ザ・DOG=狂犬=歌アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/08〜01/12

●本文

 TOMI−TVの深夜ドラマに『潜入捜査官−ザ・DOG−』という番組がある。
 予想より視聴率が良いので新春に一般枠でスペシャルが放送される事になった。

「スペシャルと言う事でサンドトラックも出すぞーーーーー!」
「五月蝿い、鬼塚。この酔っぱらいが‥‥‥泣かすぞ」
 ディレクターの鬼塚と脚本のよしりん☆、40代同級生コンビは明け方迄六本木で飲んでいた。
 TOMI−TV近くのマンションに住むよしりん☆宅でズルズルと最早何次会か判らぬ宴会をしていた。
「防音しているとは言え御近所様に苦情を言われるのは、私なんだぞ‥‥‥」
 限り無く素に近いよしりん☆、帰宅時の「ごめんね〜。お姉ちゃん、お酒臭くてぇ♪」と犬、猫と会話していた同じ人物とは思えない。

「大体、冬休みで子供が家にいる時位は死ぬ気で家に帰れ、ボケナス」
 鬼塚一家と家族ぐるみの付き合いをしているよしりん☆。
 独り者のよしりん☆は、鬼塚の子供をとても可愛がっていた。
 この不良親父が、とブツブツ文句を言い乍ら、酒を抜く為にコーヒーやら紅茶を用意している。

 TVをつけるよしりん☆。まだ明け切らない空をバックに気象予報士が全国の天気を紹介している。
「で、今日何時からミュージシャン達と会うの?」
「近くのスタジオで10時からだ」
「家に戻る時間はないわね。ここから出勤するとまた知らない人に私が愛人とか言われるのよね」
 一応嫁入り前なんだから、気をつけてよね。とよしりん☆溜息を着く。
「なんだ、嫁に行く気があったんだ」
 ガッ! 綺麗によしりん☆の延髄切りが決まる。
 酔っぱらって座っているのもあるが、ウェイト差30kg、身長差20cm以上ある鬼塚がソファーに沈む。
「寝ていろ、酔っぱらい‥‥‥あたしも寝よう、8時に起きて、お風呂とご飯食べて‥‥鬼塚ん所の奥さんとプロデューサーにメールして‥‥」鬼塚に毛布を掛け、「結構やる事あるなぁ」とあくびをするよしりん☆。
 ヒラヒラの天蓋付きベットのある寝室に入っていった。


●ミュージシャン募集!
 テーマ ドラマ『潜入捜査官−ザ・DOG−』=狂犬=
 ジャンル ロックがメイン
 グループを問わず、ソロ(奏者、歌手のみ) 参加も可能
 インストゥルメンタル 可


 TOMI−TVの1Fにある喫茶店。よしりん☆に「嫁でも無いのに、無料(タダ)で食わせる義理が無い」と言われてしまったので、遅めの朝食を食べている鬼塚。
 寝違えたのかなぁ? と首をグキグキ鳴らす鬼塚。綺麗に早朝に延髄切りを喰らったのは忘れたようである。
「とりあえずオープニング曲、エンディング曲、劇中挿入歌ですかね」
「あとは各登場人物のイメージ曲って所かな?」とプロデューサー。
「そうですね☆ よしりん☆的にはトランペットとかアコースティックギターの渋線も捨てがたいですし、ピアノで朗々と独唱みたいのもいいですよね♪」どうやらいつもの「余所行き」モードに戻っているよしりん☆。
「まあどんな曲を用意しているかは、蓋を開けてみないと判らないですからね」
 ちらりと時計を見るプロデューサー。
 ぼちぼち行きますか? とミュージシャンたちの待つスタジオへと向かった。

●今回の参加者

 fa0681 Carno(20歳・♂・鴉)
 fa0701 赤川・雷音(20歳・♂・獅子)
 fa0971 ジェンド(25歳・♂・猫)
 fa1465 椎葉・千万里(14歳・♀・リス)
 fa1590 七式 クロノ(24歳・♂・狼)
 fa2657 DESPAIRER(24歳・♀・蝙蝠)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa4786 K・ケイ(19歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

 緊張した面持ちで座る一同見回した後
「先ず、礼を言おう。こちらの予想以上の力作が応募された事を嬉しく思う」鬼塚はそう言って頭を下げた。
 これから事前に各々が持ち込んだ曲を流し、プロデューサー、鬼塚、そして野次馬のよしりん☆の前でプレゼンを行う訳である。さて、結果は?

