バカセンス競技会アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/02〜03/04
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●本文
「バカセンス? なんだ、そりゃ?」
TOMITVの会議室の一室で、部下が上司に企画のプレゼンを行っていた。
「読んで字の如し、そのまんまですよ。これからの芸人たるもの、バカキャラを演じるにも、あるいは天然でバカであるにしても、センスがないとダメだということです」
「それは分かるが‥‥具体的には何をするんだ?」
「自称センスあるバカな芸人たちに、これらの問題を答えてもらいます」
Q1:豊臣秀吉が刀狩令を出した建前上の理由は何?(方広寺大仏殿建立のため)
Q2:ところで今、何問目?(2問目)
Q3:TOMITVのビルが妙なデザインなのはなぜ?(たまたまそういうデザインが採用されただけで、理由などない)
Q4:この番組の優勝賞金が10万円なのはなぜ?(木っ端芸人どもには、出しても10万が限界)
「( )内が正解のような気がしてならないんだが‥‥気のせいかね?」
「無論、気のせいではありませんよ。正解しちゃったら、バカじゃないじゃないですか」
「偶然正解してしまうパターンはなしか。で、どういうのがセンスあるバカな解答になるのかね?」
「そうですね‥‥たとえばQ2で『はないちもんめ』とか、Q3で『変形ロボになるため』とか答えてしまうと、世界中を敵に回すというのがどういうことか身をもって知ることになる空気になると思います」
「なるほど‥‥って、センスない方の答えじゃん」
「ええ、ですからこのように問題にちゃんと答えないのも一つの方法なわけです」
「ふむ、むずかしいんだな‥‥」
「ですが、プロの芸人たるもの、このくらい楽勝で大爆笑ですよ」
Q1、2で1ポイント、Q3で2ポイント、それぞれ一番おもしろいと判定された人にポイントが与えられます。一番ポイントの高かった人が優勝、賞金10万円が授与されます。
Q4は同点決勝が行われた場合にのみ、使われます。
●リプレイ本文
『正解が分かっているのに、それでも答えなくてはならないクイズ、バカセンス競技会のお時間がやってまいりました。回答者は、ご覧の木っ端芸能人どもです〜ということで、紹介は省略して早速問題!』
ピンポン!
「志羽翔流(fa0422)、職業は大道芸人です。よろしくお願いしまっす!」
ピンポン!
「はーはっはっは!! 僕の名は竜之介(fa1136)。今をときめきすぎて困っちゃう、美形俳優さ☆ 美しい僕を放送したい、知的な僕を放送したいだなんて粋な計らいだね☆ はっはっは、喜んで参加させていただくよっ」
『‥‥てめーら言っとくけど、早押しボタンは自己紹介ボタンじゃないからな!』
ピンポン!
「ボク、碓宮椿(fa1680)のボーカリストだよ♪ え? 逆? ボーカリストの碓宮椿だよ、よろしくね♪」
『逆とかの問題じゃねーよ! 人の話、ちゃんと聞けよ!』
「いや〜、寝ぼけてたから、つい釣られちゃって」
あっけらかんと笑う碓宮に、司会者はぐっと握り拳を作って耐える。
『‥‥問題、豊臣秀吉が刀狩令を‥‥』
ピンポン!
『書き問題なのに、なんでみんなボタンを押すんだ!? まあいい、海風礼二郎(fa2396)!』
「秀吉は‥‥‥‥刀を狩りつづける」
「長いよ!」
相方のベクサー・マカンダル(fa0824)に頭をはたかれる海風。もっとも、相方にツッコミを入れられるまでもなく、きっちり途中はカットである。視聴者には長さも内容もまったく伝わらないほどに。
ピンポン!
『はい、じゃその相方!』
「結婚記念日って、ダイヤモンドとか送ったりするじゃん? 年に1回、ダイヤモンド。10年に一度だったっけ‥‥いや、分からん」
ベクサーの答えは、いつの間にか自問自答になっていた。
『何年だっていいよ!』
ピンポン!
