走れ、人間ども8アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/02〜10/04
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の、自称スポーツイベント便乗チームに、一人の男が駆け込んできた。
「AoF、PSFと便乗がつづきましたが、ようやく便乗じゃない走れ! をやるって本当ですか?」
「うむ。もっとも、凱旋門賞には便乗するがな!」
「ああ、やっぱり‥‥でも、放送日は10月2日ですよね。凱旋門賞も日本時間の2日とはいえ、日付の変わった直後。7時放送となれば、思いっ切り走り終わった後の朝ですよね?」
当たり前のことには、さすがに気づく後輩。そして、鋭くツッコミを入れていく。
「そうだな。本来ならば、水ごりでもして必勝祈願するところなのだが‥‥」
「結果が出た後にやるなんて、確実に病んでますよね? じゃなかったら、時間を操れるエスパーですよね?」
ここぞとばかりに畳みかける後輩。先輩も若干イラっとしてくる。
「一々話の腰を折るなぁ‥‥だが競馬が人が走るのならば、ウチは人が走る。だから、必勝祈願で走る、それでいいじゃないか!?」
「‥‥つまり、いつもと変わらないということですね?」
「そういうことだな‥‥」
このように便乗するのは走る距離だけということで、競馬場疾走企画の第8弾がスタートすることとなった。
使用コース
・競馬場の芝2,400mコースを使用。距離ハンデはなく、斤量(重さ、走りにくさ)によるハンデのみ。
・コース形態等は、府中にある某競馬場にすべて準じます。
事前に用意される物
・大抵のものは用意されますが、主動力が自分の力のものに限ります。必勝祈願ですから。
・番組用意のものでなく、持ち込みでももちろん構いません。
・実況は用意されません。(ハンデ代わりに)自分で実況しながら走ることも可能です。走らずに実況・解説だけでの参加も可能です。
ルール
・何を使っても構いませんが、自分の力を主として走らねばなりません。自転車(電動補助含む)や大八車はOK、自動車やバイクはNG。
・獣化は視聴者に気づかれない限りなら、いくらでも使って構いません。但し、その分ハンデが重くなります。
・優勝賞金10万円。敢闘賞5万円。
・露骨な妨害は失格対象となります。
・その他細かいルールは、俺がルールブックだ! とスタッフが申しております。
注意
・今回から、ナンバリングを通算回数に合わせました。
過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・走れ、人間ども2 5月01日 07:00〜
・走れ、マシンたち 5月25日 07:00〜
・走れ、人間ども3 6月11日 07:00〜
・叩かれろ、人間ども 7月02日 07:00〜
・【AoS】泳げ、人間くん 8月01日 07:00〜
・【PSF】走れ、人間ども 9月15日 07:00〜
●リプレイ本文
あの馬が惜敗しても、俺たちは走りつづける。だって俺たちには、競馬場で便乗することくらいしかできないから‥‥というわけで、ここ東京でもロンシャンと同じく8頭ならぬ8人の精鋭が、競馬場を疾走しようと集結していた。
距離もやはり便乗の関係上、クラシックディスタンスである2,400mと決まっているので、ハンデは斤量と時間差スタートによってつけられる。
まずは、信じられるのは己の脚のみ! という、大変男らしい二人からスタートである。二人とも女性だったが、スイッチの入ってしまっている覆面レスラーと頭が悪女の格闘家では致し方ない。
1枠1番は夏姫・シュトラウス(fa0761)、純白のフルプレートアーマーを着込んでの見参である。鎧の中で白いタキシードを着て白い虎の覆面をし、ホワイトタイガーマスクとなっているが、外見からはまったく分からないのは言うまでもない。ついでにいえば、1枠の色も白である。
さらに全身板金鎧となれば、段平に盾はデフォルトであるのは言うまでもない。
