「7」1周年記念ライブアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/12〜10/14

●本文

 古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。
 厳ついコンクリートの外壁と大きな赤錆が浮いた鉄の扉が印象的で、来る人を拒むように聳え立つ。唯一ライブハウスである証拠と言える物は、ネオン看板ぐらいのこのライブハウスを浩介が店長を引き着いて丸1年になる。

「たまには私に企画させて下さい♪」
 スタッフのモモが、にっこり笑って浩介に言う。
「‥‥‥まともな物なのか?」
 新聞を読んでいた顔を引きつらせる浩介。
「えー、店長が『色物は嫌きだが、女装が好きな訳ではない』のは重々知っていますよ。それに今はそんな事をやっている時期じゃないでしょう?」
「7」のある半工業地帯周辺でマンション用地買収が進んでいる。
 景気回復が言われる昨今だが、中小業者にはまだまだ逆風で廃業に追い込まれる工場もまだ多い。
 新しくマンションができる場所によっては「7」は風俗営業法の関係で永年営業していたこの場所から立ち退かなくてはならなくなるのだ。
「真面目に皆さんにアピールです。丁度リニューアルオープンして1年が経ちましたので、1周年記念ライブなんてどうですか?」
「1stアニバーサリーイベントライブが‥‥‥いいね」

 斯くして「7」で記念ライブが開催される事になった。
「で、ですね。今回、関係者オンリーにした打ち上げパーティを店長と親父さんに内緒でしたいんですよ。なので、協力宜しく♪」


●出演者募集!
 テーマ 『思い出』
 グループを問わず、ソロ(奏者、歌手のみ)参加も可能。
 演奏は、タイトル・歌詞・曲は、オリジナル限定。
 ピアノ&ドラムは、貸し出し可能。
 音源を持ち込む場合・バックバンドが必要な場合は、スタッフにお申し付け下さい。

●今回の参加者

 fa0595 エルティナ(16歳・♀・蝙蝠)
 fa0597 仁和 環(27歳・♂・蝙蝠)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa5030 ルナティア(17歳・♀・蝙蝠)
 fa5302 七瀬紫音(22歳・♀・リス)
 fa5538 クロナ(13歳・♂・犬)

●リプレイ本文

「開店1周年、おめでとう御座います‥‥店長、脱サラ1周年はもう少し先かね?」
 ライブ前、店長室を尋ねた仁和 環(fa0597)。
「俺か? めでたく1年と1ヶ月だ。お蔭で新人だって言えなくなった」
「そーいえば、1年間ついに兄貴とステージで二人揃う事はなかったわ」と苦笑する千音鈴(fa3887)。
「そーいえば、そうだな」と親父さん。
 兄弟姉妹揃ってステージを踏む者もいるが、千音兄妹は揃って演奏した事が「7」ではない。
「一度見てみたい所だな」
「んー? 機会があったらね。兎も角、今後ともどうぞ宜しくね」と笑うちー。

「『7』が閉まっちゃうんですかっ!?」
 挨拶もそこそこエルティナ(fa0595)が口を開く。
「始まりがあれば終わりがある以上は仕方ないんでしょうけど‥‥」とルナティア(fa5030)も言う。
「どこからそんな話が出た?」と呆れたように言う親父さん。
「まだ、うちが引っ掛かる所に買収話は規程ないから安心してくれ」
 「7」がなくなる。と思ったらしい双児の顔を見比べて苦笑する浩介。

「しかし何を企んでやがるんだか‥‥‥」と口髭を捻る親父さん。
 いつもは控え室よりスタッフルームにいる時間が長い亜真音ひろみ(fa1339)やスモーキー巻(fa3211)等、殆どの出演者達はちょっと顔を出した後、すぐに控え室に戻ったり、調整があるからと草々に店長室やスタッフルームから姿を消している。
 親父さんが出演者控え室に入ろうとすると「着替えています」と断られる。
 クロナ(fa5538)と言えば、親父さんの顔を見るとパッと逃げてしまう始末である。
 控え室前の通路では七瀬紫音(fa5302)が譜面と必死ににらめっこし、ぶつぶつと独り言を言い乍らコードを確認している。
「話し掛けないで下さい!」
 声をかける前に怒られる始末である。
「まあ、こういう時もあるでしょう。ライブが始まる迄、俺達は部屋にいましょう」
 苦笑し乍ら浩介は言った。