『はい、門屋嬢(fa1443)』
「単なる趣味」
『違う。他に?』
ピンポン!
書き問題だが、つい勢いで司会者が他にと言ってしまったものだから、如鳳(fa2722)もボタンを押してしまう。
「日本刀とか超スキだしー」
『50前のオッサンが、超とか言ってんな!』
「老いたとはいえ、まだまだ現役じゃよ」
ピンポン!
『またお前らか。じゃ、志羽から』
「豊臣秀吉は刀フェチで、全国各地の刀を集めていたんだ!」
『違う! じゃ、竜之介も一応答えておくか?』
「美形の顔に傷がつくのを防ぐため」
『はい、他に?』
「本音は、僕のご先祖様の顔に傷がつくのを防ぐため、だけど♪」
流している司会者に対して、聞かれていないことまで答えつづける竜之介。
ピンポン!
『碓宮!』
「刀−1GP開催のためかな?」
『疑問形で答えんな! っつーか、書き問題なのに、早押しで全員答え切るなよ!』
ここで、橘来夢(fa2939)がすっと手を挙げる。早押しボタンを使わないあたりが通好みである。
「ライム、まだだよ!」
『じゃあ、橘』
「んとね‥‥きっと、むさしぼうっていうお坊さんを抜いてギネスブックに載ろうと思ったんだよ」
『もーいーや、正解!』
「えへ」
素直に喜ぶ橘。この投げやり気味の加点が、後にどのような結末を迎えることになるのか、司会者はまだ知らない。
『次の問題、ところで‥‥』
ピンポン!
『本当に早押しだけは早いな。じゃ、志羽』
「ところで‥‥えーと、ところで芝公園にある電波塔は東京タワー、ではパリにあるのは? エッフェル塔‥‥と見せかけて凱旋門っ!」
『惜しい!』
「えっ! 惜しい!?」
とっさに思いついたボケにしては高評価で、自分でも驚く志羽。
『まーとにかく、問題くらいは聞けや。第2問、ところで今、何問目?』
ピンポン!
『はい、海風!』
「えと‥‥難問ですね」
「テロップで漢字入れないと分からないようなボケするな」
ベクサーがきっちりツッコミを入れる。それでも、本来は書き問題なんだから、書けばいいのにという発想にはならないようだ。
ピンポン!
『はい、碓宮!』
「何匁? ひょっとして、ボクの体重聞いてるの? 尺貫法よく分かんないし、プライベートなことだから、パス1で」
『言ってるそばから、漢字ネタかよ! っつーか、パスの意味ねーよ!』
ピンポン!
『あー、竜之介か‥‥』
「玄関、エレベーター、楽屋、スタジオ‥‥あと、トイレ‥‥5門くらいはくぐったかな☆」
『はい、注意! 漢字ネタ、かぶり過ぎだぞ!』
「玄関ではファンの女の子達が僕を離してくれなくて、遅刻するかと思ったよ、フフフ☆」
司会者の注意とは関係なく、しゃべりつづける竜之介。相手がいなくてもしゃべれるタイプのようだ。
ピンポン!
『はい、橘!』
「えとね‥‥これが5回目の放送で‥‥1回分の問題が5問だから……22問目! ライム、計算得意なんだよ☆」
『初めての放送だし、今回も問題3問しかねーよ!』
「うきゅ〜」
先程とは違ってきっちりツッコミを入れられ、半べその橘。しかし、鋼鉄の心の司会者は揺るがない。
ピンポン!
『はい、ベクサー!』
「2問目」
「え! ウソ? 今、3問がどーとか言ってたよ?」
無意識に正解を答えてしまうベクサーに、海風が横から話しかける。無論、本当の正解を答えてしまったベクサーへのフォローではなく、素でそうだと思っている。
「マジで!? じゃあ、3問目!」
『問題言ったときには、第2問って言ったろうが!』
ピンポン!
