鳥になれ2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 牛山ひろかず
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/13〜10/15

●本文

 TOMITVの自称スポーツイベント便乗チーム。その中核は先輩と後輩だけのわずかに二人だが、競馬場疾走企画の『走れ!』シリーズやKKコンビの番長をリスペクトする『番長』シリーズ、そして数々の芸人を打たれすぎにしていった『ムチャキング』シリーズを作るなど、まさに少数精鋭のチームであった。
 だが、彼らの企画が常にシリーズ化されてきたわけではない。1回だけ放送したものの、その後日の目を見ることのない企画もあった。それが、今回の『鳥になれ』である。
「あー、俺たちは鳥になれたんだろうか?」
「はぁ!? いきなり何言ってんですか?」
 突然の先輩の壊れた発言に、思わず素で心配する後輩。
「いや、前に『鳥になれ!』って企画をやったじゃねーか。商店街で棒高跳びするっていう。あの1回だけで、果たして鳥になれたんだろうか?」
「なれるわけないじゃないですか‥‥」
 冷静に、当たり前のことを言ってしまう後輩。これで先輩に火が点いた。
「やっぱそうか‥‥よし! 今度はアミューズメントパークで棒高跳びをするぞ! どんな絶叫マシンよりスリリングだぜ!」
「そりゃ、安全性の検証度がまったく違いますからね‥‥」
 相変わらず冷静な後輩。自分がやるわけではないので、強く反対するわけでもない。
「じゃ、さっそくリアクション芸人どもを集めなくてはならんな!」
「おもしろリアクションを求めている時点で、鳥にはなれない気がするんですけど‥‥」
 一抹の不安を覚えつつも、アミューズメントパークで棒高跳びをするという企画がスタートした。

※マスター注
 シリーズと書いていますがシリーズシナリオのことではなく、一連のショートシナリオ群のことを指します。

『アミューズメントパーク内のあらゆる場所でジャンプ!』

ルール
・とあるアミューズメントパーク(ネズミによる夢の国ではないです)で、棒高跳びをします。
・とあるアミューズメントパークは、アミューズメントパークにあると思ったものがなんでも揃ってる都合のいい夢の国です。でも、ネズミはいません。
・一番おもしろ映像になった人に、賞金10万円が授与されます。高さや危険度は一切考慮されません。
・その他細かいルールは、俺がルールブックだ! と先輩が申しております。

注意点
・跳躍に際して破壊された器物は、番組が責任をもって修復します。
・安全には細心の注意を払いますが、ケガをするときはします。番組では一切責任を負いませんので、ご了承ください。

●今回の参加者

 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)
 fa4619 桃音(15歳・♀・猫)
 fa4717 金緑石(21歳・♂・狐)
 fa4729 キューレ・クリーク(25歳・♀・豹)
 fa4769 (20歳・♂・猫)