 ***

 1曲目はエルとルナのコンビのコンビである。
 今回作った曲は、敢えてタイトルを着けなかったと言う。
 ゆっくりとしたピアノの音で曲はスタートする。

【none title】
 Vo&ハーモニカ:エルティナ P:ルナティア 『』ハモリ
♪♪♪〜
(ピアノとクラシックギターのメロディにハーモニカがゆっくりとしたリズムを響かせ序章が始まる)
 ねぇ 覚えてる?
 同じ季節を 見るようになった あの日から
 どれぐらい 経ったかしら?
 まったく違う世界を 生きてきたのに
 巡り出会った 奇跡の時間
(ピアノとギターのメロディにゆったりとしたエルティナの声が重なる)

 何時までも なくしたくないの
 ずっと となりを 歩いていきたいの
 たとえ 離れ離れになっても
 心は ずっとずっと側にいる
(柔らかな歌声にピアノの音が重なり曲を盛り上げて行く)

『春色の あどけないVerde
 夏色の 爽やかなBlau
 秋色の 鮮やかなRojo
 冬色の 優しげなBlanc

 今日まで 一緒に 見つめてきた季節
 明日からも 一緒に 過ごしたい季節』
(二人の声が重なり、優しい乍らも強く観客達を魅了する)

 ゆっくりでいいから
 これからも見つめていきたいね
 Con Lei La stagione che io spendo insieme
(ゆっくりとしたメロディは優しく更にゆっくりとなり、サビのメロディをハーモニカが奏でる。
 静かにハーモニカの音だけがステージに余韻を残し乍ら曲は終了した)
〜♪♪♪


 2曲目はスモーキーの実体験を元にしたと言う「Guidepost」を歌うColorfast。
 セピアの照明が灯るステージに上がるメンバーの衣装もノスタルジックと秋をイメージしたブラウン系に統一されている。
 同色のハーフパンツを掃いているクロの姿に「可愛い♪」と歓声が飛ぶ。

【Guidepost】 Colorfast
 Vo&B:スモーキー巻 G:七瀬紫音 key:クロナ
♪♪♪〜
(キーボードがノスタルジックな雰囲気を持った穏やかなメロディを奏でる)
「歌が好きなの?」と聞かれて 思わず頷いた
 だけど本当に好きなのは あなたの声だった
(静かに流れるキーボードの音)

「いつか一緒に歌おう」なんて 言われて思わず舞い上がった
(キーボードの響きをベースの音が優しく支える)
 ただの「社交辞令」を 本気にして がむしゃらに追いかけた
(ギターが力強く曲を盛り上げていく。
 濃いセピアから徐々に照明が明るくって行く)

(セピアの写真を思い出させるような柔らかなセピアに彩られるステージ。
 奏者の後ろに落ち葉が映し出され、舞い落ちる落ち葉。
 スネアがアクセントとして曲に減り張りをつける)
 今でも目を閉じれば思い出す あなたの優しい微笑みを
 今の僕がここにあるのは 全てそのおかげなんです

 あなたの側にいたくて 楽器を手にした
 あなたに歌ってほしくて 詞も書き始めた
(スモーキーの声に熱が帯びる)

 あなたと同じステージに立って あなたの横でベースを弾いて
 そんな夢のような時は 文字通りに 夢のように過ぎ去って

 今でも耳を澄ませば聞こえる あの日のあなたの歌声が
 暗い夜も迷わぬように 僕を導いてくれた声

(間奏:ギターの音が思いを綴る)

(舞い落ちる落ち葉の数がゆっくりと減っていく。心の変化を綴るように)
 今でも僕を支えてくれてる あの日のあなたの思い出が
 あなたが教えてくれた道 あなたの分まで僕は歩む
(一旦明るくなったステージを再びゆっくりと深いセピアの照明が包んで行く)

(静かにキーボードが響く。
 深いセピアの海に溶け込むように何時の間にか落ち葉は舞い落ちるのを止めていた。
 静かに3つの音が絡み、余韻を残して曲は終了した)
〜♪♪♪


