第13回プロレスごっこ王アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/12〜08/14

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居あり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。その前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「倍率ドン! 3、2、1」
「は?」
 突然ワケの分からないことを言い出すえらい人に、一同ポカーン。
「さらに倍! 6、4、2」
「はぁ?」
 しかし、えらい人は我が道を突き進みつづける。そして、一同はますますポカーンである。
「バカヤロウ! この日は有明でスゴい人出らしいじゃねーか。というわけで、観覧客を入れた上、ポイント2倍で収録を行うってコトじゃねーか。そんな単純なことも分からないのか!?」
「分かりようがないですけど‥‥ぐはっ!」
 なんとか茫然自失から声を振り絞るスタッフが約1名。しかし、えらい人はすぐさま鉄パイプ一閃で、そのスタッフを永久に黙らせてしまう。
 こうして、ランキング制導入後9回目、通算27回目、そして初の客入れのプロレスごっこ王選手権がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・普段は観客席がガラガラですけど、今回はそこにお客さんを入れます。
・それを記念して、プロレスごっこ王ランキングのポイントが通常の2倍になります。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによるプロレスごっこ王の決定が近づいた場合、その数回前に告知されます。現状、遠い未来の話です。
・その決定戦あたりでは、多分倍率が1兆倍くらいの超インフレになっていると思いますが、そういうのに怒らない人募集。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。もちろん、お客さんの安全も守りましょう。

ランキング(上位3名、第12回プロレスごっこ王分まで)
 1位 古河甚五郎(fa3135) 8pt
 2位 チェダー千田(fa0427) 7pt
 3位 あずさ&お兄さん(fa2132) 4pt
 3位 神代タテハ(fa1704) 4pt
 3位 美角あすか(fa0155) 4pt
(同順位の場合、先にそのポイントを獲得した方が上になります)

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第10回 7月11日 07:00〜
・第11回 7月14日 07:00〜
・海の日 7月17日 11:00〜
・海プロ 7月27日 07:00〜
・第12回 8月04日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0155 美角あすか(20歳・♀・牛)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0791 美角やよい(20歳・♀・牛)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)

