第14回プロレスごっこ王アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/20〜08/22
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●本文
プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居あり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。
TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。その前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「倍率ドン! 6、4、2」
「は?」
またも倍率を言い出すえらい人に、一同はやはりポカーンである。
「さらに倍! 12、8、4」
「って、前回のさらに倍からさらに倍ですか!?」
しかし、えらい人は答えない。ただ鉄パイプを振り回し、よく分からない説明をはじめるのみだ。
「バカヤロウ! オッズが2倍だったとしよう。で、まず100ドルを賭けたとする。負けてももう1回100ドルを賭け、勝てばチャラになる。それでも負けてしまった場合、今度は2倍の200ドルを賭ける。勝てばチャラになる。負けたらさらに2倍の400ドルを賭ける。勝てばチャラになる。負けたらさらに2倍の800ドルを賭ける‥‥」
「その話、長くなりますか?」
ガマンできなくなったスタッフの一人が口を挟むが、もちろん鉄パイプで制裁である。
「バカヤロウ! 数字が分からなくなるじゃねーか! えー‥‥さらに2倍の1,600ドルを賭ける。勝てばチャラになる。負けたらさらに2倍の3,200ドルを賭ける。勝てばチャラになる。負けたらさらに2倍の6,400ドルを賭ける‥‥って、そろそろキツい額になってきたな。という具合に、負けを取り返そうと倍賭けしていって負けつづけると、いつかどうにもならない額になっているというわけだな!」
「それと、プロレスごっこのポイントがさらに倍になることと何の関係が‥‥ぐはっ!」
無粋なことを言うスタッフも、やはり鉄パイプの餌食である。
こうして、1位12pt、2位8pt、3位4ptが与えられるという、順調にインフレの進んでいるプロレスごっこ王選手権がスタートするのであった。
参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。
注意:
・再び無観客試合に戻ります。いつもどおり観客席がガラガラということです。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによるプロレスごっこ王の決定が近づいた場合、その数回前に告知されます。現状、遠い未来の話です。
・すでにインフレ傾向にありますが、決定戦あたりでは多分倍率が1兆倍くらいの超インフレになっていると思います。そういうのにバラエティのノリに怒らない人募集。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。
ランキング(上位3名、第12回プロレスごっこ王分まで)
1位 古河甚五郎(fa3135) 8pt
2位 チェダー千田(fa0427) 7pt
3位 あずさ&お兄さん(fa2132) 4pt
3位 神代タテハ(fa1704) 4pt
3位 美角あすか(fa0155) 4pt
(同順位の場合、先にそのポイントを獲得した方が上になります)
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第11回 7月14日 07:00〜
・海の日 7月17日 11:00〜
・海プロ 7月27日 07:00〜
・第12回 8月04日 07:00〜
・第13回 8月12日 07:00〜
●リプレイ本文
『毎度おなじみ、プロレスごっこの時間がやってまいりました。実況もおなじみ、サトル・エンフィールド(fa2824)でお送りします』