『はい、門屋!』
「何問目でしょうか? 聞こえなかったのでもう一度!」
『2問目だよ! っつーか、本来の正解は意味ねーっつーの』
ピンポン!
『はい、如鳳!』
「だったら、お前は今まで出したクイズの数を覚えているのか?」
『全員不正解!』
「えー、じゃあサービス問題は?」
『ねーよ!』
門屋のおねだりも、さらりと一蹴の司会者である。
『第3問。この問題は2ポイントなので、全員に逆転のチャーンス! っつーか、書き問題の意味ないから、早押しボタンの電源切ったから! ピンポンピンポンうるせーし』
「ならば、最初から設置しなければよいのにのう‥‥」
如鳳の呟きも、もちろんスルーの司会者。
『第3問! TOMITVのビルが妙なデザインなのはなぜ? まあ、理由なんかないけどな!』
さすがにボタンの押しようもないので、全員がフリップに答えを書きはじめる。ようやく、クイズ番組らしい間ができた。
『じゃ、志羽から。『建築デザイナーが、設計図と自分の子どもの落書きを間違えて持ってきたため』‥‥その心は?』
「落書きのデザインが斬新だとものすごい評価されて、今のデザインになっちゃった、と」
『はい、消えたー。次は‥‥竜之介かよ‥‥。『本当は僕の巨大ブロンズ像がメインとなるハズだったが、怪盗に盗まれる心配があったから抽象的なものに♪』‥‥なわきゃない』
「はっ、優美すぎて理解できなかったかい?」
あくまでも自信満々な竜之介であるが、司会者はすでに竜之介の前を通り過ぎ、門屋の前に来ていた。
『門屋の答え、『ピカソに影響され、前衛的なデザインにしたから』』
「ていうか、よくああいうの建てられたね、と感心するよね。大地震が来たら壊れそうじゃない?」
『そうだな、地震は怖いよな』
そう言いながら、門屋の前も素通りする司会者。
『つづいて碓宮の答え、『デザイン持ってきた人が、ぼんっきゅっぼんっなおねーさんだったから』‥‥おう、確かにありそうだな』
「うん、どこかでそう聞いた気がするよ、ボク」
『そうか。でも、俺は聞いたことないなー』
フリップの答えには食いついたものの、その後の受け答えに納得いかなかったのか、碓宮の優勝もなくなった。
「おやすみなさーい」
そう言って寝る碓宮。別にふて寝ではない。
『海風は『覚え易いから』か』
「道に迷ったときなんか、このビルを目印にしたら便利で、便利で」
「誰もあんたの個人的なこと聞いてないよ。もっと公共の福祉的な‥‥」
『そういうベクサーは、『耐震強度を上げるため』か』
「なんていうかさ、ああいう形してたらレベルアップするんじゃない? 耐震強度とかさ。建築のことはよく分からないけど、強そうじゃん?」
『そうだな、地震は怖いよな』
門屋のときと同じセリフを棒読みして、やみくもあんどんの二人の前も通過である。
『如鳳は『ピラミッドパワーを効率よく集めるため!』‥‥うーん‥‥』
うなっただけで、素通りしていく司会者。如鳳も、ちょっと待ってくれとかもなしに司会者を見送るだけなのは、裏方50年のなせる業か?
『最後の橘は‥‥って、この時点で優勝決まっちゃったのか。見る意味もうないけど、一応。『あいてるとこの壁とか床とか作るお金がなかった』か』
「うん、あのね‥‥そうなんだよ、きっと」
『全員不正解! っつーことで、1ポイント獲得の橘来夢が優勝!』
えーっ! という反論の隙を与えず、高々と橘の優勝を宣言する司会。序盤のなんとなく与えた1ポイントを守り切っての優勝、野球で言うところのスミ1という、なんとも締まらない形で幕を閉じた。