わふわふ わふん♪撮影アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/10〜12/14

●本文

「人を食ったようなタイトルである」とディレクターは思った。でも「OK」をしてしまった。
 彼は大の犬好きであった。
「鼻がムズムズしそうなタイトルである」とプロデューサーは思った。でも「OK」をしてしまった。彼の愛犬ヒメが、子犬を7匹出産したばかりであった。気分はおじいちゃんである。
 脚本家は言った。
「お日様の下で『まふ〜ん♪』最高です。あ、ちゃんとにゃんこも出ます☆」

 ***

 犬嫌いの中学生「山崎桃子」の家に子犬がやってきた。
 理由はただ1つ。河原で拾ったのである。

 モモコは部活を終えての帰り道、幼馴染みで親友の「ヨネコ」こと「米村 幸子」と河川敷を歩いていた。
 人気のない河原に小学生が2人うずくまっていた。
 不信に思ったモモコとヨネコは、小学生は近付き声をかける。
 小学生の前に置かれたダンボール。中を覗くとマフラーにくるまれた子犬4匹。
 まだ眼が開いていない。
「げっ!!」と言って飛び退くモモコに対して「どうしたの?」と聞くヨネコ。
 学校の帰りに見つけて家に持って帰ったが、母親に怒られて再び捨てに来たのだと言う。
 どんどん暗くなるし、寒くなる。拾ってくれる人がいないので、心配で家に帰れない。
「ったく! 動物保護法って知らないのかよ。犬を捨てたら罰金10万円ってね」と怒るヨネコ。
「モモ、あんたん家、お父さんが確か犬が欲しいって言っていたよね。人助けならぬ、犬助けだ。1匹、貰え」
「えー! ヨネちゃん、あたし犬が駄目だって知っているじゃない?」
「モモを噛んだのは、デカい秋田犬だろう。それもあたしに言わせれば、モモが100%悪い。それなのに未だに犬嫌いなのは許せん」
 小学校低学年の頃、モモコはヨネコの家で飼われていた秋田犬ジロー(オス8才)の尻尾を思いっきり毛が抜ける程引っ張ったのだ。
「オジサンが許してくれなかったら、ジローちゃんは薬殺処分だったんだからね。反省しなさい」
 以来、山崎家では犬は御法度であったが、リフォームをした事もありお父さんが以前からの夢である犬を飼いたいと言い出したのである。「サイアク」とそれを親友であるヨネコに今日の事である。
「ジローちゃんは、おじいちゃんの家で15才で往生したけど、モモは犬殺しになる所だったんだから」
 大の犬好きである米村家もモモが噛まれてからは一度も犬を飼っていない。

「とりあえず、あんたら家に帰りな。お母さんも心配しているだろうから」
 ぐずぐず言っている小学生に「あたしは、坂を上がった所のアサヒ中学の2年『米村 幸子』。あそこで文句を言っているのは『山崎 桃子』だ」と可愛い犬の絵が着いた名刺を小学生に渡す。
「裏にあたしの電話番号とメールアドレスが載っているから、ちゃんとお母さんに報告しなよ」
「ヨネちゃん、ヒドい、おーぼー(横暴)」
 良いから帰りな。と小学生を促し、ダンボールを抱えるヨネコ。
「モモ、こいつら助からないかもしれない。下手すると初乳も貰われずに捨てられた可能性がある。ちくしょう、ヘソの緒が着いている」
「え?」
「確か、駅前に動物病院あったよな。急ごう」
 動物病院に辿り着く2人。手当てのかいなく3匹が死んでしまう。残ったのはメスが1匹。
「どうする? この子? 里親募集する?」と獣医。
「あたしらも見つかる迄の飼育代持っていないし、こいつの家で犬が欲しいって言っていたからいいよ」
「ええ?! ヨネちゃん、勝手に困るよ」
「モモがトイレに言っている間におばさんに了解貰った。ウチはママも働き出したからな。こいつのご飯2時間‥‥下手すりゃ1時間置きだから、専業主婦のおばさんが面倒見てもらうのが一番いい」
 かくしてモモコの意見が反映される事なく小さなメス犬はモモコの家に引き取られる事になった。


●ファミリードラマ「わふわふ わふん♪」スタッフ募集
 カメラ、音響、衣装、メイク、小道具、大道具、動物トレーナー他

●今回の参加者

 fa0189 大曽根ちふゆ(22歳・♀・一角獣)
 fa0521 紺屋明後日(31歳・♂・アライグマ)
 fa0669 志羽・武流(21歳・♂・鷹)
 fa0756 白虎(18歳・♀・虎)
 fa0917 郭蘭花(23歳・♀・アライグマ)
 fa2544 ダミアン・カルマ(25歳・♂・トカゲ)
 fa3309 水葉・優樹(22歳・♂・兎)
 fa5149 桐間玲次(17歳・♂・猫)

