ムチャキング9アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
10/07〜10/09
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●本文
TOMITVのスタッフルーム。その中の自称スポーツイベント便乗チームで、二人の男がボンヤリと会話をしていた。
「前回は飲むムチャを競い合ったわけだが‥‥と来れば、次はなんだか分かるよな?」
「えーと、食べる‥‥ですか?」
「そのとおり! アスリートは身体が命! 食べることによって、身体が作られていくのだからな!」
「前回も言いましたが、一応‥‥食べるていうのは、確実にスポーツじゃないですよね?」
「うむ、フードバトル系はスポーツなのかもしれんが‥‥やるのはそっち系じゃないし」
「じゃあ、何をやるんですか?」
「俺らの番組はムチャキング! ならば、食べることでムチャをしてもらうだけだろうが! と言っても、大食いや早食いではない。剣を飲んだりの大道芸でもないし、ガラスを食べるようなビックリ人間でもない。となれば‥‥分かるな?」
「いえ、さっぱり分かりませんが‥‥」
「たとえば人を食った、たとえば歳を食う、たとえば一杯食わされる。そう、芸能界、食うか食われるかだろうが!?」
「確実に、アスリートは身体が命だから食事が大切というスタート地点から、違う方向行っちゃいましたよね?」
「重々分かっておる」
「分かった上でってコトは、やるってコトですか‥‥?」
「どうなるか分からないけどやる、それがムチャ魂!」
「‥‥そ、そうでした‥‥」
こうして、『食べる』がテーマだけど普通に物を食べてはいけない、そんなムチャキング9がスタートすることとなった。
『無謀王決定! ムチャキング9』
食べっぷりのムチャ度を競い合います。但し、EAT(飲食する)以外の食べるでなくてはいけません。
ムチャキングの選出について
・スタジオで収録します。ロケのVをスタジオで流すことも可。
・優勝者には、職業としてムチャキングを名乗る権利が与えられます。
・ムチャキング選出は、ムチャ度4割、リアクション6割くらいでスタッフが判断します。が、最終的にはスタッフの独断と偏見ともいえます。
・現在のムチャキングは、チェダー千田(fa0427)一名のみです。
・新たにムチャキングが誕生した場合、以前のムチャキングの方が参加していた場合はムチャキングから転落となります(元の職業に戻ります)。
・過去に与えられたことがありますが、今後はムチャキング以外のムチャ○○が与えられることはありません。女性でもキングです。
事前に用意される小道具
・大概のものは用意されます。持ち込みも可です。
注意点
・死んではいけません、殺してもいけません。法は守りましょう。
・それ以外はご自由にどうぞ。でも、スタッフがルールブックです。
過去の放送スケジュール(最近5回分)
・ムチャキング4 5月27日 07:00〜
・ムチャキング5 6月12日 22:00〜
・ムチャキング6 6月18日 22:30〜
・ムチャキング7 7月17日 08:00〜
・ムチャキング8 8月08日 07:00〜
●リプレイ本文
「ぐへへ‥‥他の出演者さんたちを『いただきます』しちゃうぜ〜☆ 今回はおにゃにょこたくさんで、おいちゃんウハウハですよ〜、ぐへへ‥‥」
挑戦者7人の控えるスタジオへ、下卑た笑いで入ってくるチェダー千田(fa0427)。現ムチャキングらしい大変さわやかな入場といえよう。
「はじける笑顔に、健康的なボディ! 太陽のようなアナタを独り占めしたいぃ!」
飛ばし気味のチェダーが、いきなりティタネス(fa3251)にダイブしていく。ティタネスが女性の中で一番的のデカいからか、あるいはタイプだったかどうかは分からない。次の瞬間には、チェダーの顔面にティタネスのパンチが炸裂していたから。
「脳が揺らされるぅ! そう、手痛い反撃食らってナンボ! それが俺のムチャ魂‥‥ガクッ」
