ダジャレに命を懸けないアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/30〜10/02

●本文

 TOMITVの会議室。ムダにアツい上司が、部下を呼びつけていた。
「おう、久々じゃねえか。考える時間もたっぷりあったよな? というわけで、なんかダジャレ言ってみろ!」
「イヤです‥‥ぐはっ!」
 ムダにアツい上司なので、反抗的な部下には即座に鉄拳制裁である。
「ケホケホッ‥‥い、言いませんよ! ダジャレに命を懸けない、つまり今回のテーマは安全第一なんです。おとなしくしてるんです‥‥ぐはっ!」
 ムダにアツい上司なので、どんな理由があろうとも鉄拳制裁である。
「バカだなぁ‥‥言わなければ、それだけこうなるの分かってるだろうに。安全第一のつもりで殴られてちゃしょうがないだろ? ま、いい。で、命を懸けないダジャレってのはどういうのだ?」
「たぬきとたぬきうどんを食べる‥‥どうでしょう?」
「‥‥それ、ダジャレになってるか?」
「え? ああ、たぬきうどんっていうのは実は讃岐うどんのことでして、いわゆるたぬきうどんのことじゃなくて‥‥ぐはっ!」
 安全第一と言いつつも、むしろ鉄拳制裁を誘っているようにしか思えない部下。
「ワケ分かんねーよ! まあ間が空いたし、サビつきがヒドくなったってことにしておこう。次までにはサビ落としとけよ!」
「サー、イエッサー!」
 こうして、ダジャレを使ったおもしろVTRを競い合う企画の第7弾がスタートした。

『安全第一、命を懸けずに笑いをとる!』

 ダジャレを実際に収録してきたVTRのおもしろさを競い合います。撮ってこないで、スタジオ収録中にその場でやることも可能です。
 各VTRごとに採点され、優勝者には賞金10万円が授与されます。
 例:『布団が吹っ飛んだ』
 干してある布団が風で吹き飛ばされるだけだと点は低い。寝ているところに爆破で布団ごと吹き飛ばされると、命を懸けているということでもっと低くなる。
 例:『たぬきとたぬきうどんを食べる』
 イラストがその収録例。ムダにアツい上司の部下でなくとも、ボコボコにされること間違いなしです。

その他注意点
・命を懸けないので、死んではいけません。というか、番組がお蔵入りです。
・もちろん、流血等のケガもNG。ガマンはよくないよね!

過去の放送(最近5回分)
・ダジャレに命を懸ける  5月12日 07:00〜
・ダジャレに命を懸ければ 5月29日 07:00〜
・ダジャレに命を懸けそば 6月26日 07:00〜
・ダジャレに命をぶっ懸け 7月17日 08:30〜
・ダジャレに命をふり懸け 8月09日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0427 チェダー千田(37歳・♂・リス)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2670 群青・青磁(40歳・♂・狼)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3578 星辰(11歳・♀・リス)

