第18回プロレスごっこ王アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 09/21〜09/23

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居あり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。その前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「えー、倍率ドン! とか今までやってきたわけだが、ヤメることにした」
「えっ!? 散々引っ張っておいて、今さらランキング戦なしですかっ!?」
 思わず驚いてしまったスタッフの一人が、さっそくえらい人の鉄パイプの餌食になる。
「バカヤロウ! 話は最後まで聞け! そこまでヤメちまうとは言ってねーじゃねーか! この前、俺が『テレビに携わる人間が、細かい計算なんかするんじゃねぇ!』って言ったわけじゃねーか。だから、自分で言ったからには、それにのっとった行動をすることにした!」
「えっ!? じゃあ、ポイントは全部チャラですか!?」
 懲りずに驚きの声を上げてしまったスタッフの一人が、やはり鉄パイプを食らうハメになる。
「バカヤロウ! それじゃ、大雑把すぎもはなはだしいわ! 今回のポイントを1兆、1億、1万とするんだ。で、次回は1京、1兆、1億。その次は1垓、1京、1兆っつー具合に、毎回単位を一つずつ上げていくんだ!」
「それでも、不可思議までは結構かかりますね‥‥」
「だから、なんで不可思議までなんだ?」
「だって、えらい人は不可思議な存在だから‥‥ぐぼはっ!」
 相変わらず余計なコトを言ったスタッフの一人が、鉄パイプ制裁を受ける。
 こうして1位ポイントが1,152から1兆に無事跳ね上がったところで、通算37回目のプロレスごっこ王選手権がスタートするのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによるプロレスごっこ王は、ポイントで不可思議(10の64乗)を超える人が現れたくらいで決定の予定です。
・毎回上位総入れ替えのインフレですが、そういうバラエティのノリに怒らない人募集。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。

ランキング(上位5名、第16回プロレスごっこ王分まで)
 1位 竜華(fa1294) 288pt
 2位 ブルース・ガロン(fa2123) 148pt
 3位 アルディーヌ・ダグラス(fa4382) 128pt
 4位 Tyrantess(fa3596) 64pt
 5位 月見里神楽(fa2122) 33pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・夏休03 8月31日 07:00〜
・夏休04 9月02日 07:00〜
・夏休05 9月04日 07:00〜
・第16回 9月07日 07:00〜
・第17回 9月12日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2196 リーゼロッテ・ルーヴェ(16歳・♀・猫)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2599 若宮久屋(35歳・♂・狸)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

 夏休みスペシャルの樹海マッチでの搬入スタッフのがんばりっぷりに感動した月見里神楽(fa2122)が、選手ではなく裏方と参加していた。しかも、ブレーンとして泉彩佳(fa1890)まで呼んでくる気合いの入れよう。
『第18回┐o□レス⊇〃ッ⊇∃Ε』
 しかし、そのせいでこんなギャル文字の、泉言うところの中高生乙女チック路線の垂れ幕がかかっていたりする。しかも、
「身軽なので、高いところの装飾なら大丈夫です!」
