女王様と無線機アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
5Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
38.6万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
2人
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期間 |
08/01〜08/05
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●本文
むき出しのコンクリートの天井に太い下水配管が走る。
(「‥‥‥困ったわね」)
遠い窓から差し込む光は昼過ぎを示している。
どう考えても遅刻である。
入社以来、無遅刻無欠席を誇っていたのに‥‥と思わず、この状況下を韜晦しているのはTOMI−TVの脚本家よしりん☆である。
同じ角度でベットで寝ていると体が痛くなるので時々体位を変えているが、その度にジャラリとベットのヘッド分に繋がれた手錠が鈍い音をたてる。
(「全く以って、ぬかったわ‥‥」)
忌々しい状況下では、溜息しか出ない。
「なぁに、お腹が空いたの? 諦めて食べれば良いのに美味しいよ♪」
監視者の男は幼い少年の面掛けを残す線の細い黒髪の青年である。
「三食カップ麺は嫌なのよ。貧乏だった頃を思い出すから‥‥それに君に殴られた所が痛くて、それ所じゃないわよ」
よしりん☆の言葉に青年は楽しそうに笑った。
――時間を半日程遡る。
寝起きはかなり悪いが目覚めは悪くない方であるよしりん☆だが、今日の目覚めは最悪である。
(「‥‥‥嫌ね。風邪でも引いたかしら?」)
痛む四肢と咽の乾きが不快である。
体を起こそうとして腕を動かそうとする重い金属の擦れる音のする。
よしりん☆の目に手錠が目に映る。
どれだけ深く眠らされていたか判らないが、指先がうっ血した赤紫に変色しかかっている。
足の自由が利く事を確認すると腰と足とを使って体の位置を変える。
手首に血が戻って来ると同時に金属で擦れ、皮が剥けた痛みが手首を襲う。
理解したくない状況下であるが、どうやら自分が誘拐されたと知るよしりん☆。
真鍮のポールを使ったレトロなベットに下着姿で手錠で繋がれ、犯人の趣味なのかストッキングと靴は履いたままである。
AV系ドラマの見過ぎのような状況である。
この程度で羞恥心で頬を染めるタイプではないよしりん☆。
ウブな小娘であった時代は遥か昔である。
仕事が回って来ない20代の時はこっそり局に内緒でAVの脚本を書いた事もある。
(「‥‥でも困ったわね」)
昨日番組スタッフと飲みに行ったのは覚えている。
1件目は番組で良く行く居酒屋、2件目も番組の2次会で良く使うバーである。
3件目は、強いスタッフに連れられて何度か言った事があるスナックだった。
そこで意気投合した男に連れられて(他のスタッフも一緒に)4件目は初めて行く店だった。
潰れたスタッフを送る為、そこの店を出てタクシーを拾いに大通り迄出た所迄は記憶がある。
そこを狙われたのだろうか?
それとも4件目の店で何かを飲まされたのだろうか?