●リプレイ本文

 日本のどこかにあるといわれる、ナゾのアミューズメントパーク。番組の貸切で、なぜか大量のジェットコースターが園内を占拠しているが、都合のいい世界もあったものだと済ますのが、夢を失っていない大人の対応というものである。
 だが、なぜかその地下にある闘技場から、Vはスタートする。地下闘技場の方は、エキストラの観客でギッシリである。
『全選手入場! 虎殺しは生きていた‥‥というか、本人そのものが虎だーッ! 打たれすぎなくとも頭が悪キューレ、キューレ・クリーク(fa4729)だァーッ!』
 パイロ・シルヴァン(fa1772)の大仰な実況の中、まずキューレが姿を現した。鍛え上げられた肉体をアニマル柄のタイツとタイトミニワンピに包み、モデル歩きで悠然と入ってくる。
 虎と鳥の『ら』と『り』が入れ替わってしまっているが、頭が悪キューレと言われるだけあって、まったく気づく気配はない。観客がポカーンと静まり返ってしまう中、キューレは実に堂々としたものだが、それだけで観客が茫然自失となるわけではない。
「虎になれ! でしょ?」
 キューレの服がアニマル柄とはいえ、その実豹柄なのである。鳥と虎を一字違いで間違え、虎と豹を柄がなんとなく似てるというだけで間違える、そんなキューレに寒気すら覚えているのだ。
『通信教育の関西弁を試しに日本へ来たッ! 古流空手のミゲール・イグレシアス(fa2671)だァーッ! しかし、めくるめく世界へのデビューはすでに果たしてるとのコト。今度は、どんな世界へ羽ばたいていってしまうのかーッ!?』
「わいは鳥や! プロジャンパー鳥や!」
 ポールのつもりなのかどうかは分からないが、手作りのドライバーを携えてミゲールが入場してくる。テーマ曲は、旗包みがしたくなりそうな曲であるのは言うまでもない。
『ネコミミツインテールに女装がしたいから、俳優とモデルをはじめたのだ! 柔道、拳法の心得は一切関係なし、忍(fa4769)だァーッ! 壊れたレコードのように、延々と鳥よ〜と歌っているゥ‥‥って、なぜ俺はこの歳でレコードなんてものを知っているのかッ!?』
 痩身ながらも長身なボディに、両サイドポニーテールにリボンをしっかりとつけた頭を乗せ、延々と歌いながら忍が入ってくる。
「‥‥鳥よ〜鳥よ〜鳥よ〜♪ って、いつまで歌えばいいのかな?」
 そして、急に冷静になってしまう忍。たまらず、桃音(fa4619)が飛び込んでくる。
「分からないなら、歌うじゃありませんのーっ!」
『桃音が飛び出してきたッ! 奥ゆかしい大和撫子ではなかったのかッ!? おもしろそうだからというだけで、桃音が来てくれたーッ! しかし、かく言う桃音も猫娘な気がするのは気のせいかーッ!?』
 忍にツッコミを入れる桃音もまた、ネコミミを装着していた。というか、ネコミミという名の半獣化だが。
 だが、鳥に対してツッコミを入れているだけであって、猫に関することは一切ツッコんでいないので、問題はない。
『犬神一子(fa4044)のコメントはただ一つ! 鳥になりに来た、とのこと。渋すぎるゥ!』
 フンドシ一丁の姿で現れる犬神。それが渋いのかどうかは分からない。
「ふっ‥‥人類の空との戦いの歴史は、軽量化の歴史でもあるのだよ」
 軽い素材を使う以前に、なければもっと軽いという方向へ突っ走ってしまったようだ。ノリは頭が悪キューレと大差ない。
『コードネームはDarkUnicorn(fa3622)、ウサミミ以外は一切不明! 不明なわりには、本名のヒメヒノトで登場だァーッ!』
 犬神とは打って変わって、ゴスロリフンドシで現れるDarkUnicorn。とはいえ、ちゃんとその上にはドレスを着ていて見せないのが淑女のたしなみ。
『どうやら、もう一名は到着が遅れているようですが、到着次第みなさんにご紹介致しますッッ! さあ、どんなリアクションがみなさんをお待ちするでしょうか? 今、戦いのゴングが鳴ったッ!』
 パイロが勝手な実況で煽る中、早くも地下闘技場を後にする一同。なんのための地下闘技場だったのか分からない。
 というのも、残る一名がパイロの実況どおりに本当に遅れていたわけではないのだ。先走って、アミューズメントパークで跳躍の準備をしていただけのことなのである。
 地上に戻ると、キューレがようやく豹柄だということに気づいたのか、虎の着ぐるみに猛虎の野球ユニフォームという姿になっていた。鳥にはまだ程遠いが、豹からは一歩前進である。
