ねるとん百合鯨団EXアジア・オセアニア

種類 ショートEX
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 08/06〜08/08

●本文

『ねるとん──それは男女間の見合いパーティーのことと一般名詞化されてしまっている。その常識を打破すべく、ここに女性限定、女性同士に進化させた番組を復活させるのです!』
「‥‥またやるの? もうアレっきりだと思ってたのに‥‥」
 部下の出してきた企画に、上司は渋い顔である。しかし、部下に引き下がる気はまったくない。
「やるんです! しかも、今回は長めに時間をとりましょう。それだけの価値が、ねるとん百合鯨団はあるのです!」
 ドンとテーブルを叩く部下。上司がすっかりひるんでしまう。
「また、Sの攻めたい女性チーム、Mの任せたい女性チームに分けるの?」
「そうです!」
「半々に分かれなくても、相変わらず気にしないの?」
「奪い奪われる愛の前に、平等などという言葉は無粋です!」
「‥‥決意は固いんだな?」
「ガチガチです!」
「そうか‥‥もはや止められんな‥‥」
「ええ、暴走機関車は止まりません!」
 よく分からない部下の覚悟の下、ねるとん百合鯨団EXというの企画がスタートした。

舞台:
・公園。ベンチ、噴水、ボートなどの一通りのものはそろってます。

進行:
・自己紹介
・フリータイム
・告白タイム

注意:
・カップル成立の場合でも、番組後の縛りは一切ありません。その後の関係を気にして、ゴメンナサイする必要はありません。
・女性のみ参加可能です。基本的に、男性は裏方(撮影やナレーション)での参加扱いになります。
・肉欲に溺れないでください(バラエティ的なフリではなく)。

過去の放送のスケジュール
・ねるとん百合鯨団 3月18日 22:00〜

●今回の参加者

 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa0280 森村・葵(17歳・♀・竜)
 fa0745 ミーア・ステンシル(18歳・♀・小鳥)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa3158 鶴舞千早(20歳・♀・蝙蝠)
 fa3470 孔雀石(18歳・♀・猫)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3814 胡桃・羽央(14歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文

