第21回プロレスごっこ王アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/09〜10/11

●本文

 プロレスごっこ──それは、素人によるプロレスの真似事でしかないが、ここにはそれを魅せる域にまで昇華した番組があった。基本レスラーに扮する芸人が、様々な物や者を相手にプロレスをしているかのように見せて笑いを誘う。ただそれだけのことなのだが、小物を使ったボケをベースとする、一人芝居あり、一発芸ありの、お笑いの基本要素の散りばめられた、芸人のワンダーランドなのである。

 TOMITVのある会議室に、芸人プロレスごっこ王選手権のスタッフが集められていた。その前に、プロレスごっこの一番えらい人が姿を現す。
「前回の宣言どおり、今回のポイントは、1穣、1垓、1京とする。文句ないな?」
「ございません‥‥」
「だが、『じょ』を漢字が出ねーという理由だけで排除しては、失礼というもんだと思わんかね?」
「まったくそのとおりで‥‥」
 鉄パイプを恐れてか、なぜかイエスマンと化すスタッフ一同。
「だから、今回は『じょ』ではじまる言葉をテーマとすることにした!」
「それはすばらしい‥‥」
「たとえばvs除草剤、たとえばvs情報化社会、たとえばvs女学校、たとえばvs女体盛り‥‥」
「‥‥あの、女体は『にょたい』だと思うんですけど‥‥ぐぼはっ!」
「バカヤロウ!」
 イエスマンのままでいればいいものを、ガマンできずにツッコミを入れて、逆に鉄パイプの制裁を加えられるスタッフ。
「女体盛りをやりたかったら、『にょたい』も『じょたい』と読ませんかい!」
「それ言い出したら、なんでもありじゃ‥‥サー、イエッサー!」
 文句を言いかけるが、結局は直立不動でそう答えるしかないスタッフたち。
 こうして、縛りがあるんだかないんだかよく分からない状況の中、通算40回目のプロレスごっこ王選手権がはじまるのであった。

参考例:
・軟体レスラーvsボストンバッグ:身体の柔らかい芸人が、固め技という設定でボストンバッグの中に入っていき、ファスナーを内から閉めたところで、レフェリーストップ、ボストンバッグの勝ち。

注意:
・対戦相手が『じょ』ではじまるものでなければなりません。が、屁理屈でどうとでもなります。
・ポイントはプロレスごっこの一番えらい人の独断と偏見によってのみ与えられます。すばらしい、おもしろい、えろい、えらい人に媚びる、視聴率が取れる等、一切関係ありません。
・ランキングによるプロレスごっこ王は、ポイントで不可思議(10の64乗)を超える人が現れたくらいで決定の予定です(年内決着予定)。
・毎回上位総入れ替えのインフレですが、そういうバラエティのノリに怒らない人募集。
・プロレスごっこは安全第一です。死亡、怪我、流血は極力避けましょう。

ランキング(上位5名、第18回プロレスごっこ王分まで)
 1位 サトル・エンフィールド(fa2824) 1兆513pt
 2位 阿野次のもじ(fa3092) 1億pt
 3位 マリアーノ・ファリアス(fa2539) 1万133pt
 4位 あずさ&お兄さん(fa2132) 1,156pt
 5位 竜華(fa1294) 288pt

過去の放送のスケジュール(最近5回分)
・第16回 09月07日 07:00〜
・第17回 09月12日 07:00〜
・第18回 09月21日 07:00〜
・第19回 09月26日 07:00〜
・第20回 10月05日 07:00〜

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa2123 ブルース・ガロン(28歳・♂・蝙蝠)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa2824 サトル・エンフィールド(12歳・♂・狐)
 fa3577 ヨシュア・ルーン(14歳・♂・小鳥)
 fa4634 琉華(17歳・♀・虎)
 fa4729 キューレ・クリーク(25歳・♀・豹)

