ザ・DOG=狂犬=撮影アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/08〜01/12

●本文

●ドラマ『潜入捜査官−ザ・DOG−』お正月SP=狂犬=

 <あらすじ>
 とある総合病院の外科医師が臓器売買による不当な臓器移植を行っていると言う情報を得た『犬飼』。臓器売買を斡旋している暴力団組織の壊滅と臓器売買ルート撲滅の為、 配下の犬チームAに指令を出す。
 リーダー(男A)が書いた青写真はこうである。
「暴力団組織内部の対立を煽り内部分裂」と「病院への潜入を行い臓器売買ルートの判明と撲滅」
 その為にメンバーをピックアップする男A。
 幼馴染みで自らが犬へと誘った男Bを始めとする精鋭メンバーを募った。
 暴力団組織の内部抗争を煽り、売買ルートの把握も順調に思えた矢先。
 暴力団に潜入していた潜入官の一人が殺された。
 動揺するチーム。
 暴力団幹部Aに尻尾を掴まれた男Bが情報を流したのだ。
 追い詰められていくチームA。
 自らが狩られない為には漏洩情報のクローズ、裏切り者(狂犬)である男Bの早期処分である。
 友を狩らねばならぬ葛藤を抱える男A。
 逃げる男B。
 情報収集や改竄を得意とした男Bを追いかける内に男Bの恋人が暴力団幹部に押さえられている事が判る。
 男Bの処分撤回をするには、犬飼の指示である2つの組織壊滅が最低条件である。
「ダブルハンティングと彼女の救出‥‥面白いじゃないですか」
 チームメンバーの志気が上がる。

 ‥‥‥だが、「犬飼」は男Aに男Bを処分する事を指示した。
「例外は認められない。何故ならば我々の組織は利害関係で繋がっている訳では無いからだ。如何なる理由でも我々の組織は一枚岩で無くてはならない‥‥‥君も他の者に彼を処分させるのは心苦しいだろう」
 そう言うと「鳩」は引き出しの中から「犬飼」から託された物を、小さな包みを男Aの前に置く。
「彼を静かに逝かせてやれ‥‥」
 見かけよりずしりと重い、その塊。男Bの命の代価(拳銃)‥‥。

「と、まぁこれが正月SPの大まかなあらすじだ。まあ大変だが頑張ってくれ」とディレクターの鬼塚。

<裏方募集>
 美術、メイク、衣装、照明、小道具、大道具、カメラ、タイムキーパー、雑用 他募集

●今回の参加者

 fa0182 青田ぱとす(32歳・♀・豚)
 fa0431 ヘヴィ・ヴァレン(29歳・♂・竜)
 fa2361 中松百合子(33歳・♀・アライグマ)
 fa2484 由里・東吾(21歳・♂・一角獣)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa4301 樫尾聖子(26歳・♀・鴉)
 fa4978 八嶋かりん(22歳・♀・犬)