 それなりに広い、昼下がりのどこかの公園。ここに、20歳前後の妙齢の女性ばかりが8名ほど集っている。何が行われるかといえば、それは1泊2日の乱‥‥もとい、ねるとんである。
 男性陣の姿がまったく見えないが、それもそのはず。これはねるとん百合鯨団、公園は貸切で男子禁制の聖域、マリア様のお庭となっているのである。だから、そこにいることが許されるのは、無垢な笑顔の天使たちだけなのだ。
 もっとも、これから行われるねるとん百合鯨団は、天使と堕天使と天使の皮をかぶった堕天使と堕天使の皮をかぶった天使の、入り混じりすぎてよく分からなくなってしまった化かし合いと言った方がいいのかもしれないが。
 そんな間にも、まずは攻めたい女性陣、Sチームの紹介である。
「俺の歌を聴けー‥‥と言いたいところだけど、ギターとは魂で弾くもの。聴くんじゃない、感じるものだーッ!」
 ギタリストだけあってギターをかき鳴らしながら、Tyrantess(fa3596)がピタTにホットパンツという、身体のラインを強調したラフな格好での登場である。
 普段のエロカッコイイ追求し過ぎてただのエロに突き抜けてしまったような露出度の衣装ではないものの、すでに炎天下の魂の演奏で汗びっしょり。ピタTが張りついてやや下着が透けてしまっているが、すでにトランス状態気味なので誰にも止められない。
「 25℃の部屋で カタログ手に答え合わせ
  『どうせ夏バテするなら青い海☆』
  今年の夏は一度キリだから
  うな垂れている場合じゃないぜ!
  さぁ、着替えよう ボクらなら大丈夫! 」
 Tyrantessの爆音をバックに、つづいて入ってきたのは富士川千春(fa0847)である。こちらは、若干こぶしを効かせつつ、歌いながらの登場である。Tyrantessのギター伴奏と合ってない気がするが、攻めたいSチームだけあって曲もせめぎ合って一つの何かが完成してしまっている。
 と、そこで富士川が歌をやめてしまう。
「あーっと、今回はここまでね。フルバージョンは、たった一人のために歌ってあげるんだからね!」
 そう言って富士川は下がるが、Tyrantessのギターはやむ気配がない。そこへ、次の鶴舞千早(fa3158)が入ってくる。ダンサーだけあって、Tyrantessのギターに即興で踊りを合わせながらの登場である。
「いやー、女の子同士のねるとんパーティー、面白そうだね〜☆ 一生懸命楽しむことにするよ〜☆ よろしく〜☆」
 情熱的なのか、あるいは還暦なのかは分からないが、鶴舞は赤いシャツに同じく赤のロングスカートという全身赤ずくめの姿である。
 つづいて4人目に登場は、ロック風味のロリータファッションに身を包んだ胡桃羽央(fa3814)だ。見た目も子どもっぽければ、声もお子ちゃまボイスが得意というアイドル声優である。
「よ〜く中学生に間違えられますけど〜、アレなビデオも見られるくらいには大人ですよぉ、えっへん!」
 胡桃がよく分からない自慢で胸を張るが、Tyrantessも同じ自慢の持ち主なので、うんうんうなずきながらギターを弾いている。とはいえ、そこは同じSチーム同士、どうにかなるわけではない。
 そして最後に、Sチーム5人目として森村葵(fa0280)が出てくる。全体で8名が参加しているので、必然的に残るMチームは3人だけということになるが、同人数の予定調和など無粋とばかりの攻撃的布陣である。
「フムフム、ナルホド。これはつまり、お友だちを増やすお仕事ですネ? そして、見事メルアドをゲットして、ブラックメールを送信し、格付けしあうんですネ?」
 確実に番組趣旨を間違えながらの登場であるが、とにかくこれでSチームの全5名が出揃った。
『Mチームはあそこにいまーす!』
 Sチームから池を隔てた対岸に、Mチームの姿が小さく見える。
 なお、時折入る進行の天の声は、河辺野一(fa0892)のものだ。画的に男は不要、というか男であるというだけで罪悪になる無菌の温室世界なので、声のみの登場である。
『しかーし、貴女たちが見る前に、恒例のオサムちゃんチェーック!』
 恒例といえるほど番組をこなしているわけではないが、というかわずかに2回目なのだが、とにかくMチームの方に画面が移る。
 こちらも最初の登場はギタリストで、紺のパーカーに黒いシャツとボーイッシュにキメた紅勇花(fa0034)だ。
「え、ええと‥‥よろしく‥‥」
 だが、その外見とは裏腹に、慣れない恋愛モノに緊張気味である。
 つづいての登場は、夏らしくノースリーブのワンピで清涼感を演出のミーア・ステンシル(fa0745)だ。小柄な身体にアンバランスな胸を、少々持て余し気味である。
 最後に、黒いフードで半ば顔を覆い隠した神秘的な雰囲気の占い師が現れる。
「孔雀石(fa3470)と書いてマカライトと読む、占い師をしている者です。親しみを込めてクーと呼んでください」
 Mチームは、以上の3名である。
 そして、これでようやくご対面である。
 そう、狩る者と狩られる者の運命の出会いである。しかし、狩る者が同じ狩る者に狩られてしまったり、狩られる者が狩る者を狩ってしまったりとイレギュラーなケースが多発しかねないのが、野生界との違いである。
 しかし、今はまだその気配はない。向き合った同士で、鋭く第一印象の確認をするのみである。