取り敢えず脱がされた服とバックを探す為に体の向きを変えた所で――
「あ、おねぇさん。起きたんだ♪」
甘いマスクのイケメン君である。
顔に似合った甘い声‥‥
「何処の誰だか知らないけど、お姉さんは忙しいの。お仕事行かなきゃいけないし帰って良いかしら?」
「んー、俺、留守番だから。おねぇさんが起きたら世話しろって言われているだけだし、途中で気が向いたら遊んでいいって言われているだけだから」
少なくとも誘拐を実行した者が別にいると聞き、舌打ちをしたくなるよしりん☆。
そんなよしりん☆に気がつかないのか青年が言葉を続ける。
「おねぇさん、TV局の人なんだね」
青年の手に握られているTOMI−TVの入館証。
「へー‥‥おねぇさん、歳の割りにいい体しているね」
入館証に書いてある年齢を見て、青年がチャカした口調で言う。
「トレーニングしているもの。この格好は君がしてくれたのかな?」
「そうだよ。全部脱がせるよりそっちのほうがHっぽいでしょう? でも危ないものを持っていないかとか、携帯とか取り上げとけって言われているからね。しっかり身体検査させて貰ったから♪」と抜け抜けと言う。
「携帯?」
「そう、携帯☆ おねぇさんも俺と同じ機種だね♪ 俺、この色欲しかったんだけど、売り切れていたんだよねぇ」
よしりん☆の携帯が青年の手によってまっぷたつ折れる。
(「‥‥見た目より性格が悪いわね」)
それならば簡単に青年を怒らせて隙を作る事も簡単だろう。
実際、青年はよしりん☆に急所を蹴られ逆上してナイフで切りかかってきた所まではよしりん☆の計画通りだった。計画通りにいかなかったのは、よしりん☆の脚が男の視野から消えた隙を狙って半獣化しようとした所で青年の携帯電話が鳴った事だった。
青年はよしりん☆にナイフ突き立てるのを止め、慌てて携帯に出る。
電話の相手から叱責されたのだろう、青年は必死に弁解をしている。
会話からこの部屋のどこかに監視カメラが仕込まれていると確信したよしりん☆。
やっかいである。
受信機がネットに繋がれていたら、うかつに獣化等出来ない。
監視者の青年は、よしりん☆に背を向けDVDを見ながらチップスを摘んでいた。
(「上手くやれば、ヘッド部分のポールが折れるかもしれないわねぇ」)
ベットの上で両脚を頭の方に思いっきりもっていき、梃子の要領で全身に勢いをつけ、体を伸ばす反動で力一杯ポールを引っ張る。
手錠をつないでいたベットのヘッド部分がハズレたと思った瞬間、それは起こった。
「ちょっと、冗談じゃないわよ!」
DVDを見ていた青年が突如NW化したのだ。
真鍮のポールを構えたまま、横っ飛びをするよしりん☆の脇をNWの腕が掠める。
青年の携帯電話を掴むと一目散に出入りドアに走るが、開かない。
NWの腕がドアを凹ませる。
煙々と紫煙が立ち込める会議室の中、携帯電話が鳴る。
「‥‥はい、鬼塚」
『鬼塚、私よ!』
「よしりん☆か! お前、会議をすっぽかしてどこにいやがる?」
『NWと戦っているのよ! 細かい場所は判らないけど、これから言う人数と物を集めて大至急来て欲しいのよ!』
よしりん☆のリクエストは以下の通りである。
トランシーバー
道路封鎖要員
ネット上に散らばる情報を探す担当者
戦闘員
「食われたら祟ってやるから!」
●リプレイ本文
「おまぇなぁ〜、全く‥‥局のサーバーで犯罪に加担しろってぇのか?」
「別にウィルスって訳じゃないよ。スターの一般投票とかに使われるソフトでーす」
森里時雨から話を聞いた鬼塚の顔が不機嫌そうに歪む。
「阿呆ぅ‥‥TV局がそんな事して言い訳立つか。故意に回線パンクさせるのは十分犯罪だろうが‥‥」
時雨の提案するソフトは海外メディアが行った人気投票に使用され、回線パンクさせた代物だった。
中々折れない鬼塚だったが最終的に首を立てに振ったのは、今回の最大の敵は時間であり、単によしりん☆だけではなく救出に向かった皆へのリスクを考えたからである。
──同刻。
「チームは電話で話した通り3・3・3・2で宜しいですね」
古河 甚五郎(fa3135)と車のボンネットに倉庫街の地図を広げる。
移動時間の間に行ったサーチペンデュラムの結果の擦り合わせである。
全員が同じ区画を指し示している。
しかし全員焦っていたのだろう、夜間捜索にもかかわらず灯の携帯者が少ない。
実際、ボンネットを地図を照らしているのは、MAKOTO(fa0295)のランタンと携帯電話のモバイルライトである。
通常、閉鎖された倉庫街に人が立ち入るのは解体業者を含めて昼だけである。
最小限の街路灯のみが点灯している。
「完全に電気が落ちていなくて幸いなのじゃ」とDarkUnicorn(fa3622)。
