温泉DEデートアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
なし
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/24〜07/26
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●本文
「たしか花火大会は28日だったよな」
「そーですよ」
カレンダーと睨めっこしている親父さんに対して、せっせと客用ナプキンにアイロンをかけている浩介。
平和なライブハウス「7」の日常である。
「ちょっと2、3日出かけていいか?」
「いいですよ。もう花火大会の商店会の打ち合わせは済んでいらっしゃるんでしょう? でもちゃんと花火大会の前には2日前には帰ってきてくださいね」と手を止めずに答える浩介。
「何処に行くとか聞かねぇのか?」とちょっとむくれる親父さん。
「箱根じゃないんですか?」
「な、何故それを‥‥」
2、3日前、箱根やら富士五湖周辺の地図と睨めっこしていたのに気が付いていた浩介。
それもファミリー向けの地図である。
「夏休み、ご家族と出かけられる為に下見に行くんじゃないんですか?」
娘夫婦と同居している親父さん。
娘は大のライブハウス嫌い。その為気まずい関係である。
そのためによく「7」にいたりする訳である。
ちなみに娘は浩介の高校時代1学年上の先輩であり、一番小さい孫娘は浩介の娘と同級生だったりする。
親父さんがた娘と喧嘩してしまうとフラリと温泉に行く温泉好きであるのも浩介は知っている。
先月は強羅の宿で紫陽花を堪能しつつ日帰り入浴をお気に入り大型バイクでかっとばし行っていたはずだ。
東京下町のお盆は7月13日〜16日。
だが、旧盆である8月13日〜16日を含めた11日〜19日は娘婿の会社が休みである。
「どうせ、『お盆過ぎたらクラゲが出る』とかで海には行けないから山だとか思ったんでしょう?」
そしてどうせなら良く知っている箱根辺りであれば家族にもいい顔が出来る。と、親父さん辺りなら考えたのだろうと推理する浩介。
口ではお互い『仲が悪い』と言う親父さんと娘だが、本当は仲がいいのも勿論知っている。
「俺にわざわざ言うって事は‥‥何処に行くか決めかねたんですね」
「うっ‥‥」
図星であった。
「‥‥という訳で、親父さんが家族で2泊3日旅行にいけそうな場所をチョイスして実際に親父さんを連れて行って欲しい」と集まった面子を前に言う浩介。
ちゃんと連れて行かなければ、もっともらしい薀蓄を垂れる事は不器用な親父さんには無理と判断した浩介の気配りだった。
●親父さん家族構成
獅子頭 治樹 66歳(男)獅子
小野田 晴海 42歳(女)親父さんの娘 兎
小野田 誠一郎 44歳(男)親父さんの娘婿 一角獣
小野田 陽子 21歳(女)親父さんの孫娘 一角獣
小野田 聖子 18歳(女)親父さんの孫娘 兎
小野田 留美 12歳(女)親父さんの孫娘 兎
●リプレイ本文
「土産だ」
そう言ってガラスで出来たキーホルダーと「ダミアンからだ」と紅茶とジャムのセットを浩介に投げてよこす親父さん。
(「おやおや‥‥お気に召さなかったのかな?」)
そう苦笑し乍ら土産の礼を言う浩介。
「どうでした?」
「女子供の好きそうな良いプランだったぜ」と親父さん。
「しかしファミリー向けだと箱根の周遊券が便利だな。俺一人だとバイクで吹っ飛んで行けばお終いだが」
くぅ、紅雪らが集めてくれた周遊券のパンフレットは大事にショルダーバックに詰めてある。
「下見だとは言え、事前に調査せずに来た輩が多かった事だな。まあ係員やパンフレットが詳しいのは確かだが‥‥」
今回見て回った所で貰ったパンフレットを浩介にみせる親父さん、家族に蘊蓄を垂れるには少々物足りなかったようであった。
――時間は3日程遡る。
●1日目
少し陽が傾いた午後6時45分ライブハウス「7」の前に集まった一同はこの8名。
クッキー(fa0472)
紅雪(fa0607)
ヴォルフェ(fa0612)