 3組目はショルダーキーボードを抱えたひろみが登場する。
「あの悪ガキもビックなメジャーになっちまったな」
 苦笑する親父さん。
「人は変わるものですよ。でもだからこそ『変わってはいけないもの』があるのでしょう?」
 浩介が笑って言った。

【none title】Vo&S・key:亜真音ひろみ
♪♪♪〜
 どしゃ降りの雨の中
 行く道さえ見えずもがいていた頃
 雨宿りにずぶ濡れで窓から忍び込んだ冷たいコンクリートの檻(城)の中

(バラード調のメロディが一転し、アップテンポに変わる)

 迎え入れてくれたのは蜘蛛の糸のように隙間からこぼれる一条の光と闇に落ちる事を許さぬ鼓動

 寒さで凍えていた心と体を無理矢理暖めてくれた激しいビートとぶっきらぼうな笑顔が凍り付いていた刻を少しずつ動かしてくれた

 あれから 変わっちゃいないさ
 周りの時は動き続けても
 ここはいつもここのまま
 人は変わっても想いは受け継がれていく

 あの頃の思い出をずっと笑いながら話していこう孫の代まで

 踏み付けるように残してきた足跡は消えはしないさ
 人は変わっても想いは受け継がれていく

 あの頃の思い出をずっと笑いながら話していこう
 ぶっきらぼうな笑顔のあるこの場所で
(奏でるメロディはゆっくりとなり、伸びる声だけがステージ余韻を残した)
〜♪♪♪

 いつもの通りステージをフロアの端で聞いていた親父さんにスポットライトが当る。
「この唄‥‥題名、親父さんに決めてもらえないかな?」
 ステージ上からひろみが親父さんに言う。
「俺がか? この場で?」
 ステージのひろみが頷く。
 うーん、と親父さんは暫く考えた後、こう言った。
「H・O・M・E‥‥‥『HOME』でどうだ?」
 観客席から拍手が起こった。
「だが一言いいか? 孫は止めろ、孫は」
「えー、いーじゃないか」とひろみがムッとして言う。
「馬鹿やろう。俺がお前を語るんだよ。俺が胸を張って語られる位にもっとビックになりやがれ」
 更に大きな拍手が観客達からひろみに贈られた。


 ワインレッドのシャーリングワンピースのちー、KNUCKLEにブラウン系のキーネックカットーソーのまき、秋の装いの二人がラストである。
 やはりメジャーな二人がステージに上がればそれだけで声援と歓声が飛ぶ。

【Don’t be memory】 Thousand Moon
 ☆&AG:千音鈴 ★&三味線:仁和 環 『』ハモリ 「」ユニゾン
♪♪♪〜
(アコースティックギターのメロディに三味線の音が軽やかに絡む。ノリの良いメロディーに歓声が起こる。
 前奏終盤ギターの爪弾き続き、歌がスタートする)
☆駅のホーム交差点の途中
 ふとした時によぎる場面
『人はそれを想い出と呼ぶのでしょう』
(ギターの奏でるメロディに寄り添わせるような三味線の音。ステージを明るい照明が包む)

★形あるモノは全部
 いつかその姿を変え崩れ落ちてゆくけれど
『目に見えない何か確かにこの胸に』
(Bメロディは三味線メインへと変化する。ギターはコードを刻んでメロディに深みを与える)

(連符の繰返し)

☆今笑う為 「時に泣き」
★今歩く為 「立ち止まった日もある」
(茜色の照明がノスタルジックにステージを包む。
 二人の歌声にギターと三味線の音がハモルように共鳴し、響き合うキレの良い響き)
☆光と影 ★表と裏 『寄り添いながら』
(ギターと三味線。追いかけ、掛け合うように段々強くなるメロディ。
 ストロークで盛上げ、いざサビへ)

『Don’t be memory
 想い出にはしたくない』
☆私を作る全て想い続けていくよ
(明るい白い照明が揺れるようにゆっくりとステージを動く)
『置き去りにせず一緒に』
(想いを表すように力強くハッキリとしたメロディが曲を盛上げていく)
★向かいたい未来(あした)へ