「でもこれならば撮影のフリをする必要がなかったですね」と稲森・梢(fa1435)。
「暗くて人がいない所が好きなカップルとか、怪しい取り引きをする人とかいるかも知れないから『備えあれば憂いなし』だろう?」とみどりのずのうはを着込んだ尾鷲由香(fa1449)が慰める。
「にしても‥‥まさか尽く得意分野を封殺されるような作戦や状況となるとはね」と苦笑する神保原和輝(fa3843)。
「‥‥なあ和輝、思うんだけどさ。この状況‥‥‥何か前にもこういうパターンは無かったっけか?」と神保原・輝璃(fa5387)。
「私はTV局とかでNWと交戦した事あるから慣れているけど」
和輝さんは大変だよね。私、翼がなくて本当に良かったー。と帽子を被り直す叢雲 颯雪(fa4554)。
「和輝といい颯雪といい、頼むから無茶だけはしないでくれ‥‥‥目的は達成されても、酷な結果になるのは辛いからな」と輝璃が二人を見比べて言う。
輝璃の言葉に驚く和輝。
「そんなに心配しなくても結構、私は自分の分は弁えているつもりだから」と苦笑する和輝だった。
今回の捜索は各個人の特殊能力及びサーチペンデュラムの他、盗聴器(盗撮器)の発見にトランシーバーを使った「フォックスハンティング」も同時に行われる。
この方法、TV番組では「泥棒と刑事ゲーム」として紹介され、野生動物や飛行機のブラックBOXの調査・捜索で使われる際は「3点計測法」と言った方が判りやすいかもしれない。
2箇所若しくは3箇所から一斉(正確な時間合わせをして)に発信されている電波の方向を捜索を行う 。
測量地点を移動し、繰り返す事により場所を突き詰める方法である。
何故そんな方法で場所の特定ができるのかと言えば、
2点(直線)、もしくは3点(三角形)というのは、中心が他の図形より判別しやすいのだ。
この図形を複数組み合わせる事によって中心を絞り込めるのである。
まずは発信機の周波数の特定を行わなければいけないが、幸いな事に影響を受けそうな電磁場の発生源は周辺にない。
コズエに付き添って来た新井久万莉の特殊能力 透過金瞳は、イザと言う時迄とっておく必要がある。
「それにしても古河は何故こんなに詳しいんじゃろ? 怪しいのッ」とヒノト。
「企業秘密です。上手く行けば音声が傍受できます」とさらりとヒノトの追及をかわすコガ。
「‥‥思ったより広いわね」
該当する倉庫を見つけた一同。
これでは久万莉が透過金瞳を使用しても通路側のカメラしか捜せないだろう。
「さっきからよしりん☆が答えないぞ」とイーグルが苦々しく言う。
だが一刻の猶予もない。
携帯電話どころか知友心話にも反応しないのだ。
「よしりん☆さんっ! 居たら返事をしてください!!」
コズエがドアを叩く。
「ここは任せな! コズエは初めの予定通りコガと一緒に道路の封鎖に回ってくれ」とイーグル。
サーバーへの攻撃と同時にドアを破壊しての突入である。
コガが携帯でTOMIにいる時雨に指示を出し、一斉にサーバーへ大量データーを流し込みサーバーダウンを試みる。
「いい? 行くよ!」
「伊達に体を鍛えちゃいないさ」とイーグル。
曲がり、開かなくなったドアがマコトの鉄山靠とイーグルの体当たりで内側へ強制的に破られる。
中になだれ込むように入るマコトとイーグル。
続いて脇から走り込んで来たヒノトの口から短い悲鳴が上がる。
腹を突かれ、よしりん☆の背中からNWの指先が覗き、右肩が大きく抉られているのが見える。
意識がないよしりん☆の体がずるりと床に落ちる。
狩り(遊び)を邪魔された虎のように唸るNW。
和輝が虚闇撃弾をNWに放ち、NWの注意をよしりん☆より引き離す。
唸り声を上げるNWに怪しく笑う和輝。
「NWになったあなたに‥‥私の闇、見切れるかしら?」
ヒノトを背に庇い、事務所の外に毛布で包んだよしりん☆を抱きかかえ廊下に出るイーグル。
久万莉が発見した隠しカメラを床に叩き付け壊す颯雪と輝璃。
最後の一つを叩き壊す。
「カメラは止めたわ! 能力を使っても大丈夫よ!」
「じゃあ‥‥遠慮なく、クッキングタイムだよ!」
マコトは叫んだ。
重体のよしりん☆を車に運び込んだヒノトが、微かな乍らもよしりん☆の呼吸を確認する。
「よく死んでいなかったな‥‥‥」
呻く様に言うイーグル。
体を包み、傷を抑えていた毛布は真っ赤に血で染め上がっている。
よしりん☆にあったらチャカしてやろうと思っていた言葉が丸ごとふっ飛んでしまったイーグル。
「S男に憑いたのが、ラッキーだったんじゃろう?」
「ヒノト、笑えないぞ。その冗談‥‥‥」
普通だったらとっくに死んでいる傷である。
人間に憑依した場合、そのNWにも影響されるというが猫が捕らえた鼠を甚振るように弄ばれたのだろうか?