 ご対面も済み、待ちに待ったフリータイムである。が、これがまた長丁場だ。一応、みんなで演奏会を行ってフリータイムを終了というスケジューリングになっているのだが、その演奏会が24時間後。それまで、延々とフリータイムがつづくのである。
 なので、まずは就寝時間まで演奏の練習をしつつ、互いの交流を深めるというわけだ。そして、告白タイムに向けてのパートナーを吟味していくのである。
 さすがにすぐにツーショットに持ち込もうという性急な者はおらず、まずは一塊になってのもう少し細かい自己紹介だ。
「えーと、ここはSチームの方から自己紹介した方がいいのよね? えっと、あたいはダンサーをやってる鶴舞千早って言います〜☆」
 鶴舞は登場が踊りながらで、今も若干リズミカルな動きをしているとあれば、言われずとも分かるというものである。
「じゃ、次はあたしね! 森村葵、新人アイドル歌手やってま〜す。というわけで、子ども向けの歌でいきなりアピールですネ!」
 そう宣言すると、いきなり歌いはじめる森村。
「 猫にゃんロッドを 掲げれば
  にくきゅうぷにぷに 大行進〜♪ 」
 しかしこれが出だしから底抜けに下手の極致で、早くもジャイアンリサイタル状態である。もっとも、それすらもいとおしく思える人々の集いなので、むしろ狼の群れの中で羊が鳴いている状態である。森村は一応狼寄りのSチームではあるが。
「富士川千春です。仲良しのおんにゃのこがいっぱいできると嬉しいです☆」
 自分の歌が何を引き起こしたか分かっていない森村をよそに、富士川が優等生に自己紹介を決める。優等生が女の子をおんにゃのこと崩して言うのかという問題はさておき。
「俺はTyrantessっつーギタリストだぜ!」
 そしてTyrantess。登場のときにあれだけ散々ギターを弾いておけば、ギタリストと念を押されるまでもない。
「アイドル声優の胡桃羽央だよぉ〜! 見た目と同じで、子どもボイスが得意ですぅ〜。みんなかわいいけど、今回は‥‥そうねぇ、同じ声優のミーアちゃんと、音楽系知らなそうな孔雀石さんにロックオンしてみるよ〜」
 だがしかし、胡桃の自己紹介で一気に風向きが変わる。全員の自己紹介が終わるまでに名前を出すのはがっついてる感が出ちゃうかな? ということで意図的にガマンしていた感のあるSチームだったが、これで一気にヒートアップである。
 とはいえ、ここでSチームの自己紹介はおしまい、Mチームの番である。
「紅勇花です! 今回は‥‥ええと、女の子同士で恋愛するってどんな感じなんだろうと思って、参加させてもらったんだ! いや、あくまで歌のネタとしてだよ!?」
 Mチーム初っ端の紅がこのようなセリフを吐いてしまっては、もはやフリにしか思われないわけである。
「ミーア・ステンシルです。早速ご指名受けちゃったけど‥‥せっかくなので、いろいろ体験できたらいいな」
 そしてミーアの言葉も、本人の意図はどうあれ、勝手に深読みしやがれとしか思えないわけだ。
「最後になりましたが、クーこと孔雀石です。占い師ですので‥‥みなさんの相性を、簡単に占っってみましょうか? 何かの参考やきっかけになるかもしれませんし」
「占ってもらうのがイイですネ。占い師というのは神秘的ですネ、イイですネ!」
 孔雀石登場に森村の息がすでに荒いが、これは先程孔雀石の名を挙げた胡桃への牽制であろうか?
「はい、ではおまかせください」
 孔雀石の占いにどれほどの強制力があるかは受け取り手の気持ち次第であるが、これは番組的には孔雀石の手によって若干の矯正のほどこされた第一印象のおさらいともいえる。
「私を付け狙う影が‥‥2つ見えます‥‥って、占い師がいきなり自分を占ってどうするんですか‥‥」
 一人ノリツッコミなの? というところであるが、ともかくこれは流れ上、森村と胡桃を指していると考えて間違いないところだろう。
「気を取り直しまして‥‥ミーアさんにも不吉な2つの影が。いえ、別に不吉ではないんですけども、そのうち一つの影はさっき見かけたような‥‥?」
 これまた片方は胡桃で確定的、もう一つの座が誰なのか?
「でも‥‥これ以上は光が強すぎてよく見えません‥‥博愛主義者の方が多いのでしょうか?」
 一部第一印象の矢印が、孔雀石の占いで明らかにされたところで、とりあえず占いでは無印とされたまだ緊張気味の紅が、富士川とTyrantessに引っ張られてどこかへと連れ出されていく。
 そして、孔雀石の占いの小部屋に残ったのは5人。小部屋といっても公園の中で、別に壁とかは一切ないのだが。
 孔雀石の占いを信じるのであれば、森村と胡桃が孔雀石狙い、胡桃と誰かが──って残るSチームは鶴舞だけなので、森村が胡桃同様一度に何人でも愛せるタイプでない限りは鶴舞しかいないのだが──ミーア狙いということになる。
「えっと、黙っててもしょうがないし‥‥素敵な相手が見つかったらイイナ♪ なーんて思ってたら、見つかっちゃいましたネ♪」
 すかさず間隙を縫って、森村が孔雀石の手をつかんで持ち上げると、カメラに向かってニッコリと勝者のポーズである。
「あっ、ズルい! わおが先に宣言したのに〜」
 そこへ、胡桃が孔雀石の身体に飛びついてくる。その隙に過度のスキンシップを図ることも忘れない。
「いえいえ、早い者勝ちとかそういうんじゃないですから‥‥」
 むしろ一番冷静なのは、当の孔雀石であった。
「ということは、これであたいは正々堂々とミーアちゃんとツーショットになれるんだよね?」
「わわっ!」
 鶴舞がミーアの肩を抱き寄せる。
「あっ、ダメだよ! わおが先に宣言したんだから〜」
 すると、またも胡桃がミーアの身体に飛びついてくる。
「もう! どっちを選ぼうとしているのよ?」
「選べるわけないよ〜。選べないからこそ、フリータイムが長々とあるんでしょ?」
「いや、まあそうかもしれないけど‥‥」
 そんな感じに胡桃がキャッチボール状態で孔雀石とミーアの間を行ったり来たりしている間、一方の富士川、Tyrantessと紅組の方はといえば、根がマジメだからか、ギタリストが二人も固まってしまったからか、理由はどうあれキッチリ演奏会に備えての練習に取りかかっている。
「なんか演奏会をするらしいんで、一つ曲を作ってみようかと思ってね」
 木陰で3人で輪になると、紅がしゃべり出す。ギターの弦を軽くはじきながらのおかげか、ようやく緊張もほどけてきたようである。
