ねるとん百合鯨団3アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
牛山ひろかず
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/11〜10/13
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●本文
『ねるとん──それは男女間の見合いパーティーのことと一般名詞化されてしまっている。その常識を打破すべく、ここに女性限定、女性同士に進化させた番組を三たびやってしまうのです!』
「‥‥またやるの? この前の特番で満足してくれたものだと思ってたのに‥‥」
部下の出してきた企画に、上司は渋い顔である。しかし、部下に引き下がる気はまったくない。
「満足できますかっ!? あっという間に風化してしまうこんな時代だからこそ、忘れられたころにしつこくやってこそ意味があるんです!」
ドンとテーブルを叩く部下。上司はすっかりひるんでしまうが、それでも一応は抵抗してみせる。
「忘れるもなにも‥‥やるとしたら3回目になるわけだけど、1回目と2回目の間隔より大分早くなった気がするんだが‥‥」
「気のせいです。忘却のペースが一定だとお考えにならないよう」
すっかり押され気味の上司。これでは、どちらが上司で部下なのか分からない。
「‥‥で、またSの攻めたい女性チーム、Mの任せたい女性チームに分けるの?」
「そうです!」
「半々に分かれなくても、相変わらず気にしないの?」
「奪い奪われる愛の前に、平等などという言葉は無粋です!」
「‥‥決意は固いんだな?」
「ガッチガチです!」
「そうか‥‥もはや止められんな‥‥」
「ええ、ブレーキは最初から付けてませんから!」
よく分からない部下の決意の下、ねるとん百合鯨団3というの企画がスタートした。
舞台:
・昼下がりの公園。ベンチ、噴水、ボートなどの一通りのものはそろってます。
進行:
・自己紹介(Sチーム、Mチームの順)
・フリータイム
・告白タイム
・昼過ぎにスタート、夕方にシメ。
注意:
・カップル成立の場合でも、番組後の縛りは一切ありません。その後の関係を気にして、ゴメンナサイする必要はありません。
・女性のみ参加可能です。基本的に、男性は裏方(撮影やナレーション)での参加扱いになります。
・肉欲に溺れないでください(バラエティ的なフリではなく)。
過去の放送のスケジュール
・ねるとん百合鯨団 3月18日 22:00〜
・ねるとん百合鯨団EX 8月06日 23:00〜
●リプレイ本文
「‥‥見たことない単語、一杯並んでます‥‥司会、一人じゃなくてよかったー。というわけで、本日はよろしくお願い致します」
「え? あ、うん、よろしく‥‥」
年齢の一回り以上違う美森翡翠(fa1521)に三つ指を立てられて挨拶されては、見た目豪快そうな沢渡霧江(fa4354)もおとなしく微妙な返答をするしかない。
そんな司会二人の顔合わせも済んだところで、早速本番スタートである。公園の池をバックに、この身長差40センチ以上のデコボココンビの登場である。
「はい、この池には綺麗な鯉が‥‥」
「ベタすぎるよ、恋が変くらいベタ過ぎるよ!」
「え、違いますの?」
沢渡がキレイにたとえツッコミが決まったと思っていたところへ、素で聞き返してくる美森。長い戦いになりそうなことを予感せずにはいられない沢渡であった‥‥って、最初の顔合わせの段階で気づけという話でもあるが。
「ねるとんは合コンの一種で、この番組では女性同士のカップルを作りましょう、という企画ですよね? 合ってますよね? で、合コンって何?」
「後で説明するから‥‥はい、全国のみなさんが熱望していた、ねるとん百合鯨団の第三弾だ! 沖縄と北海道に一人ずついるだけで全国のみなさんとなるわけだが、何か問題でも? というわけで‥‥翡翠、参加者の紹介に移ってくれるかな?」
