に達したかと思った瞬間、なぜかブンブンと頭をシェイクし出す。
「わしとしたことが、つい守りに入ってしまったのぅ。同じ勝つにしても、勝ち方と言うものがあるのじゃ。困難な道を乗り越え勝った刻にこそ、その喜びもより大きなものとなろう‥‥じゃッ!」
カッと目を見開くDarkUnicorn。バニーガールのコスチュームが意味不明のままであるが、本人的に腹は決まったらしい。
こうして、各自スタート地点へと散らばり、出走のときを待つこととなった。
「泥舟からこんにちは、AoS期間限定集団うみんちゅ五尺玉の河辺野一(fa0892)です。五尺玉が天高く打ち上げられるように、アナウンサー魂が沸々と湧いてきてしまったので、1枠から順番に紹介していきたいと思います!」
河辺野がマイク片手に、実況をはじめる。
「1枠1番はわたくし河辺野。泥舟でハンデはもっとも軽い30m。しかし、すでに泥舟は沈没寸前、まさにリバース五尺玉であります!」
そう言いながらも、泥舟のまま2枠の場所まで移動する河辺野。そのままでは遅くて待ってられないので、ボートで牽引されてはいるが、そのスピードが余計に泥を削っていってしまっている悪循環だったが、すべては気のせいで流される。
「20m後方、2枠2番は竜華(fa1294)選手‥‥ブクブク」
2枠の竜華の紹介がはじまったところで、早くも泥舟が完全に沈んでしまう。
「ええーっ!?」
驚きつつも、慌てて河辺野を引き上げる竜華。このときのためというわけではないが、アスリート仕様のハイテク素材を使った競泳用水着を着ていたので、動きやすい。もっとも、プールの真水と海水とではまた違うから、どこまで効果があるかは分からないが、それはレースがはじまってからの話。
「ふぅ、申し訳ありませんでした‥‥気を取り直して紹介してまいりましょう!」
牽引していたボートに乗り込み、何事もなかったかのように紹介をつづけていく河辺野。別にキレやすいわけでもない竜華が一瞬カチンとくるが、勝負前に集中力を乱してはいけないとすぐに平常心に戻る。
「なんで泳ぐのか? そこに海があるからさ。そして、泳ぐからにはトップを狙う!」
「竜華選手は自力で泳ぐだけということで、ハンデは50mとなっています。次へいきましょう!」
3枠へと移動していく河辺野。今度は普通のボートだけに、移動もスムーズである。
「100m地点、3枠3番はウィン・フレシェット(fa2029)選手です。スキューバーダイビング装備一式に身をまとい、水中を突き進みます!」
「恥辱を彼らに、勝利を我が手に‥‥フフフ」
海面に顔を出すと、不気味に笑うウィン。
「あの笑いは、何を意味するのでしょうか? さあ、さらに50m後方の150m地点、4枠4番の人魚‥‥もといミゲール・イグレシアス(fa2671)選手です!」
「むぁいどー! むぁーめいどー! ミゲールいいま。わてら渚のマーメイドゆーてな?」
マーメイドというだけあって、下半身に人魚を模した着ぐるみをはき、足先には大きなモノフィンを装着しているミゲール。ウェットスーツではなく、あえて着ぐるみを選択したのは、獣化した足がバレないためという、密かな策士ぶりである。
そして、マッチョバディの上半身は貝殻ビキニトップと最悪に破壊力抜群。マーメイドというよりはカマのマーマン、マーマンというよりは勘違い半魚人といった方がいいのかもしれないが、そこはそっとしておいてあげるのが礼儀である。というか、触れたくない。
さらには人魚とは一切関係なく頭にはネコミミカチューシャなので、関わりあいたくないことこの上ない。
「がんばってください‥‥さあ、早く次へまいりましょう!」
逃げるようにして、河辺野が隣の枠へと移る。
「さあ、水中カメラをご覧ください! 今回2番目にお金がかかっています、5枠5番の深森風音(fa3736)選手と潜水艇です!」
潜水艦といっても原子力潜水艦のような巨大なものでなく、個人でも購入可能な海水入り放題のウェットタイプ、いわゆるウルトラクイズの優勝賞品にもなったことのあるタイプの潜水艇が映し出される。