●リプレイ本文

『私は帰ってきました‥‥いえ、私たちが帰ってきたのです!』
「うわ〜ん! 異様だよう、ありえないよう! こんなに人がいるなんて‥‥これ、本当にプロレスごっこなの?」
 初の大入りの観客席をバックに、サトル・エンフィールド(fa2824)が実況をはじめる中、その横の解説のヨシュア・ルーン(fa3577)が慣れない観客に怯えた体で震えだす。
 スパコーン! サトルがヨシュアの顔面、それも鼻先目がけて無言でハリセンを顔面に叩き込み、問答無用で黙らせた音だ。早くもヨシュアは鼻血のときのイヤな臭いに悶絶しているが、一切無視で実況続行がサトル流のたしなみ。対ヨシュアのときだけだが。
「ヒドいよ、サトル君〜。日本を飛ばされ、苦労した仲間にそれはないよ。一度は席を共にした中じゃないか〜‥‥えーん!」
 スパコーン! 泣きじゃくるヨシュアすらハリセンで黙らせ、進行厳守とばかりに実況をつづけていく。
『聞こえます、聞こえます、あの歓声が!』
 ヨシュアの泣き声で歓声がかき消されている気がしてならないが、観客がいなくても歓声が聞こえてしまう者たちの集いがプロレスごっこなので、まったく問題はない。
『私は連れてきました。あの麗しの戦場へ、そしてあの懐かしの戦争へ。ゴスロリ!? コスプレ!? それが何?』
 実況をつづけるサトルに、解説席で突っ伏すヨシュア。放送席は通常はその二人分なのだが、本日は机もう一つ分なぜか長い。
「え、え〜と‥‥見るだけでいいので、手にとってみてくださ〜い」
 二人の横では、パトリシア(fa3800)が声を上げていた。
 サトルやヨシュアの前の机の上には、もちろんマイクやモニタが置かれているが、パトリシアの前には薄っぺらい冊子が並べられている。
 そう、パトリシアは一人同人誌即売会という荒行に挑んでいたのである。置かれているのは、プロレスごっこ芸人のボーイズラブ同人誌。パトリシアが18歳未満なので、一応18禁ではない。
 そんなターゲット激狭の本が売れるハズもなく、ましてや万が一欲しい観客がいたとしても、机の向きが放送席とまったく一緒でリング向きなので、リングサイドに乱入しなくてはならないというハードルの高さである。
 とそこへ、リングサイドを歩く湯ノ花ゆくる(fa0640)が。といっても、パトリシアの本を読みに来たわけではない。
「‥‥今回は‥‥本物の‥‥観覧客の方が‥‥来ていますけど‥‥えらい人が‥‥見栄を張って‥‥用意した‥‥人形じゃない‥‥ですよね‥‥?」
 明らかに人の動きしかしていない観客たちだったが、湯ノ花はどうしてもその疑念を降る払うことができない。
「確認のため‥‥お客さんの口に‥‥メロンパンを‥‥」
 湯ノ花は観客席の中に紛れ込んでいたあずさ&お兄さん(fa2132)の前で立ち止まると、なんのためらいもなくその口にメロンパンを突っ込んでいく。
「‥‥え? ええっ‥‥んぐっ!」
『あーっと、僕らのアイドルがここにいたーッ! ああ、ギャラもらった出場者なのに、なぜ観客席? ちくしょう、青春を返せ!』
「‥‥よかったです‥‥ちゃんと食べてるです‥‥人形じゃないです♪」
 あずさはもごもごのどにつかえさせながらも、なんとか食べてことなきを得るが、お兄さんの身体はメロンパンがパンパンに詰められて、風船みたいに今にも破裂しそうである。
「とりあえず、僕にできることは、あずささんにハサミを渡しておくことだけです」
 そう言って、あずさにハサミを渡しに行くヨシュア。赤ずきんちゃんの狼みたいに、これでお兄さんのお腹を切り開けということであろうか?
「いえいえ、いくらここが魔界のアメ横、地獄の道頓堀といわれたプロレスごっこ会場でも、そこまでの残虐映像は流せません。とはいえ、朝ご飯食べながら見ることはお奨めできません。どうか、生あたたかい気持ちでおつきあ‥‥ぐはっ!」
 スパコーン! 長々としゃべるヨシュアにサトルがハリセンでのツッコミを入れ、進行を自分の手に取り戻す。
『まずは美角シスターズ、ビキニ姿で堂々の登場だーッ! 大ぶりな美角あすか(fa0155)選手が双子の姉、小ぶりな美角やよい(fa0791)選手が妹という、この見た目がデコボココン‥‥ぐはっ!』
 スパコーン! 今度は、サトルが入ってきたやよいにハリセンを食らう。そう、見た目デコボコとは身長差とかではなく、胸のサイズを言ってたのは言うまでもない。
「読んでみてくださ〜い」
 パトリシアの売り子としての声だけが放送席に響く中、あすかが、ツッコミの分やや遅れてやよいがリングインした。
「まず、私が先に出るよ」
「うん、あすか姉ひそかにランカーだし‥‥まかせた!」
 先発として、あすかが出てくる。手にしているのは、昔のビキニ水着のブラ部分。これが対戦相手というわけだ。
 あすかもやよいもすでに小さめのビキニを着けているが、素っ裸でやるわけにもいかないので、そのハンデは仕方がないところ。ゴングが鳴り、早速試合開始である。
「ん‥‥きついわね‥‥あ!」
 一瞬で対戦相手が引き裂かれる。といっても、これはあすかの負けである。
「タッチ!」
「よしきた!」
 すかさずやよいがリングイン、こちらも対戦相手は同じくあすかの昔のビキニ水着のブラ部分である。
「あ‥‥」
 昔のものとはいえ、豊満なあすかのビキニなので一瞬で装着完了、やよいの完全勝利である。
「よっ! さすが貧乳ーっ!」
 観客席のあずさがヤジを飛ばす。やよいは豊満なあすかと比べれば貧乳なのだが、それでも人並みほどは十分ある。対するあずさの方こそ、自分で言って自分で傷ついてしまっている。
 しかし、勝ってなおむなしとはまさにこのことで、やよいは収まりがつかないやよい。
「で、でもあすか姉は大きいから‥‥今はともかく、昔だって大きかったし、それがぴったりなんだから私のだって捨てたもんじゃ‥‥」
 マイクパフォーマンスというか、言い訳をはじめるやよい。しかし、あすかの方もただ負けただけでは気が済まない。
「それ、中学のときのヤツだからね!」
「なんだとー‥‥小学生のじゃないだけマシでしょ!」
 咄嗟に言い返すやよいだが、やれやれと首を振るあすか。これにはやよいもカチンである。
