ムチャキング8アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
08/08〜08/10
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「ムチャキングも段々危険度が増してきたので‥‥ここらで一度リセットしてみたい!」
「は? 最初のピッチングマシンから十分危険だったんだと思うんですけど‥‥」
「だが、前回は水中で銛発射だぞ!」
「先輩がやりたいって、その改造施したんじゃないですか!?」
「そんなこともあったな‥‥過去すぎて忘れたが」
「はぁ‥‥で、リセットってどうするんですか?」
「飲む!」
「は? よく分かりませんが、飲むっていうのは確実にスポーツじゃないですよね?」
「バカヤロウ! アスリートは身体が命! だったら、飲むことも身体にとって極めて重要なことだろうが。人間の身体の6割は水分で‥‥」
「ああ、分かりましたよ! で、何を飲むんですか?」
「そう、そこだ! あくまでもムチャキング、ムチャなものを飲んでもらいたい。たとえば豆板醤一瓶! たとえばウォッカ一斗樽! たとえばくさや原液コップ一杯! たとえば‥‥」
「‥‥確実に身体に悪いですよね? 確実にアスリート向けじゃないですよね? 確実にスポーツに便乗もしてないですよ‥‥ぐはっ!」
なおも言いつづける後輩のわき腹に、先輩の抜き手が突き刺さっていた。
「身体をいじめて、いじめ抜いてこそのアスリート!」
「‥‥もう、そういうことで‥‥いいです‥‥」
結局後輩が折れ、スポーツとは何の関係もないムチャキング8がスタートすることとなった。
『無謀王決定! ムチャキング8』
飲みっぷりのムチャ度を競いあいます。何をどの程度の量飲むのか、各人の腕の見せどころです。
ムチャキングの選出について
・優勝者には、職業としてムチャキングを名乗る権利が与えられます。
・ムチャキング選出は、スタッフの独断と偏見によってなされます。
・現在のムチャキングは、チェダー千田(fa0427)一名のみです。
・新たにムチャキングが誕生した場合、以前のムチャキングの方が参加していた場合はムチャキングから転落となります(元の職業に戻ります)。
・過去に与えられたことがありますが、今後はムチャキング以外のムチャ○○が与えられることはありません。女性でもキングです。
事前に用意される小道具
大概のものは用意されます。持ち込みも可です。
注意点
・死なないようにがんばりましょう。
・法は守るためにあります(未成年者がアルコールを飲むムチャは禁止等)。
・飲む物、量も重要ですが、リアクションも重要です。
過去の放送スケジュール(最近5回分)
・ムチャキング3 4月19日 18:00〜
・ムチャキング4 5月27日 07:00〜
・ムチャキング5 6月12日 22:00〜
・ムチャキング6 6月18日 22:30〜
・ムチャキング7 7月17日 08:00〜
●リプレイ本文
ディフェンディングチャンピオン、チェダー千田(fa0427)の初防衛戦が繰り広げられようとしているムチャキングのスタジオ。しかし、そこはなぜかバーの様相である。それは、今回のテーマが『飲む』だから‥‥ではない。
見れば、湯ノ花ゆくる(fa0640)が場末のスナックのママのように、客のいないスタジオでメロンパン汁のヤケ酒をあおっている。そう、湯ノ花が勝手にバーのセットにしてしまっただけの話なのだ。
バーの名前はらまんちゃ五円玉。AoS期間限定集団の名前なのだが、まだ夏休み気分が抜けない新学期のようなものなので気にしてはいけない。気にすべきは、湯ノ花が未成年なのに、ラベルにメロンパン『酒』と書いてあることだ。
とはいえ、実際はただのメロンパン汁をあおっているだけだ‥‥いや、ただのメロンパン汁ではない。蒸気で抽出したエスプレッソなのである。ドリップとエスプレッソで何がどう違うのかは、どちらも飲んだことのある湯ノ花にしか分からないし、分かりたくないというヤツであるが。