「せっかくだし、番組にちなんで『女の子同士の恋愛』をテーマにね‥‥かなり恥ずかしいから、歌う方は任せるけど‥‥」
「何を言ってるのよ! 歌っていうのは、自分の体験の魂の叫びなんでしょ?」
 まだ照れを捨て切れていない紅に対し、富士川が鋭く追求する。
「そうそう!」
 富士川がチラと目配せしたTyrantessも、力強く同意である。ギターは魂で弾くと宣言しただけあって、歌も魂で歌うものであるようだ。
「そ、そうかな?」
「そうなの!」
 Sチーム2名に対してMチームは紅一人なので、押し込まれる一方である。
「えっとじゃあ‥‥とりあえず作詞的なことから‥‥」
「だから、そのためにはテーマを体験しなくちゃダメでしょう?」
「ダメって‥‥どうすれば?」
「女の子同士の恋愛がテーマなんだから、それらしいコトを実践するのよ!」
「それらしいコトって?」
「そうね‥‥たとえばこういうのは?」
 富士川が紅の手を引っ張ってベンチまで連れて行く。そして、自分の膝の上に紅の頭を置くと、取り出したるは耳かき。
「公園のベンチで寄り添う二人、耳掃除してあげるって‥‥恋人っぽくない?」
「そ、そういうものなのか‥‥うわっ!」
「ダーッ!」
 驚いた紅と富士川が見れば、Tyrantessがベンチにギターを叩きつけていた。
「それじゃダメなんだ、なんか魂の音が死んでるんだよな。まだ硬い、まだぎこちないんだよ。もっとこう‥‥自分をさらけ出すようなカンジでだな‥‥」
 そう言って、紅を挟んで富士川の反対側に座るTyrantess。紅の頬をなではじめる。
「ギターと同じで、触れる側の魂で音色は決まる。ギタリストなら分かるだろう?」
「分かるような‥‥分からないような‥‥」
 明らかに分かってない顔だったが、紅が曖昧な返事をする。そこへ、負けじと富士川が紅の演奏に参戦してくる。
「そういうことだったら、私も負けませんよ」
「なんか、段々意味が変わってきている気が‥‥」
 しかし、どうしたらいいか分からない紅は、ただされるがままであった。
 再び5人組の方にカメラが戻る。こちらはいつの間にか、さらに2つのグループに分かれていた。どううまく事を運んだのかは分からないが、森村が孔雀石をツーショットに持ち込み、噴水の前に腰かけていた。
「後ろ向き立って硬貨を投げ、うまく噴水に入ると、願い事がかなうのデス」
「へえ、そうなんですか」
 噴水を背にして、森村が次には真実の口に手を入れそうな、そして手が抜けなくなってしまいそうな勝手なことを言っている。
 だがそんなことは一切気にせず、ご縁があるようにか五円玉を取り出すと、言ったとおりに噴水に向かって放り投げる森村。本当は五円すらも惜しい森村だったが、ここは惜しむところではないと大奮発である。
「痛っ!」
 しかし、返ってきたのは人の声だった。
 そう、噴水のちょうど反対側には、鶴舞と胡桃、ミーアが座っていたのだ。いや、座っているのは胡桃とミーアの二人だけである。声の主は鶴舞で、その鶴舞は水着姿になって噴水に飛び込んでいたのだ。普段なら確実に通報されるところだが、幸か不幸か番組収録のために公園は貸切である。
「‥‥って、何をしてるんデスか?」
「見て分からない? 夏に相応しいダンスじゃない」
 見れば、鶴舞が噴水の水をまとわせて踊っている。
 さらにはミーアの手を引くと噴水の中に招き入れ、一緒になって踊り出す。もちろん、ミーアは下に水着を着ていたりはしない。
「どう? こんなことは日ごろはできないし、おもしろいでしょ?」
「そ、そーかなぁ? きゃ!」
「あぶなーい!」
 ダンスで弾んだミーアの胸がノースリーブからあふれ出しそうになったところへ、胡桃がズシャーと飛び込んできてなんとかカメラから覆い隠す。
「ん? 胸大きい、大きすぎるよぅ! 何したらそんなに大きくなるの〜? わおは貧乳ですからぁ〜、ぐすぐす‥‥うらやましいですぅ〜」
「あ‥‥あの‥‥」
 しかし、気づけばミイラ取りがミイラではないが、ミーアの胸をしまったのはいいが、そのまま揉みしだきつづける胡桃。
「ちょ、あたいのミーアに何してるのよ!?」
「えー? 巨乳の秘密を知るために揉んでるだけだよぅ〜」
 いけしゃあしゃあと言ってのける胡桃。まあ、鶴舞もさりげなく自分のものと言っていたが。
「大きくていいことなんて、何もありませんってば!」
 しかし、ミーアの一言で状況は劇的に変わった。スレンダーな胡桃がカチンとくるのは言うに及ばず、人並みの鶴舞もカチンである。おかげで、鶴舞もミーアの胸をなでるのに参戦だ。
「持たざる者の気持ちの分からない、持てる者の意見ね。格差社会、反対!」
「格差の意味が違うよー!」
 しかし、ミーアがどう言おうと、二人はありがたい地蔵に触れるが如く、ずっとミーアの胸をさすりつづけている。
「‥‥場所変えよっか?」
「そうですね‥‥」
 自分がきっかけになってしまった森村とはいえ、そっと孔雀石とその場を離れるしかなかった。
 そして、カメラは富士川とTyrantess、紅に移る。場所はベンチから変わっていて、今は池の上のボートとなっている。
「恋人同士といえば、やっぱりボートでデートでしょ!」
「なんか、作詞がずっと関係ない気が‥‥」
 中央に紅を配し、両脇でそれぞれ富士川とTyrantessがオールを漕いでいる。
「そして、ボートが揺れて思わず抱きつくシチュエーションね!」
「わっ! 立つな、バカ!」
 富士川が力説のあまり思わず立ち上がってしまい、激しくボートが揺れる。というか、Tyrantessの注意むなしく転覆する。
 着衣水泳で、なんとか岸まで泳ぎ着く3人。
「このように、危機的状況を一緒に乗り越えることで、絆はより深まるのよ!」
「んなわけあるか!」
 紅と富士川やTyrantessの絆が深まるというより、むしろ富士川とTyrantessでナイスボケツッコミ状態が極められつつあった。
 そして、3人が向かう先は更衣室しかない。そこには、先客がいた。
「ちょ、これ以上大きくなったらどうするんですか!?」
「あたいは困らないけどね。むしろそうなってくれたらうれしいくらいよ!」
「違うよ〜。わおとのバランスをとるために大きくするだよぉ〜」
 シャワーを浴びながら戯れていたのは、噴水から上がったミーア、鶴舞、胡桃であった。
 一方、服のままずぶ濡れの富士川、Tyrantess、紅。他人の振り見てではないが、なんかお互いに気恥ずかしくなってしまう。