力技だけど、なんとかフォローできたかな? と一息吐きかけるが、美森がそれで済むハズもなかった。
「んーと、まずはSチームから‥‥って、『お任せします』が任せるでMチームってことですよね? それだと『予定を立てるの任せて』のスケジューリングチームでSチームさんですの?」
「そう‥‥だから、早く紹介を!」
ツッコミを入れるだけで疲れ果てた女になりかけ、早くも軽くスルー気味の沢渡である。
「え? 『攻めたい』でSチームさんでしたかぁ。それでは、Sチームさんの方から自己紹介お願い致します」
「ちょっと待ったぁ!」
告白タイムどころか自己紹介すらはじまっていないにも関わらず、早くもちょっと待ったコールがかかる。見れば、鍛え上げられた肉体をスーツに包んだ短髪の女性が立っていた。
「なんですの? 解説の観月紫苑(fa3569)さん」
「解説のって枕詞つけられるなら、チームの紹介の前に先に紹介してあげなよ!」
「チーム紹介しろって言ったの、沢渡さんですの」
たまらずツッコミを入れる沢渡だったが、美森もまったく負けていない。
「くっくっ‥‥」
だが、当の観月はむしろ心地よさげに笑っている。
「その無邪気な残酷さ、たまらないですね。これがいわゆる『萌え』というやつですか? 胸キュンです‥‥というのはさておき、解説者の観月です。児童文学なんかを手がけてたことがあって、本も何冊か。よろしければ、お送りしますよ」
そう言って、優雅に一礼してみせる観月。やや芝居がかった色男という体だろうか。
「もう自己紹介をしてもいいですか? Sチームの三島麗華(fa4463)です。すでにターゲットはただ一人に決まっています。それはもう、神の時代から」
ようやくSチームの自己紹介がはじまる。といっても、真紅のイブニングドレスに身をまとった三島しか立っていない。なお、三島がターゲットはただ一人と言っているが、そう言わざるを得ない理由があったりする。
「えーと‥‥一人だけですの? では、つづきましてスケジュールチームに‥‥」
「いや、だから攻めたいチームだって‥‥」
一度訂正をされておきながら早くも忘れている美森に対し、軽く額を押さえながらも最訂正する沢渡はいい人に違いない。
「はい、Mチームの紅一点、立花奈保子(fa4466)です。好きな言葉は『されるがまま』です」
紅一点と言いながら、白いワンピースを着た立花が挨拶をする。いや、紅一点に着ているものの色など関係ない。さらに言えば、紅も何も単純に立花一人だけである。
「ねるとんは合コンの一種で‥‥でも、一対一だから‥‥お見合い?」
何気ない美森の一言に、立花が思わずポッと頬を赤らめてしまう。
そう、Sチーム一人にMチーム一人と、三島と立花がくっつくかくっつかないかしか選択の余地がないのである。
しかし、司会が二人いることや、解説者を抜きにしても、出演者の数が合わない。
それは、どっちにも属すことのできない哀れな‥‥もとい、個性豊かすぎる人々による遊軍チームが存在したからである。
それまでまったく気配がなかったところへ、しゅっと人影が現れる。
「私、時代劇役者の羽床小菜(fa3799)と申します」
まるで忍者のように、突然姿を現したのは羽床だった。
「忍者の訓練を受けておりますが、それゆえか一般の方と感覚がズレているとよく言われます。ですので、ぜひこの番組で一般の方の常識というものをご教授願えればと」
そもそもこの番組に一般常識などないのだが、そこへ一般常識を求めて突っ込んでくるとなると、ズレてる自覚症状があるふりをしていながら、実は分かっていなという真性の天然のようである。
「ほう、これは凛々しい戦乙女だな‥‥」
観月が感心したように呟くが、これが解説ということらしい。どちらかというと観月の値踏みのような気がしないでもないが、そんな間にも最後の白虎(fa0756)が登場してくる。
「はじめまして。不覚にも二度目の参加となりました、スタントマンの白虎です。ヴァイスケーニッヒと読みますが、簡単にヴァイと呼んでください」