●”sagenite” Carno(fa0681)と赤川・雷音(fa0701)の場合
 色違いのスーツで制作側の前に立つカルとライオン。
「はじめまして。Sageniteの赤川・雷音です。よろしくお願いします」
「同じくSageniteのCarnoです」
 二人が持ち込んだ曲は3曲、うち1曲は完全なインスト曲。

(1)『Gulty Dog』
♪♪♪
 過去は砂礫に埋もれ 未来は暗闇の中
 手探りで現在(いま)を生きる
 この身を縛る運命(さだめ)の鎖は 我が人生の証

 胸に抱く想い 凍てつく心に閉ざし
 解き放たれた獣
 この身を縛るは鮮血の戒め 我が終末の道標(しるべ)

 Hungly−Dog 終わり無き旅を
 Bloody−Dog ただ独り彷徨う
 Guilty−Dog 荒野に果てる その瞬間(とき)まで
♪♪♪

 本来は甘い声だというカルだが、今回はクールで力強く、暗闇を引き裂く牙を持つ犬(捜査官)たちをイメージしているのだという。サビの部分は、力強く伸び、遠ぼえにも似て鋭く叫ぶ。
「心の奥に抱える罪と消せない想いを伝えられるように歌いました」とカル。
「演奏ではメインにエレキギターを使用しましたが、ヴァイオリンとアコースティックギターでも演奏可能です」とライオン。

(2)『HUNTER』
♪♪♪
 Go to The Heaven.
 experience hell on earth.
 seek one’s fortune!
♪♪♪

 シンセサイザーを駆使したと言う曲はアップテンポでエレキギターと低音のピアノが駆け回る大人のロックに仕上がっている。
「主人公やサポーター、男Bが動き出すのをイメージした曲です」とライオン。
 低く切れの良いカルの声がスタジオに響いていた。

(3)『夢の行く先』
 ヴァイオリンの音がゆったり切な気に流れるインストゥメンタル。
「恋人や家族など、大切な人を失った悲しみを胸に秘めつつ、未来へと歩いていく‥‥そんなテーマで仕上げました」


●ジェンド(fa0971)の場合
「よろしくお願いしまっす」と元気な挨拶をするジェンド。
 持ち込んだ曲はインスト曲2曲。

(1)『友よ』
 アコースティックギターを中心に切なく哀愁漂う男Bをイメージしたと言う曲である。絡み合うギターの音にフルートやベースの音が重なる。哀愁と同時に懐かしさを漂わせるメロディが続く。
「出来るだけ綺麗な曲をと思って作ったぜ。心にある葛藤を吐き出すシーンにゃ、騒々しい曲は似合わねぇだろって。正確には『男AとB』二人のイメージだぜ」幼馴染だった二人が対峙しなきゃならなくなった状況と、二人の中にある葛藤。ついでに平和で楽しかった日を思い出すように『懐かしく聞こえるメロディ』を組み込んでみた。というジェンド。

(2)『犬たちの誇り』
 荒々しくギリギリまで歪ませたエレキギター音に低くドラムとベースが腹に響く。
 鋭いギターのリフが、ギチギチとした緊張感を漂わせる正統派のメタルである。
「Wハンティングが決まって士気が上がった時をイメージしたぜ。難しい事に挑戦するため自分の魂のモチベーションを上げるような、ちょっと男臭ぇかもしんねーけど」リズムと音を大切にしたんだ。とジェンド。
「好き嫌いが出るでしょうけど、この鋭さが良いですね」とよしりん☆。これをネタに時代劇が一本作れる程刺激的です〜♪ と何処迄本気変わらないコメントを言う。