窓から、中のウェットスーツにボンベ装着の深森が映し出される。潜水艇でGO! ということらしく、中でGOサインを出している深森。
「えー、再び海面をご覧ください。ここにブイが浮かんでいますが、ここがコーナーということになります。そして、90度曲がって100m後方へ向かいましょう。ジェットスキー牽引組1号、6枠6番の蕪木薫選手! スキービスケットに乗ります!」
ビスケットにつかまった蕪木が、河辺野の貧弱な肉体に早くもガッカリしている。そこで、ジェットスキーの運ちゃんに、なにやら注文をつける。
「ナイスポジションへとつけるんやで!」
蕪木の言うナイスポジションとは、肉体ウォッチングに最適なポジショニングをしろということである。
「同じく250m地点、ジェットスキー牽引組2号、8枠8番の雨宮慶(fa3658)選手です! こちらはバナナボートとなっております!」
大柄でマッチョな蕪木に対し、こちら雨宮は小柄で豊満な身体をビキニで隠し、バナナボートにしがみついている。
「揉みたいなぁ‥‥」
そんな雨宮を見ながら、蕪木が代わりにビスケット揉んでヤバいことを言っていたが、幸か不幸か雨宮には聞こえていない。
「そして、再び直線コースに戻りまして‥‥潜水艇を超えて一番お金がかかっております! 大外8枠8番はDarkUnicorn選手!」
175m地点のマットの上に、DarkUnicornが立っていた。DarkUnicornのコースにだけ、海面はるか高くまでネットが張ってある。もちろん、下は海底を突き抜けて地中にまで埋め込まれている。しかもこのネット、普通の漁に使うような網ではなく、特殊繊維製である。
「因幡の白兎じゃ!」
そう、目の前のネットはその危険性ゆえのものであった。因幡の白兎のワニも諸説あって、一応サメ説が有力ではあるが、そんなことは関係なしにワニとサメの両方を用意されてしまっている。
まずワニはイリエワニ──ソルトウォータークロコダイルである。海で戦う今回のために生まれてきたかのような名前が、採用の理由である。もちろん、その名のとおり海水も問題ない。
そして、サメ部門はシュモクザメ──ハンマーヘッドシャークである。
因幡の白兎、つまりワニやサメの上を走り抜けようというわけだが、すでに海中では野生の戦いがはじまってしまっていて、渡りやすいように並んでなんかくれない。
「白兎とは素兎、すなわち裸の兎ということじゃ! そんなわけで、素っ裸で走るのじゃ!」
とはいえ、ウサギにとっての素っ裸ということでのバニーガール姿である。
そして河辺野に泥舟2号が用意され、いよいよスタートである。
まず絶好のスタートを切ったのは、言うまでもなくハンデのもっとも重い蕪木と雨宮である。とはいえ、彼女らはしがみついていることしかできない。
対して、竜華はマジメにクロールで進んでいる。ハンデが軽いだけに、順調にいけば逃げ切りの可能性十分である。
ミゲールはモノフィンを有効に使うかと思いきや、見栄え重視でバタフライである。人魚アピールのためであるが、どう見ても不気味な物体が海面を跳ねているようにしか見えない。
一番静かなスタートは、深森の潜水艇だ。家庭用の小型一人乗り潜水艇が、ただ一直線に、深く静かに潜行していく。
それに対し、河辺野は予想どおりのスタートを切っていた。すなわち、前に向かって進むのではなく、下に向かって突き進むいうものである。
「この怨み、地獄に流します‥‥」
うみんちゅ五尺玉の不発弾ぷりをアピールすべく、海底という地獄に消えていく河辺野。早くも審議の青ランプである。
一方、この世の地獄の特設コースを走りはじめていたのはDarkUnicorn。これまでのところ奇跡的に、ワニの背中を早くも20mほど走り抜けてきている。
そこへ、ちょうど蕪木と雨宮がコーナーにさしかかる。