 そこへ、ついに残る一名こと金緑石(fa4717)が颯爽と姿を現す。しかも、ジェットコースターのレールの上に。
『裏方の仕事はどーしたッ!? ローテンションの炎、未だ消えずッ! 魔女っ娘コスも思いのまま、金緑石だァーッ!』
 すかさずパイロが選手紹介に復帰するが、その実況どおりに金緑石はピンクのフリフリ魔女っ娘コスチュームに身をまとっていた。
「鳥もいいけど、絶対魔女っ子のがいい。で、飛ぶっていったら、コレしかないだろ?」
 ポールのつもりなのか、ちゃんとステッキまで持っている。一応長めのステッキだったが、役に立つかどうかはまったく不明である。
 まあ、ステッキ云々以前に、男である金緑石はそもそも魔女っ娘の『魔女』にも『娘』にもなれないのだが、『魔女っ娘』と組み合わさって一つになると男でもなれてしまうという、不思議な世界なのである。だってここは夢の国だから。
 だが、現実は近づいてくる。そう、コースターが金緑石目がけて突っ込んできたからだ。
「‥‥ギリギリぢゃないと、ダメなんだよ。ウン、きっと俺は‥‥」
 言葉どおりにギリギリまで引きつけて、ついに金緑石は鳥になった。ただし、翼の折れた鳥に。
 コースターにはねられ、きりもみ状に落下していく金緑石。しばらくの後、ゴツともドサともグシャともつかないなんとも鈍い音が聞こえたような気がしないでもないが、そこはスルーである。
『〜ッ!? どうやら、もう一名は到着が遅れているようですが、放送時間中には間に合わない模様ですッ!』
 1センチの飛距離改竄ごとに百円の銀のコインチョコを、一回飛び直すごとに千円の金のコインチョコを、そして失格シーンの撮り直しに一万円の白金のコインチョコを売りつけるという商売を考えていたパイロだが、そんな小手先ではどうにもならない事態なのでなかったことにしてしまう。
 だが、なかったことにはせずに、あえて真正面から向き合う男が一人。
「ふっ‥‥走ってくるコースターを使う、その着眼点は悪くなかった。だが、ヤツは敷かれたレールの上に乗っかってしまった。そうじゃないだろ! 敷かれたレールは、跳び越えるものだろうが! 俺は常々、あのグルンと回った輪っかの中をくぐり抜けられねえかと思ってたんだ。そして、俺はそれに挑戦する!」
 フンドシ一丁の犬神が進み出ると、大きな一回転のみのシャトルループをターゲットに定める。
「手はずどおり、ジェットコースターにはマネキンでも乗せといてくれ」
『なんと、コースターとすれ違いざま、マネキンをドロップキックで粉砕するというのですッ!』
 コースターが走り出すと、ポールを持った犬神も走り出す。タイミングを合わせて跳躍する犬神。そして、犬神は鳥になった。それも、猛禽に。
 空中で体を捻り、ちょうどやってきていたコースターのマネキンにドロップキックをかまして、粉砕する。さらに体を捻り、そのコースターに着地する離れ業をやってのけた。
「やったぞ‥‥俺はやったぞーッ!」
 コースターに仁王立ちし、歓喜の雄叫びを上げる犬神。が、衝撃を感知したコースターが、ちょうどループのてっぺんで緊急停止してしまう。となれば、後は重力に従うしかない。
 金緑石のときよりも遥かに高さがあるような気がしてならないが、それも気のせいである。だって、ここは夢の国だから。
「ライバルが減った方が、賞金を取れる確率も上がるというものじゃ。致し方あるまい、ウムウム‥‥」
 二人の惨劇を目の当たりにし、一角獣の能力の封印を誓うDarkUnicorn。その治癒命光も、無論自分には使う気満々であるが。
 というわけで、今度はそのDarkUnicornの番である。
「おーい! 助けてくれー! フンドシが引っかかっちまった」
 だがそこへ、犬神の叫び声がジャマをする。見れば、レールにフンドシが絡まって、落下を免れたようだ。敷かれたレールも、バカにしたものではないということか。
「ムム‥‥おしいのう。まあよい、わしが成功してしまえばよいだけのことじゃ!」
『あーっと、ヒメヒノト選手、金緑石選手のようにジェットコースターのレールの上に立ったーッ! 果たして、再現Vを見ることになってしまうのか!?』
 レールの上に立ち、ポールという名の日本刀を居合いで構えて待つDarkUnicorn。無論真剣であるのは言うまでもないが、銃刀法は『模造刀です』のスーパーを入れれば一瞬でクリアである。