『Never continue』
(高らかに響くように二人の声がハモリ、音を上げたまま‥‥‥。
 ジャラン♪ と二つの音を併せて曲は終了した)
〜♪♪♪

 観客席、総立ちで開店記念コンサートは盛況のうちに終了した。


●アニバーサリーパーティ
 モモに連れられて打ち上げでよく行くちゃんこ屋に向かった親父さんと浩介。
「人が誘っているのに帰りやがって。折角1周年記念でパーっと打ち上げをしようと思ったのによ」と親父さんはライブが終わった後、御機嫌斜めである。
 誘った人物に尽く断られ、親父さん、浩介、モモの3人で地味に打ち上げをする事になったのである。
 いつものように暖簾を潜る。

「「「「「開店1周年おめでとう!!」」」」」
 ちーが用意した派手にクラッカーが鳴らされ、エルから親父さんに花束が贈られる。
 帰ってしまったと思っていた出演者やスタッフ達が店で親父さんを出迎える。
「親父さん達、『おめでとう』で『ありがとう』です」
 小さなバラの造花が入った飾り籠を渡すシオ。
「これは俺からだ」
 小さな柊の鉢を手渡すまき。
「厄よけにもなるが、来月には芳香の良い花が咲く。花言葉は『先見の明』だ」
「新生『7』もついに一周年。これからもずっと続いていって欲しいね」
 ひろみが親父さんの肩を叩く。
「浩介、手前ぇ‥‥」
「皆が言わなくても、勿論『知っていた』に決まっているじゃないですか。店内の事を隅から隅迄知っていなくては『店長』ではないでしょう?」
 ケロリという浩介。

「しかし、なんで『ちゃんこ屋』なんですか〜?」
 鶏のサッパリ唐揚げを作って来たシオと軽く摘めるおつまみをタッパーで持って来たルナが、モモに苦情を言う。
「えー、だって料理を作って来る暇なんてないと思ったからですよ。それにお店の人だって(食べ物の持ち込みに対して)嫌な顔しなかったから良いじゃないですか」とモモ。
 スモーキーも都合が合わずに本日来られなかった知合いから重箱に詰まった料理を預かったのである。
「そりゃあ、そうですけど‥‥」
「お店の御好意です。素直に喜びましょう。うっ‥‥」
 スモーキーのお重の蓋を開けた手が止まる。
 きっちり詰まった野菜の煮つけに紅白蒲鉾、きんぴら等がきっちりと詰まっている。
「おせち?」
「まあ、らしいというか、想像通りというか‥‥」
 苦笑するスモーキー。
「‥‥見覚えがある配列だな」と浩介。
 送り主が想像出来るお重であった。
「‥‥‥ケーキが二つ」
 だらりと汗を掻く親父さん。
「ちゃんと甘さ控えめだから大丈夫。甘いのは殆どフルーツの甘さだから」とひろみ。
「甘党のお前が言うと若干不安だが‥‥」
「別に『砂糖で甘い』から好きな訳じゃないんだよ」とひろみが噛み付く。
「クロのケーキも甘くないです。ちゃんと甘くなり過ぎないように注意したのです」

「改めて、1周年おめでとうございます」
 ビール瓶を持ったスモーキーが浩介の側にやって来た。
「ああ、ありがとう」
「早いものですね。1年って」
「そうだな。振り返れば色々あったな。スモーキーも歌にあった人と仲良くな」
 アコースティックギターを片手にちーがやって来る。
「店長と親父さん。兄貴、開店前ライブで歌った『月虹―7colors―』って店の名前と引っ掛けて曲を作ったって気付いていた?」
 ちーが笑い乍ら言う。
「ああ。あの時貰った皆の気持ちを忘れないようにここに刻んでいる」
 左胸を叩く浩介。
 きょとんとするちーにあの時貰った花束にあったセントーレアの花が、スタッフジャンパーのロゴに小さくデザインされて着いている」とにやりと笑う。
 あのライブがなかったら今、浩介はここに居らず、「7」も再開していなかったかも知れない。
「俺はあの感動を忘れない。だから何があっても『7』は続けて行くよ」
 静かに微笑む浩介。
「これからも音楽家の卵達の希望の場所でいてね、7♪」

 ちーの弾く「月虹―7colors―」が店内に響いた──。