「大体、あすか姉だってカップは変わってないみたいだから、単に太‥‥」
「なんだとー‥‥でも、寸胴なだけよりはマシでしょ!」
「なにーっ!?」
 気づけばプロレスごっこというより、姉妹ゲンカテイストのキャットファイトの様相である。
『な、なんという美しい光景でしょうか‥‥僕らはこれを待っていたッ!』
 いつの間にか復帰したサトルが、食い入るように見つめながら叫ぶ。
「うーん、今日は女性のお客さんが多いように見えますが、この展開はアリなんでしょうか? 腐女子のパトリシアさんも不満気ですよ。というわけで、ここで必要なのは男子の露出度で‥‥ぐはっ!」
 スパコーン! 腐女子呼ばわりされたパトリシアの、怒りのハリセンがヨシュアにヒット。しかし、机に並べてある本からはあまり強く反論はできなさそうなものだが、それはそれである。
『あーっと、ここで正義のちびっ子ヒーロー登場か!? 打極投の隙のない、僕らのスーパーマンだ! マリアーノ・ファリアス(fa2539)、どんなファルスを繰り広げてくれるのかッ!?』
 リング上美角姉妹が美しくも醜い戦いを繰り広げる中、花道にはマリアーノが特撮風プロテクターを装着しての登場だ。
『なんと、すでに変身しての登場ですッ! それもそのはず、マリアーノ選手の対戦相手は透明人間! 包帯グルグル巻きで分かりやすい状態ではないので、いつどこから襲ってくるのか、さっぱり分かりません! 常に油断できないのです!』
「ささ、そのハサミをなんのために渡したのか、女性のお客さんが何を求めているのか、あずささんなら分かっているはずですよ!」
 いつの間にかヨシュアが観客席まで来ると、先程あずさに渡したハサミを指差すヨシュア。これでマリアーノのコスチュームをどうにかして露出度を上げろということらしい。
 しかし、あずさの心は腐女子というより乙女、そんなマネはできるはずもない‥‥が、すぐにハサミを手にリングに向かっていくあずさ。
 一方、あずさの隣の席では、湯ノ花がのんびりと弁当を食べていた。
「夏といえば‥‥ドカ弁‥‥です」
 ドカ弁とはいえ、アルマイトの巨大弁当箱にメロンパンを詰め込んだだけのものである。ある意味日の丸弁当よりもタチの悪い、メロンパン依存症の湯ノ花でなければ食べ切れない、危険極まりない弁当だ。
『美角シスターズの戦いの最中、我々には見えない敵と戦いつづけるマリアーノ選手! あーっと、そこへあずさ選手もやって来たーッ!』
「ねえ、必殺技撃ってよ!」
 ハサミなど一切関係なく、無責任なことを言い出すあずさ。
「よーし、やっちゃうよ!」
 調子に乗ったマリアーノが、なにやら仕込んでおいた装置のスイッチをあずさに手渡す。
「自分で持ってると、はずみで押しそうなんで‥‥えーっと、この安全装置を外して、それから押してくれればいいから‥‥」
「うん、分かった!」
 その場での打ち合わせを終え、マリアーノが何やら構えると、あずさがスイッチを押す。すると、拳の先から火花が飛び散る。
「あちち‥‥火花だけでも、思ったより熱いな‥‥」
「それは大変!」
 が、それをちょっとだけ熱がるマリアーノ。しかし、あずさが急に真剣な顔で早く冷やすよう促してくる。
「え、いや、そこまでしなくても‥‥」
「ヤケドをナメちゃダメだよ!」
「いや、所詮火花だし‥‥って、聞いてないね‥‥」
 マリアーノを組み伏せると、プロテクターをハサミでじょきじょき切っていってしまうあずさ。
「あ! 切り過ぎちゃった‥‥ま、いっか」
 不吉な言葉が聞こえてくるが、もはやマリアーノになす術はない。
「さ、早く冷やそ!」
「う、うん‥‥」
 立ち上がるマリアーノ。切り刻まれたプロテクターがマットに滑り落ちていく。ついでに、パンツまでも滑り落ちていく。
「きゃっ!」
 自分でやっておきながら、あずさが思わず目を隠す。そう、あずさが切り過ぎたというのは、マリアーノのパンツだったのだ。
 マリアーノの下半身が、白日の下に晒される。もちろん、放映上はモザイクでなんの問題もないが、今日に限っている観客には丸見えである。
「うう‥‥わーっ!」
 顔を真っ赤にしたマリアーノが、泣きながら去っていく。
 あずさが困ったように放送席を見れば、ヨシュアとグッジョブとばかりに親指を突き立てていた。
 そして、パトリシアは忘れないうちにと、今の光景を本にスケッチしている。と、そこへ観客の一人が買いに来る。
「え、え〜と、ご希望の方にはイラスト入れますよ〜」
 途端に、パトリシアの机の前に女性の観客の列が形成される。そんなことは止めたいマリアーノだが、もはや恥ずかしくて戻るに戻れない。
 そんな中、湯ノ花も席を立ってリングサイドに来ていた。といっても、パトリシアの本を買いにきたわけではない。最終試合のために来たのである。
『大惨事になってしまいましたが‥‥構わず突き進みます。ゆくる選手が、汗だくになってのリングインです!』
「今回は‥‥プロレスごっこをモジって‥‥風呂レスごっこをします。風呂レス‥‥今日一日‥‥どんなに汗をかいても‥‥汚れても‥‥お風呂に入らないです。ガマンです」
 そう言うと、リングの隅に勝手に設置したクーラー、扇風機完備の快適スペースに、寝転がる湯ノ花。
「ここで‥‥快適に過ごす‥‥努力をします」
 しかし、ずっと観客席にいたので、サトルの実況にあったとおり、湯ノ花はすでに汗だくである。
 そのことに気づいたあずさが、もはやこれしかないとばかりに叫ぶ。
「こ、こうなったらあの人を呼ぶしかないね! さあ、みんなブーイングしながら叫ぼう‥‥せーの、えらい人ーッ!」
 しかし、何も起こらない。いや、パトリシアが列の回転を止めて、なにやらわたわたしている。
「え、私が言うんですか!? えーと‥‥I’m えらい人代理ーッ! 今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
 1位 美角姉妹 各6
 2位 パトリシア 4
 3位 マリアーノ・ファリアス 2
「目指せ、プロレスごっこ王! だそうです‥‥」
 1位になった美角姉妹が未だにリング上で言い争っている中、そして2位のパトリシアの行列が減りそうにもない中、番組は終了していった。