●リプレイ本文

 ダジャレに命を懸けないことに命を懸けるという、ややこしいこの企画。過剰に安全にこだわった、ある意味リアクション芸人殺しの企画でもある。
 だが、そんな設定も関係ない存在がいきなり現れる。
「マゾ皮博士に造られた、愛と平和とエロスとエロスとエロスを愛するゆかいなロボットさ☆」
 そう、ロボット風全身タイツのチェダー千田(fa0427)だ。その背後には、マゾ皮博士こと佐渡川ススム(fa3134)がいる。しかし、メカチェダー製作に精根尽き果てたのか、ぐったりと座り込んでしまっている。
「ぬるま湯に‥‥浸かりに‥‥来たゼ‥‥」
 いや、日々の激務の影響で打たれすぎになっており、すでに真っ白な灰となっているだけだ。
「え? 命を懸けちゃダメ? いいな〜、俺にも懸けられる命が欲しいぜー」
 佐渡川がそんななのはいつものことと、チェダーがわざとらしいまでに棒読みで進行していく。口の両端から黒の縦線を書いているのが、ロボットじゃなく腹話術の人形っぽさを醸し出していたが、ツッコミを入れるべきはそこではない。
「第一条、ロボットは痛みを快楽と感じなくてはならない。また、その快楽のためなら人間に危害を及ぼしても構わない。第二条、ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令がマゾ皮イズムに反する場合は、この限りでない。第三条、第一条および第二条に反するおそれのない限り、とことん快楽に溺れなければならない‥‥うわっ、何をす‥‥」
 ロボット三原則ならぬメカチェダー三原則を、勝手に抜かしはじめるチェダー。だが、巨大注射器を持った湯ノ花ゆくる(fa0640)に引きずられていってしまう。
「はい‥‥ちゃんと開頭手術で‥‥治療しますからね。コワくないですよ‥‥」
 命を懸けないどころか命を救ってしまおうと、ナース服姿で登場の湯ノ花。しかし、チェダーは湯ノ花の手を振りほどこうと暴れる。
「放せ! ええい、こうなったら目からビール‥‥うぎゃぁ、気持ちイイーッ!」
 目からビームを出すよりは現実的なのかもしれないが、まずは発射するためのビールを目に点す段階で悶絶である。しかし、マゾ皮博士のせいで気持ちよく感じてしまうチェダー。
「な、効かない!? ならばこれで‥‥ロケットパーンツ!」
 手が切り離されて飛んでいくことはないので、パンチではなくパンツである。つまり、メカであることを否定するかのように、ロボット風全身タイツを脱ぎ捨ててパンツ一丁になってしまうチェダー。
「え? 股がかゆい? またですか‥‥」
 しかし、ロケットと言うのもおこがましいテントなので、湯ノ花はまったく動じることはない。むしろ、かわいそうな子を見るかのようにノッかってあげるのみである。
「うん、掻いて欲しい。いや、その注射器で刺して欲しい。いや、巨大注射器よりも浣腸の方が‥‥」
「はい‥‥ちゃんと‥‥開頭手術しましょうね。コワくないですよ‥‥」
 思わず調子に乗るチェダーだったが、湯ノ花がノッてくれたのもここまで。結局、チェダーは湯ノ花に引きずられて退場である。
 こうして、打たれすぎ芸人の双璧が身を削ったのはいいとしても、湯ノ花までも微妙にヨゴレるという誰も得をしないショートコントでスタジオも暖まったところで、いよいよ本編スタートである。
 早速、映像がロケ先の砂浜へと切り替わる。そこには、スクール水着を着て、小さな熊手とバケツを持っている、これから何をするか一目瞭然な星辰(fa3578)が待っていた。
 横には焚き火があり、その上には網が載せてある。砂など気にせず獲れたての貝を食べるのかと思いきや、そうではない。
「潮干狩りで塩火ガリを食う‥‥読んで字の如しアルね!」
 そう言ってガリを取り出すと、海水にじっくり浸して網焼きにしてしまう。その上から、さらに塩を大量にどっさりかけることも忘れない。
「今は去りし夏の日を惜しんで、夏の直射日光の下で食べた、あの塩をたっぷりまぶして火を良く通したガリを囓る‥‥夏の日の慣例行事アルよ!」
 どこの慣例行事だと言いたくなるが、星辰にかかればすべて中国4千年の神秘なのだからしょうがない。
 とそこへ、狼の覆面をかぶり、狼の着ぐるみという名の獣化をした怪しい男が近寄ってくる。とはいえ、彼もまた出演者の群青青磁(fa2670)である。
「そこの坊や、遊ぼうや」
「お譲ちゃんアル! スク水を着た坊やなんて、そうそういないアルよ!」
「ちっ、女の子かよ‥‥」
