ザ・DOG ミニドラマアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/13〜08/17

●本文

 TOMI−TVの深夜枠に「潜入捜査官−ザ・DOG−」というドラマがあった。
 目出たく外伝「ゆかり」がONエアされ、1stシーズン、終了と相成った。
 裏ではTOMI職員のメイン脚本家が誘拐されたりとかゴタゴタがあったが、そんな事はTOMI全体の営業には関係ない。2ndシーズンに向け、この夏はDVDを発売しようということになった。
 それもBOXで。
 どうせならオマケDVDを着けようと言う事になった。

「ま、あれだな。NG集やらイニシャルトークとかもあるが、1stシーズンのキャラクターでミニドラマをつけても面白いかも知れないな」と鬼塚ディレクター。
「ミニドラマですか?」
「そうだ」
「‥‥はぁ、何をすればいいですかね?」
 よしりん☆のピンチヒッターに抜擢された男は使えない男だった。
「出演者の数だけアイデアはあるだろう‥‥参加者達と話し合って決めろ」
 頭の痛い、鬼塚ディレクターであった。


●ドラマ「潜入捜査官」DVD制作委員会 おまけドラマ出演者、他募集

●用語
「犬(DOG)」潜入官、サポーター、リーダーによって構成される実働潜入捜査チーム(部隊)。
「実働潜入捜査官(潜入官、顎(牙))」調査対象組織に直接潜入する実働潜入捜査チームの捜査官。
「サポーター」潜入捜査チームの補助役。潜入官を助け、情報収集・解析、回収・廃棄、配車等を行う。
 潜入官とは異なり、戸籍を捨てていない者もおり、定職に着いている者も多々いる。
「リーダー(ドッグヘッド)」実働潜入捜査チームを指揮。1チーム1リーダー。
「犬飼(ブリーダー)」複数の犬チームを纏める人物。複数いるらしい。
「鳩」犬飼専用の連絡用員。リーダーのみと接触。
「狼」組織全体の不利益になる人物を始末する事を専門にする始末屋。銃を携帯している。独自の支援組織を構成している。ランクは犬飼と同等。実数は総纏のみが知る。
「総纏(そうまとめ)」非合法な組織「犬」の最上層部、公安や警察、閣僚経験者や経済界等良識者達(円卓)で構成される。

「1人5分程度の時間をやる。例えば犬としての仕事を終えた後、お祝いの儀式的に巨大パフェを食べるとか、日常を演じてもらう。アイデアは‥‥犬の世界観を外れなければ何をしても良い」と鬼塚。
「外れたらどうなるんですか?」
「簡単だ。出演料なしで、DVDにも載らん。罰としてAD代わりにこき使ってやる」

●今回の参加者

 fa0361 白鳥沢 優雅(18歳・♂・小鳥)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa2989 稲川ジュンコ(24歳・♀・ハムスター)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa4840 斉賀伊織(25歳・♀・狼)
 fa5054 伏竜(25歳・♂・竜)
 fa5256 バッカス和木田(52歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

「俺は‥俺にできる仕事をやるだけだ‥‥」
 そういうカメラマンの鶸・檜皮(fa2614)に鬼塚が苦笑いをする。
「まあ、言うのは簡単だな」
 鬼塚の「鶸」の印象は、言われた事はちゃんとソツなくこなすが「言われた事しか出来ないカメラマン」である。
「俺の個人意見としては、駆け出しの新人カメラマンの方が熱心な分、お前より好感が持てるぜ」
 今回のような撮影の場合、細かい照明や演出との打ち合わせ等、人手がないことで有名な犬の現場では、カメラマンです。
 絵コンテ通りに撮影します。ではなく、演出を更に際立たせるためにどこをどう撮影する等の意見を制作サイドに提示がする位の根性がなければならないのだ。
「まあ、はっきり言えばアメリカ式のお前みたいな奴が本編撮影でいると士気に関わる。即、別のカメラマンを寄こして貰う所だ」
 おまけで良かったな。
 鬼塚は鶸に向かってそうに言った。
 

●湯乃葉ゆづき・DarkUnicorn 編
 ──とある楽屋。
 一人黙々と携帯電話を見つめ操作するゆづき(湯ノ花 ゆくる(fa0640))。
 メルマガで送られてくる日々起こった事件のダイジェスト記事からとある事件のリンクにジャンプしたゆづきは、ニュースの全文から犬達の匂いを嗅ぎ取る。
「‥‥犬さん達は‥‥相変わらず‥‥楽しそうなことを‥‥していますね‥‥羨ましいです‥‥」
 嘗て『監視者』として犬達の行動を監視していた事もある。
「‥‥最近‥‥仕事‥‥回って‥‥来ないです‥‥」
 ゆづきが所属している裏組織から連絡が来ないのである。
 大きな溜息を吐く。