●椎葉・千万里(fa1465)の場合
 今回最年少の参加者のチマちゃん。バイオリンの高い音、低い音と総べての音を使ったインスト曲とバイオリンの低音でビブラートを利かせ緊迫感のあるインスト曲を持ち込んだ。自分の両親かおじいちゃんの世代である製作サイドの面子にびびりそうであるが、頑張ってプレゼンをする。だが自分の思いを100%上手く言葉に出来ず、途中で詰まってしまった。
 それを見たよしりん☆「可愛い♪ 食べちゃいたいくらいです〜☆」と言う。「お前が言うと笑えねぇからヤメロ」と鬼塚、つかさず突っ込む。よしりん☆、動物と眼鏡男子以外にも萌え要素を持っているらしいがちゃんとしたノンケである。


● K・ケイ(fa4786)の場合
「きゃ〜♪ ケイ君☆」対面の席からケイに手を振るよしりん☆。ヤメロ、ビビっているだろう。と鬼塚、よしりん☆を小突く。
 ケイの持ち込んだ曲はインスト曲1曲。

(1)『THE DOG』
 アルトとテナー、2種類のサックスが複雑に曲を織りなし、それにドラムとピアノが彩りを加える。タイトなドラムと高いスキル。一音一音の切れが良い。
「サックスを使っている分、ちょっとJAZZっぽく聞こえるね」とプロデューサー。


●七式 クロノ(fa1590)の場合
 クロノが持ち込んだ曲はピアノJAZZを思わせる1曲。

(1)『With the moon and a man』
♪♪♪
 Moonlight lights up a man(月明かりが男を照らす)
 To a shadow of a man wearing loneliness(孤独を纏った男の影に)
 Cold rain fall today(今日も冷たい雨が降る)
 Don’t heal a man at time(時は男を癒さず)
 Drive it to a fight(戦いに駆り立てるだけ)
 Dissolve tears in darkness(涙は暗闇に溶け)
 Don’t allow to grieve(悲しむ事を許さない)
 In the hand covered with something(何かに塗れたその手で)
 Continue fighting to follow something(何かを守るために戦い続ける)
 don’t understand the right and wrong(何が正しいのかは判らない)
 But I continue fighting(ただ戦い続けるだけ)
 A man fades away to a shadow(男は影に消えて)
 Moonlight lights up only a town(月明かりは街だけを照らす)
 Even if one star disappears(星が一つ消えても)
 A town turns into nothing(街は何も変わらない)
♪♪♪

 ザ・DOGの根底にある悲哀をイメージして作詞・作曲したという。時に力強く、時に物悲しく‥‥ゆったりとしたスローテンポの中に緩急を付け感情を表現している。
「登場人物の悲哀がテーマです。ぼかす事で聞く側のイメージに訴える事が出来ればと思います」とクロノ。
 そう言うと自分の席に戻った。


●”Destined” DESPAIRER(fa2657)とスモーキー巻(fa3211)の場合
 二人が持ち込んだ曲は3曲、うち2曲は完全なインスト曲。
「時間があれば生音での録り直しも考えています」というスモーキー。
「OPとEDに関しては、どの曲が選ばれてもこのままオンエアはないな」と鬼塚ディレクター。
「取りあえずサントラの発売は少し先だから。そっちは挿入曲も含めて全曲録り直してもらおうと思っているんだよ」とプロデューサー。にこにこ笑うこの壮年の男が一番、悪魔である。

(1)『No more than human』
♪♪♪
 More or less
 No more than human
 涙は仮面の裏に隠して

 Neither right, nor wrong
 There wasn’t even a choice
 心の傷の痛みを隠して

 涙がいつか枯れる時まで
 心がいつか凍りつくまで
♪♪♪

 ピアノの澄んだ音色が、ディーの声が「人」でありたいと願う男の心情を苦悩を歌うバラード。
 事前にスモーキーから添付されている資料には「『狂犬』となったのは大切なものを守るため、『犬』であるよりも『人』であったから。そして、親友を自ら手にかけることを選ばざるを得なかった男。『狼』となったのは組織が、そして立場がそれ以外の選択を許さなかったが故、そしておそらく、やはり『犬』である以前に『人』であったが故に。心を持つが故。人であるが故。そしてそれを表に出すことができないが故の悲しみ」と書かれている。
「タイトルは『more than human』と『less than human』からの連想しました」というディー。

(2)『Heartless Reality』
 男Bの処分撤回を却下されるシーンでの使用を想定したというインスト曲は、出だしはインパクトがある早い強いテンポで展開している。中盤に差し掛かると変調し、ゆっくりとしたメロディに変わる。徐々に後半、悲しみが実感を帯びて行く様を描き出していた。