一夜限りの夢とばかりに、再び観客のいなくなった会場であるにもかかわらず、実況のサトルはエンジェルのスマイルである。
『そして、お相手はこの方‥‥』
「パイロ・シルヴァン(fa1772)だよっ! 解説をやっちゃうんだよっ‥‥フフ」
サトルが天使の微笑みならば、パイロは黒い悪魔‥‥と言ってしまうとゴキかエロティカセブンになってしまうので、単に悪魔と言っておくが、悪魔の素顔を隠した天使のような満面の笑みである。いわゆる、作られた笑顔がコワい、というやつである。
「暴力主義者のサトルくんにパーンチ!」
笑顔のまま、サトルにボディブローをかますパイロ。サトルの身体がくの字に曲がるが、その程度でサトルの笑顔が崩れたりすることはない。
『何をされても、許しちゃう気分っていうのがあるんですね!』
「じゃあ、さらにかかと落としドーン!」
調子にノって、サトルの後頭部にさらにかかとを落としていくパイロ。
『痛いなぁっはっはっ』
放送席の机にめり込むが、サトルはやはり笑顔のままである。声をあげて笑ってしまうほどに。しかし、逆にそれがコワくもあるのだが、パイロは調子にノリすぎていてそんなことには気づかない。
『さすがは自称アクションスター、見事な切れ味ですね!』
「でしょ? どちらが上か、これで分かってくれたかな? え? プロレスごっこでケガ人出しちゃダメだろって?」
見れば、パイロの言葉どおりにサトルの額が割れている。もちろん、サトルの顔はモザイク越しなので、何が起きているかは視聴者には分からない‥‥バレバレだが。
「大丈夫。ルールには、お客さんや出場選手にケガ負わせちゃダメって出ているけど、スタッフにケガ負わせちゃダメって出ていないもん。サトルくんは実況だしね。あー、サトルくん。氷が溶けたから、お茶を入れ直して」
その理論でいうと、自分もケガを負わせて構わない解説であることも忘れ、机の上に足を放り投げて、グラスを差し出すパイロ。
「あちっ!」
突然、悲鳴を上げるパイロ。サトルが、熱湯のお茶をパイロの頭からかけていたのだ。もちろん、サトルの天使の微笑みは一切崩れていない。さらに、自分の顔にモザイクがかかっているのをいいことに、パイロをボコボコにしていくサトル。
こうして、傷だらけの天使となったサトルによる残酷映像がそのまましばらくつづくので、映像はさっくりリングだけを写すようになり、放送席にもかかわらず音声は完全に切られてしまっていた。
そのリング上では、レフェリーの伊集院帝(fa0376)のリングインよりも早く、プロレスごっこのエロカッコイイ女神ことTyrantess(fa3596)が立っていた。
「おう、おまえらのために、プロレスごっこのオープニングテーマを作ってきてやったぜ!」
そう宣言すると、ギターをメタル風にかき鳴らしはじめるTyrantess。事前に作詞作曲してきたかのように言っているが、実際のところは即興である。
「プロレスごっこプロレスごっこプロレスごっこ‥‥」
『出ましたッ! Tyrantessさんの1秒間に10回プロレスごっこ発言ーッ!』
気づけば、サトルが実況に戻っていた。サトルのイスの部分にモザイクがかかっているが、これはボロキレのようにされたパイロの人間イスである。時に天使が一番残酷であるコトを訴えたがっているかのようであった。
「プロレスごっこ熱湯風呂! プロレスごっこフードファイト! プロレスごっこ猛毒実況! プロレスごっこネタ系レフェリー!」
「えっ!?」
ちょうどリングインしてきた伊集院が、ドキっとして自分を指差す。
「自分って、やっぱネタ系だったのか‥‥」
ガックリとうなだれる伊集院。対する猛毒実況ことサトルは、そんなことには動じずに天使の笑みでパイロに座りつづけているだけである。
「プロレスごっこポロリ! プロレスごっこマッスル人形! プロレスごっこガムテ! プロレスごっこチェーンソー!」
しかし、Tyrantessの曲は頭を真っ白にして出てきての即興なので、段々ネタがなくなってくる。
「プ、プ、プ、プロレスごっこモザイク! プ、プ、プ、プロレスごっこメロンパン!」
そのせいか、なつかしのジャストミートのプロレスニュース風になってくる。