というか、湿度が上がるだけで痛む頭が激しい衝撃を求めてしまい、ティタネスがつっかえ棒のように伸ばした拳に勝手に顔面からめり込んでしまった、と言ったほうがいいのかもしれない。
一方、ティタネスは豆鉄砲を食ったような顔をしていた。といっても、チェダーに対してではない。
「大食い大会だって聞いていたのに‥‥うーん、こういうことだったのか。マネージャーに一杯食わされたよ‥‥」
肩すかしを食らい、ガックリと肩を落とすティタネス。だが、すぐに気を取り直す。
「おっと、忘れるところだった。そうそう、これをしとかないと‥‥」
「ぎょへっ!」
倒れているチェダーの腹に、エルボードロップを落としておくチェダー。肘鉄を食らわせたのだ。
だが、その刺激が逆によかったのか、チェダーがゾンビのようにムクっと起き上がる。
「‥‥腹はやめときな。直腸にしな、直腸に!」
「はぁっ!?」
「『直腸刺激による、チェダー中を伝わるしゃっくりの速度について』という研究、知らないのかーい?」
チェダーの意味不明の発言に、今度こそ本当にポカーンと豆鉄砲を食ったような顔をするティタネス。と、そこへ花鳥風月(fa4203)が救いに入ってきてくれた。
「おっ、あんた。今年のイグノーベル賞だね‥‥って、化学賞と医学賞が都合よく混ざっとるわ!」
そう言いざま、すばやく肉体言語の関節技を味わわせる花鳥。
「ああっ! 俺を実験体にめくるめく夜の肉体言語を研究してくれるなんて‥‥おいしすぎるーっ!」
だが、チェダーは悦ぶだけである。ので、チェダーが口から泡を吹いたところで、花鳥はさっさとほどく。
「って、あたしが言いたいのはそうじゃなくて! あんたのその豆鉄砲を食ったような顔、それに物申す!」
「え? あたしに?」
ビシっとティタネスを指差す花鳥。ティタネスはまたまた豆鉄砲を食った顔をするしかない。
「本当のハトが豆鉄砲を食らったような顔というものを、見せてやる!」
そこで画面が切り替わり、ハトのたくさん群がる寺の境内になる。豆を発射できるように改造したエアライフルを手に、花鳥が立っていた。
「豆でッ! ハトの頭をッ! 爆裂するッ!! ハトよッ! このエアライフルの前では、お前の頭は血の詰まったバルーンだッ!」
花鳥がなにやら物騒なコトを叫んでいるが、そんな残虐映像になってしまう前にハトがキケンを察知したのか、一斉にヒッチコックも目じゃないほどの群れになって襲いかかってくる。
「むむ‥‥」
本官さんのようにガガガっと豆を乱射するが、鉄砲が肉体言語じゃないからかどうかは分からないが、まったく当たらない。かすりもしない。
そんな間にも花鳥の姿はハトで完全に見えなくなり、声も聞こえなくなっていく中、そのまま画面もフェードアウトしていく。
「都会のは脂がノリすぎているのが難点だけど‥‥おいしいよ☆」
スタジオに映像が戻ると、なぜか焼き鳥を焼いている花鳥。ハトの肉は特に中華では高級食材ではあるが、どう見てもニワトリの肉である。
「うん、確かにおいしい。やっぱ、ガスより炭火というのが‥‥ん?」
「ねえ、ベクちゃん。この番組の食べるって、そういうコトじゃないんじゃ‥‥」
促されるままに焼き鳥をパクつくベクサー・マカンダル(fa0824)の袖を、おずおずと海風礼二郎(fa2396)が引っ張っていた。
「だからさぁ‥‥モグモグ‥‥ジャパニーズは他の国の文化や技術をパクって独自に発展させるのが得意だから‥‥モシャモシャ‥‥私もパクってるんじゃないの‥‥ゴックン‥‥」
「ベクちゃん、食べながらしゃべるのはお行儀がよくないよ。それに、何もパクってないじゃないか!」
「は? ティタネスさんの大食い能力をパクってるじゃん」
海風がティタネスの方を見れば、焼き鳥では串がジャマだとばかりにチキンの丸焼きを食しているところだった。
「分かった? 分かったなら、あんたはチェダーさんの芸風でもパクってなさい!」
「そそそ、そんなムチャだよー。それこそムチャキングだよ〜」
ベクサーの指示に、涙目になる海風。だが、どうしようとか考える間もなく、当のチェダーが現れてしまう。
「ん? 呼んだ? って、気弱で色白! つるぺただって気にするな! カムォン!」
カモンと言いつつ、来る前に自分から行ってしまうチェダー。