 コンコン──。
 ドアが叩かれ、外からADの声が掛かる。
「そろそろメロンパン芸人さんの出番なのじゃ。スタンバイをお願いするのじゃ」
「‥‥あッ、ハイ‥‥わかりました‥‥デス」と答えるゆづき。
 楽屋のドアには『メロンパン芸人』というプレートが貼り付けられている。
「‥‥いま‥‥行きます‥‥」
 そう言いながら、携帯を腰に下げたメロンパンの中に仕舞う。
 鏡に向かい、頭に飾ったメロンパンの角度を再確認する。
「‥‥本業だけでは‥‥メロンパンが‥‥たくさん‥‥食べられないからと‥‥始めた‥‥副業(メロンパン芸人)ですが‥‥」
 ゆづきの楽屋にファンから差し入れられたメロンパンが並ぶ。
 時々、桐の箱に入ったメロンパンまでもが差し入れられる。
「メロンパンは‥‥たくさん‥食べれますが‥‥」
 メロンパンは大好きだが、スリルを伴う裏家業(本業)も大好きなのである。
「これでは‥‥どっちが‥‥本業なのか‥‥わからないです‥‥‥」
 再び溜息を吐き、ゆづきはステージに向かう。

 携帯電話を見つめるDarkUnicorn(DarkUnicorn(fa3622))は、にやりと怪しい笑みを浮かべる。
 カットは変わってしとしとと雨が降る夜の住宅街。
 街灯が切れかけ、ジージーと嫌な音を立てて点滅している。
 傘を差し、足早に歩く女の後を黒い傘を差したDarkUnicornがついて行く。
 先を行く女は辺りを伺うと廃虚同然の工場に入り込む。
 女の後に続いてフェンスを潜ろうとするDarkUnicornに緑の針が飛んで来る。
 傘で針を避けるDarkUnicornは、柄を引き、傘に仕込んだ刀を抜く。
 丸い物体が飛んで来るのを確認したDarkUnicornは開いたまま傘を相手に投げ付ける。
 間髪置かず相手に向かって一足飛びに間合いを詰め、相手に向かって刀を降り下ろす。
 女はがっちりと2つの丸い物体で刀を挟み込む。
「‥‥真剣白刃メロンパン取りとはのッ。腕は落ちていないようじゃのッ♪」
 にやりと笑うDarkUnicorn。

 真剣白刃メロンパン取りをしたゆづきの頭にDarkUnicornが投げた傘に弾かれたメロンパンが『ぽふん』と当る。
「‥あの‥針を防ぐなんて‥相変わらず‥メチャクチャです‥‥ところで‥‥わざわざ‥直接‥来たという事は‥‥仕事ですか?」
 やはり気がついておらんのじゃな。と溜息を吐くDarkUnicorn。
「‥‥仕事というか、それ以前の問題というか、お主との契約期間が過ぎて切れてしまっていての。しかも悪い事に本部もお主も互いに忘れて居って、それに気付いたわしが再契約をと‥来た訳なのじゃ」
 黒い手提げから書類を取り出す。
「‥そういえば‥‥忘れてました‥だから仕事が‥なかったんですね‥‥ごめんなさい‥」
 崩れかけたコンクリートの壁を下敷き代わりにしてサインをするゆづき。

「うむ。契約完了なのじゃ♪ これで、また仕事が来る筈じゃ。そうそう、仕事と言えば今日のデパート屋上のメロンパン芸人ショーは良かったのじゃ♪」
「‥‥見てたですか‥!?」
 観客席にはそれらしい姿はなかった。
「こっそりのッ。見事だったのじゃ。案外、裏の世界に入ってなければあれで食っていけそうじゃな♪」
 では、また明日も見に来るのじゃ♪
 楽しそうに言うDarkUnicornに対して笑えないゆづき。
「契約更新‥‥早まった‥のでしょうか」
 呟くゆづきのアップから画面はフェードアウトする。