「ふふ、一見男性的に見せかけておいて、その実かわいらしい女性とは中々に奥深い‥‥」
観月のエンジンがかかってきたのか、解説というよりはセクハラオヤジの吟味になりつつあるが、それに気づかない白虎はなおも言葉をつづける。
「それでですね。自分で言うのもアレですけど、チーム分けも曖昧ですし、全員が全員でお茶会をしませんか? その方が、早く仲良くなれると思うんです」
そう言って芝生の上のテーブルを指差すと、すでに茶葉とティーセットが用意されていた。
「ああ、いいですね。ちょうど私、ガマンができそうにもなかったところでして‥‥では、失礼」
元からチーム分けすらも明確ではないところへ解説の観月も加わって、司会進行をのぞく5人が輪となってのお茶会で、まずは様子見である。SはMを、MはSを求めるが、この遊軍チームはある意味なんでもありなので、三すくみとはならない。
「あっ‥‥えーと、解説予定だった観月さんが早くも参加者になってしまいましたので、以後は沢渡さんに解説をお願いします〜」
「ま、ツッコミ役がいないと際限なくボケそうだし、解説という名のツッコミでもいいか‥‥」
W司会でも司会と解説でも何も変わらないのだが、説明するのも面倒くさいのでそのままにする沢渡。
「あとは、お茶菓子をどこかで買えば、すぐにでもはじめられますよ」
「そうそう、そんなこともあろうかと、お菓子ならありますよ〜。はい、芋ようかんとミニパウンドケーキ──バナナ、栗、各種ジャム等取り揃えてありますの」
白虎がそう言うと、すぐさまお茶菓子を出す美森。めずらしく手際がいいなと感心する沢渡だったが、何やら茶葉のあたりで不穏な動きを見せている。
こうしてお茶会がはじまり、白虎に羽床、観月が談笑をはじめる中、すでに三島と立花がいなくなっていた。三島が鋭くツーショットに持ち込んでいたのである。
こちらはやや離れた芝生の上で、立花の作ってきたお弁当を広げている。
「みなさんにと思って、大量に作ってきたんですけど‥‥どうしましょう? みなさんをこちらにお呼びしましょうか?」
「いえ、それには及びませんよ。私が全部食べてしまいますから。そう何もかも‥‥ね」
三島が含みのある言い方をしていたが、立花はまったく気づかない。
対する三島の顔は、そのお弁当の中身を見て一瞬引きつる。まず目につくのがドロリと半液状化した鳥の唐揚げ、そして鼻をつくのが手作りプリン。
「お、おいしそうですね‥‥」
なんとか問題なさそうなサンドイッチを選んだものの、ガリガリと歯ごたえがおかしい。
「よかった、おいしくできていました。たくさんありますから、どんどん召し上がってくださいね」
確実に味覚がおかしい立花に、思わず殺意を抱きそうに三島だったが、すぐに思い直して、それすらもいとおしいと思うようになる。
一方のお茶会だが、その様子を眺める実況改め解説の沢渡の様子がおかしかった。
「紅茶の中に一つだけセンブリ茶が混ざっているのだが、誰が当たったかな?」
しれっと言ってのける沢渡。センブリ茶とは、身体にはいいがその苦さゆえにバラエティの罰ゲームには欠かせない、青汁と並び立つ存在だ。罰ゲームをしなきゃならない理由はまったくないのだが、輪に加わってないことをいいことに沢渡のやりたい放題である。
「おいしい!」
「でしょう? この茶葉は‥‥」
だが、白虎の入れた紅茶に観月が普通に感嘆の声を上げていた。その横では、パウンドケーキには紅茶だけど、芋ようかんには日本茶とばかりに、羽床が負けじと抹茶を立てはじめる。
「あれ? おかしいな‥‥そんなハズは‥‥」
誰も悶絶しな状況に、焦りはじめる沢渡。美森から手渡されたカップを口にして、自分で確認してみる。
「‥‥ブフーッ!」
沢渡が因果応報で吹き出してむせていると、観月が近寄ってくる。
「ところで沢渡さん、今晩お暇は? そうですか‥‥」
沢渡の答えを聞くまでもなく、肩を落として去っていく観月。沢渡と美森のボケツッコミの間には割って入れないと、勝手に観念したのだろうか?