●リプレイ本文

●修羅場という名の現場
「おはようございます! 鬼塚ディレクター。劇団クリカラドラゴン所属、青田ぱとすと申します。よろしゅうおねがいします」と何時もと変わらぬ挨拶をする青田ぱとす(fa0182)。
「おお、よろしく」と鬼塚。
「早速やけどパイプ役をやるさかい台本を『三つ』ください。音用、光用、その他メモ用。舞台のやり方がどこまで通用するかわかりまへんけど、やれることやるだけですわ」とパティ。
「今回のロケ地だけでもかなりの数だからな」まあ、舞台とTVじゃあ見せ方が違うからな、頑張れよ。と鬼塚、パティに台本を渡す。
「カメラマンの鶸・檜皮だ。よろしく」と鶸・檜皮(fa2614)。
「頼りにしているよ。今回聞いていると思うが結構大変だから」とプロデューサー。
「俺は‥俺にしかできない仕事をやるだけだ‥‥」と無愛想に言う鶸。
「ディレクター、キューシートを起こしたんでチェックをお願いします」とタイムキーパーの樫尾聖子(fa4301)。
「ああ、わかった」絵コンテを下に鶸、せーこと内容を確認する鬼塚。
「鬼塚ディレクター、衣装のリストが出来ました」とリストを見せる中松百合子(fa2361)。
 ユリのリストを見て鬼塚、「1つだけ注文がある」と言った。
「『梁瀬裕輔』の年齢設定をもっと若く見せるようなデザインスーツを選べ、以上だ。後はいい、お前に任す」と言うと「コガ、ちょっと待て! お前が言っていたロケ班場所だが‥‥」と古河 甚五郎(fa3135)を呼び止める。
「IT業者は外観はOKだが、中は顧客情報の関係があるから嫌だと抜かしやがったんで、ウチ(TOMI)の電算部を使え、いまプロデューサーが掛け合っている。あとはウチの採用がコネを持っているアニメ学校の教室で何とかしろ。今時の学校は設備が整っているからな。海外の新人クリエーターがこぞって見学に来る所だから、ついでにCG処理は生徒を騙してこき使え」
 本当の所は、きちんと学校にテコ入れし色々根回しをしてあるのだが、途中を省くのが鬼塚独特の言い方である。実際問題として下手なCG処理会社に回すと納期の関係で結局下請けやら孫請け、学生アルバイトで処理をしていたりするので、この際、質より数をこなせと言う鬼塚流の指示なのだ。だが、この言い方が嫌で「犬組」に裏方が居着かないという噂もある。
 癖のある番組故なのか、ディレクターもメイン脚本家も一癖も二癖もあるのである。
「あ、梁瀬兄妹が久々に会うシーンで使うファミレスで飲み食いする時は、ちゃんと領収書を貰って来るように皆に言っておけよ。だが庭を貸してもらう料亭では食うな。我慢して水でも飲んでおけ」そう言うとどこかに走っていく鬼塚。これ程椅子に座っていないディレクターも珍しいだろう。
「やっぱり変わった現場です」とコガ、あっけに取られて言う。


●病院は手間が掛かる?
 今回のザ・DOGの最大ロケは「病院」である。病院は大きすぎず小さすぎない外科手術ができる総合病院であるが、話のネタが臓器売買である撮影に良い顔をする協力的な病院はほとんどない。外科のない総合病院や規模の同じ複数の病院を切り張りとセット、手術室は他のドラマで使用しているセットを間借して撮影行う事になった。

「あ、ヘヴィ君、そこの公衆電話の位置を50cm程左に変えてくれないか?」
「わかった」演出家の指示で、フロアに置いてある公衆電話をずらすヘヴィ・ヴァレン(fa0431)。
 ずらした跡が黒く汚れているので雑巾で拭いているレヴィを見て「手慣れているねぇ」と感動するプロデューサー。
 反対側ではユリは撮影の合間に役者達のメイクを直している。

 カメラマンの鶸と確認し乍ら病院の廊下に役者達の立つ位置に印のガムテープを貼っていくコガ。
「妙に喜々としてないか?」というプロデューサーに対し「バリ職が本職らしいですよ」と鬼塚、鶴を無骨な指で折乍ら答える。
「何をしているんだ?」
「千羽鶴だそうです。後11個欲しいそうで‥‥手の空いている奴ら総出です」
 プロデューサーがみれば小道具の由里・東吾(fa2484)を始め、先刻迄長椅子を搬入していたヘヴィ、タイムキーパーのせーこや雑用をしていた八嶋かりん(fa4978)までもが、せっせと折っている。どうです? プロデューサーも? と折り紙を差し出す鬼塚。

 病棟にある談話室は、TOMI内の休憩・喫煙所が使われた。TVモニタも観葉植物、空気清浄器、長椅子、TVまでおいてあるので殆ど弄る必要がない。超有名なトレンディ刑事ドラマや医療ドラマがロケ地の移動時間短縮と経費節減の為社内で撮影されていたりするのでその辺は手慣れた物である。
 ――長椅子の上に置かれたクッキーやチョコと言った菓子、紙コップが飛び散る。
「病院内で賭をするなんてもっての他です! これは没収します!」医師役の金切り声が廊下迄響く。その為、足を止め覗く社員も時々いる。
「あ、『犬組』撮影中です。協力、よろしくお願いします」と野次馬たちに声を掛けるヤニガニ。