(3)『Turncoat』
 男Bの裏切りが発覚したシーンでの使用を想定したインスト曲は早いテンポで構成されている。「悲しみ」と「混乱」の要素を強く感じさせる曲は、聞くものを不安にさせる、そんな曲であった。



●採用発表
「待たせたな。結果を発表する」と鬼塚。

○オープニング曲『THE DOG』
「総評としてはインストゥメンタルの曲であり乍ら、複数のサックスを使い奥行き深くドラマティックに仕上げている所が好評だった。今後本編のOP曲として採用させてもらう予定だ」と鬼塚。
「時にケイ君は、これの別バージョンやアレンジ出来るかな?」とプロデューサー。
「できればトランペットも入れて欲しいです☆」とよしりん☆。
 言うのは簡単であるが、やる方には滅茶苦茶大変な作業である。

○=狂犬=エンディング曲『No more than human』
「ザ・DOGは『人でありたい』と思い乍らも人を止めてしまった人たち、捜査官たちの話です。非常にこちらのテーマを表現しています」よしりん☆、真面目である。
「それに音質も、俺達は音楽のプロではないが、とても良かったと思う。オルゴールバージョンが欲しい」と鬼塚。

○THE DOG総合イメージ曲『Gulty Dog』
「この曲は『No more than human』とは逆にザ・DOGのもう一つの面、暴力的で凶悪な部分を示しているね。告知CMに使用させて貰おうと思っているよ」とプロデューサー。

○挿入曲
「『HUNTER』は冒頭『主人公、夏目 馨』がメンバー召集を掛けるシーン。
 『Turncoat』は『梁瀬祐輔』の裏切りを知り、『夏目 馨』が衝撃を受けるシーン。
 『犬たちの誇り』は、『チーム夏目』のメンバーが仲間を救う為Wハンティングを決めるシーン。
 『Heartless Reality』は『狂犬、梁瀬祐輔』の処分撤回を求めるシーン。
 『友よ』は『主人公、夏目 馨』が『狂犬、梁瀬祐輔』を追い詰め、対峙するシーン。
 『夢の行く先』は、『狂犬、梁瀬祐輔』の墓に『梁瀬優香』手をあわせるシーン。
 各々で採用する」と鬼塚。
「『With the moon and a man』に関しては、歌詞の『man』を全て『dog』に変更して欲しいというのがこちらの要望だ。『狼』が『狂犬』を処分し、夜空に慟哭をあげるシーンで使用したい」とプロデューサー。
「椎葉の曲に関しては、『暴力団幹部、神埼竜童』が『梁瀬祐輔』に圧力を掛けているシーンに採用を考えているが、もう少し詰めてみたい所があるので後で残ってくれ」と鬼塚。
 どうやら全員の曲が採用されるようである。

 * * *

「しかし予想外でしたね☆ あんなに良い曲ばかり集まるなんて♪」少しは不採用があるかと思っていたんですよ。とよしりん☆。牛タンを焼いている。
「ああ、全くだね。それにもっとOPやEDに片寄るのかと思っていたよ」と隣の席でカルビを焼いているプロデューサー。
「まあ、これで編集の連中もハリが出るでしょう。なにしろ音がない画面ってのは面白みが半減するもんですからね。イメージ曲ってのは編集側にも良いイメージが涌く場合がありますし」
 もう一つ隣の席でダッカルビを焼いている鬼塚ディレクター。同じ席に座らないのは、仲が悪いのではなく単に各々の机に軽く5人前はある肉や野菜が乗っているからだ。
「後で覗いて良いですか?」勿論、手土産持っていきますが。とよしりん☆、ウィエトレスがサムゲタンを持って来る。
「‥‥いいが、あんまり皆を虐めるなよ」しかし、良く食うな。と鬼塚。韓国料理と中華は正しく食べれば太らないんですよ♪ と反論するよしりん☆、目が笑っていない。
 曲は目出たく決まったが、まだまだミュージシャン達は駄目だしされた所を直している最中である。結局録り直しもするようなので、もう少し放送には時間が掛かるようである。
 さて、どんな風に仕上がるは放送を見てのお楽しみである。