 舌打ちして去ろうとする群青。違った意味でキケンな狼である。
 だが、そこへ見事なまでに都合よく、スク水を着た男の子が通りがかる。女装が似合うならスク水も似合うハズだと、勝手に衣装をスク水にさせられたパイロ・シルヴァン(fa1772)であった。
「‥‥えっ!? うわっ、熱っ!」
「坊ちゃんを熱湯風呂に投げたら、ぼっちゃんといった!」
 鋭くパイロに襲いかかった群青が、熱湯風呂の浴槽にパイロを放り投げていた。
「なーに、心配無用。この番組に出る子どもなら、これくらいで命を落したりはしねぇ!」
 のた打ち回るパイロをバックに、平然と言ってのける群青。しかし、多少なりとも人の心が残っていたのか、急に祈りを捧げはじめる。
「オオ、神よ! あの者を救いたまえ」
 そう祈る、狼男こと群青。そして、もはやパイロのことは気にせず、やり残したことはないとばかりに意気揚々と去っていく。
「‥‥コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・モ・ノ・カ!」
 パイロが鬼の形相をしていたが、群青はもういない。ならばどうやって晴らすのか? そこで画面が切り替わり、薄暗い倉庫内の映像となる。
「起きたかね?」
 その声にマリアーノ・ファリアス(fa2539)が目を開けると、なぜか全身縛られた上に猿ぐつわを噛まされ、ドラム缶の中に閉じ込められた。
「ンー! ンー!」
 見れば、パイロが覗き込んでいた。さらに、ミキサー車がバックで入ってくるのが見える。
 そして、期待に違わず生コンがドラム缶へと流し込まれる。
「よし、じゃあちゃんと缶閉じなさい。これはちゃんと(chanto)と缶閉(can to)をかけているんだね。え、ダジャレとして苦しい? んー、何を言っているのかなー?」
 苦しい以前に命懸けというか殺しなんじゃ? という話だが、自分さえ命を懸けなければ他の誰の命を懸けてもいいと勘違いしているので、もはやパイロは止まらない。
「‥‥マリアーノくん。以前、ガチで戦って負けた恨みなんかこれっぽっちもないよ。それを逆恨みに利用したりなんかもしないよ。だって、僕たち親友じゃないか? おお、我が心の友よ‥‥」
 最後の方は詠唱(chant)するかのようなパイロの独白をバックに、東京湾に沈められていくコンクリ詰めのドラム缶。道頓堀なら簀巻で済んだのかもしれないが、残念ながらここは東京湾である。
 そんなところで、映像は元の砂浜に切り替わってしまう。群青もパイロも去り、星辰が一人で塩火ガリを見つめていた。こんな塩分過多のものを食べたら、命を懸けてしまうだけに。
「んー、潮干狩りに来て何も食べられないなんて、納得いかないアルよ‥‥」
 熊手を銛に持ち替え、海に入っていく星辰。当然無許可なので、密漁ということになるが、
「命は懸けてないアルよ! 芸能生命を懸けているだけアルよ!」
 番組ルールさえ守っていればいいと信じ込んでしまっている。
 そのため、魚を獲ってしまう前に映像がスタジオに戻される。
 スタジオでは、燃え尽きて真っ白な灰となったままの佐渡川は相変わらずだったが、燃え尽きようとしているかのような小野田有馬(fa1242)の姿もあった。
「‥‥え? 私が‥‥なぜ‥‥zzz‥‥あぶない! えっと、こうしているかですって? そんなの、これを見れば簡単に分かっちゃうわ!」
 なぜか布団の上で妙に眠たそうな小野田のフリで、再びVへと切り替わる。
 そこには、『社長のひとり不眠耐久レース!』という小野田が72時間一睡もせずに過ごす様子が映されていた。
 美味しい食事で満腹になってから温泉に入れられ、絶妙なマッサージ師に揉みしだかれ、安眠作用のある香を炊かれ、砂糖たっぷりのココアを飲まされ、子守唄の生演奏を聞かされ、海をモチーフにした環境映画を見せられ、難しい物理の授業を受けさせられ、爆睡している猫を撫でさせられ、心地良い声で童話を朗読され、羊を数えられるという、定番のフルコースがダイジェストで流される。
 しかし、その間ダジャレは一切出てこない。これは、あくまでも前フリに過ぎないということか?
 Vの最後に『達成まで残り1時間! スタジオにつづく!』と表示され、再びスタジオの小野田のアップに戻された。正視に耐えない顔なのは、そういう理由からである。
 しかし、寝ないのは身体に悪い、つまりは命を懸けているのではないか? となりそうなところだが、寝てはいけないということは永眠してもいけないということなので、つまりは命を懸けないということである。
