魔王子、カルタで遊ぶアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/04〜01/08
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●本文
「薫、邪魔をしているぞ」
初詣から帰ってきた薫を出迎えたのは、TVを見乍らこたつに入っている魔王子。
「皆がいないので留守番を兼ねて、邪魔をしているぞ。先程も『泥棒』という無礼な輩が来たのでケルベロスをけしかけておいた」
「ど、泥棒?!」焦る薫。
「いや、案ずるな。土足のまま入ろうとしたので、俺が注意した所、包丁で斬りつけて来たので追い返してやった」
俺もちゃんとママ上の言い付けを守って、ちゃんと靴は脱いでいる。と平然と言う魔王子。
「薫、足下に注意しろよ。泥棒の持っていた包丁がそこに落ちているから」
魔王子の指差す先、TVの横にグニャグニャになった包丁が落ちている。
「どうやったの、これ?」と心配するより呆れる薫。
「んー? 顔を変えるのと大して変わらん」と包丁を取り上げ、あっという間に団子状にしてみせる魔王子。
「まあ、元に戻せと言われると難しいんだが」
薫の友人である魔王子は、他の魔物たちと一緒に女王の命令で人間界に不思議な花を探しに来ていた。
色々人間界の常識が通じないエム・ランドの魔物達は人間界の事を学ぶのに、魔王子を召還した事がある薫の家の隣に住み着いて事ある毎に薫の家にやってくる。
「チェルシーは?」
「なんでも襟を飾る羽根が気に入らないと、ご飯粒と交換に羽根が貰えないかと雀に交渉している」
言われてみればチュンチュンと屋根の上が騒々しい。
ぼんやりとTVを見乍ら「‥‥‥暇だなぁ」と呟く魔王子。
ママとの約束でTVゲームは1日2時間迄である。常識はずれの魔王子だが、何故か薫と薫のママとの約束は素直に守る。
「だったらカルタでもしてみたらどうかしら? 『いろはかるた』なら人間界の常識や諺も覚えられるし一石二鳥じゃない?」とジュースをこたつの上に置くママ。
「うーん、そうだね」
「『いろはかるた』?」
「昔の諺や日常生活を描いたカードを取り合うゲームだよ。「読み手」と呼ばれる人がいて、カードに書いてある言葉を読む。読まれた内容のカードを早いもの勝ちで取る。最後に一番カードを数多く持っていた人が勝ち。っていうゲーム」
「それなら俺の国にもあるぞ」
「じゃあ、決まりだね。二人でしても面白くないし、皆も呼ぼう」
●アニメ『魔王子、カルタで遊ぶ』声優募集
あらすじ:正月も年末も関係ない魔物たち。薫の家で「こたつの住人」と化している魔王子。
ママの提案で薫は友達を呼び、皆で「カルタ取り」を始める。
しかし魔王子が用意したカルタは「魔法のカルタ」であった。
何時の間にか部屋の中にいる人が増えたり、天井から大量の蜘蛛が降って来たりと、カルタに書いてある事がおこるというとんでもない「魔法のカルタ」
果たして無事にカルタ取りを終了する事はできるのか?