「兎に角、一刻を争うのじゃ」
ヒノトが神光霊癒をよしりん☆に施す。
イーグルの見ている間に抉られた傷跡が塞がり、失われた肉が盛り上がって再生して行く。
鋭敏脚足を用い、銃を撃ちながら間合いを詰めてていく颯雪。
念を込めたウィンドダガーでNWの右脇を切り裂く。
振り抜いたそのスピードを生かすため、ウィンドダガーを手から放し、そのまま返す手で放雷紫爪を叩き込込もうとした瞬間、NWの右手が頭上から颯雪へ打ち込まれ、強かに顎を打ちつける颯雪。
「させるかよ!」
輝璃の振り回すダークデュアルブレードを避ける為、後ろに跳び下がろうとするNWを羽交い絞めし、そのままパイルドライバーに持ち込むマコト。
「大丈夫?!」
すばやくNWから距離をとるマコトが声を掛ける。
「颯雪、だから突っ走るなと‥‥」
輝璃が颯雪の腕を取り、立たせようとする。
腕を振り払い、その言葉を遮る颯雪。
「口の中を切っただけだよ! 銃の方が得意だけど、接近戦の方が好きなんだよ、私は!」
「ケンカなら後にしなさい!」
和輝の虚闇撃弾による一斉砲撃でNWの足が止まった所に踏み込み上段の構えで全体重を掛け、NWの頭にダークデュアルブレードを一気に振り下ろす輝璃。
胸元まで切り裂かれたNWの体が動きを一瞬止める。
「見えた、コアだ!」
マコトの拳がNWの背中から腹に突き抜け、NWの体からコアを強制的に分離させる。
颯雪、和輝が残り弾を全弾打ち込み、コアは破片を散らした。
「後始末が大変そうね‥‥」
コズエはNWを倒した後の部屋の惨状を見て、苦笑いをした。
──一方、時間は少し遡る。
ベルシード(fa0190)とリーゼロッテ・ルーヴェ(fa2196)は、倉庫街の片隅で携帯電話で何かを見ていた不審な男を発見した。
「動かないで!」
ベルが腕を広げ、サングラスを掛けた男を制止する。
関係ないと言った感じで、男はベルとロッテに近付いて来る。
「そこで、立ち止まりなさい!」
ベルは再び言霊操作で男に静止を試みる。
男は嘲笑うかのようにゆっくりと小柄なベルに向かって手を伸ばす。
ベルの顔に男が触れた瞬間、男の背中に大きな翼が出現する。
「!!!」
バチっ!