 と言っていた月見里だが、そもそも身長があるわけではないので、1枚に時間がかかりすぎてしまい、現在垂れ幕はこの1枚だけである。
 そんな月見里がマイペースに準備を進めている間に、早くも収録の時間がやって来てしまう。
 実況のヨシュア・ルーン(fa3577)の演説からなぜかはじまる、第18回プロレスごっこ王。いや、月見里に従い第18回┐o□レス⊇〃ッ⊇∃Εと言うべきか、読みは同じだからヨシュアがしゃべる分にはまったく違いが分からないが。
『我々を虐げてきた実況のサトル・エンフィールド(fa2824)は選手になった? なぜだ!? 打たれすぎだからさ‥‥あ! 読みすぎちゃった‥‥』
 えらい人にでも『打たれすぎだからさ』と呟いてもらおうと思っていたところまで、読み進めてしまうヨシュア。やはり、常日頃から思っているけど言えない言葉が原稿に書いてあると、ついつい読んでしまうもののようだ。
『選手に比べ参加人数の少ない我ら、裏方が正義だからである。正義なくして、真のプロレスごっこはなしえない! そうですよね、解説のリーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)さん?』
「わしがプロレスごっこ解説、リーゼロッテ・ルーヴェである!!」
 なぜかスキンヘッドになって額に大往生と書いたリーゼロッテが、ヨシュアに答えるわけではなく自己紹介だけを吼える。
 さらには足下に実在してそうにもない古めかしい書物が積んでいたが、王様の耳はロバの耳状態でスルーしてあげるのが礼儀というものである。
『お、早速サトル選手が入ってきましたよ‥‥何やら手にしているようですが?』
 ヨシュアの実況どおり、指定席の放送席ではなく一選手として入場してくるサトル。バックに流れるは、月見里セレクトのロッキーのテーマ。泉と相談し合ったからかどうかは分からないが、無難な線に落ち着いてしまっている。
 だが、サトルはそんなコトは気にせずにリングインし、例によってホワイトタイガーマスクのスイッチの入ってしまったレフェリーの夏姫・シュトラウス(fa0761)にひるむこともなく、すぐさま手にしていたノートパソコンを開く。
『‥‥イヤな予感しかしないんですが、あのパソコンどこかで見たことがある気が‥‥』
「むぅ‥‥まさかアレは!? ふっ、生きているうちにこの目で見ることができようとはッ!」
 驚愕の声を上げるリーゼロッテ。それに反応したヨシュアがリーゼロッテの身体を揺すって答えを促すが、リーゼロッテはもったいぶってすぐに答えようとはしない。
 そんな間にもサトルはハードディスクの初期化を済ませ、OSのインストールにかかろうとしている。
「ふっ、あれこそ伝説のWindows97よッ! 一子相伝と聞いていたが、まさかサトルが体得していたとはな‥‥」
「Win97!?」
 97──95ときたら次は98なわけだが、95のOSRというわけでもなく、無論98SEでもなく、海賊版なのかすらも分からないキケンな香りしかしないナゾのOSなのである。一子相伝ゆえ、もちろんMSとは一切無関係である。
 ブルースクリーンさえ出ずに、なぜかEMERGENCYの文字がバババっと滝のように流れいていく。そして、けたたましいエマージェンシーコールが会場中に鳴り響く。
「どうした、小僧?」
 夏姫が液晶画面をのぞき込んでくる。
「何者かがこのパソコンに侵入した模様。防壁展開‥‥突破されました! もうダメです。このままでは‥‥」
 急にオペレーターの体になったサトルが、悲痛な声を上げる。無論、このパソコンは物理的にも一切外部には接続されていないが、そこはスーパーハッカーの神秘というヤツである。
 スーパーハッカー? どこかで聞いた気が。確か、以前空調をありえない設定にいじっていたような‥‥?
「こうなったラ、物理的に破壊するしかないンじゃネ‥‥?」
 いつの間にかひょっこりリング上に現れたマリアーノ・ファリアス(fa2539)が、うっかりそんな進言をしてしまう。うっかりもなにも、今回のマリアーノはイタズラっ子キャラ押しなので、余計なコトしか口にしないが。
「それだ!」
 そして、生粋のイタズラっ子であるサトルがそれに乗らないワケがない。