薫の家で行われた仰天「カルタ取り大会」魔王子と薫たちとの交流を描くハートルフルアニメ。
●主な登場人物
「魔王子:ゾーンゼー」通称:王子、モンスター達の王国、エム・ランドの王子。ちょっと小柄なイタズラ好きの男の子。仲良しの妖精と一緒に門を抜け、人間界にやって来た。寒がりで卵焼きが好き。本名で呼ばれる事を嫌う。
「妖精:チェルシー」魔王子のファン。魔王子と一緒に人間界にやって来た。着せ変え人形サイズ。
「笹原薫」魔王子を呼び出した小学生。
「魔物」エム・ランドの住民。魔王子の世話係。吸血鬼や狼男等、人型に近い程人間の一般識をやや理解するが、通じない部分も多い。人間に近い物はアルバイトをしたりして、生活費を稼いでいる。
●リプレイ本文
●CAST
魔王子: ウィルフレッド(fa4286)
笹原薫: 帯刀橘(fa4287)
チュエルシー: 美森翡翠(fa1521)
リュシア: パトリシア(fa3800)
モーサ: Rickey(fa3846)
アレット: 桃音(fa4619)
タツ: ミッシェル(fa4658)
レノン: 忍(fa4769)
●『ジュオン・ジ』
薫の部屋に集まった顔触れは、黒猫耳和服のアレットや犬にしか見えないモーサを始めとする魔物達ばかり。
「人間が一人も来ないとはな」と溜息を吐く魔王子。
「やっぱり私たち魔物が恐いからなんでしょうか‥‥?」おずおずと言うタツ。
「それより薫が風邪引きだからじゃないの?」と薫のママから買ってもらった人形用振袖を着たチェルシー。
「新年早々、薫さんは不幸ですね」シクシクとハンカチで涙を拭う白猫執事レノン。
魔物達の視線の先に半纏にマスク、熱のためにほんのり顔が赤くなった薫が座っている。
「我々、エム・ランドの住民に人間の風邪はうつりませんね♪」とメイド服の下から尻尾を振るリュシア。
1階で寝込んでいる薫のママを思い出し「魔物で良かった」と笑う一同。
「残念だが『いろはかるた』は次の機会にして『ジュオン・ジ』をするとしよう」薫は寝ていていいぞ。と言う魔王子。
「じゃあ、僕は言葉に甘えさせて貰うよ‥‥」
モゾモゾとベットに潜り込む薫。実は起きているのが、かなり辛かったようだ。
「『ジュオン・ジ』ってどんなゲームなの?」
ベットの中から魔王子達を見る薫。
「発案者の麒麟大宗様曰く『呪音(文)字』と書くそうです」とタツ。
「暇な時にするゲームだ。物によっては10年位かかる時もある」とモーサ。
「途中退場が認められないのよ」とチェルシー。
「まあ、今回やるのは一般市民用の簡易版だから長くても3日間位で終わるんじゃないか?」と魔王子。
「ちゃーんとお菓子とお茶は沢山用意しましたから安心してください♪」とリュシア。
「‥‥良く解んないよ、その説明じゃ」
困惑する薫に苦笑しながらレノンが説明する。
「対になっている36種類の魔法カードを使うゲームです。読み手が読み札専用カードの山の一番上から順番にカードを読み上げ、他の者が対になっているカードを取り合います。ゲーム終了時、一番カードを多く持っていた者が勝ちです」
「僕らの『カルタ取り』と似ているね」
「勝利者は皆に1つだけ命令をすることが出来るので、結構皆本気で大変なんですよ」とレノン。
「そうですよ。国をあげての『ジュオン・ジ』だと隠す場所も山の中とか‥‥魔法や武器の使用可能な奪い合いですので結構大変なんですよ」とタツ。
「今日は人間界ですから『武器や攻撃、魔法はなし』ですわね」
ルール違反は、電撃のお仕置きですよ♪ と嬉しそうに笑うアレット。
窓にはカーテンが引かれ、床と四方の壁に魔方陣を書き上げられる。
「さて、読み手はどうするか?」
「ハイ、ハ〜イ♪ 私、立候補! サイズ的に不利だもん!」とチェルシー。
「えー?」
「他の時なら負けないけど、今日は着物だもん。おしとやかにしているんだから」
小さなテーブルの上にルールを書き出した誓約書にサインをする一同。これで魔法契約が成立する。
魔王子にカードを切って貰うと皆からカードが見えないように。とTVの上に座るチェルシー。
「さて、今日の優勝商品は『TV正面コタツ席、ミカン食べ放題』権だ。これを得た者は、上下身分の関係なく1年間『コタツでミカンが食べたい。ミカンを持って来い』と命令できる権利を有する」
「おー!!」
魔王子の言葉に寒さが天敵の魔物達の意気が上がる。
「‥‥そのコタツって僕の家のコタツじゃないよね?」
* * *
カードはチェルシーとほぼ同じ大きさ。
「やっぱり俺が代わってやろうか?」とモーサ。
「最初の文字だけ読めればいいの、全部憶えてるんだから!」と胸そらす。
「じゃあ、一枚目行くよ♪」
まふっ。目の前のカードに手を置くモーサ。
「モーサ、『お手つき』」
「カードを読んでもいないのに、手を出す奴があるか。アレット、電撃だ」と魔王子。
「覚悟はいい?」
電撃を食らうモーサ。
「ギャー! 契約と王子の命令じゃなきゃ、齧ってやるのに!!」
●ぴこぽこはんまーでぼんのうたいきゃく
ビシッ!