●高田鈴 編
 ──一番鶏も鳴ききらぬ、まだ夜が明けない早朝。
 鈴(稲川ジュンコ(fa2989))は己のベットで眠っている。
 そんな鈴のベットの側でうごめく怪しい人影。
「‥‥現在の時刻、午前4時21分‥まだ空は真っ暗です‥‥」
 むちりとした鈴の太股が露になっているのに気がつき、レポーターの女性がさり気なく布団を直す。
 レポーターが鈴の耳元で囁く‥‥。
「ここはお寿司屋さんです‥」
 寝乍ら『にまぁ』と笑う鈴、余程寿司が好きなのだろう。
「でも、好きな物は食べれません‥‥何故なら奥からお父さんが出て来て、自分の釣った魚しか食べちゃダメと言っています」
 寝ている鈴の眉間に皺が寄る。
「仕方なく貴女は海にやって来て‥釣り竿を下げています‥1時間、2時間‥‥吊れません。竿を変え、マグロ釣り名人に教えを請い、『マグロを悩殺するのだ』と訳の判らない命令を信じて、バニー姿で腕立て伏せをしたり、『マグロの気持ち』になるのだとマグロぐるみを着せられ生活をするあなた‥‥」
 うーんうーん、と苦悩し乍ら眠る鈴。
「粘りに粘ってやっとマグロが連れました‥‥」
「大トロ‥ヅケ‥‥中トロ‥」
 ヨダレを垂らす鈴のアップ。

 まさに夢の中で鈴は待ちわびたマグロを口にしようとした瞬間。

 ドッカーーーーーーン!

 大きなバズーカ型クラッカーの爆発音。
 衝撃で棚から物は落ちて来る。
 アパート中の電気が点灯し、近所の犬がけたたましく吠える。

「社長! あんなの聞いていません!!」
 鈴が聞いたのは、若手芸能人の家訪問だけである。
 社長に噛み付く鈴。
「隣近所から怒られるし、落ちて来た段ボールに頭をぶつけるし! サスペンスドラマとか田舎の両親に自慢できる仕事を下さい!」
「じゃあ、こんなのはどう? ちょっとアクションがあるけど、狙われた主人公の身替わりを引き受ける探偵助手‥‥」
「怪しくない仕事ならやります!」
 そう言い乍ら今朝夢で見た怪しいトレーニングイメージがモンタージュのように思い出させる。
 それを思い出し、鈴自ら『最低だ』と歌うシーンで画面はフェードアウトする。


●戸波・篝 編
 ──目覚まし時計の合成音が広くない部屋に響く。
 ぼんやりとした疲労感に篝(斉賀伊織(fa4840))は、けだる気にベットから身を起こす。
 視線の先にふと、電話器が入る。
 どこかに電話をかけた篝はシャワーを浴びる。
 温められた肌に浮き上がる大きな傷。
 その傷を確認するように撫でる篝の指。
 ローブの上の小さなゼミの集合写真。
 生徒と一緒に写る篝。
 喪服に着替えると、適当に電車を乗り継ぎ、見知らぬ町に降り立つ。
 手近な花屋で線香と花を買い、一番最初に目に入った寺の山門を潜る。
 社務所で場所を確認する篝。
 目指すは墓標のない墓‥‥色々な事由で無縁仏として葬られた者達の墓である。

 フラッシュバックのように今朝の新聞記事を思い出だす篝。
 自分が先日迄関わっていた小さな事件の続報。
(「助けられなかった‥‥」)
 潜入官達の仕事は、全て上手く行くとは限らない。
 志半ばで倒れる者、ミッション事態が失敗する事も多々有る。
 篝のミッションは、護衛対象を失った事で終了している。

 膝を折り、花を供える、祈る篝。
「誰にも知られず、死して屍拾う者なく‥‥私達の行き着く先ね‥‥」
 そう呟く篝。
「そうでしょうか? 少なくとも貴女のような人が花を手向けてくれる」
 住職らしい男が篝の側に立っていた。
「忘れ去られて行くというの寂しい事かもしれませんが、悲しい事では有りませんよ」
 人と言うのは、生きる為に色々な事を忘れて行くものなのですから。
「そうね‥‥」
 篝は寺を後にする。

 柔らかい色遣い化粧をしてスーツを着込む。
 鏡の前で伊達眼鏡をかけ、最終的な確認をする。
 出かける篝の後ろ姿で画面はフェードアウトする。


●田上慶次 編
 ──とあるスポーツジム。
 黙々とバーベルをカールアップする慶次(伏竜(fa5054))。
 潜入官として入っている間は思う存分なトレーニングに集中する事は出来ず、鈍ってしまった筋肉を一刻も早く取りかえすべく、ほぼ毎日同じ時間にジムに通う。
 誰に話し掛けるではなく、筋肉の反射運動や筋持久力などに重点を置いた自分で組んだカリキュラムを、ただ黙々とマシンに向かいこなす。
 トレーニング後シャワーを浴び、ジムの前のコンビニで牛乳を1本買い、一気に飲み干す慶次の姿は、1週間も立たずジムに通う会員の噂になった。