「よし。どけ、小僧ども! チェストーッ!」
 頼まれてもいないのに、瓦割りの要領で正拳を打ち下ろす夏姫。たった一撃で、ノートパソコンを木っ端微塵にしてしまう。
「‥‥ン?」
 粉々になったノートパソコンだったものの中から、シールが貼ってあった底面部を拾い上げるマリアーノ。
「えーっト‥‥ヨシュア・ルーンって書いてあるケド、名札?」
『えぇーっ!?』
「ふっ、解説役の隣に座るといえば実況役ではない。驚き役よ‥‥」
 マリアーノが読み上げると、ヨシュアが思わず立ち上がって驚きの声を上げる。その横ではリーゼロッテが勝手なコトを言っていたが、そんなコトはもうヨシュアの耳には入らない。
 慌ててヨシュアがリングに上がってくるが、とっくに手遅れである。そう、サトルが散々いじくっていたのは、ヨシュアの私物のパソコンだったのである。その残骸を手に、崩れ落ちるヨシュア。
「小僧、形あるものはいつか壊れるのだよ!」
 直接手を下した夏姫が、まったく悪びれることなく言ってのける。むしろ、もっと人生の授業料を納付した方がいいくらいの勢いである。
「やれやれだゼ‥‥」
 サトルとマリアーノが、二人して肩をすくめてみせる。無論、ヨシュアはサトルに食ってかかるしかない。
「ど、ど‥‥どーすんだよ、僕のパソコン!?」
「これでも食らえッ!」
 そのヨシュアの顔面に、何やら紙切れを叩きつけるサトル。見れば、現金でも手形でも小切手でもなく、なんの領収も済ませていないのに領収書であった。
「‥‥ぐはっ!」
 なぜか血ヘドを吐いて倒れるヨシュア。逆に、意気揚々とサトルは引き上げていく。
 そこへ、またもロッキーのテーマが流れる。卒倒してしまったヨシュアは無視して、次の試合の阿野次のもじ(fa3092)の入場である。月見里が今回のテーマ曲としてはロッキーのテーマを選んだので、もう全員がこの曲で固定のようだ。
「バカヤロウ! 解説なら私がマッスル×2してたら、OH! 言葉の意味は良く分からんがVeryGOODな自信だーぐらいの合いの手をいれるの!」
 リングインするや、意味不明の言葉を発してヨシュアをリングサイドに蹴り落とす阿野次。今日も絶好調‥‥と思いきや、急に素の顔に戻る。
「この曲はちょっと‥‥」
 一応曲にノッかってシャドウボクシングをしながら走り込んできた阿野次だが、ヨシュアを蹴り落としてからクレームをつける。
「そう言ってくれると思ってたよ〜!」
 そこへ颯爽と月見里が現れると、一瞬で阿野次を早着替えさせてしまう。
「さっ! ってことで、2秒で着替えもすんだところで!」
「えっ!? ちょ、なにその疾風の如き早着替え」
「では、歌っていただきましょう! それでは曲スタート!!」
 月見里が合図すると、阿野次が勝った後に流れるハズの曲が流れてしまう。とはいえ、ヨシュアを蹴散らしてしまったわけだし、阿野次もノッかって歌うのが礼儀というものである。
 しかし、実際に阿野次は歌いはじめたが、音声は一切聞こえてこない。すると画面には、
『 ─────♪
  リングに 稲妻が走ったり走らなかったり──
  炎のファイターが 照らされたり照らされなかったり──
  根回しジームが 飛び散るとか散らないとか──
  輸入解禁に向かっているともっぱらの噂で── 』
 阿野次の歌う姿をバックに、『※歌詞は使えないので、脳内であの歌を流してください☆』の文字と共に、ダイジェスト風味にそんな文字が表示されたりされなかったり。
 そこでようやく使える部分になったのか、阿野次の歌が聞こえてくる。
『 私は Sで 強くて 美しい 女王様とおよび
  語る 滑る 見事に 落ちナシ
  嗚呼 視聴率40%とれなきゃ
  SF級チャンピオンじゃないのさ 』
 だが、すぐに音声は消され、また画面にはダイジェスト風味の文字が現れる。
『 何はともあれ──
  やっぱプロレスごっこで──
  戦ったりするんじゃないかなぁ? 』
 そして、リングは観客もいないのに大歓声に包まれ、紙吹雪まで舞ったりしていた。すべて月見里と泉が仕込んでおいた特効である。会場の装飾は間に合わなくとも、こちらの方はしっかり間に合わせていたのだ。