 それよりも、地上からの映像だと自慢のゴスロリフンドシがチラチラと見えてしまっているが、集中してゾーンに入り込んでいるDarkUnicornにはもはや関係ない。
「来たようじゃな‥‥はぁっ!」
 抜くやいなや切先をコースターの先端に突き刺し、棒高跳びの要領で越えようとするDarkUnicorn。
 だが、鳥にはなれなかった。ポールといっても棒高跳びのそれではなく、旗のポールのようになってしまっている。すなわち、DarkUnicornという名の旗をなびかせた。
「やれやれ‥‥死ぬかと思ったのじゃ」
 だが、振り落とされることなく完走してしまうDarkUnicorn。その後のことを聞いてはいけない金緑石、救出を待つ犬神、そしてなんとか無事に帰ってはこれたDarkUnicornと、確実に鳥に近づいている。
 だが、搭乗口ではキューレが着ぐるみの頭だけ取って、体育座りでたそがれていた。
「中の人などいない、いないのに‥‥」
『‥‥つづいて、二人まとめて海賊船に挑戦だーっ!』
 そんなキューレを一切無視して、パイロが進行してしまう。登場したのは、ネコミミコンビ、忍と桃音の二人だった。
 名前は荒くれっぽいが、水路に沿って海賊船が流れていくというおとなしいものである。とはいえ、鳥になるのだからそれでも安全というわけではない。
「船のマストからぶら下がった縄‥‥あれに飛び移りましょうっ!」
「よし、ターザンだね‥‥ぐはっ!」
 一足早く縄に飛びついた桃音に体当たりされ、いきなり吹っ飛ばされる忍。
「あ〜ああ〜〜っ!」
 対して、桃音は巻き舌で豪快に叫びを上げ、ノリノリでエンジン全開である。そこへ、びしょ濡れになった忍がなんとかよじ登って復帰する。
「ちょ、よくもやったな! この海賊さん必需品、剣のレプリカを食らえ‥‥うおっと!」
 しかし、これではターザンや海賊であって、鳥ではない。なので、船がガクンと揺れる。見れば、なぜかクレーンで吊り上げられていた。そう、鳥になるために、これから船をグルングルン回すバイキングに装着しようというのだ。
「ちょ、やめてーっ!」
「せっかくだから、もっとドキドキさせてもらいましょうよ」
「えーっ!?」
『さあ、最後になりました。コーヒーカップです‥‥って、ヌルっ!』
 グルングルン回る忍と桃音を乗せた海賊船をバックに、冷徹にパイロが進行する。大車輪であって鳥ではない気がするが、ミゲール登場で早くも忘れ去られている。
「んなわけあるか! カップに乗ればおとなしいかもしれないけど、それを跳び越えるんやで!」
 早速、ミゲールが動くコーヒーカップ群の中に突入していく。
「わいの生き様、見とけやーっ!」
 そう言っただけあって、避けずにカップに跳ね飛ばされるミゲール。吹っ飛んだ距離を競おうとでもいうのであろうか?
「なんでやねん!」
 いや、すぐさま復帰して、そのカップを真空飛び膝蹴りで粉砕してしまう。まったく意図が分からないが、そのままメリーゴーランドに突入していく。
「飛びます、飛びます‥‥」
 しばらく避けていたミゲールだったが、気づけばメリーゴーランドの馬に乗っていた。浮いていることは確かであるが、鳥にはほど遠い。
 一方、メリーゴーランド脇にあるゲームコーナーでは、DarkUnicornが格闘ゲームにハマっていた。しかも、あらしとかふぶきとか呼ばれる人々が使うような、レバーの上に逆立ちしてのプレースタイル。
 そうなれば、当然ゴスロリフンドシも丸見えになってしまうわけで、先程のコースターといい、露出の気があるのではないかと勘繰りたくなってしまう。
 と、そのゲームコーナー内を横切る人影が。よく見れば、キューレだった。ようやく鳥にならなくてはいけないということを知ったキューレが、敵前逃亡するところだったのだ。
 そのままゲームコーナーを通過し、パークの柵を見事な背面飛びで越えていくキューレ。しかし、着地点にマットはない。アスファルトに後頭部を打ちすえ、失神する。
 キューレがもっと頭が悪キューレになるというオチもついたところで、番組は終了した。鳥になれたかどうか以前に、犬神は救助待ちの状態だったし、忍と桃音の乗った海賊船は回りっ放しだったが、そんなことは気にせずに。
 まあ、真に気にすべきは金緑石なのだが、彼は放送に間に合わなかったことになっているので、そちらは問題ない。
 なお、ジェットコースターや海賊船といった複数人が挑戦したものではなく、コーヒーカップやメリーゴーランドと一切かぶらなかったミゲールが優勝となり、賞金10万円が授与された。