そしてもちろん、中で半獣化しているのも言うまでもない。というか、獣化の上金剛力増を使ってでもいなければ、こんな重装備で2.4kmも全力疾走できる人間がいるかボケェ! という話である。
つづく2枠2番は、キューレ・クリーク(fa4729)。スタッフにミットを持たせ、膝蹴りや肘打ちの練習をしている。
「ハラショー、キューレ! ハラショー、ムエタイ!」
確実に走る前のアップではないが、悪女なキューレ、つまりは悪キューレ、その実頭が悪キューレなので、そっとしておいてあげよう。
ちなみにこのアップからではまったく分からないが、キューレはタイヤの上にこのスタッフを乗せ、引っ張って走ろうというものである。
この二人のスタートから2分経過後に、車輪組の一輪の部がスタートとなる。
「見えるのよ‥‥うぷ‥‥深衝がハナ差2着の屈辱に甘んじるのが見える‥‥うぷ‥‥アカシックレコードにアクセスして得た結果なので‥‥うぷ‥‥間違いない!」
3枠3番タケシ本郷(fa1790)が一輪車に乗って予言しながらの登場である。そう、生である限り、収録が放送より前に行われるのは当たり前。だが、現実は予想よりも残酷であり、本郷はキッチリ間違っていた。
そんなことよりも、なにやらうぷうぷ言っているのはなぜか? 単にハンデと称して限界までラーメンを詰め込んだだけである。気にしてはいけない。
そして、4枠4番のZebra(fa3503)が一輪車を押して入ってくる。
「‥‥一輪車って、そっちかよ!」
誰もツッコミを入れないので自分で入れたが、一輪車は一輪車でもネコ車を押しての登場だったのである。が、誰もボケとは思ってくれないのがこの番組である。
しかし、そんな空気を気にすることなく、ネコ車に入れておいた衣装に着替えはじめるZebra。衣装はピエロ、となれば、実際に使う一輪車は高さ2mのサーカス仕様のものしかない。
さらにこの2分後に、今度は車輪組の二輪の部、オンロードのスタートとなる。
5枠5番は金緑石(fa4717)、ソバ屋の配達用自転車である。
「貧乏脱出のため、まったりがんばります」
やる気があるのかないのかよく分からない宣誓だが、そんなことよりもソバ屋の配達用だから、本当にソバを配達しなくてはいけない。しかも、いつの時代のソバ屋だと言いたくなるくらいに、着物に草履というスタイルである。
もちろん、おかもちなどという文明の利器は存在せず、ざるソバを高く積み上げて運ぶクラシカルスタイルであるのは言うまでもない。
打って変わって、6枠6番の月見里神楽(fa2122)はロードレーサー。芝のコースゆえにオフロード仕様の方が向いているものの、そこはオンロード仕様で勝負である。
衣装は競輪用のヘルメットに学校の制服とアンバランス。さらに、ハンデとして下はミニスカートである。特殊な性癖の持ち主だと、ハンデどころかかえって強くなってしまうところだが、幸いにして月見里にそんな性癖はなかった。まあ、15にして露出に目覚めていたら、世も末であるが。
さらにこの1分後に、今度は車輪組の二輪の部、オフロードのスタートとなる。
7枠7番は海堂仁成(fa4617)とマウンテンバイク。こちらは男性であることもあってチラリズムとかは一切なく、正統派スタイルで10kgの重りを載せて挑む。
「‥‥よし、これで十分だな。準備OKだ‥‥って、えっ!」
メンテナンスも抜かりなく、きっちりタイヤに空気を入れたところで、スタッフに空気を抜かれて呆然の海堂。
そう、空気を入れるところからはじめるハンデも追加である。よって、5枠6枠のスタート1分後にすぐにスタートではなく、タイヤの空気入れからはじめなくてはならない。
そしてさらに2分遅れ、車輪組の二輪の部、オフロードとはいえ自転車ではなくオートバイのスタートとなる。というわけで、8枠8番は若宮久屋(fa2599)とオフロードバイク。