●リプレイ本文

「全国48万6750人のプロレスごっこファンの女子高生のみなさま、お待ちかね! 第21回プロレスごっこ王選手権大会inTOMITV、本日ただ今より開幕であります!」
 ブルース・ガロン(fa2123)のオープニングトークが冴え渡るが、別に実況をしているわけではない。彼はれっきとした解説である。
 ならば、なぜか? 実況が二人いるからである。すなわち、サトル・エンフィールド(fa2824)とヨシュア・ルーン(fa3577)という二人の少年が。
 にこやかなサトルと、そのサトルを睨め付けるヨシュア。対照的な二人であるが、今のところは真ん中にブルースを挟んでいるからか、おとなしく座っているのみである。
「ワタクシ、今回の解説を務めさせていただきます、ご存知水槽の中のジョンブルことブルース、そして実況はそれ以上にお馴染み中のお馴染み‥‥」
 実況が二人いる中、ブルースが実況をどう紹介するかに注目が集まる。
「放送席に3人もいるってどうなのかな? 実況二人に解説一人って、多すぎない? かく言う私も解説だから、実に8人中4人が放送席の住人なのだけど」
 だが、音声が一歩下がった位置に第二放送席を作っていた琉華(fa4634)に切り替わってしまう。
 第二放送席‥‥メインの放送席から一歩引いた位置にある、客観的な解説をするために設けられた場である。というか、すでにメインの放送席で試合をやっているような状態なので、放送席の実況という立場が強いのかもしれない。
 実況が二人ならば、解説だって二人。とはいえ、ブルースがサトルとヨシュアに積極的に絡んでいくポジションならば、琉華はその3人というボケに対するツッコミの位置に相当するのである。
「お、放送席がブルースの壁を挟んで冷戦の中、最初の選手が入ってきたね」
 最初の選手として、ラクダに乗ってカッポカッポと湯ノ花ゆくる(fa0640)が入ってくる。湯ノ花が乗っているとなれば、ラクダの身体にメロンパンのデコレーションが施されているのは言うまでもない。
「えらい人の‥‥好きな‥‥女体盛り‥‥に挑戦です。『にょ』ではじまりますが‥‥偉い人のお墨付きなので‥‥問題なしです‥‥」
 そう、メスラクダの身体にメロンパンを盛り付けるという、誰も喜ばない女体盛りである。湯ノ花がそのままラクダをリングに上げようとするが、中々言うことを聞かない。のんびりと、自分の身体のメロンパンをモシャモシャと食べはじめるラクダ。
「‥‥ラクダって、メロンパン食べるものなの?」
 琉華が何気なく思ったことだが、まったくそのとおりで、メロンパンが吐き出される。それまで無言の戦いを繰り広げていた放送席であるが、メロンパンが放送席に向けて吐き飛ばされてきたとあっては非常事態である。有事に、一気に緊張が高まる。
『ふっ‥‥第18回終了時点でだけランキング1位だったこの僕を、止められるものなら止めてみやがれ! って、僕が止める側なのね? じゃあ、ヨシュアくんを盾にするしかないよね!』
 やけに余裕のサトル。肝心の現在のランキング1位は、このメロンパン爆弾を作りし湯ノ花なのであるが、そこは『ジョ』ではじまるマンガを読破してヨシュアを盾にする覚悟を決めているからこその余裕であろうか?
「‥‥余裕だね、サトルくん。まさに死神のごとしだね。というわけで、サトルくんを盾に‥‥ジャキーン! 死神の盾を装備した。死神の盾は呪われていた、外すことができない‥‥から、このままサトルくんで受けよーっと」
 そのヨシュアも、逆にサトルを盾にしようと押し合いへし合いしている。
「ふふ‥‥俺の膝の上で争う幼い男の子二人。TVの向こう側から殺意が伝わってきそうなシチュエーションだな」
 そんな趣味はないハズなのだが、カメラに向かってニヤリとしてみせるブルース。
「まぁまぁ、二人とも。君らプロレスごっこは長いんだし‥‥そうだ、リング上で決着をつけ‥‥ぐぼはっ!」
 サトルとヨシュアを分けたところへ、ちょうどラクダの唾液たっぷりのメロンパンの直撃を受けるブルース。当たりどころが見事にテンプルで、そのまま机の上に突っ伏してしまう。
「解説が一人、早くも脱落したね‥‥残るは二人」