直角コーナー‥‥このコーナー、スキービスケットやバナナボートにはコーナーリングがよく似合うという、ただそれだけの理由で設けられたものである。そして、なぜコーナーの外の大外枠に再びDarkUnicornの直線コースがあるのかといえば、もちろんコーナーで振られた二人が突っ込むハプニングを期待してのものである。
案の定、ものすごい遠心力で外へ外へと振られる蕪木と雨宮。
「きゃっ!」
ついに雨宮が弾き飛ばされてしまう。
「ええ肉づきやなぁ‥‥ああ! もったいない‥‥」
海面でバウンドするたびに雨宮の胸もバウンドするのを堪能していた蕪木が、本能的に手をのばしてしまい、蕪木も吹き飛ばされてしまう。
となれば、勢いよくネットに激突するしかない二人。
だが、ネットはあまりに柔軟に頑丈で、二人を受け止めても破れたりするようなことはない。ただ、その衝撃でコース内のサメとワニが暴れ出しただけである。
「ムム‥‥っと! のわっ!」
DarkUnicornの足場が消え、海中へと消えていく。そこへ、一斉にワニとサメが殺到し、ものすごい水しぶきが立つ。
こうして最内1人と大外3人が脱落し、残るは3人である。戦闘はわずかに竜華、ついでウィンとミゲールがならび、やや遅れて深森である。
「フフフ‥‥ついに本性を現すときが来た!」
なにやらハサミを取り出すウィン。と、隣のミゲールの人魚の着ぐるみを切り裂く。
「うおっ!」
突然のことに、文句も言う暇もなく獣化を解くミゲール。画面に映ったのは、着ぐるみからのぞく人の足である。
「フフフ‥‥俺は止まらないゼ、ぐほっ!」
そこへ、深森の潜水艇がコースをそれていたウィンに正面衝突してしまう。
「フフフ‥‥俺は止まれないゼ!」
勢いよく吹っ飛ばされ、竜華をかすめて1位入線してしまうウィン。一方、竜華はウィンのハサミがかすってスイムスーツが大きく裂かれていたが、そんなことは気にせずに泳ぎつづけける。
たとえ胸丸出しでも、アスリートの血が止まることを許さないのである。幸いにして、収録なのでモザイクで画的な問題もない。ウィンにつづいて、竜華が2位入線である。
そして、3位入線が獣化パワーが使えなくなって推進力の落ちたミゲール。4位入線が同じくウインとの衝突で一旦止まってしまった深森であった。
そこへ、河辺野が実況を再開する。言葉どおり地獄へは行かずに、あっさりボートに救出された模様。
「ただいまの競走は、スタート直後に1番河辺野号が沈没した件、最終コーナーで6番蕪木号と7番雨宮号がコースアウトして着水した件、8番DarkUnicorn号が海の藻屑と消えた件、およびゴール直前で3番ウィン号が妨害工作を働いた件について、併せて審議致します。お手持ちの勝人投票券は‥‥」
相変わらず審議が異常に多いシリーズではある。が、海でこんなレースをやっておいて、生死不明がDarkUnicornだけなのは、むしろ幸いだったというべきなのかもしれない。
「‥‥あ! 今、確定の赤ランプが灯りました。全着順をご紹介しましょう」
1着 2 竜華
2着 4 ミゲール・イグレシアス
3着 5 深森風音
中止 1 河辺野一(沈没)
中止 6 蕪木薫(コースアウト)
中止 7 雨宮慶(コースアウト)
中止 8 DarkUnicorn(サメとワニのエサ)
失格 3 ウィン・フレシェット(1位入線失格)
「以上のように確定しました。ウィン選手は、神をも恐れぬあからさまな妨害工作のため、失格となりました。繰り上がり、優勝は竜華選手となりました、おめでとうございます!」
「謝謝!」
竜華が感謝の言葉を口にするが、事故があった後だけに笑顔はない。
「そして、悲しい結末になってしまいましたが‥‥敢闘賞というかお香典として、DarkUnicorn選手に5万円が送られます‥‥」
沈痛な面持ちの一同。そこへ、ひょっこりDarkUnicornが体中に歯形をつけて現れる。
「ふぅ、死ぬかと思ったぞい‥‥って、まったくの無事ということは、わしもギャグキャラ化してきてしまっているということかの? ん? みんなどこにいくのじゃ!?」
DarkUnicornが笑いながら言うが、全員回れ右して何も言わずに去っていってしまったという。