「王は逃げも隠れもせん! 現ムチャキングのチェダー千田とはわしのことじゃあ!」
そこへ、無意味に両手を高々と挙げて、チェダーのご来店である。
「防衛? ンなチャチいこたぁ、アウトオブ眼中! 目指すはさらなる高み、ムチャジョーカーの座! 転落上等ゥ!」
転落上等以前に転落人生の末のムチャキングな気がしないでもないが、打たれすぎ芸人の双璧の一人と言われているので、自覚がない幸せということにしておこう。
「ドングリを‥‥どうぞ!」
チェダーが席に腰かけた途端、湯ノ花がドリンクと間違えてドングリをチェダーの口に詰め込みはじめる。
もっとも、幸か不幸かチェダーはリス獣人だったので、メロンパン抽出液よりはありがたいくらいなのかもしれない。
「これなんて不吉フラグ? っと、ママー、やってます?」
そこへ、森里時雨(fa2002)も入店してくる。本人が怪訝がるとおり、手にはなぜか古河甚五郎(fa3135)から手渡されたガムテが握られている。
「カレーは飲み物です‥‥ということで、カレーありますか?」
デブタレでも人を選ぶというカレーの飲料化を、痩身の森里が行おうというのである。が、カレーはやっぱり飲み物ではないので、却下される。ちなみに、先のチェダーのドングリも飲み物ではないので、ただの苦しみ損である。
「だったら、おでん缶をください」
しかし、飲料水風の缶に入っているというだけで飲み物ではないので、これまた却下である。とはいえ、却下は織り込み済みの森里である。
「ですよね? なので千葉県民らしく、激甘缶コーヒーを持ってきました」
「お客さん‥‥持ち込みは‥‥困ります‥‥」
森里がデーンとケースで置くが、鋭く湯ノ花が止めに入る。そして、差し出すはメロンパン汁。事実上それしかメニューがないようなものなので、下手な暴力バーよりタチが悪い。
「ぶふーっ!」
口にした途端、深緑色の液体を吹き出す森里。湯ノ花も気づかないところで、青汁にすり替えられていたのである。
「紳士たるもの、青汁を飲んだ後は『マズい! もう一杯!』以外言ってはいけない!」
そこへ、ホワイトタイガーマスクとなった夏姫・シュトラウス(fa0761)が入ってくる。そう、夏姫が飲む用の青汁が、色が緑っぽいというだけで混入していたのである。
「医食同源、今回はコンセプトを健康として、健康にいいものを飲むぞ!」
青汁を大量に並べさせ、片っ端から飲みはじめる夏姫。
「ゴクゴク‥‥マズい! もう一杯! ゴクゴク‥‥マズい! もう一杯! ゴクゴク‥‥マズい! もう一杯‥‥」
薬も度を過ぎれば毒になるを超越し、矛盾のみを条件にするダイヤモンドの肉体を手に入れようという荒行に入る夏姫。
それを見ては、湯ノ花も負けてはいられない。同じ勢いでメロンパン汁をのみはじめる。二人とも、ダイヤモンドというよりはエメラルド、それよりもグリーンスライムが垂れ、緑の鱗が生えてきそうな勢いではあるが。
「みなさん、飲むということを間違えてますよ! 飲むと言ったら人間ポンプじゃないですか。独学でちょっとはできるようになりましたよ!」
そこへ、上野公八(fa3871)が入ってくる。
「リハなし一発勝負! 俺の初体験、見ちゃダメぇ‥‥って、呼んだ?」
チェダーが振り返る。チェダーも人間ポンプをすべく、ちょうど最初の金魚を飲み込んだところだった。カメラは夏姫と湯ノ花の方ばかりを追っていたので、まったく映っていなかったのだが、本当に見ちゃダメといわんばかりにカメラなしで強行するあたり、キングの底力が感じられる。
「チェダーさんまでかぶり芸を‥‥って、アレ? 用意しておいたピラニアがいなくなってます‥‥」
空になったグラスを、不思議そうに見つめる上野。チェダーの顔が青ざめる。
「え? ええ!?」
うろたえるチェダーの前に、上野が煙の出ている液体の入った容器を差し出す。