●リプレイ本文

●脚本製作
 志羽・武流(fa0669)は困っていた。
 脚本の事ではなく、そう、彼はよしりん☆好みの『眼鏡男子』である。
「よしりん☆先生、近いです‥‥」
「え〜、よしりん☆目が悪いんだもん♪」
「‥‥‥」
 タケルの隣に張りつくように座るよしりん☆。
 お仕事モードの赤い眼鏡をかけているが、まだエンジンは温めるつもりがないらしい。

 気を取り直すように咳を着くタケル。
「役者からの要望である子犬の病気を期にモモコが犬嫌いを克服するという点を取り入れて考えてみました」

  <シーン1:子犬の定期検診、動物病院>
  <シーン2:桃子の家での日常シーン>
  <シーン3:犬の病気を桃子が1人で頑張って救う>
  <シーン4:戯れる桃子と犬>

「定期検診の際、獣医に『まだ子供で急に体調を崩す事もあるから気を付けてあげてね』という台詞を言わせる事でシーン3の犬の病気を暗示させます。シーン2では、子犬役の声優による人物紹介とモモコが疎外感を味わい、独り冷めている感じを出そうかと思っています」
「うんうん♪ い〜ですね☆」とよしりん☆、仕事は一応忘れていないようである。
「ラストは雑誌にモモコと犬が仲良く遊んでいる写真が掲載されて終わるようにするのが良いかと思います」
 タケルの顔とジーっと見ていたよしりん☆。
「タケル君、『犬嫌い』に会った事ないでしょう」
「え?」
「動物って、攻撃されるよりは先に攻撃して優位に立とうとする生き物なの」
 よしりん☆、眼鏡を外して拭く。
「一度噛まれたりして恐怖心を持つと、その動物に対して無意識に不審な行動をするのよ。その行動が恐いから余計、動物は威嚇するの」
 威嚇を過ぎたら「やられる前にやれ」なのよね。そこを見極めないと攻撃されるんだけど、わざと意地悪するわんこもいるから、嫌いな人って増々『嫌い』が進むのよ。と苦笑した。
「だからいきなり『犬嫌い』が解消される事って殆どないのよ」
 よしりん☆ファミリー向けでも妥協出来ない点があるらしい。


●撮影準備
 プロデューサーとセットの打ち合せをする大道具の紺屋明後日(fa0521)と小道具のダミアン・カルマ(fa2544)。
「作るのは、モモコの部屋、リビング、ヨネコの部屋、動物病院。あと‥‥編集部の部屋もやろか?」
「ああ、番組のオープニングで使うだけだけど、編集部もお願いするよ」
 できたてのほかほか雑誌で、他の雑誌の一部を間借している感じにごちゃごちゃしている感じにできるかな? とプロデューサー。
「そうですね。雑誌はスポンサーの出版誌を使うとして‥‥編集中の原稿は完全に自作かな? ペットの写真は知人やスタッフにお願いしてかき集めます」とダミアン。
「あと、出演者の誰かが管理する、動物のホームページがあれば楽しいと思うんですけど」
 ダミアンの提案に「モモコの名前がいいだろう」とプロデューサー。
「番宣を兼ねてネットで同時に写真の募集するといいかもしれないな」
 良い写真があればオープニングにも使いたいから頼むよ。と席を立ちかけたが戻って来る。
 俺の分を渡しておこう。とポケットから写真を取り出す。
「ウチの子(犬)と子供(子犬)達の写真だ」

 ガンナーを片手にリビングの壁を作っているコンの側をよしりん☆が通り過ぎる。
「よしりん☆先生、今回のドラマ、犬が病気になるやんか? 犬って確か初乳で免疫作るんやでな? 病弱ちゅう設定なんやろか?」
「そうですよ、詳しいですね。犬飼われているんですか?」
「んまあ、子犬に病気の演技ちゅうのができるんかな? ってな」
 コン君、優しいですね☆ そういうよしりん☆の首根っこを捕まえるタケル。
「よしりん☆先生、何時迄フラフラしているつもりです」よしりん☆を缶詰めにする為に引きずって行った。
「‥‥‥不幸やな」
 コンは見なかった事にして己の仕事を続ける事にした。


 進行と衣装を担当する大曽根ちふゆ(fa0189)は、忙しく動き回っていた。
 何故かと言えばスケジュールが滅茶滅茶押しているのである。
 只でさえ動物を使う撮影は動物待ちで「押す」。
 ちふゆは、それを計算に入れスケジュールを立てたはずであった。
 三毛猫の代案は「アメリカンショートヘアのレッドは一般人から見ると只の赤虎にしか見えない」と言われてすぐ決まったが、子犬が揃わないのである。

 同じ両親から産まれても全く違った毛並みが産まれるのが雑種犬である。
 100匹いれば100匹違う毛色と顔をしている。
 その上、血統書付の犬と違って繁殖をさせる家族が少ないのだ。
 小道具のダミアンだけでは手が足りず、ちふゆや雑用係の白虎(fa0756)も手伝って探していた。
 結局、柴犬にそれなりにメイクをする事に落ち着き、登録犬舎に電話を掛けようやく子犬を確保する。
 確保された主役の子犬は8匹、猫は4匹。動物病院の撮影用動物をあわせれば40匹近くなる。
「1匹だけじゃないんですか?」とヴァイ。
「撮影中に疲れるからね。一番良い状態の子を使うんだよ」とダミアン。
 待機中の動物の世話は、小道具であるダミアンとヴァイが負う事になる。