「なんか知らないケド、江戸前が大漁でサァ‥‥」
 とそこへ、何食わぬ顔のマリアーノが大量の魚を持って入ってくる。ドラム缶はどうなったか等の説明は一切なく、キッチンセットが運び込まれてくる。
「まずはサバをさばく、だネ!」
 マリアーノは本を見ながらも、どうにかサバを二枚におろす。
「やっぱり酒は避ける、ト。マリスはまだ子どもだしネ〜」
「砂糖と味噌を、さっと入れてミソ!」
「ショウガがないと、ダメでショウガ!」
 そのままダジャレを交えつつ、順調にサバの味噌煮を作っていくマリアーノ。
 が、突然スリッパを持つと、突然小野田に飛びかかって頭をスコーンとはたく。
「煮込みを襲うなんて、卑怯だヨ!」
 寝込みを襲っているのは確実にマリアーノの方だったが、小野田は正常な判断力が失われているので、メカチェダーのようにど突かれて笑っている。
 メカチェダー? そういえば、湯ノ花に連れて行かれたチェダーはどうなったんだろう? というところで、画面が病室に切り替わる。
「ナースのなすがまま‥‥です」
 チェダーは、湯ノ花によってベッドにくくりつけられていた。
「次男は痔なんです」
「胃炎とは言えんです」
「血管に欠陥ありです」
「盲腸で、もう調子が悪いです」
「コンドルがお尻にめりこんどるです」
 ナースのなすがままだけあって、湯ノ花が勝手な診察結果を言っていく。診察といっても、単にメロンパンを聴診器のように当てていくだけである。しかも、聴診器のように耳につながっているわけでもない。
「ベッドがべっとべと‥‥です」
 そしてその結果、メロンパンでベッドがベトベトになるのは当然だった。しかし、ベッドがべっとべとで違う想像をしてしまったチェダーが、急に元気になり出す。
「内科は、ここにはないかと思われます‥‥」
 そう言って、責任放棄で逃げ出してしまう湯ノ花。再起動したメカチェダーは、再びスタジオに向かう。
「サバだけど、おアジはイカが?」
 一方、スタジオでは眠い小野田を満腹でさらに眠くしようというのか、マリアーノがサバの味噌煮をしきりに勧めていた。
 とそこへ、なんの関係もなく群青が現れる。
「台湾に行きたいワン!」
 たったその一言で、台湾ツアーへ出発の群青。『タイランドへ行きたいランド』だったらタイでムエタイ戦士に蹴られまくれ、『太平洋に行きたい平よう』だったら太平洋で漂流できるという、『行きたい』は旅行のお供の便利ワードなのである。
「鯛を食べたい‥‥ので、鯛を炊いた‥‥焼肉は焼きにくいな‥‥馬はウマーい‥‥このトロ、トロっととろけるぜ!」
 群青が台湾でグルメツアーを堪能するVに切り替わる。台湾まで来て台湾料理を食べないのが、無意味に贅沢である。
「おっと、食べたらトイレに行きたくなってきたな‥‥オオ、紙がない!」
 依然として狼のマスクをつけたままだった群青。ずっとマスクをしたままだったので、入国審査に手間取ったという。
 そして、再びスタジオ。マリアーノのサバの味噌煮を完食した小野田が、ついに眠りにつこうとしていた。
「睡魔に負けて‥‥すいません‥‥」
 ここに来て、渾身の一撃を放つ小野田。これで心置きなく眠れる‥‥とはいかなかった。
「ったく、てめーらヌルいダジャレばっか言いやがって!」
 突如興奮状態に陥った佐渡川が、激情のあまり布団をぶちまける。
「もっとホットなダジャレはないのかっ? マイク貸せっ! 俺が手本を見せてやる!!」
 一身に注目を集める佐渡川が、ついに口を開く。
「下手なダジャレを言うのは‥‥やめなシャレ!」
 スタジオの空気が一気に絶対零度まで落ち込むが、そこへメカチェダー再臨でなんとか救われる。
「博士〜、メロンパンで身体が錆びちゃいました。錆にワサビを塗って修理を!」
 よっしゃとばかりに、チェダーの顔にわさびを塗りたくる佐渡川。
「そうそう、ワサビで錆が取れて‥‥ぎょえー、気持ちイイーッ!」
 転げ回って悦びを表現するチェダー。その様子に、佐渡川が何かに気づく。
「それだ! やっぱりそうじゃねーと、『来ねぇ』んだよ!」
 ハァハァと荒い息で、わさびをチェダーに手渡す佐渡川。
「そうだ。俺にも塗ってくれないか?」
 メカでもなんでもないのに、打たれ過ぎなので顔中にわさびを塗ってもらい、悶絶して悦ぶ佐渡川。まさに打たれすぎ芸人の双璧、揃い踏みの瞬間であった。
 結局、ダジャレでうまいこと旅行三昧だった群青が、見事に優勝賞金10万円を獲得して、番組は終了していった。