「‥‥はっ!?」
散々股間をまさぐってから、チェダーはあることに気づく。すなわち、海風が男の子であるという当たり前のことに。
だが、王者は立ち止まれない。さらなる高み、ムチャジョーカーへの果てしなき戦いが待っているのだ。孤高すぎて誰もついてこない以前に、そんなものは存在しない。だが、それでもチェダーは戦いつづける。打たれすぎで、何を目指しているか分からないゆえに。
「いや、大丈夫。男の道はとうに踏み外してしまっているこの俺だ! さあ、めくるめくワールドへ!」
「ベ、ベクちゃん、助けてよ〜」
海風がなんとかベクサーに手を伸ばすが、ベクサーの手は焼き鳥で埋まってしまっている。ただ、養豚場の豚を見るかのような目で冷ややかにいるだけだ。
「おお! クールな眼差しに、俺のハートは鷲づかみだゼ‥‥ああ、吸い込まれていくようだ‥‥」
だが、それに反応してしまうチェダー。海風を解放し、本当にふらふらとベクサーに吸い寄せられていく。
「‥‥えい!」
無言でチェダーのメガネをさっと取ると、鋭くサミングを放つベクサー。
「ああん、眼球に新感覚の痛みがーッ! でも、どうせなら焼き鳥の串を使って欲しかったーッ!」
快感と痛みの入り混じった感覚に、悶絶しながら昇天するチェダー。なんとか立ち上がった海風が、それを指差してベクサーに言った。
「ベ、ベクちゃん、本当にこれをパクらせる気だったの!?」
「しっ、見ちゃいけません!」
海風をピシャリとしかりつけるベクサー。前言は思いっきりなかったことになっている。
そんな中、Zebra(fa3503)だけが花鳥の焼き鳥に手をつけていなかった。
「俺はまだ、おまんまを食っていいだけの仕事をしてないからな‥‥」
奇術師はマジックをしてはじめて食事にありつける。そんなストイックなZebraに、あの男が惚れないハズがなかった。
「第一印象から決めてましたっ! お願いしますっ!」
チェダーが復活するとZebraの前で頭を下げ、バラの花束を差し出す。ベクサーにやられた血の涙で白バラが紅バラになっていたが、気にするのはそこではない。気にすべきは、いつの間にかZebraが枕が二つの布団を用意していたことである。
「灯かりは‥‥消・し・て☆」
チェダーがシェイクされた脳で必死に考えたネタだったのだが、あっさり受け入れられては困惑するしかない。
チェダーがどうしたものかと躊躇している間に、Zebraが鬼の形相へと変わる。
「ここまでさせておいて、女に恥をかかせる気!?」
「え? いや、男でしょ‥‥うわっ!」
口答えするチェダーを問答無用で摘み上げると、ギロチン台へとセットしてしまうZebra。
「大丈夫。首じゃなくて腰を2人分差し込めるようにしてある素敵ギロチンだから、俺と一緒に重なって入ろう♪ ギロチンだけに斬ろチン‥‥スマン、なんでもない」
下ネタに照れるZebraだったが、チェダーはそれどころではない。
「タネも仕かけもあるんだよね? ね?」
「心配するな。俺はこれで食ってきてるんじゃぁー!」
「いや、ガマン芸じゃないよね? ね?」
下半身を司る第二の脳までピンチとあっては、第一の本物の脳が壊れかけているチェダーとしては気が気でない。
「ギャー! 刃が、刃が!」
「二人一緒だから、ネ♪」
「ネ♪ じゃないッ!」
そんなことをやっているうちに、ギロチンの刃が落ちてくる。
ドーン! 刃が腰のところまで差しかかったところで、仕かけてあった火薬が大爆発。
「ふー、仕事の後の一杯はたまらんね!」
やり遂げた男の顔で、花鳥の焼き鳥で一杯といくZebra。一方、チェダーは失神KOである。
そこへ、昔懐かしい虎縞ビキニ姿の立花奈保子(fa4466)が、こちらは白いビキニ姿の三島麗華(fa4463)を伴って出てくる。
以上8名、これで今回の出場者は全員である。いや、本当はもう一人いた。如鳳(fa2722)が冒頭からずっと密かにいなかったのだが、誰も気づいていなかった。
ということで、画面が駅前の映像に切り替わる。そこに、如鳳はいたのだ。
「むぅ、かれこれ2日も待っておるのじゃが‥‥スタッフは来ないのう‥‥」