 こうして、気づけば日も暮れて夜である。夜となれば、寝る場所とかも考えなくてはならない。
「これは、まさか青‥‥」
 富士川がヤバい言葉を言いかけたところで、Tyrantessがスコーンとツッコミが入れる。
「‥‥? ちゃんとテントと寝袋が用意されてるようだね」
 なんのことだか理解できなかった紅が、用意されたテントの設営に入る。
 一方、森村と孔雀石はすぐには寝ない。孔雀石が翌日の演奏会場の設営にこだわっていたからだ。ライトや音響機器の配置をアレコレ考えている。
 森村の殺人的ボイスの前では、どう音響機器を置こうともムダである気がしないでもないが、そこまでは責任を取れない孔雀石である。
 そして、残るミーア、鶴舞、胡桃組はといえば、すでに噴水遊びに疲れて、子どものようにすでにグッスリである。

 そして翌朝、いよいよ演奏会本番当日である。まあ、正確にはその後の告白タイムの方こそが本番であるわけだが。
 だがしかし、Tyrantessは一向に目覚める気配がない。
「朝ですよ〜!」
「う〜ん‥‥目が開くまで、少し相手しろ‥‥」
 仕方なしに富士川が起こしにかかるが、引きずり込まれて抱き枕状態にされてしまう。
「か、歌詞が思い浮かばない‥‥」
 そんな様子を見ながら、紅は作詞にいそしんでいたが、いいアイデアが思い浮かぶハズもなかった。