 慶次が牛乳を飲みを終わるのを待つ鳩の少女。
 牛乳パックをゴミ箱に放り込む慶次。
「直接なんて珍しいな」
「携帯電話が繋がらないからです。アパートの隣の人に聞いたら『部屋にいなかったらジムだろう』って教えて下さいました」
「そう言えば電源を切ったままだったな」と慶次。
 ジャケットから携帯を取り出し、電源を入れる。
「‥‥‥‥‥‥(ジムとアパートの往復)楽しいんですか?」
 筋トレと縁遠そうな鳩の少女は怪訝そうに慶次に聞いた。

「‥‥そういやぁ、あの牛乳のお兄ちゃん最近見かけないなぁ」
 腹を揺らす会員の一人が、ふと慶次の姿が見えない事に気がつく。
「ああ‥‥なんでも急に海外のお仕事を決まったとか、お辞めになりましたよ」
 トレーナーの一人が応える。

 アパートの一室。
 慶次の住んでいた形跡は全くなく、引き払われている。
 薄暗い部屋を画面は映し、フェードアウトした。



●鴎木正克編
「‥‥ああ、全く! このパソコンと言うのは‥‥」
 マウスを操作していた正克(バッカス和木田(fa5256))が、イライラしたように左ボタンをクリックする。
 先日、OSをアップブレードしてからというもの、どうもパソコンの調子がどうも今一つである。
 インストールしているソフトは思いいつく限り秘書のアドバイスでアップグレードしたが、まだ対応していないソフトが残っているのだろうか?
 現在の正克は法曹界のオブザーバーという立場であるが‥‥肩書きがなければ、ただの無職の親父である。
 正克の復職を望む声も聞こえてくるが、『その意志はなし』という態度を貫いている。
 しつこい相手には、
「今迄忙しすぎましたからね。『早すぎる引退』とおっしゃって頂くのは非常に有り難い事ですが‥‥最近はパソコンと散歩が趣味になりましたよ」と応えている手前、インストール等の簡単な操作は正克が行っているのだ。
 勿論、お遊び用のプライベートパソコンに限るのだが‥‥。
「ああ‥動いた。どこかにスパイウェアでも仕込まれているんですかね‥‥」
 画面上にポップアップされた最新ニュースで報じられたテロ事件の続報を探してクリックした所、ピクリとも動かなくなってしまっていたのだったが、今は遅い乍らもなんとか動いている。
 表示されたアラビア語と英語の海外メディアサイトを読む正克の表情が見る見る険しくなる。
 溜息を吐き、背もたれに身を任す正克。
 目頭を揉む。
「今は‥‥動く時期ではありませんね」
 水を飲もうと水指しを掴む手が幽かに震える。
 正克が処断した兄、憲正が犯罪組織と癒着する切っ掛けが兄の知人の娘がテロ被害にあった為と最近知った正克だった。
 日本人は地球の裏側で常に起っている悲劇的行為に国民全体的に感心が薄い民族である。
 だからといって、自ら武装する事によって対応する事が、被害者にならない為の解決手段になるとは限らないし、兄、憲正が選択した武器を入手する為の海外犯罪組織との癒着は、兄、憲正亡き後も多くの犯罪を引き起こしている。
 斜陽に正克の書斎が茜に染めあがる。
 書棚に飾る古い写真も赤く染まる。
 学生服姿の正克と憲正の間に妹らしい少女。
 これから出かけます。そう、インターカムで秘書に声を掛ける正克。
 秘書からはこの後、アポイントがある旨を告げる。
「‥‥今は会いたくありません」
 ジャケットと帽子を纏う。

 セダンを降り、坂を上がる正克。
 懐かし気に故郷を見渡す正克、手にはあの人が好きだった花を握る。
(「‥あの丘、僕らの母校。そして、裏手に広がるのはあの人の眠る墓地‥‥」)
「‥‥今、生きているのは僕だけです。あなたの望んだ正義はどこにあるのでしょう?」
(「僕を導いて下さい──」)
 青い空に真っ白な雲が広がる。
 風に揺れる白い花と空を飛ぶ白い鳥──。
 画面はホワイトアウトした。