「今時の暴力団事務所は、外部からの狙撃がないように窓無しです☆ それに床に血が付いても拭き取り易いようにカーペットはブロックタイプが多いですよ♪ でも神棚と血判状と日章旗と虎の剥製か皮は必需品ですね☆ でも『四ッ谷』の私室(理事長)はセットで組むそうですからバリバリの悪趣味でOKですよ☆」と言うよしりん☆のアイドバイスを貰ったコガと由里、ドアに鍵を掛け完全獣化したコガは喜々として暴力団事務所を作り上げていく。TOMIの会議室は1晩で立派な暴力団事務所に変貌した。
 ――どん! 机が大きな音をたてる。
「小賢しいロートルが! 麻薬だけで満足してりゃいいものを臓器販売手出しするか」虎のごとく吠える暴力団幹部役。
「あそこに鬼塚君とヘヴィ君を並べたら、さぞ暑苦しい良い絵(画面)になっていいのにねぇ」とても褒め言葉に聞こえないプロデューサーの賞賛である。


●気のおけない休憩所
 ヘヴィがビニールシート敷き、簡易テーブルと椅子を配置した休憩所。
 ヤニガニやユリが休憩中の出演者やスタッフ達にコーヒーなどの温かい飲み物を入れて歩いている。
「あら〜? 知った顔の人がいますね☆」と差し入れのアンパンを持って来たよしりん☆、脚本が上がった今、単なる暇つぶしと言うか、邪魔をしに来たとしか思えない。文句を言う鬼塚に対し「疲れた時は、甘い物が一番なんですよ〜☆ 脳のエネルギー源は糖だけなんですよ〜♪ 『バナナ、アンパン、牛乳』は張り込みにも使われる黄金3アイテムなんですよ☆」それとも鏡開きがありましたからお汁粉が良かったですか〜? と、どこまでもマイペースである。言っては何だがこの犬組でよしりん☆に勝てる者は、ほとんどいない。
 近寄りがたい若作りゴス女、よしりん☆に臆する事なく声を掛けるパティ。
「よしりん☆はんですな。よろしくー。前はよう理解せんと暴れてしもてすみませんでした」
「あれはアレで良かったですよ♪ パティさんがいたから『公子の独断』が光った訳ですし〜☆ でもあんまり上と考え方が違う犬は『処分』されちゃいます♪」でもあの一件は今後の展開でとても意味を持つんですよ♪ とよしりん☆にんまり笑う。

「ザ・DOGSの醍醐味は『毒を以って毒を制す』やから、Wハンティングの大きな流れの中に飲み込まれる人間たち、みたいなカタチになるのンかな?」
「そうですね〜☆ 見所は3章の『「人」として』、最終章『堕ちたる犬「狼」』と‥‥妹『梁瀬優香』でしょうね。非常に重要な役です。強い光を放つ『普通の日常』と暗く落とす影『非日常、犬(狼)』ですから目立たない『普通の少女』にしてもらわないと駄目なんですが‥‥‥先刻、覗いたら監禁のシーンで15回目のNG喰らっていましたね。『お前は誘拐された事がないのか』とか段々理不尽な事を言われていて可哀想でした」並の神経の娘(こ)だったら二度と来ないでしょうね。とよしりん☆。
 パティ、ONエアされなかった狼に生きたまま焼却施設に放り込まれるシーンを思い出す。リテイクは多くなかったが、ブルースクリーンを前に狼役の俳優に殴られ、3mの高さからマットの上に突き落とされるシーンはスタントマンではない彼女にはとても大変なシーンであった。
 休憩所に戻って来れない面子の顔を思い出し乍ら「まあ、せやろね‥‥」とポツリと言った。

 * * *

「駄目だ、何度言ったら判るんだ!」助監督の罵声が飛ぶ。監督は黙ったままであるがイライラとディレクターチェアーの肘当てを指でトントンと叩いている。また撮り直しである。
 絵コンテから計算されたコマ数(秒数)、繰り返されたリハーサルであったが、特番と言う事もあって役者への要望はかなり厳しい。1日前にこのシーンの撮影が終わっていなければいけないのであるが延びている。スタッフ、役者共々へとへとである。タイムキーパーのせーこも気が抜けない。
 漏れがないよう必死にキューシートに書き込みをしていた。

 斯くして罵声と制作トップの変な所が露見してしまった感がある撮影はなんとか終了した。せーこのキューシートを下に編集が行われなんとか無事放送日を迎えられそうである。
 さて、どんな風に仕上がったかは放送を見てのお楽しみである。