 そんなこんなで、早くも演奏会本番である。
「僕はギターに専念するよ‥‥なんか、作詞できなかったし‥‥」
 すっかりバックバンドに徹しようという紅。まあ、鶴舞もバックダンサーに、孔雀石も舞台装置の裏方に徹しようというのだから、紅だけを責めるわけにもいかない。
 そんな中、トップバッターはミーアだった。ミーアとのデュエットは外せないと、胡桃も乱入してくる。
 今日のミーアの衣装はタンクトップにショートパンツと、動きやすいものであった。だからかどうかは分からないが、勢い余って噴水に転げ落ちるミーア。もはや、毎日の入浴感覚である。
「一人でズル〜い!」
 その感覚に毒されたのか、胡桃も飛び込んでいく。
「これもまた一興!」
 となれば、鶴舞だって黙っていられないので後を追うしかない。
 早くも3人脱落と、何の番組だかよく分からなくなってきたところへ、普通に森村が登場する。
 といっても普通なのは登場の仕方だけで、歌の方は相変わらずジャイアンリサイタルである。孔雀石の操っていたスポットライトのガラスが割れたが、森村のハウリングボイスのせいではないと信じたいものだ。
 そして、富士川はオープニングで触りだけ披露したJYO−SHOWをフルコーラスで歌い、Tyrantessと紅のツインギターで締めくくられた。