 やれやれ、やっと各々の仕事ができるという所でプロデューサーが、ちふゆとダミアンを呼ぶ。
「衣装は買い取りだから、成るべく値切って来てくれ。ペットグッズはスポンサーの試供品を奪い取って来い」とプロデューサー。
 ダミアンは、どうせなら早く言って欲しい。とつい本音がでる。
 どうやら試しに与えた自作おもちゃが数分で原型がなくなるまでボロボロにされたようである。
 子犬相手に怒る訳行かず、逆に悲しくなってしまったようである。
 ちふゆは、ヨネコの衣装は自分の手持ちを使っても良いかと考えていたようであるが、プロデューサーから「動物臭と体毛、傷が普通の撮影より着くから買い取り業者が買い取ってくれない」と聞かされ青くなった。
「そうですね。よしりん☆もTV局に来て来る服は、貸し倉庫で着替えて来ます。お家にある分の服は、買ったその日の内に毛が着いていますね☆」
 適当に古着屋を回り、リメイクする方が良いですよ。と、よしりん☆に言われてしまった。


●いざ撮影
 「わふわふ わふん♪」は人間が見た目線である通常の撮影の他、子犬の目線から見た役者の顎とかのショット。ハンディカムが多用されるカメラマン泣かせのドラマである。屋外撮影場所はモモコの登校シーン、子犬を病院に連れていくシーン。他はスタジオ撮りである。
 屋内セットは水葉・優樹(fa3309)が中心となり、屋外は郭蘭花(fa0917)を中心にカメラを回すことになった。

 優樹はダミアンが用意した小道具をセットに並べ終わるのを待って、撮影前にセットのレイアウトや役者の立ち位置を確認する為に写真を取っている。
 役者も同じ演技を普通のドラマの倍以上繰り返すことになる。そして子犬と猫である。
「猫待ち」に「犬待ち」。あくびや走る姿、うっかりすれば起きていて欲しいシーンで寝てしまう。
 特にトレーニングを受けていない子犬達は現場を和ませると同時におおいに混乱させた。

 そして撮影泣かせの「吐く」シーンである。
 ハッキリ言ってトレーニングを受けた犬でも吐くのはかなり難しい。
 成犬でも肉に異物を入れて自発的に吐かせるという方法は現在、使用禁止の手法であり、ましてや子犬にそれを望むのはかなり無理がある。
「自分で水を飲んでいて咽せるとか‥‥」
 1時間、2時間と刻々と時間は過ぎるが水を飲んでも、どの子も咽せない。
「子犬の苦しむ姿を待っているって、ちょっと嫌よね」と溜息を着く。
「焦点カメラにしますか?」
 撮影待機をしている子犬達の偶然に掛ける事になった。
 そして3日間カメラを回してみたが望む映像は取れず、結局苦しむシーンは遊び疲れさせ苦悶の表情で眠る偶然を狙う事になった。

 蘭花の撮影時間は主に夜間、早朝と行った時間が中心であった。
 人通りの少ない早朝や夕方坂道の登下校、駅前は実際に人の動きが激しい夕方や朝の時間帯は撮影が出来ないので更に遅い時間か、早朝に照明を強く灯しての撮影になる。
 撮影自身は好天に恵まれ順調に進んでいったが、逆に寒過ぎて役者やスタッフを苦しめた。
 待機時間を利用して作られたちふゆと蘭花の豚汁で暖を取る。
 役者達は息が白く映り込まないように。と撮影直前に氷や冷たい水を口に含んで口腔内の温度を下げてから撮影は始まる。
「モモコとヨネコ、入りま〜す」
 どうやら、準備が出来たようである。


●BGM作曲
 桐間玲次(fa5149)の前に厳めしい鬼瓦のような顔をしたプロデューサーが座っている。腕を組み目を閉じて玲次の作り上げた曲を聞いている。眠っているのか、ちゃんと聞いているのか不明だが、玲次は自分なりに頑張ったと思う。犬と触れ合う場面とか、最初の子犬を助ける場面とかでそれぞれにふさわしい音楽を作り上げたと思っている。ギターをメインに持ってきたことによって全体的に優しい感じに仕上がっているはずだ。

 プロデューサーは一通り聞き終わった後、こう言った。
「全体を見れば、まあまあだが『やり直し』だな。BGMは映像を引き立たせる大事な要素だ。子犬なら子犬にギター、猫なら猫にバイオリンとかメイン楽器を決めてるとか‥‥俺も音楽は詳しくないが全体的にぼやっとした感じがある」
 俺は新人だろうとベテランだろうと区別しないからな。と作り直しを命じられた。


 がたがたと細かい指示に振り回され乍らもなんとかVTRが完成し、目出たくON AIRを迎えた。
 ON AIRを見乍らよしりん☆「『眼鏡獣医萌』はあるけど『わんこ萌』が足らないわ」と呟いたとか。