 やや離れているだけに動じず、冷静に放送席の様子を実況する琉華。
 一方、放送席ではブルースのことなど一切無視して、ヨシュアがサトルに食ってかかっていた。
「サトルくんがこの前壊した僕のパソコン、高かったんだぞ! このくらい、お詫びに受けてくれたっていいじゃないか! 下取りにも出せないし、こんな人が一瞬でもランキング1位になったことがあるなんて、この宇宙は発狂したんじゃないの? ぶっちゃけ、僕以外全員打たれすぎの世の中だよ!」
 以前のプロレスごっこで破壊されたA4ノートパソコンを、わざわざ見せながらキレるヨシュア。人が打たれすぎるのと違い、パソコンが打たれすぎると簡単に壊れてしまうのである。
『新機種が買えて、よかったですねぇ‥‥』
 悪びれず、笑顔で応えるサトル。同じサイズは縁起が悪いからかどうかは分からないが、B5ノートパソコンを買ったスーパーハッカーのヨシュアである。しかし、下取りで新機種の足しにする以前に、ヨシュアは産廃処理に金を払わなきゃいけない方なのである。
「あのね! 大体‥‥
「‥‥うーん、戦いが長引いてきたなぁ。というわけで、こちらの映像をどうぞ!」
 琉華が強引にぶった切ると、映像を切り替えてしまう。
 映し出されたのはどこかの焼肉店内の映像で、すでにテーブルに着くミゲール・イグレシアス(fa2671)の姿があった。
「まいど! 今日はロケに来てるんやでー」
 ミゲールは、たった一人でロケに出かけていたのである。芸能人における高級焼肉店の定番、『じょ』ではじまる某店に。
「いやいや、違うんや! リング周辺やと、匂いとか問題やろ?」
 今まで散々リング上での料理モノはあったが、そんなことは一切無視して理由をつけ、ロケに出かけてしまったのである。
「というわけで‥‥突撃、わいの朝御飯〜!」
 単に落ち着いて腹一杯食いたいだけの気がしてならないが、朝っぱらから焼肉をガッツリ行くと言っているのだから、戦わせてあげるのがやさしさというものである。
「では諸君、番組終了時に会おう。さらばだ!」
 カメラも忘れてガンガン食べはじめるミゲール。
「垂直落下式パワーボム! そして、ムーンサルトプレス!」
 いや、一応カメラを意識して、焼き肉を喉をすべるように胃に落とし込んで垂直落下式パワーボム、開けた口にくるりと焼き肉を一回転させて放り込んでムーンサルトプレスとか言ってるが、すかさず映像がスタジオに戻る。
「ラクダ‥‥ごときに‥‥メロンパンの味が‥‥分かってたまるか‥‥です‥‥」
 だが、映し出されたのは湯ノ花のややブラックな一面であった。さすがの湯ノ花も、愛しのメロンパンをペッと吐き出されては、黙っていられないようだ。
「‥‥えい!」
 というわけで、メロンパンの鞭で折檻である。メロンパンの鞭の威力がどの程度のものかはナゾであるが、暴れラクダに早変わりである。すぐさま、放送席に突っ込んでいく。
「サトルくん、今度こそ盾になってよ!」
『今日の僕はやさしさ1兆513%増し。だから、お茶の間のみなさんに愛と魔法を振りまきます。え? ヨシュアくん? 0には何をかけても0ですよ?』
 ヨシュアとサトルが相変わらず押し合いへし合いしているところへ、ブルースがよく分からない解説を入れはじめる。
「ああ、ラクダが目前に迫ってなお実況対決! 情熱と熱血、そして狂気をはらんだ幼さを残す若さゆえか!? 今、禁断の美少年対決が白く四角いジャングルで封切ら‥‥ぬおっ!」
 ラクダはブルースをひょいとくわえると、そのまま走り去っていってしまう。
「対決のテーマは『じょ』だぞぉ‥‥!」
 遠ざかるブルースの最後の言葉は、そんなものだった。そして、ブルースはお星様になった。
 だが、サトルとヨシュアの対決がはじまることはなかった。
「やっぱり‥‥女体は『にょたい』ですから‥‥女装盛りに‥‥対戦相手を‥‥変更します。これなら‥‥ちゃんと‥‥『じょ』から‥‥はじまる言葉ですし‥‥問題ないです♪」
 勝手になにやら閃いた湯ノ花が、ヨシュアのところにやって来ていたのだ。
「ヨシュアさんが‥‥女装すれば‥‥そのかわいさのあまり‥‥サトルさんも‥‥見惚れてしまって‥‥今までのように‥‥手をあげるコトも‥‥できなくなると‥‥思いますよ‥‥下克上のチャンスです♪」