「ハチはこの液体窒素で凍らせて、それから飲むつもりだったんですよ! それを生きたまま飲んじゃうなんて‥‥さ、早くポンプ、ポンプ!」
上野が吐き出すよう促すが、あせったチェダーはうまく吐き出せない。上野もチェダーの腹をボッコンボッコン殴ってムリにでも吐かせようとするが、それでもダメだ。
そこへ突然、スタジオ中にポップでキュートなナンバーが流れる。そう、ムチャプリンセス、草壁蛍(fa3072)のテーマだ。
ビールにジントニック、スクリュードライバーを大ジョッキで2杯ずつ取り出す草壁。
「駆けつけ1杯と言えばコレよね〜♪」
どこをどう見ても全然1杯ではないが、王女様なので仕方がない。
「う〜ん、この1杯のために生きてる〜♪ スキッとさわやか〜♪ というわけで、キングも飲むといいよ!」
ビールやらをススメる草壁。もはや手段は酒でリバースしか残されていないのかと、上野がチェダーの口に問答無用で流し込む。
「ゲボゲボ‥‥ゴホっ、はぁはぁ‥‥ふぅ」
ようやく、チェダーがピラニアを吐き出す。幸いにして赤いものは混じってないので、胃は無事のようである。
「‥‥生きている魚はかわいそうで罪悪感に苛まれる、だからといって殺すのもかわいそう。だから、仮死状態にして飲むのです。ええ、決して我が身かわいさからじゃないですよ、ええ」
チェダーの嘔吐物の中からピチピチと跳ねていたピラニアを拾い上げると、液体窒素で洗ってカチンコチンにし、ひょいと自分の口に放り投げてしまう上野。まだ人間ポンプ芸は継続中のようである。
「ばっ、ヤメ‥‥」
チェダーが慌てて止めに入るが、ピラニアはすでに上野の体内だ。
「ぐはっ、食道が凍ってしまいます‥‥胃が冷た! ああ、動き出しちゃいました‥‥」
「俺のザマを見てなかったのかよ‥‥」
悶絶する上野に、チェダーが頭を抱える。そこへ、さらに犬神一子(fa4044)がやって来る。
「くはーっ! 喉が焼けるようだぜ」
犬神が手にしているのはポーランドの最終兵器、スピリタスであった。
「ふぅ‥‥思わず、シガーをふかしたくなってきたぜ!」
スピリタスギャグを飛ばす犬神。96度はダテではないので、火気厳禁なのは言うまでもない。
「‥‥って、そういう場合じゃねーんだったな。ほれ、コレを飲みな!」
犬神が上野の口にスピリタスを流し込むと、あっという間にゲロの噴水である。おかげで、ピラニアもピューっと出てきたが。
モザイク越しでも放送に堪えないので、カウンターからバー中央へとカメラが映る。そこには、なぜか雀卓が運び込まれていた。
「さて、私が何を飲むかはお楽しみとして‥‥まずはみなさん、大勝負で‥‥息を飲んでもらいましょうか?」
豊浦まつり(fa4123)が、一同に向かってそう宣言する。
「よっしゃ、行くぜ!」
「えー! 俺ドンジャラしか知らねーっス!」
犬神に抱えられて、森里がやって来る。こうして、ほぼ全員が参加を表明することとなった。
してないのは、しようにもできない倒れたままの上野、そして未だに延々と飲みつづけている夏姫と湯ノ花だ。湯ノ花など、メロンパン汁の飲みすぎで身体がメロンパンになってしまったほどだ。まあ、単にメロンパンの着ぐるみを着ているだけだが。
「ふっ‥‥あくまでも薬であって、お酒ではないのだよ!」
対する夏姫は青汁を一旦中断し、薬用酒に移っていた。とはいえ、夏姫は未成年である。
「私は未成年ではない。ホワイトタイガーマスクだ!!」
スタッフの方も夏姫を止められないと悟ったのか、画面に『アルコール分1%未満に希釈して飲んでいます』のスーパーが入る。
「で、使うのはコレね」
豊浦の出した牌は、あの伝説の三透牌である。ムチャキングだけに、本当に血まで抜かれるのではないかと心配したくなるが、医師法等の問題があるのでできない。もちろん、現金を賭けることもできないのは言うまでもない。
命も懸けられず、金も賭けられない。だったら何を賭ければいいというのか?