アレットの尻尾が対のカードと一緒にタツの手を叩く。
「アレット様、痛いです。攻撃なしでしょう?」
「あら? つい本気になっちゃったわ」
そう言い乍も余り気にしない様子で帯電した尻尾を揺らすアレットの頭を「ピコン!」と突然現れたおもちゃのピコピコハンマーが叩いた。
「ピコ、ポコ、ハンマーで煩悩退却」
チェルシーが確認の為に読み返す。
「これは『煩悩』じゃないですわよ。作戦ですわ」
悲鳴を上げ逃げるアレット。追いかけるハンマー。
うっかり部屋から逃げ出そうとドアを開けるとそこは一面の宇宙空間。きらきらと銀河が輝いている。
薫の部屋だけ魔法によって宇宙に浮いている状態になっている。
逃げ場を失いコーナーに追い詰められたアレットは、108回叩かれ「目が回る〜ぅ」とひっくり返った。
「ひょっとして‥‥」
一部始終を見ていた薫。
「ああ、カードに書いてあることが具現化するんだ。まあ、魔方陣の中だけなんだが」とさらりと言う魔王子。
「そんな危ないゲーム、僕の部屋でしないでよ」
「一度始めたら終わるまで中断できない」
「そうですよ。途中で中断するとゲームの呪いが発動して‥‥‥」
「噂によると頭がおかしくなったり」
「世にも恐ろしい姿に変えられたり」
「永遠に暗闇の中、出口を求めて彷徨ったり」
「恐ろしい事が起る」のよ」のです!」
声を揃える魔物達。
「‥‥‥じゃあ、とっとと終わらせてよ。僕、本気で頭が痛んだから」と怒る薫。
●じめんゆらゆらおおなまずゆれるだいちにびっくりぎょうてん
「地面ゆらゆら大ナマズ、揺れる大地にびっくり仰天」
チェルシーが読み終えると同時にガタガタと薫の部屋が揺れだす。
「うわぁあ、地震だぁ!」
「違うわよ。早く誰かカードを取って!」
「見つけましたぁ〜!」
バキン!
リュシアがナマズの絵が描いてあるカードごと床をぶち抜き穴が開く。
気圧の変化に部屋の中の物が宇宙空間に向かって吸い出されていく。
「カードが全部集まらなければゲームは終われないんだよ!」と叫ぶ魔王子。
タツが蔦状戻した腕を伸ばし、カードをギリギリの所を掴む。
それと同時に部屋の揺れが収まる。
魔法の使用禁止を誓約書に書いている今、魔法で穴を直すことは出来ないので、とりあえずその上にリュシアが座る事になった。
「えへっ、尻尾が『すーすー』しますぅ」
ふさふさの尻尾が宇宙空間で揺れていた。
●しろじにあかくもえあがるはーとはびんびんはとあらし
「はい!」
チェルシーが札を読み上げる終わるのを待たずに目の前のカードに飛びつくレノン、やっと1枚目のカードを取れたようである。
「初めて取れました〜」と感涙していたが‥‥。
ポポゥ♪
パタパタと1羽の白い鳩が何処からともなく一堂の前に舞い降りてきた。
何故か胸には赤いハートマークのような模様がついている。
「チェルシー!!」
「えーっと『白地に赤く燃え上がる。ハートはびんびん鳩嵐』」
「はとーーーーっ!」
言葉をが終わらないうちに何処からともなく大量の鳩が部屋に舞い降りてくる。
「痛いです〜!!」と嘆きながら逃げるレノン。
べしべしと鳩に体当たりを食らう者、毛を引っ張られる者、糞をされる者。まさに嵐である。
「早く、次の札!」
「う、うん!」早口に次のカードを読み上るチェルシー。
●かげをはむねがいのいずみのみずかがみ
部屋の中央からボコボコと水が湧き出して来ている。
「気をつけろよ。薫」
「え? 何?」
そう言い終わらない内に噴水よろしく勢い良く水が噴出し、閉じられていたはずの窓やドアから一斉に水が流れ込んでくる。
ベットの淵まであっという間に水嵩が増え、焦る薫。
「うわぁぁ、み、水! 誰か、水を止めて!!」
『汝、其は願いか?』