「え? え? そうかな?」
「そうだよ、やっといた方がいいよ!」
 サトルがノッてる時点で確実に違うのだが、押しに弱いヨシュアが流されてしまう。
「確実にダマされてるけど‥‥私は一解説に過ぎない。どうすることもできない‥‥」
 それまで冷静に実況していた琉華だが、目頭が熱くなるのを押さえられないでいた。
 そんな湯ノ花がヨシュアを上げようとしていたリングでは、次の試合のキューレ・クリーク(fa4729)が女子高生と戦っていた。
 といっても、適当に女子高生を連れてきて戦っているわけではない。女子高生像というか、要するに女子高生の制服と戦っていたのである。
「ふっ‥‥」
 とりあえずセーラー服を着てみた30過ぎのキューレが、遠い目をしていた。はるか遠い彼方を見ているのか、単に焦点が合わないほどうつろなのか、それすらも分からない。
 しかも、格闘家として鍛え上げられた肉体では、風俗臭さすらしない。キューレの目には、涙が溜まっているようにも見えた。
「いや、まだだ。これだけが似合わなかったということもある‥‥」
 悪女なキューレは悪キューレ、つまり頭が悪キューレなのだが、ついでに往生際も悪キューレなのである。
「ふっ‥‥」
 お嬢様学校のブレザーを身にまとい、またも遠い目をするキューレ。どんなに身体をケアしてようとも、月日の流れはただ残酷なだけである。
 とそこへ、湯ノ花とヨシュアが上がってくる。
「‥‥都合よく‥‥衣装がこんなに‥‥用意されています‥‥」
 キューレはすでに2着でグロッキーだったが、今どきそういうショップかよというくらい数多くそろえてあった。その中から、適当にヤマンバスタイルの制服を取ると、ヨシュアに着せる。
「男女の違いよりも‥‥若さか‥‥」
 そのヨシュアを見て、がっくりとうなだれるキューレ。湯ノ花はそれでも満足できないのか、なおもメロンパンで飾り付けをしている。
「そうね‥‥女子高生の制服は、女子高生が着るもの。30過ぎて着ていたら、ただのイメクラだものね。でも、そんな常識と戦うあなたはとってもキュートよ!」
 そう声がかかって、キューレの肩がポンと叩かれる。見れば、小野田有馬(fa1242)が立っていた。
 が、キューレの目が点になる。小野田はキューレ以上にムリのある、オッサンにミニスカメイド服という格好だったのである。
「あなたの遺志は、私が継ぐわ! 私が常識と戦いつづけてあげる。すでにメイド服は女の子が着るもの、メイドは萌えなものとは戦い中だからぁ‥‥」
 そう言って、ネコミミまで装着しはじめる小野田。
「継がんでいい! というか、継いでないだろ!?」
「世間の風当たりは強いけど、私負けないキリン!」
 キューレが止めに入るが、なおも語尾まで萌え系に変えはじめる小野田。確実に萌えの方向性がおかしいが、やってることの方がもっとおかしいので、どうにもならない。
「常識的な行動を取ったら負けよ! さあ、あなたも早く次の制服に着替えるキリン!」
「私の制服姿は、そこまで非常識じゃねぇ!」
 ブチギレたキューレが、思わず小野田をマットに沈めてしまう。
「I’m えらい人ーッ! 今回も独断と偏見でポイントによるランキングがつくゼ!」
 リング上がすっかり混沌としてきたので、シメに入るべくえらい人登場である。
 1位 キューレ・クリーク 1穣
 2位 小野田有馬 1垓
 3位 湯ノ花ゆくる 1京
「目指せ、プロレスごっ‥‥」
「では、未だ戦いつづけているはずのあの人を呼んでみましょう」
 えらい人が言い終わるよりも早く、琉華がロケ先に振ってしまう。一瞬えらい人が鉄パイプを握ったかのように見えたが、そこで映像がミゲールのロケ先に切り替わってしまったので、その後何がどうなったかは永遠のナゾである。
 なので、すっかり満腹でくつろいでいたミゲールが映し出される。
「‥‥っ!? ぬぉ‥‥おおーと、カルビクッパを大技ブレーンバスターで仕留めたー。ワン、ツー‥‥スリー!」
 油断しきっていたので慌てて飛び起きると、残していたカルビクッパを食べはじめる。ブレーンバスターと称して一気にカルビクッパを流し込み、ごまかそうとする気満々のミゲールであった。