短い悲鳴と同時にベルの体が跳ね上がり、次の瞬間地面に倒れ伏す。
「う、動けるの?」
「いいや、こいつの言霊操作は効いたな。足は動かないが、その程度では俺は止められないぞ」
嘲笑う男にロッテは誘眠芳香を放つ。
「誘眠芳香か‥‥悠長な事だ。仲間が死ぬぞ」
男は気を失っているベルの首の後ろに靴底を当てる。
「知っているか? ここを潰すと‥どうなるか? お前らの仲間に治癒能力者がいるようだが下手をすれば半身が動かなくなる」
「や、やめて!」
「おやおや、眠くなって来たようだ。どうする?」
男は楽しそうに体を揺らす。
ロッテが誘眠芳香から言霊操作に切り替えようとした瞬間、男の右ストレートがロッテの顔面にヒットし、真後ろに吹っ飛ばされる。
別に隙があった訳でもロッテが格闘に劣ってたとも言わない。
ガードをすり抜けたパワー、男との体格と体重差はカバーしきれるものではない。
間髪を置かず、脚払いを食らい、受身を取る事も出来ず頭を強かに打ち付ける。
軽い脳震盪を起こし乍らも必死に防御姿勢を取るロッテ。
それを厭ともせず、男はロッテに容赦なく拳を振るう。
地面に倒れるロッテ。
「‥‥猫と狐には永遠に理解出来ないだろう空へ招待しよう‥」
このままでは空に連れ去られ、気が着いたら地面とキス。という事になりかねない。
くらくらと定まらぬ視線で必死に男を睨むロッテ。
その時、救いの手が伸びた。
「ベルシードさーん、リーゼロッテさーん! どこでーす!」
よしりん☆救出後、二人と連絡がつかない事に気がついた参加者達が探しに来たのだ。
「‥‥運の良いと言うべきか‥‥まあ、いい。今死ぬか、先に死ぬかの差でしかない。今死ななかった事を後悔しないといいがな‥‥クククっ」
歪んだ笑いを顔に浮かべると男は夜空へと消えて行った。
元気な者達は‥‥と言うよりも特殊能力フル活動でよしりん☆の回復、ロッテ・ベルの治療にあったヒノトのリクエストで芸能人ご用達の24時間営業の焼肉屋で祝いの席が設けられた。
「コガは本当に食わんのかの? よしりん☆無事救出と、わしの『プロレスごっこ玉』就任祝いじゃというのに」とヒノト。
本来であれば20年来の友人であるよしりん☆の救出もまっ先に参加したかった鬼塚であったが、ディレクターという立場上そうは行かない。
本人は一応検査と言う事でよしりん☆とロッテ、ベルに付き添い、病院に行っているが、「代りに『好きなだけ食え』」と鬼塚がクレジットカードを投げて寄こしたのだ。
本来ならばタダ飯と喜ぶべきだが、
「さすがにアレを見たばかりで食べれませんよ‥‥」
時雨の探し出した秘密のサイトは、よしりん☆救出後アクセスを試みた所、発見出来なかったが、万が一用に証拠としてダウンロードしておいた画像は何度見ても胸くそが悪くなる悪趣味なモノであった。
「しかし‥‥よしりん☆にしても、攫った連中にしても今回の件は予想外‥‥‥ってか?」と焼けたカルビをつまみ上げた輝璃が言う。
「難しい所ですね。今回の盗撮映像はサイトの運用者‥‥多分、獣人だったと思うんですよ」
「獣人? 物好きな輩もいたもんだぜ」とイーグル、店員にビールのおかわりを頼む。
「ええ、獣人ならよしりん☆さんを知らないとは考え難いですよ。それを敢えて誘拐・監禁したんですよ」
冷麺にするか、それともビビンバにするかメニューと睨めっこしていたコガだったが、結局水キムチを頼んでいた。
冗談抜きにサイトの画像がエグかったようだ。
「意図的に仕込まれたとしたらなんでなのかな? よしりん☆に恨み?」
骨付きかルビを鋏で切っているマコト。
「入会申込みをした所アンケートが送られて来たんですが、内容がかなり犯罪に傾倒した獣人っぽい人が作ったアンケートでしたよ」
ベルとロッテが対峙した男も獣人であった。
犯罪マニアでも人の趣味は色々ですが‥‥DSじゃないといいんですがね。と最近活発化してきたDSを思い出し、コガは呟いた。
「取り敢えず、考えても判らない事は後にして。今日はよしりん☆さんが無事に救出できた事をお祝いしましょう」とコズエ。
「そうですね。折角、鬼塚ディレクターのおごりです。普段食べれないものを頼みましょう」と和輝。
「ならば和牛だな」とメニューを開く颯雪。
こうして夜は明けていく。
──尚、翌月届いた請求書の額を見て鬼塚が青くなったのは、別の話である。