「で、普通に勝負しても意味ないから、『脱衣』もしくは『負けたら何でも言うことを聞く権』を賭けるってのはどうかな?」
そう、服を賭けるのである。麻雀といえば脱衣、中国4千年の常識である。
「おう! おまえらが脱がなくても、俺は脱ぐ!」
犬神が何の脈絡もなく上半身裸になる。マッチョの職業病のようなものである。
「なにっ! そういうことなら、ちょっと待ってくれ‥‥」
そう言って一旦引っ込むと、全身タイツ姿になって戻ってくるチェダー。一度で全部脱ぐ気満々である。
こうして麻雀スタート。実際の勝負の様子は麻雀番組ではないのでさっくり飛ばし、結果のところだけ放映である。
最初は、ちょうどチェダーが豊浦に振り込んだところであった。
「サイ姐さんのワレメ、直撃〜、ぐへへ‥‥うがっ!」
麻雀用語を勝手に違く聞こえるようにして、下品な笑いをするチェダー。直後、一瞬だけクイーンの殺気を取り戻した草壁のハイヒールが、股間に突き刺さっていた。
せっかく着替えた全身タイツを脱ぐことなく、早くもチェダー退場である。
「ん? 今、一瞬だけムチャ力が戻った気がする! まだ私が脱いでないのが心残りだけど、今ならイケる!」
一方、何かをつかみかけた草壁。そう宣言すると、ヒミツのカクテルに挑戦である。
プシュー! 一瞬にして、周囲に腐臭が充満する。さすがはプリンセス、室内で開けるなという注意書きは一切無視して、シュールストレミングの缶を開けてしまっていた。
(クイーンの誇り! それを取り戻すためなら、私は何でもやって何にでもなってみせる!!)
ミキサーに入れると、さらにくさやも加え、ヒミツのカクテルのできあがりである。
「〜ッ!!」
アレコレ言うことは考えてあったが、そんなものはすべて吹き飛び、飲み込んだ瞬間にそのまま卒倒である。
換気のため番組がしばし中断されるが、そこは編集マジックで一瞬である。しかし、麻雀の面子の方はそうもいかない。草壁も脱落したので、早くも豊浦、犬神、森里の3人だけだ。そこで、数合わせに古河が加えられる。
「あ、これ以上脱落者が出たらそこで終わっちゃうから、イカサマ解禁するんでそのつもりでね‥‥まあ、バレるようなヘマはしないけど」
豊浦が確勝宣言したところで、ここからはダイジェストである。
「猫型ロボの牌を探しても、まったく見当たら‥‥って、未だにルールが分からんのですよ!」
「負けたヤツに、勝ったヤツの用意した飲み物とミックスさせて飲ませる罰ゲームを考えておいたのだが、まったく出番がねぇ!」
「グハっ、これが血を吐くルールの劇画な麻雀ですか!?」
「すでにパンツ一丁だが‥‥俺は脱ぐっ!!」
「これで隠しましょう、ガムテで!」
「ガムテの世話になりつつ、結局集まったのは負けフラグだけ‥‥」
気づけば、犬神、森里、古河の全員が身ぐるみはがれてしまっている。対する豊浦は、全部着ているのはもちろんのこと、乱れすらもなく涼しい顔である。
こうして、すべての勝負が終わった。いや、まだ豊浦が何も飲んでいない。
「え? 私が何を飲むかって? もう飲んでるじゃないの。ヘタレキングはさておき、並みいる強豪たちを、運と技と度胸とハッタリで‥‥ね? イカサマってのは、相手を飲んでかかってなんぼ‥‥ってなもんよ!」
「誰がうまいことを言えと‥‥」
未だ夏姫と湯ノ花は飲みつづけてはいたものの、飛び抜けたムチャな飲み方をした者がいないということで、痛み分けということに終わった。
結果、すでに退場済みのチェダーの防衛が決定。ボクシングにたとえるなら、判定ドローで王座防衛というような形で、引きつづきチェダーがムチャキングということになった。