「プ、プ、プ、プロレスごっこ水槽、出てこいやーッ!」
ついに間がもたなくなり、Tyrantessは水槽の入場を促す。プロレスごっこにおける水槽の永遠のライバルといえば、ブルース・ガロン(fa2123)しかいない。
「長年の沈黙を破り、四角く白いジャングルに帰ってきた哀愁の水槽芸人、ブルース・ガロン34歳! 今回はなんとタッグマッチ、別名ダブルバウトに挑みます!」
自分でリングアナ的なことをこなしてから、水槽を携えて花道を進んでくるブルース。
『さあ、いきなりの注目カード実現! 地獄の底から蘇る悪魔の化身、毒の華ことブルース選手、復帰第一戦の今回は宿敵水槽とタッグを組み、抱き枕&本棚組と戦うとのことです!』
ブルースの腰からロープが垂れ、抱き枕と本棚を引きずりながらの入場だ。早くも公開処刑の様相を呈している。
『豚のような悲鳴、もといオペラ歌手ならではの大音声が舞台を湧かせてくれるのを期待しています!』
「ぶひーっ!」
しかし、豚のような悲鳴はサトルの下でイスにされているパイロから聞こえてくるのだった。空いた解説席には、ギターをかき鳴らしたまま引っ込みのつかなくなってしまったTyrantessがいつの間にか座っている。もちろん、ギターは未だにかき鳴らしつづけたままだ。
「ファイッ!」
カーン! 伊集院の合図で、試合がはじまる。と同時に、本棚に向かって走ると、先制のアックスボンバーをかますブルース。
本棚がゆっくりと重量感を示しながら倒れるが、そのまま後ろに倒れることなくロープでバウンドすると、ブルースの方に向かって倒れてくる。
『あーっと、いきなり押さえ込まれてしまったーッ!』
「ワン、ツー‥‥」
伊集院が冷静にカウントをとっていくが、カウントツーとスリーの間が異常に長いのはお約束である。
「ヘイ、タッチ! ヘイ、水槽タッチ!」
しきりに水槽に声をかけるブルースだが、もちろん返事はない。というか、今の衝撃で水槽はすでに粉々になったいたのだ。
「‥‥スリー!」
カンカンカンカーン! あっさりと試合終了のゴングが鳴り響く。
『なにしに来たんだ、ブルース! もはや錆びついてしまったのか!?』
伊集院が本棚をどけると、罰掃除ではないが、さみしそうに水槽の破片を拾い集めるブルース。見かねた伊集院が手伝ってくれたのが、唯一の救いである。
『清掃作業で一時中断されてますが‥‥なにやら大きな箱が運び込まれてきました! これは奇術師Zebra(fa3503)の対戦相手、魔法の箱だーッ! 中に人が入った状態で一本ずつ剣を刺すおなじみのあのマジック。中に入ったZebra選手が飛び出したら負けって、それなんて黒いヒゲとか言ってはいけないッ!』
箱のセッティングが終わり、Zebraも入場してくる。が、その格好がどうにもおかしい。
「箱の中に入るのは、古来より美女と相場が決まっている!」
言葉通り、美女風メイクと美女風衣装である。しかし、Zebraは筋骨隆々の大男だ。ラメ入りハイレグの股間にハーネスが食い込む様など、早朝から実に不快な気分になれるシロモノである。まあ、極々一部のマニアだけは喜んでいるのかも知れないが。
そこへ、マジックの定番BGMであるオリーブの首飾りが流れる。とはいえ、Tyrantessが相変わらずメタル風に弾いているので、斬新なアレンジの戦いになりそうな気配である。
首だけ外に出した状態で箱の中に納まると、剣を持ったDarkUnicorn(fa3622)が入ってくる。が、それを伊集院が目ざとく見つける。
「ワン、ツー‥‥」
しかしすぐに取り上げたりはせず、律儀に反則のカウントを取りはじめる伊集院。おかげで、5秒以内なら所持可能である。
「リングといえば、見る者を熱狂させるカリスマ性を持ったヒーローが必要不可欠じゃ! しかし、今のプロレスごっこにそのような者がおろうか? 否じゃ! ならば作らねばなるまいヒーローの伝説を‥‥一撃必殺、えいっ!」
DarkUnicornの刺した剣は本当に一撃必殺で、びよーんと逆バンジー状態となるZebra。
それを受け、伊集院が箱を勝者としようとしたところで、Zebraのちょっと待ったコールがかかる。