 そしてついにお待ちかね、告白タイムである。
 まずは、森村が孔雀石のところへと向かう。
「ずっと一緒で楽しかったし、第一印象からかわいいと思ってたのよ。お願いします!」
「ちょっと、待ったぁ!」
 待ってましたとばかりに、ちょっと待ったコールがかかる。声の主は、もちろん胡桃であった。
「ほとんど一緒にいられなかったけど、第一印象のときから決めてたんだ。お願いします!」
 手を差し出す胡桃。しかし、森村は手を出しだしていない。見れば、なにやら小さな袋を取り出していました。
「これが大好物だって聞いたんだよね。モノで釣るみたいでアレだけど‥‥」
 それは、マタタビパウダーであった。しかし、封をしたままにしておけばいいものを、森村が開けてしまったのが間違いのはじまりだった。
 今まで清純派を通していた孔雀石だが、明らかにトローンとした目で森村に擦り寄ってくる。そう、孔雀石にマタタビは、なんとかに刃物と微妙に同意なのである‥‥いや、大分違うか。
 しかし、孔雀石はそのまま森村を手を引っ張ると、草むらへと引きずり込んでしまう。
「あーれー‥‥」
 森村の悲鳴を残し、完全にSとMが逆転したまま、孔雀石と森村がフェードアウトしていく。
 つづいて、鶴舞が進み出て、ミーアの前に立つ。
「そのかわいさにやられちゃった☆ だから、お願いします!」
「ちょっと、待ったぁ!」
 またもちょっと待ったコールがかかる。声の主は、こちらもまたまた胡桃であった。孔雀石や森村と一緒にフェードアウトすることなく、その場にいつづけていたのだ。
「節操なしって思うかもしれないけど‥‥やっぱり第一印象のときから決めてたんだ。お願いします!」
 手を差し出す胡桃と鶴舞。果たして、ミーアはその両方の手を握っていた。
「え!?」
 女神のように二人を抱きしめると、それぞれにキスするミーア。もちろん、頬にキスするなどという半端なマネはしない。唇にするのがここでのたしなみなのだと、たった今ミーアが決めたところである。
「さあ、これであとは二人でキスし合えば完璧だね!」
 三人だけに、すべての組み合わせでキスしろというミーア。思わず顔を見合わせる鶴舞と胡桃。このときばかりは、ミーアは非情なる女神である。
「‥‥あらためて向き合うとなると、照れるわね‥‥」
「こうなったら、やるしかないのですぅ‥‥」
 ミーアとのように流れでするならともかく、一旦静があって動に移れとなると、これがまた中々の恥辱プレイ状態である。
 結局、やや時間をかけながらも鶴舞と胡桃は唇を重ね、晴れてミーアに認められるところとなったのである。
 こうして、残るMチームは紅一人となった。いよいよ告白タイムも大詰めである。
 意を決してTyrantessが進み出ると、紅の前に立つ。
「おまえとは一番長くいたし、相性も悪くなかったと思うんだ。だから‥‥お願いします!」
「ちょっと、待ったぁ!」
 となれば、残る富士川がちょっと待ったコールをかけるしかない。
 しかし、明らかに向きがおかしかった。Tyrantessの方を向いていたのである。
「は?」
「登場のときにセッションがサイコーだったし‥‥」
「合ってなかったじゃん!」
「今もそうだけど、そのツッコミテクに惚れました」
「う‥‥否定できない‥‥」
 俗にいう攻撃力が高いと防御力が低いの法則にのっとり、Tyrantessがすぐに反論できなくなってしまう。
「というわけで、お願いします!」
 こうして、富士川→Tyrantess→紅という、魔のトライアングルが完成する。
 まずは、紅がTyrantessと富士川の手をとる。となれば、勢いだけで富士川とTyrantessも手をつなぐしかない。
「よし、輪になったね。これで踊りながら歌えば、まさに後夜祭だね!」
 紅がやや的外れなことを言っているが、
「グループ交際からでもいいわね☆」
「ま、おもしろければ、それでいっか!」
 富士川とTyrantessもまた微妙にずれているので問題ない。
 3人が手をつないだままグルグル回っている画が、段々と引きになっていく。
 こうして、今回もまたゴメンナサイ一切なしの全員カップル成立である。カップルと呼んでいいのか、微妙な組み合わせが多々あったものの。