 まあ、紙吹雪の発射口をいじくっていたマリアーノが、紙吹雪と一緒に打ち上げられて舞っていたりもしたが、それはご愛嬌というものである。
「さすがのもじ。空気の読める女だ」
「いきなり曲が流れても、さらりと熱唱できるとは。さすがいっちゃん、かっこいー!」
 そして、夏姫と月見里が口々に勝手なことを言いながら、阿野次に寄ってくる。月見里にいたっては、ありえない程反り返りつつ、膝の関節もありえない逆方向に曲げたポーズを作りながら、阿野次を指差している。
 本来の対戦相手であったハズのチューブラベルを叩く小槌を振り回しながら、阿野次暴れ出す。
「ふっ、見事な戦いであった。敵ながらあっぱれじゃ!」
 敵も味方もないが、そう言って号泣するリーゼロッテがゴングを激しく打ち鳴らす。
 いわゆる乱闘時にかき鳴らすゴングなのだが、チューブラベルが鳴って合格だと勘違いしてしまった阿野次はそれで満足し、意気揚々と引き上げていってしまう。
「わしがプロレスごっこ実況代理、リーゼロッテ・ルーヴェである!!」
 未だ倒れたまま失意のどん底のヨシュアを放置して、放送席を仕切りはじめるリーゼロッテ。すると例によってロッキーのテーマが流れはじめ、若宮久屋(fa2599)が入ってくる。
 リングの上に食堂風味のテーブルとイスが運び込まれ、そこに着席する若宮。と、マリアーノがお盆にラーメンを載せて入ってくる。
「えーっと、マズは醤油ベースの釧路ラーメンからダネ!」
「はぁ? 名古屋を中心にチェーン展開する、白いスープなのにとんこつじゃない和風ダシのラーメンって言ったよね?」
 若宮といえば、名古屋名物と戦いつづけ、そして負けつづけた男である。そんな彼が、名古屋名物以外と戦うハズもなかったのだが、そんなコトは一切無視するマリアーノ。
「え? 北から順番に日本縦断制覇じゃないノ?」
「ご当地ラーメン、いくつあると思っているんだーッ!?」
 まあ、今日のマリアーノはイタズラっ子モードなので、悪意のないちょっとしたイタズラのつもりでしかない。が、若宮にとってはいきなり対戦相手が連合を組んでしまったようなものなので、笑い事では済まされないのである。
「小僧、男が一度口にしたことを違えるなっ!」
「言ってないんだけど‥‥ぐはっ!」
 問答無用で、アツアツの麺を若宮の口の中に放り込む夏姫。
「はい。つづいて北見ラーメン、旭川ラーメン、札幌ラーメン、函館ラーメンの北海道セット〜」
 悶絶する若宮をよそに、早くも次をまとめてドカっと持ってくるマリアーノ。北海道脱出すら許さない勢いである。
「くっ、負けてたまるか‥‥おら、食ったぞ!」
「はーい、替え玉はいりま〜す」
 しかし、次の北見ラーメンに行くことを許さず、釧路ラーメンの器に替え玉を入れてしまうマリアーノ。
「げっ! く、食えばいいんだろ!」
「むぅ‥‥こ、これが岩手名物わんこそばをも超越した、歴戦の屯田兵を苦しめてきたという、北海道名物わんこラーメンの底力かッ!?」
「ないから、そんなもん!」
 リーゼロッテの実況に律儀にツッコミを入れつつも、きっちり食べつづける本当に律儀な若宮。
「I’m えらい人ーッ!」
 そこへ突然、えらい人が入ってくる。
「ラーメンは視聴率いいって言うから、それをバックに今回も独断と偏見で、ポイントによるランキングを発表だ!」
 1位 サトル・エンフィールド 1兆
 2位 阿野次のもじ 1億
 3位 マリアーノ・ファリアス 1万
「目指せ、プロレスごっこ王! 以上だ‥‥」
 例によって、一瞬で去っていくえらい人。が、えらい人がいなくなろうと、物申さずにはいられないのが若宮である。
「って、ポイント発表されちゃったら、もうムリして食う意味ないじゃん!」
「小僧、男が一度やりはじめたことを、途中でやめることは許されない!」
 だが、夏姫が立ち止まるのを許してはくれない。
「えーっ!」
「はーい、丼チェンジはいりま〜す」
 その隙にも、マリアーノが丼を巨大なものに交換してしまう。おかげで、北海道脱出どころか釧路から微動だにしていない。
 醤油ベースなのになぜか塩味のきいたラーメンを食す若宮の画を、なぜか相変わらずロッキーのテーマをバックに、お別れの時間となるのであった。