若宮は第1回時もバイクで大外一気を決めたが、そのときのハンデは距離だった。今回は時間、それも最初からだと実に7分後のスタート。下手をしたら先頭がゴールした後にスタートということにもなりかねないが、陸上トラックでの3,000mの世界記録が7分20秒67なので、それよりも早いことはいくらなんでもないだろう。
そんなことよりも、ガソリンがオンロード時換算で2.2km分しか入っていない方のハンデがキツかった。燃料切れと同時に重い鉄の塊を背負うことになるので、いかに効率よく走るかが勝負の分かれ目でもあるが、若宮には知らされていない。ある意味、究極のトップハンデであった。
以上出走8名の紹介も終わったところで、早速スタートである。まずは、夏姫とキューレのスタートからだ。
ガシャンガシャンと豪快に音を立てながら、夏姫という名の鉄塊が突き進んでいく。対して、キューレがその外に並走しながら、引きずったタイヤで芝を荒らしながら走っていく。
やがて、そのまま1角に突入する二人。だが、夏姫がうまくコーナリングできずに、キューレが外に弾き飛ばされてしまう。キューレも押し負けないようがんばったものの、仕方なく一旦下げて、インを突く。だが、結果としてその判断は正しかった。
ドンガラガッシャーン! 豪快な音を立てて、激しく転倒する夏姫。それでも鎧は立派なもので、無傷である。しかし、中は一体どんなヒドいコトになっているのか。実は死んで動かないのに、鎧は走っていたとかいうホラーなコトになっていないコトを祈るしかない。
そんな間にも、本郷とZebraがスタートである。意外に器用にロケットスタートを決める本郷。対するZebraは、それ以上のロケットスタートを切っていた。
ドスン! だが、それは高さ2mから一気に前に落ちたにすぎない。あっという間に這いつくばるZebraの横を、本郷が通り過ぎていく。
「いてて‥‥おーい!」
スタッフに声をかけ、はしごを用意してもらって一輪車に上るZebra。そしてまた倒れる。倒れた際の2mだけで距離を稼いでいるようなものである。
先頭は2角を抜けて直線に入ったキューレ。その後方やや離れて夏姫、そしてさらに離されてはいるが確実に距離を縮めていく本郷、スタート地点からほとんど進んでいないZebraという状況の中、4分遅れの金緑石と月見里がスタートする。
「さあ、月見里選手、絶好のスタートを切りました!」
自分で自分を実況しながらも、ミニスカをそれほど気にするでもなく、快調にペダルを漕ぐ月見里。朝っぱらからサービスシーン満載か? と思いきや、きっちりスパッツを履いているので、映っても安心である。
一方の金緑石も、大量に重ねたざるソバを担ぎながらとはいえ、一旦走り出してしまえばまっすぐ進むだけだから、むずかしいことはむずかしいが、できないわけではない。
だが、問題はコーナーである。案の定、転倒こそしなかったものの、ざるソバを盛大にぶちまけてしまう金緑石。
「すみません、すぐに回収しますから‥‥え! 一本残らず回収して走りなおすんスか〜?」
芝の上に散乱したソバを、かき集めはじめる金緑石。この時点で『ざるソバはすべて回収し、おいしくいただきました』とスーパーが入っているあたり、もはや金緑石の末路は見えているような気がしないでもないが、それは放送上での話。レースをやっている当事者には関係ない。
依然先頭は3角目前のキューレ、やや離れて夏姫。本郷は夏姫のすぐ後ろまで迫っている。
「若干車輪が芝に滑り気味ですが、コーナリングも問題なく‥‥」
2角には月見里。1角入り口で金緑石がソバの回収にてこずってピタリと止まり、Zebraは一輪車の牛歩戦術という状況の中、5分遅れで海堂がスタートする。
いや、スタートといっても空気入れがスタートしただけの話であるが。隣では2分後にスタートする若宮がエンジンを暖めているので、その音で余計にあせってしまう。
その若宮はガソリンが少ないことに気づいていない。今日の車体はちょっと軽い気がする程度には思っていたものの、今日の自分は速く走れるからこそ軽く感じられてしまうのだと前向きに考えすぎてしまっていた。
海堂の空気入れもなんとか終わり、ようやく走り出す。早くも10kgの石が余計だった気がしてならなかったが、もはやどうにもならない。