「飛び出してこそ、盛り上がらせてこそエンターテイメント! なので、飛び出したら勝ちなのだ! 某黒いヒゲだって、勝ち負けを自分たちで選べるようになっているだろ?」
Zebraの勝ちであろうが負けであろうが、吊るされたまま収録が進むのは言うまでもない。もちろんZebraの股間が見苦しいので、以降リング上空は映さないのは当然である。
そんなZebraを頭上に置いたまま、ジャングルジム、ブランコ、滑り台といった大がかりな遊具が運び込まれてくる。気づけば、DarkUnicornの姿が消えていた。
とそこへ、リング下で着替えの終えたDarkUnicornが再びのリングイン。すっかりお色直しを済ませ、闇色のゴスロリ魔法少女服にマント、頭にはウサミミ、そしてメガネっ娘といういでたちだ。伊達メガネというのが若干のマイナスポイントだが、それはマジカルステッキの仕込み刀でカバーである。
『コードネームはDarkUnicorn‥‥痛ッ』
放送席前まで下りてきたDarkUnicornが、マジカルステッキでサトルを小突く。本当に痛い思いをずっとしているのはパイロだが、そんな人間イスは視聴者も忘れていたことなのでスルーである。
『えー、ヒーローに謎はつきもの‥‥ヒメ・ヒノト選手、本名での登場です!』
普通は本名の方を隠す気がするのだが、そこはDarkUnicorn改めヒメが打たれすぎ芸人の仲間入り間近ということでご容赦願いたい。
「ムム‥‥これは欠陥遊具じゃな!」
気づけば、ジャングルジムに上っていたはずのヒメが、頭からマットに突き刺さっていた。慌てて、立ち入り禁止のテープを張って回る伊集院。
「これは‥‥PTAの物議を醸し、各地の正常な遊具まで使用禁止にさせて遊び場を減らし、その隙に子どもたちの目をプロレスごっこに向けさせるという、悪の目論みじゃな!」
勝手なことを言い出すヒメだったが、なおも言葉は止まらない。
「プロレスごっこめ! 春のスペシャルがあったのに、夏休みスペシャルがないのはオカシイと思ったのじゃ! このような姑息な方法を考えておったとは、許せんのじゃ!」
「I’m えらい人ーッ!」
なおも力説するヒメの前に、ポイント発表でもないのに突然えらい人が現れてしまう。
「そう言われては引き下がれない。というわけで、8月28日から夏休みスペシャルをやってやる! 以上だ‥‥」
現れたとき同様、突然消え去ろうとするえらい人だったが、そこでピタと立ち止まる。
「あーっと、どうせだから‥‥今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングがつくゼ!」
1位 DarkUnicorn 12
2位 Zebra 8
3位 ブルース・ガロン 4
「目指せ、プロレスごっこ王! 今度こそ以上だ‥‥」
「わーっ、ちょっと待ちーや!」
未だ戦ってもいない三条院棟篤(fa2333)が慌てて飛び出してくるが、えらい人はすでに去った後だった。
「おっと!」
そんな中でも、カメラに映ってることに気づき、慌てて食欲覆面Xのマスクをかぶる三条院。律儀である。
『期せずしてエキシビジョンマッチとなってしまいましたが‥‥それでも凶器使用のカウントをとる伊集院レフェリー、見事なレフェリング‥‥というか、単に相方に対する嫌がらせ?』
三条院の対戦相手は焼肉だったのだが、フォーク、ナイフ、箸をするどく凶器認定する伊集院。三条院以上に律儀である。
『こうなっては、あとは凶器使用の5秒以内にどれだけ肉に肉薄できるかが見物です!』
そこへ、牛、豚、鶏、羊等々、様々な肉が運び込まれてくる。
「たれも醤油だれ、塩だれ、味噌だれ、梅肉、ポン酢、おろしだれ、粒マスタードなど多種多様なのに‥‥なんで涙の味しかせーへんねん!?」
『おっと、ここで謎の電報が! Zebra選手からです。なになに‥‥『夏が終わる‥‥ばんざーい! ばんざーい! クラゲに負けずに海に行こうと思う』という謎の発言です。さあ、今朝もあなたが歴史の承認だ!』
吊るされたままのZebraがいつ電報を打ったのかこそ謎であるが、涙ぐみながら食べつづける三条院をよそに、サトルのよく分からないシメで番組は終了するのであった。