「ここで腹ごなしに、かくれんぼでもしませんか?」
「お、いいね! やろうか」
白虎の提案に、観月が乗る。だが、その横では羽床が並々ならぬ決意で臨もうとしていた。すなわち、忍者であるからにはとことん隠れないといけない、と。
「ブクブク‥‥秋の水は‥‥ブクブク‥‥冷えますね‥‥」
そんなわけで、ムチャをして水遁の術で竹筒だけを頼りに池の中に潜っていた。
「ん? なんでしょう、コレは?」
言い出しっぺで鬼を務める白虎が、池から突き出た竹筒の先に気づく。何気なくその先を指で押さえてみる白虎。
「なんだか、急に息苦しく‥‥ぶはっ!」
「うわっ!?」
突然池の中から羽床が現れて、素で驚く白虎。二人して天然タイプのようで、互いにツッコミどころ満載である。
「それはいけない。早く温めないと」
だが、そこへツッコミを入れるではなく、さらにかぶせに来たのが観月だ。鋭く近寄ってくると、濡れた羽床の服を脱がせるのはともかく、自分も服を脱ぎはじめてしまう。
「さあ、早く! 裸で抱き合って、温め合うんだ!」
「ここは雪山ですか!? 寝たら死ぬんですか!?」
おかしいと思いつつも、あっさり流されてしまう白虎。一緒になって、人肌で暖を取ることになってしまった。
「‥‥なんか色々あった気がするんですが、早くも告白タイムですの」
「編集マジックに口出ししないように‥‥」
美森に沢渡がツッコミつつも、告白タイムスタートである。
早速、三島が一歩前に出る。ずーっとツーショットだったのだから、相手は決まっている。もちろん立花だ。
「アナタは生まれる前から私の物になる運命だったの、分かるわよね?」
「はい、私は生まれる前から三島さんの所有物でした」
ちょっと待ったコールのかかる間も与えず、即答する立花。一人を選ぶなんてできないから、公平に全員に乱入しようとしていた観月が、肩透かしを食らってしまう。
そんな間にも三島と立花は木の下で寄り添い合い、もはや誰にも入り込めない世界を作り上げてしまっている。
とそこへ、羽床がまたも気配を殺してしゅっと現れる。白虎の前に。
「まずはお茶会を開き、つづいてかくれんぼを提案される、計画し遂行する能力。さらに、身体を冷やした私の身体を、身をもって温めてくださった慈悲深さ。白虎殿はまさに殿です。仕えるべきお殿様です!」
「え!?」
羽床が番組の方向性とは微妙にずれたムチャなコトを言っているが、こんにゃく作りがうまいというだけで子々孫々まで忍者が仕えているという世界もあるので、この少子化のご時勢に忍者が仕えるべき主を探すのは大変なんだなぁ程度に考えてあげるのが、生温かいやさしさというものである。
「ちょっと待ったぁ‥‥ってほどのコトでもないんだけど、一応」
だが、このままだと一人残ること確定の観月が、一応は申し訳なさそうに入ってくる。
「お殿様と忍者、だったら残る一人は何? ということで、お姫様かな? やっぱ」
どう見ても見た目的にはお姫様というよりはキングだったが、羽床はマジメな顔で観月に応える。
「ならば、師匠とお呼びしましょう。くノ一といえば、一人前にもなれば色仕かけの一つもできなければなりません。しかし、私はまだ色々と未熟なゆえ‥‥師匠に色々と教えを乞いたいと思います」
「えー、そういう目で見てたの?」
赤面しながら言う羽床に、ちょっと不機嫌そうに答える観月。しかし、裸で抱き合わさせては文句も言えないところだろう。
「じゃ、そういうことで私は‥‥」
「と、殿! どちらへ行かれますか!?」
この隙に思わず逃げようとする白虎だったが、逃がすまいと羽床が追いすがる。面白がって観月まで追ってくる。
「‥‥ふう。もっと人間ウォッチが楽しめるハズだったのに‥‥」
その様子を見ながら、沢渡が大きく息を吐いた。
「そうですか? 私は楽しかったですの」
誰のせいで楽しむ余裕がなくなったと思ってるんだと言いたかったが、かろうじて踏み止まる沢渡だった。