神代タテハ(fa1704)
風間由姫(fa2057)
中松百合子(fa2361)
佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378)
ダミアン・カルマ(fa2544)
年齢も性別もまちまちである。
だが、考えようによっては一番親父さんの家族構成に近いのかも知れない。
「親父さんは家族思いなのね。私もあまり父親には素直になれないから、何だか人事には思えないかも」とユリが笑う。
「『旅行は計画をする所から始まって、お土産を配って終わる』と聞いたことがありますよ。その全てを楽しいものに出来ると良いね♪」とダミアン。
「箱根ですか〜。良いところがたくさんあるんですよね〜」とカナカがのほほ〜んと言う。
「世代がバラバラなようですので、全員で見て回るところとバラバラになってみて回る場所を分けた方が良いでしょうね‥‥そこをいかに効率よく見て回るのかが今回の肝になりそうですね〜」とカナカ。
「皆で回るのは駄目か?」
「駄目ではないですが、見たい物が皆さん違うと思うんですよね〜」
それを聞いてうーんと悩む親父さん。
「今回は下見なので候補地で直接巡るのは4ヶ所のみに止めて、後は足湯などの立ち寄り湯とかお勧めのスポットを紹介しますね」と紅雪。
タイトなパンツ姿である。
「ああ、普段行くと湯本駅の所とかになっちまうから期待しているぜ」
(「あの人は誘っても一緒に行ってくれそうにないわね」)と家に引き蘢りがちな恋人を思い出して、溜息を吐く紅雪。
「現地までゆっくり行くか高速移動で現地でゆっくりするかで結構変わりますよね〜。お年を召した方がいらっしゃるようなので、どちらがいいかは分かりかねますが‥‥」と由姫。
「『お年を召した』というのは俺の事か?」と親父さん。
由姫の顳かみにぐりぐりと梅干しを食らわす。
「痛い、痛い! 女の子相手に本気なしですよ」
「初対面の年長者に礼儀も払えねぇ、礼儀を知らずに『年寄り』呼ばわり筋合いも『娘』扱いする気もねぇ」
由姫にヘッドロックを掛けていた親父さんにくぅが質問する。
「あのね、うしゃぎしゃんは一緒じゃないの? くぅ、うしゃぎしゃんとお友達になりたいの」
お泊まりセットより何故か300円のお菓子とぬいぐるみ、うさぎ模様の可愛らしい水筒を下げているくぅ。
「‥‥‥あー、孫達か? 今日は来ないぞ」
親父さんの言葉を聞き、みるみる凹むくぅ。
「う‥‥」
親父さんのせいではないが、罪悪感が過るのは何故だろう?
「あー、その内『7』に遊びに来るが良い‥‥きっと留美は遊びに来るだろうから」
「ホント、約束なの!」
「あー‥‥気軽に約束すると本気でくぅの奴『7』に遊びにきますよ」とヴォル。
「JRで小田原迄行き、箱根迄レンタカーだ」
道中の運転手役を名乗り出るヴォル。
「俺も道は判るが、まあお前ぇに任せるぜ」と親父さん。
「車移動時にいい駐車場とかチェックするものいいかもね」とユリが言う。
「まあ、あの辺りは車よりは路線バスや登山鉄道を利用する客が多いからな。チェックして損はねぇな。都会と違って簡単にはコインパーキングなんかは少ないからな」
親父さん、今はライブハウスのオーナーをしているが、元々は只の鐵屋である。
鐵材運搬の為に大型免許やら大型特殊なんぞも持っているが、ヴォルのような元気な若い者をこき使うのも好きである。
有り難く申し出を受け、行きの車内からビールを飲みはじめた。
今回行けない場所について色々調べて来た由姫。
うっかり期限を損ねるとまたヘッドギアを掛けられるのでは? と心配しつつも親父さんに紹介する。
「ゆっくり行く場合は新宿からバス、もしくは小田急線での移動でしょうかね? 早く移動する場合でしたら新幹線で小田原まで行って箱根登山鉄道‥‥でしょうね」
「千石原まで新宿からバスなら2時間。小田急の特急なら新宿〜湯本は1時間30分程度だな。湯本から待ちなしならバスで30分と殆ど変わらねぇ。東京駅〜小田原迄新幹線で40分、小田原から千石原までスムーズなら45分って所だな」
箱根慣れしている親父さん。