そして、いよいよ最後の若宮がスタートする。あっという間に直線をかっ飛び、コーナーをガリガリと削っていく。Zebraと金緑石は論外として、早くも海堂を追い抜いていった。
「ああ! 風でソバが‥‥」
一方追い越された金緑石は、若宮通過の衝撃でソバが舞い散り、また回収のやり直しである。
だが、先頭は早くも最後の直線の攻防である。先頭は本郷に入れ替わっており、わずかの差でキューレと夏姫が追いすがる展開。
「最後のコーナーを曲がり、長い直線コースへと‥‥」
「ハァハァ‥‥直線はもうすぐだ‥‥くそっ、足が痛み出した‥‥」
さらには月見里が4角から一気に迫ろうかという勢いで、海堂は前との差を大分縮めたとはいえまだ遅れている。というか、感動の演出としての10kgのハンデだったのだが、それも勝ってこその話。今は、10kgの0をとっとけばよかったと己を恨まずにはいられない。
「諸君! いよいよ我が最後の切り札だ!」
突然、先頭の本郷が後ろを振り返る。
「今より15秒後に、このタケシ本郷全体を爆破する。この競馬場もろとも吹き飛ばす! 持ち場を離れ、すみやかに半径1km以上外に出ること。無事を願‥‥うぷっ、れろれろれろ‥‥」
後ろに向けてリバース物体を発射する本郷。競馬場を爆破とはいっても、競馬場の走路にいる本郷の腹に抱えていたラーメン爆弾が炸裂してしまった、というわけだ。
あっという間に画面中がモザイクになり、熾烈なトップ争いなのに何が何だか分からなくなる。
そんなところを映していてもしょうがないので、4角に画面が切り替わると、ついに唸りを上げて若宮が迫ってきていた。その前を行く海堂、さらには月見里を一瞬で抜き去らんばかりの勢いである。
また画面が切り替わり、トップ争いに戻る。身軽になった本郷が依然として先頭。違う意味でのダーティボムを浴びたキューレと夏姫だったが、夏姫は鎧で完全防備なので問題はない。
「格闘家はいつなんどき、いかなる状況でも勝利を目指さないとね」
キューレも頭が悪キューレだからか、むしろ闘争心を燃やしてしまっている。
結局、本郷がそのままトップでゴールし、2位入線が夏姫、3位入線がキューレとなった。
「今、フィニッシュ。そして風になりました!」
月見里が4位入線。ゴールと同時に逆ウイリーで止まると、くるりと一回転して着地してみせた。
そして、海堂が5位入線となるが、こちらは止まらずにそのまま外へと走っていってしまう。
おや、鬼脚を披露しそうだった若宮は? 案の定ガス欠で、大きく遅れてバイクを押しながらのゴール。
だが、若宮はまだいい方だった。金緑石とZebraなど、未だに最初の1、2角を回れてもいない。
そんな間にも、全着順が表示されてしまう。
1着 1 夏姫・シュトラウス
2着 2 キューレ・クリーク
3着 6 月見里神楽
4着 7 海堂仁成
5着 8 若宮久屋
中止 5 金緑石
中止 4 Zebra
失格 3 タケシ本郷(1位入線)
Zebraは高いところから落ちる受け身はすっかり上達してしまったものの、一輪車に乗る能力に急に目覚めるはずもなく、タイムオーバーでゴールにたどり着くことはできなかった。
同じく金緑石も、ぶちまけたざるソバを全部回収できずにタイムオーバーとなっていた。この芝の上でソバの一本一本を余すことなく拾えとは、新手のイジメか? という話であるが、そういう縛りになってしまったものはしょうがない。
そして、本郷はリバースによる進路妨害が悪質というか、放送できるかボケェ! ということで、失格となった。
こうして優勝した夏姫に10万円が贈られることになったが、夏姫の姿がない。夏姫は無意味にバラ園内を通り、大けやきの下へとたどり着いていた。
「今度の眠りは‥‥長くなりそうだ‥‥」
座り込んで、眠りにつく夏姫。
そして、ゴール後にふらふらと外に出て行った海堂だが、自販機でジンジャエールを買って、飲んでいた。
また、便乗ゆえに3着である月見里が敢闘賞となり、賞金5万円が贈られた。