水が人の形を取り、問いかけてくる。
「‥‥いいか無視だぞ」こそこそと話をする魔王子。
「そうですよ。願いを叶える代わりに魂を差し出さなければならない、それが『願いの泉』ですから」とタツ。
「『影を食む 願いの泉の 水鏡』のカードを探せ!」
ジャブジャブと水を掻き分け、水面に浮かぶカードを探す一同。
「あった!」
カードを掴む魔王子。『願いの泉』が消えたが、一緒に出てきた水は消えずにいた。
●ほしふるよるにみかざりのいしもふる
チャプチャプと水が溜まったままの部屋で『ジュオン・ジ』は続く。
「流星(ほし)降る夜に身飾りの石も降る」
「ほし?」
「流れ星とも言うかな?」
ゴゴゴゴッ‥‥‥‥‥段々と近づいてくる大きな音に不安になる一同。窓の前に座っているレインに目を向ける他の魔物達。
諦めた様に窓を開け外を覗くレイン。何かを見て、慌てて顔を引っ込める。
「隕石が部屋めがけて飛んで来ています」
「そんなのがぶつかったら、今度こそ皆死んじゃうよ!」喚く薫。
「うーん、どうしようか?」余り心配そうじゃない魔王子。
「隕石って熱いんでしたっけ?」とタツ。
「それは空気との摩擦で熱くなるんですのよ。宇宙は物凄く寒いから熱くならないんですのよ」とアレット。
アルバイト先の本屋で星の本を読んだらしい。
「じゃあ、もっと冷やしたら凍っちゃって止まるのかしら」
「氷がついて質量が増えれば重くって止まるかもしれませんわね」
「じゃあ試しにリュシアが開けた穴から水を捨ててみようか?」
風呂の栓を抜いたように勢い良く宇宙空間に水が吸い出され、一瞬で凍り付く水はキラキラと輝く。
「綺麗、まるで宝石みたいね♪」とチェルシーは妙な感動をしていた。
「今のうちにカードを探せ!!」
対のカードはチェルシーの背中に張り付いているのをアレットが発見した。
まだまだ続く『ジュオン・ジ』他のカードも「次のカードが取られる迄氷漬けになる」「腹ぺこの山犬が乱入してくる」「バケツサイズプリンが降ってくる」「部屋の中で42.195キロの飛行」等微妙な物ばかり。
そして‥‥。
「最後の1枚、行くよー!」
●ちいさなめをしたてぃらのさうるす
「『小さな目をした、ティラノサウルス』いつも思うのよね。ティラノサウルスって何なのかしら? って」とチェルシー。
その言葉が終わらない内に「もこっ」‥‥突然床が歪む。
「?」
目の悪いモーサが顔を近づけた途端、ずざざざざっ! 床が割れ大きなソテツやシダが勢い良く生える。
「今度は何なんだ!」
「絶滅した白亜紀のジャングルみたいですね」とアレット、アルバイト先の本屋で見た恐竜の本を思い出す。
ズシン、ズシンと足音を響かせ恐竜が木をなぎ倒しながら近づいてくる。
「大きなトカゲだな」と暢気な魔王子。
「トカゲと違う! 権兵衛、危ない!」
「ん? こんな所にカードをがあるぞ」
身を屈めた魔王子の背中に恐竜の顎が掠める。
「王子に何をするんですかー!!」
リュシアンのパンチで一瞬で星と化す恐竜。
魔王子がカードを取ると出現したジャングルは一瞬にして消え失せた。
* * *
「薫、みかんを取ってくれ」
『ジュオン・ジ』の勝利者となった魔王子は完全にコタツと完全一体化していた。
「なんで、僕が‥‥」
「でもあんまり前と変わらない気がしますけど?」
そう言い乍、ママに代わってリビングに掃除機をかけているタツ。
他の魔物達はアルバイトに行っており、チェルシーはママから貰った『いろはかるた』にチャレンジ中だった。
「疲れるだろう? チェルシーも一緒にみかんを食べようよ」
「ありがとう、薫。早く『いろはかるた』で遊びたいから、もう1文字覚えてからね」
ママが干している洗濯物の脇に小さな人形用の振袖が干されていた。