(「‥‥負けない。でも如何せん、箱根のあたりには一度も行ったことありません。頭の中でプランが立てられないのが少々きついですね」)と内心タジタジの由姫。
「後は、いかに要望に沿った観光ができるか‥‥ですねえ。あっちが立てばこっちが立たず状態にならないようにしなくてはですねえ‥‥箱根周遊切符というものを買うのもいいのではないでしょうか?」と由姫。
「あれは便利だぜ。乗り降り自由だし、割引券や入場券がついて来るしな」
「今回回りませんが、大人向けには箱根関所資料館、湿生花園、芦之湯フラワーセンター、町立湯河原美術館、独歩の湯。若者向けではベゴニア園、遊覧船、箱根・芦ノ湖美術館、テグジュペリ博物館あたりがいいのではないでしょうか? 私個人としては寄せ木細工なんかを見てみるのが良いのではないかと思います」と由姫。
「若い奴向けなら元箱根にあるプレジャーランドがいいんじゃねぇか? あそこならバーチャルシアターに温水プール、釣り堀、水族館、ホテルも通常のホテルの他にコテージなんかもあるぜ? モーターボートやゴルフ場も近くにあるし、遊覧船の発着所もあり飯屋も充実しているしな」
玉砕してしまった由姫だった。
小田原駅でワンボックスタイプのワゴン車を借り、いざ箱根へ。
今日はこのまま千石原で泊まりである。
「外湯巡りはできるのかしら? 足湯やあれば最高だけど」
実はまだ未体験だから、入ってみたいのよね。 とユリ。
「僕も中松君にくっついて『外湯めぐり』に行こうと思います」とダミアン。
「たしか町立のかけ湯や貰い湯があったと思うが‥‥フロントに聞いてみてくれ。足湯はさっき由姫が言っていた独歩や湯本にあるぜ」
「ついでに宿の方にお風呂の効力やリラクゼーション系の施設があるか、あと旬の食材のお話を聞いてみましょ」というユリ。
「部屋で受けられるリフレクソロジーがある。食事はミネラルたっぷりの金時山の伏水と自家製のハーブを使用したフレンチジャポネ。泉質は‥‥って、お前らに俺が紹介してどうする」
「娘さんが家族へ教える練習?」
「そうそう。僕は箱根にはあまり詳しくないので『案内される』立場として、僕自身が『家族旅行の下見をする』つもりですから」とダミアン。
二人言葉にぐったりする親父さんであった。
ユリはフロントに教えてもらった外湯のついでにお土産屋さんでお饅頭や地元の清酒をゲットしていた。
再び宿の温泉に浸かり、月見酒を一人楽しむユリ。
「私達の下見で少しでも親父さん一家の旅行がステキな旅行になったら嬉しいわね」
●2日目
「今日周り場所は、千石原と強羅の間の美術館とガラスの森、遊覧船が候補場所にゃ〜。観光する場所の一つ、ガラスの森は6月中旬〜8月中旬まで『あじさいフェスタ』と言うイベントがあるみたいにゃ。3日目は外湯と玩具博物館にゃ」とタテ。
「どこも目を楽しませて貰える所ね。お盆時期にやってそうなイベントや体験工房が少人数でも出来るかお盆時期は混むかスタッフさんに聞いたりしておきましょ」とユリ。
「見学する予定の所には割引券があるようなので、事前に入手しておきました」とダミアン。
最近はインターネットでHPを公開している所が多いので、割引券等も簡単に手に入るのだ。
箱根裏街道を上り、ガラスの森に向かう。
ガラスの森は現代ヴェネチアン・グラスを代表する作品が真近で見られる他、庭園内を飾る紫陽花に飾られたクリスタルガラスがキラキラ輝く幻想的な庭園が楽しめる。
その他、体験工房もあるのでお土産作りも体験出来るのだ。
「ご家族にうまくお手本を見せることができるように、練習をしておいてはどうでしょうか」とダミアン。
ダミアンはサンドブラストのグラスを1つ、知人のお土産として作り、親父さんらは色とりどりのガラスをガラスプレートの上に並べて炉で溶かして作品を作り上げるフュージングにチャレンジした。
「‥‥‥見本のようには上手くいかねぇな。鐵だったら負けねぇんだが」
親父さん、歪んだ紫陽花のキーホルダーを見つめて言う。
続いてやって来たのは、傾斜地を利用して立てられた国立公園内に位置する美術館である。