そう言って、手にしたハンディをのぞ覗き込む如鳳。ようやく彼は、待ちぼうけを食らっていることに気づいたのだった。
「‥‥ふむ、こうなれば終わりなき待ちぼうけ生活をえんじょいするぞい!」
番組支給のハンディを手に、如鳳はそのまま質屋に入っていく。
「盗品は扱えないんですよねぇ‥‥」
「は? 何を言ってるんじゃ。盗品なんかじゃ‥‥」
「でも、あの人、叫びながら追ってきてますけど‥‥」
如鳳が見れば、スタッフが鬼の形相で迫っていた。
「む、いかんのう‥‥では、さらばじゃ!」
慌てて飛び出し、憧れの逃亡生活に突入しようとする如鳳。すでにかくれんぼの様相を呈しているが、それだと食べると関係なくなるので気にしてはいけない。
だが、後ろから迫るスタッフとは別に、急に横から強烈なタックルをくらい、ひっくり返されてしまう如鳳。
「亀は、こうなると弱いんじゃよ‥‥」
「シブくて気さくなオジ様‥‥素敵っ☆ ルーちゃんって呼んでも、いい‥‥?」
タックルをしたのはスタッフではなく、神出鬼没のチェダーだった。如鳳は無言で膝蹴りを食らわせ、チェダーを振りほどいて逃亡生活に戻る。
「ああん、お待ちになって、オジ様〜」
「亀は寝たりせず、延々と走りつづけるのみじゃ!」
逃げる如鳳に追うチェダーと画的に美しくないので、美しいスタジオの映像に切り替わる。そこでは、立花が三島の全身に蜂蜜を塗り、マッサージをしていた。
「酒がすすみますなぁ」
それをつまみに、平然とスタジオに戻っていた如鳳がZebraと一杯やっていた。
だが、それをブチ壊すがごとく、チェダー登場である。しかも、三島の全身蜂蜜まみれに対抗して、サラダ油を塗りたくっての登場だ。
メロリンキューとか言い出さないか心配であるが、そんなヒマはない。すでに、炭の火の粉がチェダーの身体に引火し、炎上しているのだから。
「うぎゃー!」
「立花さん、何か悲鳴のようなものが?」
「気にせず、リラックスしましょうね」
チェダーがアフロパーマを命懸けで当てる様子は映さず、立花によるエステのシーンばかり映しつづけるカメラ。マッサージはエスカレートをつづけ、立花は舌で三島の身体の蜂蜜を舐めたりまでしている。
だが、そのままでは終わらないのがチェダー。サラダ油はキケンだということで、でも蜂蜜には対抗したいということで、ローションを塗りたくって再登場してきた。
「さー、二人まとめておいしくいただいちゃうぞー!」
「どうぞ、ご自由にお召し上がりください」
勢いよく言ったはいいものの、予想外の反応に困ってしまうチェダー。一応、そっと蜂蜜まみれの肌に触ってみるが、抵抗する気配はまるでない。
「え、えーと‥‥」
カウンターパンチャーというか、相手に打たせるだけ打たせて攻め疲れさせてからのラッキーパンチというパンチドランカー一直線の芸風ゆえ、打ち込んでこないノーガード戦法にはリアクションが返せないのがチェダーである。男のZebraのノーガードとは、わけが違うのだ。
「じゃあ、仕上げはカメラの前ではできませんからね。あちらへ移動しましょう」
「はい、立花さん‥‥」
もはやチェダーなどいないかのように、そのまま舞台袖へと三島を誘う立花。見事にチェダーの出番を食らったというわけだ。
だが、今度は立花と三島の方が過激で放送できないということで、立ち尽くすチェダーの方ばかり映している。
「おまえには俺がいるじゃないか!」
そのチェダーの肩を、Zebraがポンポンと叩く。そして、問答無用で剣を突き刺すボックスの中に放り投げてしまう。
「さあ、このボックスで刺しつ刺されつだ!」
「俺は、挿しつ挿されつがいいんだーッ!」
「そうだったのか‥‥気づいてやれなくて、スマンかった」
そう言って、Zebraもボックスに入っていく。チェダーの悲鳴がこだまするが、中で何が行われているかは永遠のナゾである。舞台袖で立花と三島が何をしているかがナゾであるように。
そんな中、キングの発表である。ネタ自体はベタながらも、いやだからこそ、徹底してヨゴレを突き進んだチェダーが2度目の防衛を果たした。なお、3連続防衛した暁には、殿堂入りで名誉ムチャキングの称号を手にするとかしないとか。