この美術館もまた、箱根らしいガラスと花(自然)をテーマにした美術館であり、ヒメシャラの森の中に続くアプローチブリッジを通って、ガラス張りのエントランスに入る。
この美術館は2Fが入り口(エントランス)、1Fにロビーと自然が楽しみ乍ら食事が出来るレストラン‥‥と階下に下がり乍ら展示物を見る構造になっている。
「ここは化粧品に関するものもあるのよ」とゆり。
この美術館の寄贈者は化粧品メーカーの元オーナーである。
個人的にじっくり見て回りたいゆりだった。
「お昼ですが、親父さんが蕎麦好きと聞いて箱根湯本と強羅の店を紹介したいと思います」と紅雪。
「どちらのお店でも事前に席の予約をしておく方がいいと思いますが‥‥」
脇道を入って県道を進めば遊覧船のある桃源台までは近いが、ちょっと遠回りをして強羅に立ち寄る事にした。
「俺は蕎麦好きだし、この店は俺は入った事がない。旨いと思うが‥‥オーベルなんとかとか、元箱根のホテルで湖が見える所があるが、折角の旅行だ。普通はそう言う所がいいんじゃないか?」
以前、立ち寄り湯をしたホテルのレストランからの眺めを思い出して言う親父さん。
因に親父さんは強羅でも蕎麦を食った事はあるが、皆に蕎麦を食ったと話したのは河口湖の話である。
髭面の頑固爺だが、なにげにロマンティストなのである。
強羅からくねくねと県道を進み、桃源台に向かう一行。
強羅からの場合、桃源台への最短距離はケーブルカーとロープウェイ利用する方法である。
「くぅのお勧めは、芦ノ湖の遊覧船と箱根神社なの」
桃源台の船着き場で海賊船の形をした遊覧船を指差すくぅ。
そう言い乍ら視線は船ではなく別な場所を向いている。
『アイスクリーム』
子供らしい判りやすさに苦笑する親父さん。
「お前ぇら、暑くないか? 奢ってやるからアイスクリームを皆で食おうぜ」
アイスを舐め乍らのんびりクルーズの一行。
ダミアンだけが絶景を取り逃がさないようにとビューポイントを探して、せっせとシャッターを切る。
「たしか‥‥同じ元箱根に竜神が祭られていたな。元々は商売繁盛だかなんだかの神様だが、今では縁結びが有名らしいが‥‥誰かそこの場所は知っているか?」
「‥‥残念乍ら」
「そうか。そいつは浩介に調べて貰うか」
そう言い乍らタラップを降りて、箱根神社に向かう。
社務所で貰った神宮の案内状を見ていた親父さん。
「なんだ、末社の一つなのか‥‥知らなかった」
縁結びで有名な『九頭龍神社』は陸路で参拝もできるが、大祭・月次祭のみ船にて参拝できるのだと言う。ここで気をつけたいのは九頭龍神社の場所である。箱根神社から遥か離れた所の近くにある。うっかり、そのまま歩いて行くには少々ハードなのであった。
そのまま行きそうだった親父さん渋々諦め、そのまま今日泊まる芦ノ湖湖畔のホテルにやって来る一行。
●3日目
今日は湯本に戻り、玩具博物館と時間が余ったら足湯‥‥と思っていたが、博物館は8/1のリニューアルに併せて休館中である。
「僕もフィギュア等に興味があるので、いろいろ楽しみにしています」と言っていたダミアンは落ち込んでいたがバーチャル博物館のURLを教えてもらって少し復活していた。
同じガーデンミュージアム内にオルゴール美術館を見た後、カフェで昼食を取りと寄木美術館と足湯に立ち寄る一行。
そのまま来た国道1号を上がり小田原に戻る。
はい、これ。と別れ際に紅雪が親父さんに地図を渡す。
「親父さんの一家6人が、観光として向かっても良さそうな場所をマークしてリストアップしておいたけど、他の人のお勧めの場所も追加してみたわ。後は、親父さんのセンスですね」と紅雪が笑って言う。
「まあ、ヴォルの野郎は湯本から御殿場を抜けて、富士山の側を通って大月に車を寄せてくれるつもりだったらしいがな」
と、ここで親父さん何かを思い出す。
「浩介、ここのホームーページが見てぇんだが‥‥」
玩具博物館のパンプレットを指し示す。
浩介はノートパソコンを親父さんの前に持って来て操作する。
画面上に現れた大正時代や昭和初期に作られたブリキの玩具が並ぶ。
ビールを片手に楽し気に眺めている親父さんだった。